2011年08月17日

Think the Earth基金 支援先の活動 NPO法人田んぼ

地球日記


先週末、宮城県塩竃市の松島湾に浮かぶ浦戸諸島に渡り、桂島の干潟と寒風沢島(さぶさわじま)の田んぼの調査ボランティアに参加してきました。東北大学生命科学研究科とNPO法人田んぼ、アースウォッチ・ジャパンが協力し、浦戸諸島各地の生態系が地震や津波にどのような影響を受けているか、そのことを調べ、今後の復興に生かすため市民参加型の調査をスタートさせたのです。浦戸諸島の生物多様性調査は東北大学が震災以前から継続的に行なっていたため、比較調査が可能であることも今回の調査活動の背景にあります。

浦戸諸島で最も大きな島が寒風沢島。島の全ての水田が津波の被害を受けて壊滅しました。この水田の調査と復元を「NPO法人田んぼ」がサポートしています。ちょっと信じられませんが、寒風沢島の水田が、塩竃市に残された唯一の水田だったそうです。かつては島に60haほどあった水田は、震災前に既に11haほどに減っていました。

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堤防が決壊し、津波がすべての田んぼに襲いかかった。もともとあった田んぼは見る影もない。この津波で3名の方の尊い命が奪われました

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決壊した堤防。津波の威力に慄然とする光景でした


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google mapでみると決壊した堤防から海水が入り込んでいることがよくわかる

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もともと田んぼだったところは、いまは海水が入り込み、ボラなどの魚が泳いでいる

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土壌調査をするNPO法人田んぼの岩渕成紀さん。塩分を除けば、とてもいい土質であることがわかった

寒風沢島の水田は、もともと溜め水も使わずに、天水(雨水)だけを頼りに田んぼを営んでおり、冬も水を落とさず生き物たちの力で土の力を保つ「ふゆみずたんぼ」が行われていました。「ふゆみずたんぼ」の普及を進めていたNPO法人田んぼ理事長の岩渕成紀さんは、それを知って驚き、またこの島での水田の復元の意義を感じたようでした。

被災した水田の水質調査の結果は、海水よりも塩分が高くとても厳しい状態でした。生物多様性の調査結果も、田んぼではミギワバエの幼虫、ハナアブ、ミズアブの幼虫、ユスリカの幼虫などがいた程度。ただ水田の周辺(畦)ではたくさんのクモが見られるなど、もともとこの土地は豊かな生態系があったことをうかがわせます。
希望があったのは土壌調査の結果です。塩分濃度は高いものの、とてもいい土質だったのです。岩渕さん曰く「これまで調査した土の中でも最高レベル」とのこと。塩分濃度さえ抑えれば、水田の復元は充分に可能だということがわかりました。今後しっかりした分析が必要ですが、復興に向けて大きな方針が立てられる調査結果となりそうです。しかし、堤防が決壊しているなど、水田の本格的な復興までは長い年月がかかるでしょう。NPO法人田んぼは今後、地元農家の方たちとの調整や、塩竃市の協力を得るなど寒風沢島の水田の復興に向けて具体的な活動を行なっていく予定です。

寒風沢島は江戸時代には交易拠点として栄えた輝かしい歴史がありますが、地元の方は「今は忘れ去られた島」と表現されていました。実際、支援の手も届きにくく、瓦礫の撤去作業などもようやく始まったばかりです。単なる復元だけでなく、多くの人たちがこの地を訪れ、豊かな自然が残る浦戸諸島のすばらしさを感じることができたらと思います。個人的にも、いろんなアイディアを出してサポートしていきたいと考えています。
(上田壮一)

地球リポート:おいしいお米と生物多様性を両立させる「ふゆみずたんぼ」の底力

東北大学によるリポート:浦戸諸島モニタリング調査記

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