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渡り鳥の危機

 1980年代を境に、世界的に渡り鳥が減少するという異常事態が発生しています。たとえば日本では、サンコウチョウ、アオバヅク、サンンショウクイ、アカショウビンといった夏鳥がほとんどいなくなってしまいました。

サンコウチョウの生息地の減少
   提供:内田博/撮影:割田兼弘

 原因として、まず考えられるのは、森林伐採です。伐採だけでなく、道路を造ることによって森が「分断」され、縮小していることも大きな問題になります。ある程度大きな面積がないと暮らしていけない種があり、「分断」は生息地減少の原因になっている場合もあります。しかし、日本の夏鳥の場合は、保護区に棲んでいることが多く、森の分断だけが原因とは考えにくいようです。
 別の理由としては、化学物質による自然の汚染です。農薬散布などにより、エサとなる虫がいなくなったり、ヒナが育たなくなったり、生態系に悪影響が出ていることは当然原因のひとつとして考えられます。
 また、越冬地の環境変化も大きな問題です。近年の熱帯雨林の伐採はめざましく、たとえばインドネシアでは、80年代になって70%以上の熱帯雨林がなくなってしまいました。越冬地だけでなく、渡りのルート上の国々のあらゆるところで、鳥たちが休む場所が無くなっていることが減少の大きな要因になっている可能性があります。

 さらに、地球温暖化の影響も出始めているのではないかと考えられています。たとえば、フィリピンで越冬して日本にやってくるコムクドリという夏鳥の初卵日が、過去20年で2週間くらい早くなっているといいます。本来は、ヒナが生まれてたくさん食べる頃に、果物がちょうど熟れているタイミングのはずなのですが、そうしたタイミングがずれてきているともいいます。また、冬鳥の越冬地がどんどん北にずれてきていることも観測されています。

 地球規模の環境と共に生きている渡り鳥の生態を調べ、保護するための方策を探っていくことは、今後地球全体の環境を考えていく上で、ますます重要なテーマになってくるのではないでしょうか。
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