2010年03月07日
星空と巨木
ニュージーランドに行ってきました。
訪れたのは、クライストチャーチから車で1時間30分ほど南に走ったところにあるテカポという町。美しい湖の湖畔にある、人口300人ほどの小さな町です。ここは世界的に星空が美しいことでも知られています。
このテカポに、数年前に開発の話が持ち上がりました。その時、美しい星空を失ってしまうのではないかと心配した日本人の星空ガイド、小澤英之さんが出したアイディアは「星空」がある街を世界遺産に登録できないかというものでした。そのアイディアが、本格的にユネスコで検討されることになったのです。
自然を守ることと開発と、どう両立させるのか。
「星空の世界遺産」の実現に向けて、推進する人、反対する人、慎重な人・・いろいろな立場の人に会ってきました。発案者の小澤さん自身も揺れています。取材の詳細は、3月末に江口絵里さんによる「地球リポート」として掲載予定です。
夜、テカポで見た星空は忘れることができません。天の川に明るく輝く南十字星や、さかさまのオリオン座など、夏の南半球の美しい星空に、もともと星が好きな僕は、夢中になってしまいました。こんな街に住みたい!と思うほど:-)

湖畔にある小さな教会「良き羊飼いの教会」に沈む天の川と南十字星。どれが南十字かわかりますか?
旅の後半は、北島の最北端にあるワイポウアという原生林の森へ。ニュージーランドは白人の入植以来、96%の原生林が失われ、牧草地に変えられてしまいました。ワイポウアはわずかに残された貴重な原生林のひとつ。ここで、カウリ(ナンヨウスギの一種)の巨木を多く見ることができます。
マオリ族の人たちにとっては、カウリの木は神様です。
この森で最大の巨木「タネ・マフタ」は「森の神」という名です。
タネ・マフタは父なる空ランギヌイと母なる大地パパトゥアヌクの6人息子のひとりでした。かつて空と大地はあまりに愛しあいすぎて、抱き合ったまま離れることがありませんでした。生まれた子どもたちは、父母の間に挟まれて外に出ることができません。そこでタネ・マフタが父親(空)を蹴り上げて突き離し、その幹で支え、ようやく世界に空と大地が生まれた、という神話が残っています。この木は、人間が神話を作った時代から巨木としてそびえ立っていたんですね。
樹齢数千年のカウリの巨木の前に立つと、なんというのだろう、心を差し出したくなるような畏敬の念に包まれます。星空にしても、巨木にしても、自分たちのちっぽけさを感じさせる存在が身近にあることで、私たちはようやく謙虚な気持ちになれるのかもしれません。

ワイポウア最大のカウリ「タネ・マフタ」。幹まわりは13.8メートル、高さは51メートル。樹齢は2000年くらいといわれています。昨年、屋久島の縄文杉と「姉妹木」になりました。写真ではなかなか大きさは伝わらないのですが、人の大きさと比べてみてください。
この巨木の森は、もしかしてもしかすると映像で?お見せできるかもしれません。具体的になったらここでまた報告します。
本来、星空も巨木も、私たちのすぐそばにあってしかるべきものです。私たちの世界観を支えている、意識の基盤のようなものです。それがわざわざ遠くまで行かないと見ることができない貴重なものになってしまった・・・
マオリのガイドの方が「森を奪ったのは人間だ。けれども、残された森を守ることができるのも人間だ」と力強い声で歌ってくれました。人間は希望を託される存在でなければならないですね。
(上田壮一)


