←もどる
森林の成り立ち

初めて森ができたのは4億年ほど前のことだと考えられています。逆に言えば、4億年より前の地上は赤茶けた岩と土と石しかない、ほとんど死の世界だったのです。ちょっと想像できないですよね。なぜ森が誕生したのでしょうか。

地球で最初の光合成生物シアノバクテリアが誕生したのは27億年前に遡ります。浅瀬に発生したシアノバクテリアは光合成によって原始地球に酸素を生み出し、大気中の酸素濃度は長い長い年月をかけてゆっくりと増えていきます。

上空に昇った酸素は紫外線と反応して、オゾンに変わります。その結果、10億年前、成層圏にオゾン層ができあがりました。オゾン層は生命にとって有害な、太陽からの紫外線を吸収する性質があるため、地上が安全な場所になったのです。まずその恩恵にあずかろうとしたのが植物です。徐々に水際に進出し、5億年ほど前(オルドビス紀)に、ついにコケ植物やシダ植物が海から地上に上陸しました。

地上に移った植物は3億8000万年前(デボン紀)に、世界で初めての「木」を誕生させます。その名は、アーキオプテリス。成長する幹を持ち、高さは20メートルもあったと言われています。競争相手がいなかったアーキオプテリスは瞬く間に地上で繁栄し、主に水辺の近くに密林を作りました。これが世界で初めての森です。

森ができると木陰ができます。木陰は強い直射日光から生き物を守り、適度な湿度を提供してくれます。さらに、樹木が落とす葉が微生物の活性を促し、大量の有機物を創り出し、不毛だった土壌や川に栄養分を送り出すことになりました。こうして地表は徐々に植物以外の生命にとっても住みやすい環境に変わっていきました。生命が陸に繁栄するために、森が果たした役割は決定的なものだったのです。

カナダ西海岸の原生林
カナダ西海岸の原生林。深い森は多様な生命を支えています。(Photo:Soichi Ueda)

生命はめぐる
生命はめぐる。倒れた木から、新たな木が生まれようとしています。(Photo:Soichi Ueda)

その後、3億年ほど前に裸子植物が誕生し、恐竜が繁栄した1.5億年〜6500万年前(ジュラ紀〜白亜紀)には、セコイア(スギ科)などの針葉樹(裸子植物)が全盛を迎えます。花が咲き、果実がなる被子植物が誕生したのは1億3000万年前。彼らは、美味しい蜜や果物に誘われた昆虫や鳥、ほ乳類を利用して種子を遠くに運ぶ、という新たな子孫繁栄の方法を編み出し、森林生態系を拡大していきます。現在、裸子植物は800種類ぐらいですが、被子植物は25万種にまで多様化しています。
広葉樹(被子植物)は、森で生活する生物たちにも新しい環境を提供しました。広葉樹は針葉樹と違って横方向に枝葉を拡げるために、木々が重なり合います。おかげで動物たちは危険な地上に降りることなく、樹上にいながら遠くまで移動することができるようになりました。オランウータンに代表されるように、私たちの祖先である猿人も、もともとは森の生活者でした。生活圏が空間的に拡がっている樹上生活が、私たちの先祖である猿人の目を進化させ、さらに脳を発達させたとも言われています。

私たちを含む全ての生命は、森林の存在なくしては陸上で進化することができませんでした。その結果、今でも植物と共生しないと生存を維持することができません。アースリウムの地球儀で、「8000年前」を押してみてください。人が手を付ける前の森林の分布を見ることができます。森林が4億年の進化の末に、ヒトも含めた全ての生命と共に、バランス良く共生していた頃の姿です。

←もどる