2015.04.09 Tweet

the Earth

山田 由美

マイクロプラスチックのたまり場となった地中海

Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Chesapeake Bay Program

「マイクロプラスチック」とは漂流する過程で波や紫外線の影響を受けながら分裂を繰り返し細かくなった微細片のごみ。長さ5ミリ以下のものと定義されており「マイクロビーズ」とも呼ばれています。今、膨大な量のマイクロプラスチックが地中海に集まってきて汚染が強まっていることをスペイン・カディス大学の研究者らが警告しています。

このとても小さなごみは河川や海流という地球規模での動きにより流され、最終的には「流れのたまり」に集まります。その場所はごみの密度が高まり汚染が進んでしまうのです。ボトル、袋、包装などのプラスチックごみが生態系に影響を与える問題は以前から世界中の海や湖で見られました。懸念した多くの市民がごみを拾う努力を続けていますが海岸・湖岸に流れ着くごみはほんの一部な上に、肉眼では見えないほどの大きさのマイクロプラスチックは回収できません。

地中海に流れ着くプラスチックごみのおよそ80%がこれに分類されていました。マイクロプラスチックはとても小さいため海にすむ生物がのみ込んでしまい、多くの生命が死の危険にさらされています。研究者によると魚、鳥、亀、くじらの内臓からプラスチックが発見されました。さらに魚や貝などにはPCB(ポリ塩化ビフェニール)といった有害な環境ホルモンが体内に蓄積されてしまい、人が食べれば健康被害が起きる可能性もあります。

欧州の海岸で育った牡蠣(かき)とムール貝にマイクロプラスチックが発見されたこともありました。ムール貝などのシーフードを特産とするオランダは、汚染に強い懸念を示しています。地中海は地球全体の海洋面積の1%を占めるに過ぎませんが、美しいイメージの観光や豊富な漁業が盛んで経済的にも重要な海域。また全海洋生物の4-18%が生息する生態域としても非常に価値がある海です。

地中海:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by carnifex82

実は2013年に同じ欧州のレマン湖でも高濃度のマイクロプラスチックが検出されたことが、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究者により報告されていました。美しい湖をまたぐスイス・フランス両岸で熱心な環境保全活動が行われているにも関わらず汚染が進んでしまうのは、汚染された川からの流れ込みが原因と考えられており、河川・湖の生態系を切り離して議論できない問題であることが指摘されました。

内陸の水に存在するマイクロプラスチックの起源は海にあると考えられています。直接海に捨てられているマイクロプラスチックは約20%。残り約80%はごみ捨て場、道ばたのごみ、下水から流れ込んできていると研究者は推測しています。

マイクロプラスチックはスクラブなどの形で化粧品やスキンケア用品にも入っています。NGOなどはその使用禁止を呼びかけ、一部の政府が規制の対応を始めたのは明るいニュースのひとつです。しかし、プラスチックは自然界では分解されません。プラスチックごみは海中を漂ったのち、最終的には海底に沈んで大量のごみが回収不可能となります。私たちの消費生活による排出を早急に食い止めなければ、この問題は根本的には解決しません。

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文: 山田 由美