2016年03月08日

「カフェからはじめる、新しい社会・経済のつくり方」 [セミナー&サロン]

セミナー&サロン

今年度最後のセミナー&サロンのゲストは書籍『ゆっくりいそげ』の著者であり、食べログ1位になったクルミドコーヒー@西国分寺のオーナーである影山知明さんにお越しいただきました。

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「クルミドコーヒーに来たことがある人はどれくらいいらっしゃいますか?」と影山さん。聞くと参加者の半分がクルミドコーヒーに来たことがありました。

「今日はパワーポイントを使いません。」参加者から聞きたい話を聞いて、それに影山さんが応えるスタイルでセミナーが始まりました。

「影山さんの書籍を読んでいます。なので書籍に載っていないお考えを知りたい。また、経済において、手段と目的がすり替わる瞬間、それがなぜ起きるのでしょうか?」

「カフェの人材採用をどうやってやっているんですか?採用について聞いてみたい。」

また、来年から社会人になる学生さんからは「カフェを運営するにあたって疑問はどのように変わっていきましたか?」などたくさんの質問が。そのひとつひとつの質問に対して、影山さんは語りかけるように話し始めました。

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質問をホワイトボードに記入する影山さん。

「私は以前マッキンゼーカンパニーに務めていました。そこで3年間、すごく鍛えられた。その後27歳の時にベンチャーキャピタルを始めました。ベンチャーキャピタルは、事業計画を作り、うまく運営できれば、5000万円が5億円、10億円になる可能性がある。事業がうまくいって初めてお金ができるという、成功報酬型のコンサルティングです。夢に燃えてスタートしたけれど、いくつか疑問が残り、クルミドコーヒーを立ち上げることになりました。」

「ベンチャー企業は、最初は理念を実現することが大切で、それを成し遂げるために利益を生む必要がある、という考えで経営が始まります。成長することは、その理念を実現する手段に過ぎません。ただ、3年経ち、5年経ち、7年経つと仕事をする目的がある時から入れ替わる瞬間が起こります。」と影山さんは言います。

会社が成長し銀行からお金を借りて投資ファンドから投資を受けるようになると、お金に縛られ、売り上げや成長が大事になってきます。一方のベンチャーキャピタルも売り上げが倍になることを期待しているし、自分たちも経営陣の一人に加わっているので、その責任を持っています。そこで、ある時から経営議題が「○億円の利益を生み出すにはどうしたらいいのか?」に変わってくる。これが、目的と手段が入れ替わってしまう瞬間です。

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セミナーの様子

こういった瞬間に立ちあうようになって、影山さんは「○億円達成することを本当に求めているのは一体誰なんだろう?」と疑問を持ちます。個人としては、お金はなくてもやりがいがある方を選びたい。でも職業人としては、お金が儲かる方を選ばなければならない。投資家たちに短期間でリターンを生まなければならない。そういった約束が数珠つなぎになっている今の経済システムに違和感を感じたことが、カフェをはじめたひとつのきっかけになったそうです。

クルミドコーヒーがある西国分寺に、影山さんは最初まったく期待していなかったと言う。しかし、生まれた場所は1カ所しかない。やるんだったら、自分が頑張りたいと思える場所でやりたいという気持ちから、最初はシェアハウスマージ西国分寺をつくりました。そして、地域の縁側的な場所を現代に再現するならば、カフェだと考えました。「東京にはパブリックがないとよく感じます。他者の存在を全く想定していない、耳はiPhone、目はスマフォ。自分のプライベートを外に持ち出して、傍若無人に行き交っている。だからぶつかっても謝らない。その状況がとても残念です。」と影山さん。私も同じようなことを感じたことが多々ありました。私たちはいつからこんなにプライベートを全面に押し出して生活をするようになったのでしょう。

冒頭に「食べログ1位になったクルミドコーヒー」とさらりと書いたけれど、これは並大抵のことではない。おそらく日本で一番知名度があるグルメサイトに、全国1位のカフェとして名前があがる秘密は、きっと影山さん独自の経営哲学だろう。

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書籍『ゆっくりいそげ』でも書かれていたことだが、経済を目的にすると、人が手段になる。お店の場合、売り上げが目的になると、社員やお客さんが手段になる。お店に貢献出来る人は価値がある、貢献できない人は価値がない。そんなこと言われたら不安になりますよね?現代の生きずらさは、お互いがお互いを利用価値でみているのが大きな原因かもしれない。今とは違う社会のあり方を考えた時、最初に考えたのが社員の存在でした。

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西国分寺にあるクルミドコーヒー

「クルミドコーヒーの目的が利益だったら、スタッフは手段になってしまう。そうではなくて、人に仕事をつける、ということをしたいと思いました。カフェを運営する、という基本は押さえるけれど、社員6人、アルバイト8人、 ひとり一人が持っている才能を活かして、個人として表現したいことを探してもらっています。」

次にお客様との関係。「お客様からたくさんのお金をとること」を目的とするのではなく、「来てくれたお客様が来た時より元気になる」ことを目的にすると、やじるしの向きが変わります。

「take=消費者的な感覚」と「give=受贈者的な感覚」。どちらのスイッチを押すのかで、お客様との関係は劇的に変わってしまいます。例えば、ポイントカードは、払った分だけ得をしようと消費者的な感覚を刺激してしまうし、安い日を作ると、安い時にしかお客様は来なくなる。

一方でクルミドコーヒーにはクルミがおいてあって、自由に食べれる。目的はもちろん、お客様に喜んでもらうためだ。きっとtakeの気持ちでお客様が来ると食べたくもないのに、ひとつでも多く食べよとしてしまう。でも、お店がgiveの気持ちで対応すれば、自然とお客様もgiveで返してくれるのだと影山さんは教えてくれました。

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お店に置いてあるクルミたち

とはいえ、当然売り上げや利益は必要。片手間ではできないし、真剣に向かわなくてはいけない。
だからこそ、言葉だけではなく、実際に毎日カフェに足を運び、台風だろうが嵐だろうが、来てくれるお客様のために休まず営業する。小さな努力を積み重ね、全国1位のカフェまでに成長させた影山さんは本当にすごいと思いました。

書籍『ゆっくりいそげ』をまだ読んでいない人はぜひ、一度読んでみてください。

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(笹尾 実和子)

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