2016年03月11日

いつもじゃなくてもいい。でも忘れないように。

お知らせ

3月11日、東日本大震災から5年が経ちました。
地震や津波で犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、いまもなお、たいへんな思い・辛い思いをされているたくさんの方々に、心よりお見舞いを申しあげます。

今日は、3月11日の前後だけ震災のことが大きく取り上げられることに違和感を感じる人、情報があふれかえることでかえって辛い気持ちになる人がいることも自覚し、自重しつつ、決して一過性の思いではなく、「忘れない」ことを改めて自分に誓う日にしたいと思います。

Think the Earthでは、震災からの復興に向けて、再建のために日々奮闘されている方々がいることを、いまも現地で活動を続ける人たちがいることを「忘れず」、そして私たち自身がいつでも自然災害の被災者になる可能性があることを「忘れない」ために、忘れないプロジェクトを2011年に立ち上げ、皆さんからのご寄付をもとに現地の活動団体に寄付をおこなっています。
『忘れない基金』
http://www.thinktheearth.net/jp/wasurenai/fund/

2012年から2015年までに19団体へ寄付を行ってきました。これに大友克洋原画展での寄付先を加えると25団体になります。

いまでも、そして今日も、現場に立っていらっしゃる各団体の皆さん達を、あらためてご紹介したいなと思い、ブログを書くことにしました。(全部はご紹介しきれないのですが。)
Facebookページを持っている団体もあるので、今日からフォローして、現地からの生発信を日常に取り入れていただけたら、うれしいです。

●まずは、近々なにか接点がつくれる、お取り寄せ品がある、あるいはすぐに訪ねていける活動
かーちゃんの力プロジェクト協議会(福島県福島市)は、先日、農山漁村女性・シニア活動表彰の経営局長賞を受賞。3月19日(土)には福島県二本松市で第5回「かーちゃんの力・プロジェクトシンポジウム」が開かれます。
HP=http://www.ka-tyan.com/
FB=https://www.facebook.com/かーちゃんの力プロジェクト協議会-112209488926693/

北浜わかめ組合虹の会(岩手県大船渡市)は、震災後になんと産直わかめの販売をはじめました。三陸のシャキシャキおいしいわかめを、一度お試しください。
HP=http://niji-wakame.com/
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★被災した港も復旧しました(アングル違いますが...上2011年、下2015年)

創作農家こすもす(岩手県釜石市)は、3月19日から21日の3日間、釜石で行われる"Meetup Kamaishi"という体験型観光プログラムに参加。ピザ作り体験を行います(こすもすさんのお食事、とても美味しいのです!)
HP= http://www.sousakunoukacosmos.net/
FB=https://www.facebook.com/sousakunoukacosmos
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★こすもすの遊び場を照らす希望の壁画(2015年8月6日撮影)

一般社団法人おらが大槌夢広場(岩手県大槌町)は、若者も加わってツーリズム事業、ひと育て×まち育てなどを行っています。
3月19日(土)10-13時には、東京アークヒルズサウスタワーで大槌の高校生が大槌のものを売るお店を開くそうです!
HP=http://www.oraga-otsuchi.jp/
FB=https://www.facebook.com/oraga.org/

一般社団法人 いちばん星南相馬プロジェクト(福島県南相馬市)では、産直や農家民宿をやっています。
HP=http://www.ichibanboshi-minamisoma.org/

ゆりあげ港朝市協同組合(宮城県名取市)は、元あった場所に朝市を復活させて、いまでは震災前より賑わっているのではないか!というほどの盛況ぶりです。
HP=http://yuriageasaichi.com/
FB=https://www.facebook.com/ゆりあげ港朝市協同組合-448146771920410/
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★買い物客が"競り"を楽しめる企画も!(2015年12月5日撮影)

あすなろホーム(岩手県陸前高田市)さんには『北限のゆず塩』という商品があるそうですよ。
HP=http://rt-asunarohome.com/
FB=https://www.facebook.com/sansan.asunaro/

特定非営利活動法人 りくカフェ(岩手県陸前高田市)は、地域の人や陸前高田を訪れる人のホッと一息拠点。管理栄養士さんと考えた健康定食メニューを提供しています。
HP=http://rikucafe.jp/
FB=https://www.facebook.com/rikucafe/
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★本設の開店式典のとき(2014年10月5日撮影)


●その他の活動もいくつかご紹介します。
ユースサポートカレッジ 石巻NOTE(宮城県石巻市)では、地域の雇用とひきこもりがちな若者をつなぐ活動。昨年からは野菜の栽培から販売までを通じた実習もはじめました。
HP=http://www.ishinomaki-note.org/
FB=https://www.facebook.com/IshinomakiNote/

NPO法人子育て支援コミュニティ プチママン(福島県郡山市)では、もともと子育て支援の団体として活動していました。震災後は、その時々の状況にあわせ、引き続き親子支援の活動を行っています。
HP=http://www.petitmaman.jp/index.html
FB=https://www.facebook.com/子育て支援コミュニティプチママン-1564642113806358/

NPO法人つながっぺ南相馬(福島県南相馬市)では、いまだ避難指示解除を待つ同市小高区の人達が住む仮設住宅で、人々のよりどころとなるサロンの運営や、小高区に帰還した時のコミュニティ作りに尽力しています。
HP=http://www14.plala.or.jp/yamaki_farm/
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★代表の今野さん(左)とスタッフの道中内(どうちゅううち)さん(2015年9月18日撮影)

被災地障がい者センター南三陸(宮城県南三陸町)は、NPO法人奏海の杜(かなみのもり)となって、障害児、障害者の活動支援を行っています。
ブログ=http://blog.canpan.info/hsc_kenpoku/

NPO法人 生活支援プロジェクトK(宮城県気仙沼市)では、仮設から復興住宅に移り住んでいく方々の生活支援、健康支援を行っています。
ブログ=http://blog.canpan.info/sspk
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★スタッフの西城さん(左)と大森さん(2015年9月21日撮影)

NPO法人 さんりくWELLNESS(岩手県大船渡市)は、震災後にUターンした体育会系女子が立ち上げました。大船渡と大槌で健康づくりサポートを行っています。
ブログ=http://ameblo.jp/sanriku-wellness/
FB=https://www.facebook.com/さんりくWELLNESS-570396009764611/

NPO法人 みやこラボ(岩手県宮古市)は、宮古のまちづくり活動に奮闘中の若いNPOです。
FB=https://www.facebook.com/miyacolab/


『忘れない基金』では、引き続きご寄付を受け付けています(クレジットカード決済と銀行振り込みがあります)。皆さまからのお気持ちをしっかり復興・再建の活動にお届けいたしますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
http://www.thinktheearth.net/jp/wasurenai/fund/#fundway

(はらだまりこ)

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2016年03月10日

「東北復興の今を知る 釜石から学ぶ復興」開催レポート

お知らせ

こんにちは、Think the Earthの鈴木です。2016年3月2日。Think the Earth15周年記念×co-lab代官山1周年記念のコラボ企画の第二弾、代官山から東北復興・防災を考える3週間〜「東北復興の今を知る 釜石から学ぶ復興」をSodaCCo STUDIOで開催しました。

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会場には、フライキ(※)と呼ばれる大漁旗を飾り、いつものイベントとは少し違う雰囲気になりました。※フライキとは、漢字で書くと「富来旗」「福来旗」と表記し、漁船が帰港する際に大漁を表わす合図として使うそうです。お店の開店時や結婚祝いにプレゼントすると縁起が良いという習わしもあるようです。

一般社団法人RCFにはいるまで。

今回のゲストは、一般社団法人RCFの山口里美さん。UBSコミュニティ支援プロジェクトマネージャーとして釜石を拠点に活動しています。

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山口さんのご経歴を簡単にお伝えすると
・大学で途上国のノンフォーマル教育について学ぶ
・青年海外協力隊でタイ農村部の女性グループと活動する
・ドキュメンタリー番組制作会社にて企画制作に携わる(この時、震災を体験)
・震災後、石巻ボランティア活動に参加
・TwitterでRCFの存在を知り、2012年夏からRCFの釜石プロジェクトに参画

震災ボランティアを体験した際、例えば、おにぎりが、あるエリアにだけどんどん溜まっていくといった「適切なものが適切な場所に配分されていかない」現状を目の当たりにし、どうにかしたいと思い、縁あってRCFの釜石プロジェクトに参画しました。

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現場での適切な判断や情報整理をするために、RCFは復興支援のリサーチから始めました。トライセクター(民間と非営利と住民を超えて繋いでいく仕組み)として、googleやキリンといった大手企業と一緒になって復興を進めていきます。その際に気をつけたポイントが、「地域によそ者が入る時のインパクトをどう活かすか」。地元の人からすれば手伝ってもらえるのは有難いが、何をしてくれるのか、どんな人が行うのかはとても大事な視点。そこで、郷土料理の研究をして、地元の人と食事をし、お酒の力を借りながら腹を割って話もしたそうです。

2011年3月11日 釜石に何が起きたのか。

当時の動画を少し振り返りながら、釜石での復興プロセスを語っていきました。

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釜石は、20メートルを超える波が届き、死者・行方不明者1000人以上の被害を受けた地域です。津波浸水域の人口比でみると、釜石は、陸前高田、女川、大槌についで4番目に犠牲者の割合が多かった場所ですが、山口さんは、まちの機能が部分的に残っている分、まだいいのかな...、と心境を明かします。役所などの機能が残っていたため、復興を始める際どこから手を付ければよいか判断が早かったそうです。

復興をしていくには、社会的問題の解決にも取り組まなければなりません。釜石の高齢化率は人口の約35%。他のいくつかの自治体では、復興のため過疎集落が集約されましたが、釜石では震災前の集落を維持したので、コミュニティが引き継がれるメリットがある一方で、過疎を助長するリスクも含みます。住む場所の問題が新たな社会問題を生むために、気をつけながら現場で活動されているようです。それでもまだ釜石は復興が進んでいる方だと、山口さんは感じています。

その理由は、
【釜石の復興で加速要因となったもの】
・水深65mの湾口防波堤の存在があった
・中心市街地の津波浸水地域の半分以上が新日鉄の用地で、住宅地ではなかった
・市役所が被災を免れた
・第二の防潮堤で、かさ上げ区域を極力減らしていた
 
かさ上げ区域が少なかったため、動ける人が自力で動いていくことができました。まちの姿は歯抜けではあるけれども、少しずつ稼働していくことができたことに意味があったそうです。


人が集まる場所から活性化していく。

2014年3月に釜石にショッピングモールが開業しました。そこで感じたのは、人通りの回復による活性化と若者の日常がある大切さです。牛丼屋や定食屋があるだけで、若者が集まり活気が生まれると同時に、若者にとっても日常の一場面となり、彼らの精神面も回復します。なんでもないけど「タムろ」する場の必要性を感じたそうです。

また、中越地震から、ハード面とソフト面のバランスが大切だと山口さんは学びました。「建物などハードさえ復興すれば、人は交わります。ただ、ハードだけでは復興にはなりません。復旧=復興に近いですが、何よりも大切なのは、復興プロセスに積極的に参加した人が多いほど、復興したと思えるんです」。コミュニティ支援は、ハードを整えた後にソフトを整えることが重要だと、山口さんは考えています。

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釜石モデルとは?

◎まず自分たちから動く
復興計画の合意形成が2012年頃から進められ、市街地の再生について話し合われるようになりました。そこでまずとりかかったのが、行政と地域住民との意見のすりあわせ。被災跡地利用や公営住宅の復興計画に対する住民の意見を集約し行政側に伝えるなど、まずはハード面が整うよう、合意形成を促進することに力を注ぎました。

コミュニティ活動の再開から拡充するため、地域の担い手つくりに着手しました。しかし、ハード面が整備されないと地域のことを考えられないという現実に直面します。そこで、被災していない人が中心となってコミュニティをつくる活動をはじめました。このプロセスはモデル形成として、自分たちでやってみたそうです。

◎進捗評価の指標をつくる
定量化できる数値や定性的な目標を設け、地域のキーパーソンが役割を果たしているのか、状況・状態の把握をしているのか、多様性を担保しているのかなど、第三者が見てもわかりやすいように行動を可視化していきました。

◎小さな成功体験を積み上げる
RCFでは、等身大のまちづくり計画を進めることを大事にしてきました。たとえば、数億円かかる住宅計画が作られたことがありましたが、実現には予算がかかり身動きがとれませんでした。そこでまずは、住民たちが自分たちでできることからはじめたのです。それが桜並木の復興です。公営住宅完成後を想定した植樹を始め、自分たちが住みたい未来を描いての行動でした。

◎釜援隊の自律的マネジメント体制をつくる
復興支援員制度を利用した釜石リージョナルコーディネーター(通称「釜援隊」)の存在が生まれました。釜援隊の課題解決力の底上げ/チームビルディング/地域の指標化/中長期目標の設定などをサポートし、地域で共に動いていくコーディネーターを増やしていきました。

◎地域の担い手づくり
よそ者、釜援隊の存在が復興の力になっている一方で、地域に住む人が復興を誰かに任せっきりにする状況にするのではなく、自分たちで動けるようにしていくことにも注力します。地域のリーダー(担い手)となる人を発掘し育てること、成功体験を積み重ねるためのサポート、コミュニティビジネスの創出や女性、若者へのサポートがこれからますます重要になってきます。

釜石は2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップ開催都市として決定。地域が盛り上がってきていることを感じているそうです。また釜石には、世界遺産「橋野高炉跡」があるため、『鉄とさかなとラグビーのまち、釜石』として世界にPRをしています。


東京側でいま自分に何ができるか、個人・企業として考えてみる

お話を伺ったあとに、参加者のみなさんと山口さんにもご参加頂き、「東京側でいま自分に何ができるか、個人・企業として考えてみる」をテーマにグループセッションを行いました。

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最後に話し合った内容を発表していただきました。

そこで出たアイデアは、
【個人】
・消費する
・忘れないこと、とにかく行ってみる、「地」の物を買う
・東京のメンバーに東北の魅力を伝える
・他のエリアにも行ってみる

【企業】
・楽しさを創る
・企画を押し付けない
・企業で情報を伝える
・企業の本社を移転する
・公共鉄道の運賃の1%をファンド化。東京から東北への移動費、宿泊費に充てる。

さまざまな意見やアイデアが生まれました。

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最後に、山口さんからのメッセージとして、被災地は課題先進地域であると同時に、その言葉の重みを持つのはこれからと言います。災害はハードインフラの持つ要素をリセットしてしまうため、その時に、はじめて「地域のソフトの強み(地域資源)と弱み(地域課題)が露呈し、より強化されるプロセスになる」といいます。ハードが復旧しないと、人の心はソフト面に向かわないことも釜石から学びました。

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Think the Earthもクリエイティブの力を使って社会に貢献するチームではありますが、東北の震災から5年経った今だからこそ、ハード面からソフト面に連携する時に何か貢献できることはあるのかもしれないと感じました。3週間のイベント期間でしたが、これからも継続的に東北復興や防災について考える機会を設けられたらと思います。

(推進スタッフ 鈴木高祥)
=2016/3/17 一部加筆修正=

【イベント】
釜石のこれまでとこれから。3/19〜21
釜石の今に触れ、人に出会う釜石大博覧会開催!

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2016年03月08日

「カフェからはじめる、新しい社会・経済のつくり方」 [セミナー&サロン]

セミナー&サロン

今年度最後のセミナー&サロンのゲストは書籍『ゆっくりいそげ』の著者であり、食べログ1位になったクルミドコーヒー@西国分寺のオーナーである影山知明さんにお越しいただきました。

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「クルミドコーヒーに来たことがある人はどれくらいいらっしゃいますか?」と影山さん。聞くと参加者の半分がクルミドコーヒーに来たことがありました。

「今日はパワーポイントを使いません。」参加者から聞きたい話を聞いて、それに影山さんが応えるスタイルでセミナーが始まりました。

「影山さんの書籍を読んでいます。なので書籍に載っていないお考えを知りたい。また、経済において、手段と目的がすり替わる瞬間、それがなぜ起きるのでしょうか?」

「カフェの人材採用をどうやってやっているんですか?採用について聞いてみたい。」

また、来年から社会人になる学生さんからは「カフェを運営するにあたって疑問はどのように変わっていきましたか?」などたくさんの質問が。そのひとつひとつの質問に対して、影山さんは語りかけるように話し始めました。

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質問をホワイトボードに記入する影山さん。

「私は以前マッキンゼーカンパニーに務めていました。そこで3年間、すごく鍛えられた。その後27歳の時にベンチャーキャピタルを始めました。ベンチャーキャピタルは、事業計画を作り、うまく運営できれば、5000万円が5億円、10億円になる可能性がある。事業がうまくいって初めてお金ができるという、成功報酬型のコンサルティングです。夢に燃えてスタートしたけれど、いくつか疑問が残り、クルミドコーヒーを立ち上げることになりました。」

「ベンチャー企業は、最初は理念を実現することが大切で、それを成し遂げるために利益を生む必要がある、という考えで経営が始まります。成長することは、その理念を実現する手段に過ぎません。ただ、3年経ち、5年経ち、7年経つと仕事をする目的がある時から入れ替わる瞬間が起こります。」と影山さんは言います。

会社が成長し銀行からお金を借りて投資ファンドから投資を受けるようになると、お金に縛られ、売り上げや成長が大事になってきます。一方のベンチャーキャピタルも売り上げが倍になることを期待しているし、自分たちも経営陣の一人に加わっているので、その責任を持っています。そこで、ある時から経営議題が「○億円の利益を生み出すにはどうしたらいいのか?」に変わってくる。これが、目的と手段が入れ替わってしまう瞬間です。

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セミナーの様子

こういった瞬間に立ちあうようになって、影山さんは「○億円達成することを本当に求めているのは一体誰なんだろう?」と疑問を持ちます。個人としては、お金はなくてもやりがいがある方を選びたい。でも職業人としては、お金が儲かる方を選ばなければならない。投資家たちに短期間でリターンを生まなければならない。そういった約束が数珠つなぎになっている今の経済システムに違和感を感じたことが、カフェをはじめたひとつのきっかけになったそうです。

クルミドコーヒーがある西国分寺に、影山さんは最初まったく期待していなかったと言う。しかし、生まれた場所は1カ所しかない。やるんだったら、自分が頑張りたいと思える場所でやりたいという気持ちから、最初はシェアハウスマージ西国分寺をつくりました。そして、地域の縁側的な場所を現代に再現するならば、カフェだと考えました。「東京にはパブリックがないとよく感じます。他者の存在を全く想定していない、耳はiPhone、目はスマフォ。自分のプライベートを外に持ち出して、傍若無人に行き交っている。だからぶつかっても謝らない。その状況がとても残念です。」と影山さん。私も同じようなことを感じたことが多々ありました。私たちはいつからこんなにプライベートを全面に押し出して生活をするようになったのでしょう。

冒頭に「食べログ1位になったクルミドコーヒー」とさらりと書いたけれど、これは並大抵のことではない。おそらく日本で一番知名度があるグルメサイトに、全国1位のカフェとして名前があがる秘密は、きっと影山さん独自の経営哲学だろう。

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書籍『ゆっくりいそげ』でも書かれていたことだが、経済を目的にすると、人が手段になる。お店の場合、売り上げが目的になると、社員やお客さんが手段になる。お店に貢献出来る人は価値がある、貢献できない人は価値がない。そんなこと言われたら不安になりますよね?現代の生きずらさは、お互いがお互いを利用価値でみているのが大きな原因かもしれない。今とは違う社会のあり方を考えた時、最初に考えたのが社員の存在でした。

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西国分寺にあるクルミドコーヒー

「クルミドコーヒーの目的が利益だったら、スタッフは手段になってしまう。そうではなくて、人に仕事をつける、ということをしたいと思いました。カフェを運営する、という基本は押さえるけれど、社員6人、アルバイト8人、 ひとり一人が持っている才能を活かして、個人として表現したいことを探してもらっています。」

次にお客様との関係。「お客様からたくさんのお金をとること」を目的とするのではなく、「来てくれたお客様が来た時より元気になる」ことを目的にすると、やじるしの向きが変わります。

「take=消費者的な感覚」と「give=受贈者的な感覚」。どちらのスイッチを押すのかで、お客様との関係は劇的に変わってしまいます。例えば、ポイントカードは、払った分だけ得をしようと消費者的な感覚を刺激してしまうし、安い日を作ると、安い時にしかお客様は来なくなる。

一方でクルミドコーヒーにはクルミがおいてあって、自由に食べれる。目的はもちろん、お客様に喜んでもらうためだ。きっとtakeの気持ちでお客様が来ると食べたくもないのに、ひとつでも多く食べよとしてしまう。でも、お店がgiveの気持ちで対応すれば、自然とお客様もgiveで返してくれるのだと影山さんは教えてくれました。

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お店に置いてあるクルミたち

とはいえ、当然売り上げや利益は必要。片手間ではできないし、真剣に向かわなくてはいけない。
だからこそ、言葉だけではなく、実際に毎日カフェに足を運び、台風だろうが嵐だろうが、来てくれるお客様のために休まず営業する。小さな努力を積み重ね、全国1位のカフェまでに成長させた影山さんは本当にすごいと思いました。

書籍『ゆっくりいそげ』をまだ読んでいない人はぜひ、一度読んでみてください。

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(笹尾 実和子)

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