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生物の多様化と大量絶滅

 最初の生命が誕生したのは約40億年前と考えられています。生物の進化は、その母体となる地球の進化と切り離して考えることはできません。たとえば、27億年前に、地球に磁場が誕生して、宇宙からの放射線から守ってくれるようになりました。そのため、生命は浅い海に進出するようになり、空気中の二酸化炭素を使って酸素をつくる光合成生物が誕生することになります。光合成生物によって、約20億年をかけて少しずつ大気に蓄積を続けた酸素は、7〜6億年前にオゾン層をつくることになります。オゾン層は、生物にとって有害な紫外線をカットしてくれるため、この時、はじめて陸地が生命にとって安全な場所になりました。その後、4億年前に植物が陸地に進出し、陸上の生物が多様化していったことは第5回 森林消失でも書きました。

 では、超大陸の形成や分裂と生物の歴史はどのように関係しているのでしょうか。ここにも、密接な関係があります。ロディニア超大陸が存在していた7〜8億年前に、全地球が凍り付く大規模な氷河期がありました。この時、たくさんの生物が絶滅しましたが、生き残った生物は氷の下で静かに地球が温かくなるのを待っていました。その後、ロディニア大陸は地下からの熱によって再び分裂をはじめ、たくさんの浅瀬ができます。その浅瀬に、待ってました!とばかりに生命が爆発的に進化していくことになりました。生命史の中でも、短い期間に驚くほどたくさんの生物が誕生したために、生命の大爆発(カンブリア大爆発)とまで表現されているほどです。

 オゾン層のおかげで、4億年前に植物が陸地に進出し、森林となって拡がり、地球は緑一色になっていきます(左の地球では、3.7億年前の地球から大陸が緑色に表現されています)。湿地や木陰をつくり出す森林が、多様な陸上生物を育む母体となって、は虫類や昆虫が進化を遂げます。

 生物が多様化する一方で、超大陸をつくり、分裂させる地球のエネルギーは生物を絶滅に追いやることもありました。過去6億年間に5回の大量絶滅が起きたことがわかっていますが、2億5000万年前の史上最大の大量絶滅は大陸移動が関わった絶滅事件だと考えられています。いったい、何が起きたのでしょうか。

5回の大量絶滅 出典:J.John Sepkoski Jr.”A Compendium of Fossil Marine Animal Genera”(Bulletins of American Paleontology, Number 363, 2002)

 パンゲア大陸が成立する頃、3億年前には私たちの祖先、ほ乳類型は虫類が地上で繁栄していました。その頃は、地上にも海にも様々な種類の生きものたちが溢れ、まさしく生命の楽園でした。しかし2億5000万年前に、パンゲア大陸が分裂をはじめたことで、その楽園はあっというまに地獄へと姿を変えてしまいます。分裂がはじまった大陸では、地下から上がってきたスーパープルームと呼ばれる直径1000kmもの巨大なマグマの固まりが地表を突き破り、長さ数百km、高さ3kmもの火柱となりました。この大噴火は100万年も続き、成層圏にまで達した噴煙は地球全体を覆い尽くしたといいます。太陽光線が届かなくなった植物は光合成ができなくなって枯れてしまい、地球全体が酸素欠乏状態(スーパーアノキシア)に陥りました。こうした過酷な環境の中で、実に95%もの生物種が絶滅したと考えられています。
 生き残った生物の中で、少ない酸素で呼吸する方法を見つけたのが後に繁栄する恐竜でした。ほ乳類も、少ない酸素をうまく使うため、卵を産むのではなく、お腹の中で母親から酸素を供給することで胎児を育てる方法(胎生)を編み出しました。大陸移動のメカニズムがもたらした厳しい環境が、逆に新しい生物の繁栄の基礎となったのです。生命が人間へと進化した背景には、このように地球と生命とのダイナミックな関係があったのです。

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