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割り切れない1年

 時間は社会を支える基本的な考え方のため、なかなか立ち止まって考えてみることはありません。でも、ちょっと考えてみると、疑問もたくさん浮かんできます。そもそも、年、月、日、時、分、秒などの単位はどのように決まってきたのでしょうか。

 時間の概念は世界の規則的な変化を観察することによって育まれてきました。太陽が昇り、沈み、また昇る、1日という繰り返し。月の満ち欠けが繰り返される1月の周期。夜空の星が少しずつ動いていって、また同じ星空が戻ってくる1年という単位。

 1年が365日の暦が初めて作られたのは古代エジプトのことです。おおいぬ座の一等星、シリウスの動きを観察し、1年が365日であると知りました。



 よく観察すると、実際には1年は365日よりも6時間長いため、4年に1日ずつのずれが生じます。そこで、閏(うるう)年という仕組みを編みだし、4年に一度1日を追加して、星や太陽の運行と暦がずれないように工夫をしたのです。

 この暦を、エジプトを征服したユリウス・カエサル(シーザー)が紀元前46年にローマに持ち帰り、改良して作ったのがユリウス暦でした。でも1年は、より正確には365日6時間ではなく、365日5時間48分46秒です。そのため、長く使っているとずれが生まれます。16世紀には10日ほどのずれになっていたそうです。

 このずれを解消すべく、1582年に当時のローマ教皇グレゴリオ13世によって、現在私たちが使っているグレゴリオ暦が制定されました。グレゴリオ暦は「4年に一度閏年を入れるが、下二桁が00の年は平年とする、しかし400で割り切れるときには閏年とする」というルールを作って、この5時間48分46秒のずれをうまく調整しながら運用しています。それでも、1年に約26秒の差が蓄積されるため、3000年ほどすると1日の誤差が生まれます。その時、どうするかはまだ決まっていません。

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