||||| コンセプト

本書 前書きより

科学技術と産業が飛躍的に発達した20世紀は、「創造と革新の世紀」と呼びうるかもしれません。とはいえその一方、それは「破壊と愚行の世紀」でもありました。戦争や迫害は言うに及ばず、乱獲や乱伐、無謀な土地の開発や造成、大量生産と大量消費による自然破壊は、人類そのものの存続にまでかかわってきています。
 そんな現実に目を向ける必要がある、と私たちは考えました。美しかった過去を懐かしんだり、美しかるべき未来に期待したりするのももちろん結構なことでしょう。でも世紀の変わり目に、私たちがどんな地点まで来てしまったのか、どんな場所に立っているのか、振り返ってみるのも悪くないと思ったのです。

 この企画では総計100点の写真を選び、1冊の写真集を編んでみました。それぞれの写真は、人類が地球環境と自分自身に対して及ぼした数々の愚行の「象徴」であり、と同時にひとつひとつがれっきとした「現実」でもあります。個々の「現実」を捉えたのは、多くは報道に携わるフォト・ジャーナリストたち。彼ら写真家と、作品を掲載したメディアに敬意を表し、新聞紙を再利用した台紙に写真を貼ったオリジナル版を1点つくり、それを複写し、再構成することにしました。古新聞はまた、大量消費とリサイクルの時代の象徴でもあります。
 写真に加え、池澤夏樹、アッバス・キアロスタミ、フリーマン・ダイソン、クロード・レヴィ=ストロース、鄭義〔ルビ:チョン・イー〕の5氏に、前世紀を振り返り、新しい世紀を見据えたエッセイの寄稿をお願いしました。各氏の卓見をお読みいただきたいと思います。

 私たちと私たちの子孫が生き延びるために、今後どのようなことをしなければならないのか。それを考えるためには一瞬立ち止まり、現実を見据えなければなりません。
本企画がその一助となることを願っています。

『百年の愚行』エディトリアル・ディレクター 小崎哲哉