2010年05月31日

ボルネオからの報告(1) ー スマート・パートナーシップ

地球日記

マレーシア・サバ州野生生物局の活動全般を撮影する目的で、再びボルネオに行ってきました。2週間という短期間に盛りだくさんの取材内容だったのですが、今日はその中から、SIMCAというプロジェクトをご紹介します。

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サンダカンからスピードボートで90分ほど行ったところに浮かぶ小さな島、ランカヤン島。この島はいわゆる「ワンアイランド、ワンリゾート」のスタイルのダイビングリゾートです。青い海と小さなジャングル、そして居心地がいいコテージ。スタッフもよく教育されていて、気持ちいいホスピタリティで迎えてくれます。お客さんの7割はヨーロッパ人だそうで、日本人にはまだあまり知られていないようです。

これまたほとんど知られていないのですが、ここはサバ州野生生物局が「スマートパートナーシップ」と呼んでいる、自然保護のユニークなスキームの事例でもあるのです。

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ランカヤン島周辺は、世界的にも海洋生物の多様性が高いエリアに属している豊かな海です。
しかし、80年代は海賊がはびこり、90年代にマレーシア海軍が掃討作戦を展開するまでは無法海域でした。海賊はいなくなったものの、ダイナマイトを使った違法漁業やトロール漁のせいで、美しいサンゴ礁は破壊の限りを尽くされていました。
そこで州政府は2001年に、この海域を「自然保護区」(SIMCA:Sugud Islands Marin Conservation Area)に指定しました。このエリア内での漁業等の採取活動は一切禁止です。

その保護のスキームが画期的。保護のためにリゾートを作ってしまったのですから。
このリゾートを中心に、州政府、非営利組織、株式会社が手をつなぎ、それぞれの立場で自然を保護するために力を尽くしているのです。

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ランカヤン島ダイブリゾート

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レストランから海を臨む

会社であるLankayan Island Diver Resort社は島でリゾートを経営し、世界中から観光客を呼び寄せます。1泊一人18000円とちょっと高めですが、そのうち600円が自然保護のために徴収されていることがお客さんに知らされます。お客さんは、保護区であることが説明され、この島から何も持ち出さないという誓約書を書かされます。ルールは厳しい反面、ウミガメの産卵や孵化をお客さんに見せたり、排水の浄化システムが導入されていたり・・・自然を大切にすることが、この島での楽しみを増やしてくれることを随所で気づかせてくれるようになっています。

自然保護のためにお客さんから集めたお金はReef Guardianという非営利組織の活動資金になります。彼らの仕事はビーチや海の清掃、調査、ウミガメの保護、違法漁業の取り締まりなど。事務所にはレーダーが設置され、周辺海域を常に監視しています。

州政府は、リゾートに土地を無料で貸し、NPOのスタッフに名誉野生生物保護官という資格を与えます。
とにかくビックリしたのが、この名誉野生生物保護官という制度。彼らは銃こそ携帯できませんが、違法業者の逮捕権や押収権も付与されているのです(5日間の研修と試験の合格が必要)。

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リーフガーディアンのオフィスとEnforcement Officerのエドウィン・アルベルトさん

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珊瑚礁の調査活動。大きなシャコ貝の成長を記録する

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保護区に入ってきた漁船を取り締まる

お金の流れもスマートです。会社が利益を出せば州政府には税金が入ってきます。もし警察や政府スタッフが現場に駐在すると、莫大な税金が使われることになりますが、現場を良く知るNPOスタッフが逮捕権をもって監視や臨検を行なえば、経済的にも非常に効率的で、税金の節約になります。

政府、企業、NPOが互いに持ち味を活かして自然保護をする。
このスキームを「スマートパートナーシップ」と呼んでいます。

「win-win」よりも良い言葉だと思いませんか?
誰もが「得をする」ということではなく、
誰もがそれぞれの立場で努力して大切なものを守る。
結果としてちゃんと収入を得て経済活動も自然保護も持続可能になる。

この方法、世界がもっと知って、参考にすれば良いのではないかと思いました。
逮捕権や押収権まで与えるというのが、ハードルが高そうですが・・

リーフガーディアンのEnforcement Officerのエドウィンさんは、もともとは優秀なダイビングガイドだったそうです。海をよく知るプロフェッショナルに、法の執行権まで与えて自然を守る。できそうで、できない優れた仕組みだと思います。

(上田壮一)

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