2012年10月04日

「百年の愚行」を顧みて・・ (1)

地球日記理事からのメッセージ

みなさん、こんにちは。
今月から月に一度、Think the Earth理事メンバーがスタッフブログに登場します。
第一弾は、水野誠一理事長による特別編 全3回でお送りします。

理事の紹介はこちら
http://www.thinktheearth.net/jp/about/organization/board.html
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「百年の愚行」を顧みて・・

「Think the Earth」の活動も足かけ11年目を迎えました。
 10周年の昨年は、東日本大震災に見舞われた大変な一年でした。しかし、それによって真の意味で「地球を考える=Think the Earth」ことの重要性を再認識させられた一年でもありました。
 その認識は、昨年の7月30日・31日に行われたトークイベント「EARTHLING 2011」のテーマに活かされ、20世紀の行きすぎた「物質文明」から、21世紀人類の謙虚な「生活文化」へ戻ることの重要性が、様々な登壇者により、様々な内容で語られました。
 それはUstreamを通じて日本国内はもとより世界各地に発信されると共に、記念出版を通じて記録することもできました。
 それと共に、11年前に初めての出版プロジェクトとして上梓した「百年の愚行」の内容を改めて思い出しました。20世紀の科学や技術の目覚ましい進化の裏で、顧みられなかった資源の蕩尽、環境の破壊、民族や国家間の紛争、大量破壊兵器の出現など、人類にとって愚かしいことが進んだことも事実なのです。まさに、物質文明の進化の陰に、生活文化の退化が進んだと言えましょう。
 これを、多くの報道写真と共に紹介したものが、「百年の愚行」だったのです。

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 原子力爆弾はまさにその最たる事例でしたが、26年前に起きたチェルノブイリ事故もまた、原子力の平和利用というテーマに対して大きな問題意識を喚起させる事象でした。しかし、それでも私達は何処か他所の出来事だと片付けていた感がありました。
 それが我が身に降りかかって来たのが、今回の福島第一原発・事故なのです。
 ところで、私達の意識の中では、次第に風化し始めている今回の東日本大震災ですが、未だ済んだ事とは言えないのではないでしょうか。それは震災や津波被害ではなく、まさに「原発事故」そのものが未だ解決していないということなのです。政府は一日も早く終わったことにしたいとばかり、「冷温安定・収束宣言」を早々に出しましたが、世界の識者たちからは全く信用されていません。私は、環境問題に関心を持つ一人として、まだ終わらないのみならず今後も続く危機として捉え続ける義務があると思っています。そこで我々が陥りやすい「5つの勘違い」から考えてみましょう。

三重の安全装置という勘違い

 3月11日の大震災によって起きた福島第一原発の大事故は、私にとってとりわけ大きなショックでした。
 というのも、私は2001年、まさに「Think the Earth」が発足したその年に行われた「静岡県知事選」に出馬したのです。当時、何時起きても不思議ではないと言われていた東海地震。それが来れば必ず大事故に繋がる可能性の高い「浜岡原発」を何とか止めるために出馬したのです。
 そもそも、当時参議院議員をしていた私は、基本的には原発容認派だったのですが、ある時、東海地震が30年以内に8割以上の確率(現在は88%と発表されている)で起きるという発表を読んで、にわかに心配になったのです。
 そこで原子炉の安全性について調べ始めました。経産省の担当者はもちろんのこと、中部電力や東電にも聞きましたが、どこでも「地震が起きても三重の安全装置がついていますから、絶対に安全です」の一言で片付けられました。しかしその頃、大事には至らないものの、あちこちの原発で様々な事故や故障が起きていました。それらを無視して、ただ安全だと言い募る態度に呆れたものです。
 事実、浜岡では2001年に点検中の1号機で、冷却パイプの破断事故が起きています。中部電力のこの事故を境に、東電が出した対応策があります。実はこれが後に福島原発で起きたメルトダウン事故の原因にもなっているのです。
 つまり原発には三段階の安全装=ECCS(非常用炉心冷却装置)があり、それの最後の砦と言われる、IC(非常用復水器)=余熱で発生する水蒸気を循環させて冷却する装置が、勝俣社長時代に取り外されていたという驚くべき事実なのです。
 その根拠が、2001年の浜岡原発の配管中で起きた水素爆発事故だったといわれています。つまりこの事故は、バルブ調整が難しくて起きたといわれていますが、ならば外してしまえという、驚くべき結論に至ったというのです。そこで東電の福島原発では、2号機から6号機までのIC(非常用復水器)が外されたていた可能性が高いといわれています。
 では、1号機にはICが付いていたはずなのに何故メルトダウンが起きたのでしょうか?これには、現場の人間が判断ミスから起動させることを忘れていたという証言があります。またもう一方で、1号機はICのタンクから常温水を入れてしまった為に、脆性劣化していた炉心近くの配管が150℃の温度差に耐えきれずに破断したという見方もあり、また、津波による電源喪失前に、地震の揺れによってパイプの破断事故が起きていたという見解もありで、依然真相は闇の中なのです。
 ただたしかなことは、想定外の津波の所為ではなくて、人的なミスか、40年を越えた炉の劣化が原因で起きた事故の可能性が高いということなのです。つまり、安全神話の素でもあるECCSが機能しなかったということです。


「百年の愚行」を顧みて・・ (2) へ続く


(水野誠一)

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