2017年04月03日

「良いコラボレーションの在り方を問い直す」[セミナー&サロン]

セミナー&サロン

全3回で実施してきた今年度のセミサロも、とうとう最終回になりました。
今回のゲストは、「問い」と「遊び」のデザインの観点から「ワークショップデザイン」について研究をしている、安斎勇樹さんです。さらに今回は、安斎さんのアシスタントである田中真里奈さんにグラフィックレコーディングを担当していただきました。安斎さんが話した内容を、わかりやすくまとめてくださいます。(グラフィックレコーディングについては、清水さんの回をご覧ください!)

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安斎さんは、ワークショップデザインを研究しながら、問いと遊びの力を使って、企業の商品開発や人材育成の課題解決に取り組んでいます。

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ワークショップって何?

「ワークショップは最近の流行りの手法のようにみえて、実は100年以上の歴史があります。『模造紙に付箋紙を貼り付けるブレスト=ワークショップ』と思われがちですが、私はワークショップを「普段とは異なるものの見方をするコラボレーションによる学びと創造の方法」と捉えています」

安斎さんは、ワークショップの参加者が漫画の登場人物になりきって写真を撮影し、オリジナルのストーリーマンガを一コマ一コマ作っていく「Mimic Comi Workshop」や、未来のカフェをLEGOブロックでデザインする「Ba Design Workshop」を、学生時代に取り組んでいました。

こうしたワークショップを手がけるうちに、企業からもワークショップを組み立てて欲しいと話が舞い込むようになりました。

携帯電話の大手キャリアでは「"つながらないケータイ"を考える」というテーマのもと、"つながり"をあえて切ることで生まれる新しい携帯について考えたり、カメラメーカーのワークショップでは新しいデジカメを生み出すために、わざとユーザーのニーズの枠の外側からアイデアを発想することを投げかけたり、と遊びを取り入れたワークショップを行っています。


"良いコラボレーション"を考える5つの問い

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今回のテーマ「良いコラボレーションを促すには?」という問いに対して、安斎さんは、5つの問いを提示しました。

1、何が人と人を"繋ぐ"のか?
2、"良い話の聞き方"とは?
3、"依存"は悪なのか?
4、"沈黙"は悪なのか?
5、"何者"として繋がるのか?


1、何が人と人を"繋ぐ"のか?

「誰かと誰かが"繋がっている"と言ったとき、その人たちの間には何があると思いますか? 単に一度会っただけでは"繋がっている"とは言えないような気もします」と安斎さん。確かに最近「Facebookで繋がっている」と言われても、「本当に知り合いなのかな......」と思いますよね。

安斎さんは、 "繋がり"の一つの指標として、「記憶」が意外に重要であると指摘します。

「ある海外の調査研究によれば、オフィス内の座席が50メートル離れると、そのメンバー同士のコミュニケーションが消滅する、という結果があります。さらに、在籍するフロアが異なると、業務中にはその人のことを思い出さなくなるそうです。コミュニケーションが生まれるには、社内の人間が互いに見える距離にいて、認識しあっているというのが大事なんですね」

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さらには、コラボレーションはなぜ必要なのか? 大人はなぜ協調するのか? という問いに展開させていきながら、コラボレーションの触媒としての課題構造の重要性などについて議論しながら、"繋がる"ことの意味を考えていきました。


2、"良い話の聞き方"とは?

2項目目では「聞き上手とは、共感を示しながら傾聴していればコラボレーションは促進されるのか?」と問いつつも、そうではないのではないか、と問題提起をします。

新しいカフェを考えるワークショップ「Ba Design Workshop」で発生した会話を分析したところ、参加者同士の「ツッコミ」と、課題に対して迷いが生じた「葛藤」の回数が多かったグループほど、参加者全員がアイディア出しに関わっていたそうです。

「他者のアイデアに対して、別の視点からツッコミが入ることによって議論の視点が揺れ動き、アイデアの創発が生まれていたのです。逆にいえば、お互いに牽制しあって、肯定しあうだけのコミュニケーションからは、新しい発想が生まれにくいと言えます」


3、依存は悪なのか?

「強い協同学習には、依存関係が不可欠です」と安斎さん。その昔、アロンソンという社会心理学者が「ジグソーメソッド」という、協同学習を生み出す手法を編み出したそうです。

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この方法は、学ぶべき教材をいくつかの資料に分割し、チームメンバーに役割分担して、異なる資料を担当させるというもの。
試験で良い点数をとるには、自分が担当しなかったパートを学ぶ必要があるため、自然と「教えあい」が発生します。このポジティブな依存関係が、コミュニケーションを促し、自尊感情の向上や、理解の深化を促すことも明らかになっています。

一般的な仕事におけるコラボレーションにも、少なからず依存関係は発生していると安斎さんは指摘します。確かに、仕事でもプライベートでも、自分の得意でない分野を人に頼むことが多いですよね。誰とどういった相互関係を作りたいのか? と考えながら繋がっていくと良いのかもしれませんね。


4、"沈黙"は悪なのか?

コラボレーションの話になるたびに、社交性やコミュニケーション能力が大事だと言われますが、安斎さんは、スーザン・ケイン著の『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』などの書籍を例に挙げ、必ずしもコラボレーションをする上で、社交性は重要ではないのではないか、といいます。

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「ワークショップでは、グループワーク中に心配になるくらい発言をしない人がたまにいます笑。けれども、そういう参加者の何気ない一言がきっかけに、議論がブレイクスルーすることがあるんです。しゃべり続けている人よりも、もしかすると内向的な参加者を自然にファシリテートする方法を考えたほうが、コラボレーションにはつながるかもしれません」


5、"何者"として繋がるのか?

コラボレーションに入るには、"何者"として関わるのか、という問題がまずあります。これに対しては、下記のテーマが提示されました。

・サードプレイスで繋がる人々
・何者としてつながるのか
・何をもって集団が多様とするのか?


「このようなサードプレイスには、色んな所属や立場の人が来て、繋がろうとしています。それを考えると、所属から解放されているはずのこの場において、どんなアイデンティティで関わりたいのか。企業の人間なのか、趣味を持っている個人なのか、"何者"として関わりたいのか。そういったことを考えながら、交流してみるといいかもしれません」

最後に、講演後の交流会に向けて「コラボレーションにつながる交流会の良い振る舞い・工夫・仕掛けとは?」をテーマにしたダイアログの時間が設けられました。3~4人のグループになり、それぞれが考えたことを話し合います。皆さん今回の目標は見つけられたでしょうか?


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感想

1時間半に渡って繰り広げられた安斎さんのお話は、私自身が悩んできた"コミュニケーションをうまく取るには?" "関わる人の長所を活かしてコラボレーションするには?" "何か新しいことを始めるには?" という視点において、とても興味深いものでした。「依存関係」「沈黙」というネガティブなイメージの単語も、捉え方によっては良いコラボレーションの種になることがわかり、これも一種の「ものの見方を変える」ことなのかな? と思いました。

安斎さんの活動が気になる方は、Facebookページ・ホームページをチェックしてみてください!
Facebookページ → https://www.facebook.com/BaDesignLab/
ホームページ → http://yukianzai.com/


・・書籍紹介・・
b0322-8.png『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)








b0322-9.jpg『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)








田中さんのグラフィックはこうなりました!
b0322-10.jpg画像をクリックすると拡大します


(松本麻美)

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2017年03月08日

「ファシリテーショングラフィック〜議論の本質を可視化する」[セミナー&サロン]

セミナー&サロン

今年度のセミサロ第2回目は、Tokyo Graphic Recorderとしての活動を軸に、ファシリテーショングラフィック(以下ファシグラ)をされている清水淳子さんをゲストにお迎えし、清水さんのお話とワークショップの2本立てで開催しました。どんなお話が聞けるのか、どんなワークショップになるのか、楽しみです!

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清水さんは現在、ヤフー株式会社でUXデザイナーとして働きながら、カンファレンスや企業の戦略会議での議論の可視化を行っています。

「議論をグラフィックで可視化すると、議論が詰まったときに、話を進めるためのヒントが見つかるようになるんですよ。記録をすることで、場の議論が活性化します。」と言いながら見せてくれたのは、清水さんが実際に議論の中でグラフィックを描いている映像。みるみるうちに、カラフルな図や文字が壁に描き出されていきます。

Androidホーム画面アプリ『Widgets』開発チームによるミーティングの様子

議論を聞きながらも、可愛らしい絵とわかりやすい図解を描いていく姿に会場からは「すごい!」という感嘆の声。果たして、私たちも清水さんと同じようなことをできるのでしょうか?



グラフィックは文字や言葉に匹敵するコミュニケーションツール

清水さんが議論を可視化する活動を始めたきっかけは、とても身近な問題を解決することでした。

「多摩美術大学のデザイン学科を卒業し、ゲームやプロダクト(工業製品)、アプリのUX(ユーザーエクスペリエンス:利用者がサービスや製品を使うことで得られる体験のこと)をデザインしてきたなかで、どの業務にも共通するものがあることに気づきました」

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共通するものとは、"会話、対話、議論"です。

「優秀な人が集まってもうまく進まない会議では、この3つがスムーズにいっていなかったんですね。それを改善するにはどうしたらいいだろう? と悩みました。こんがらがった会議中に『この方法しかない!』と思ってグラフィックで議論をまとめたら、スルスル進んだんです」

清水さんが最近出版した書籍『Graphic Recorder --議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』には、清水さんによる可愛い絵とともに、その手法がわかりやすくまとめられています。


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『Graphic Recorder --議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』
ビー・エヌ・エヌ新社
(書影をクリックで書籍のページに飛びます)

清水さんの活躍は、まちづくりの場でのブレストやシンポジウムでの登壇者の発言を可視化したり、パーティーで一つの問いに対する来場者の意見をまとめたり、と議論の場にとどまりません。

「大人が仕事の場でグラフィックを描くのは恥ずかしい感じるかもしれません。でも、地図を描いて道を説明するのも、グラフィックです。グラフィックを描くことは、スピーチなどに匹敵する立派なコミュニケーションツールです。今後、国語、英語、グラフィック言語のように、学校の科目の一つになっているかもしれませんね。」



初心者がファシグラをする時のための心得

今回のセミサロでは、参加者から多数の質問がありました。そのうちのいくつかをピックアップします。

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来場者:実際にファシグラをするときに、きちんと描ける気がしないのですが......。

清水さん:私のこれまでを振り返ってみると、段階があったように思います。最初は話についていくのが精一杯でした。それに慣れると、対話のなかから似ている単語を抜き出せるようになります。単語のグルーピングができるようになると、マトリクス化などグラフィックを構造化して描けるようになりました。初めのほうはスピードについていくのが難しいですが、慣れることで技術が進化していきます。まずは試してみてください。

来場者:議論の内容を書き間違えたり、自分の意見を書いてしまったりしたときのフォローはどうしていますか?

清水さん:そもそも対話の内容は自分の脳で情報を整理するので、どうしても主観が入ってしまいます。自分が描いたことは基本的に主観的な解釈であり、間違っている可能性もある、という前提を持ちましょう。間違いをや勘違いを防ぐためには、描いたグラフィックを常に出席者みんなの見える位置に置き、違うところは指摘してもらったり、「これで合ってますか」と聞いたりするとよいですよ。

来場者:グラフィックの内容をフィードバックするタイミングにコツはありますか?

清水さん:タイミングは全部で3つあります。その1・議論が行き詰まって10秒ぐらい沈黙がきたときに「ちょっと振り返ってみましょうか」と言ってみる。その2・会議が2/3に来た時に「今日はこの方向でよいですか?」と聞いてみる。その3・ファシリテーターの人に「進行に困ったらこっちを向いてもらえば、フィードバックします」と言うこともあります。3つ目は上級ですね。

photo1-1.jpg(提供:清水淳子)

来場者:グラフィックとして形に残ったことに納得のいかない人がいたときに、そのまま残ったこと前提で話が終わってしまうことに抵抗を覚えるとおもうのですが、何か対策されていますか?

清水さん:グラフィックには、人々の理解を促す良いパワーがあると同時に、暴力になりうる可能性も潜んでると、私は常に気をつけています。というのも、もし仮に本人の発言を大げさに解釈してしまったものがグラフィックとして残った時に、描いたことが本人の発言よりも影響力を持つこともありえます。しかも当の本人は気が付いても指摘しにくいということもあると思います。なので最近は参加者に3色のシールを配って、いいねとおもうところ、よくわからないところ、などの役割をつけて、ペタペタ貼ってもらっています。そうすると、参加者の本音が見えるようになって、議論がさらに発展することがあるんです。結構おすすめな方法ですよ!

C-3-2.jpg(提供:清水淳子)



日常的な問題の解決策をみんなで考えよう!

清水さんの公演の後は、20分ほどのワークショップを行います。

清水さんによる人物の描き方のレクチャーを受け、円卓型のコミュニケーションボード「えんたくん」に、それぞれの日常の悩みを書き込んでいきます。

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使うのは、3色のペン。以下のように使い分けます。

1、どんな場所でどんな課題がるのか考えよう(黒いペン)
2、それはなぜ起きているのか、原因を考えよう(赤いペン)
3、どういう風に議論を可視化すれば、それが解決するのか考えよう(青いペン)

「会議が連絡の場になっている」「議題内容をだれも話そうとしない」「問題点を伝えようとしない」「話す人が固定している」「どこで何が決定したのかわからない」という、皆さんの悩みが書き込まれていきます。すでに人物の描き方をマスターしている方は、内容にそった絵を描いています。


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描いたものをみんなでぐるぐるまわして、他のひとのアイディアにアンダーラインを引いたり、似ている意見があったら線で繋いだりして、解決点をさぐります。

和気あいあいとした雰囲気のなか、7グループ中2グループが、それぞれの解決までたどり着けました。話し合った後は、皆さん、スッキリした様子で「今日出てきた解決方法を、早速ためしてみます!」という嬉しい声も。

皆さんおつかれさまでした!

グラフィックレコードの研究 / Tokyo Graphic Recorder 清水 淳子 日本デザイン学会 第62回研究発表大会 2015/06/14 

写真提供:萩原楽太郎


(まつもと)

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2017年02月09日

「KP法で学ぼう!環境教育とコミュニケーションの未来」[セミナー&サロン]

セミナー&サロン

1月25日に行った今年度最初のセミサロは、KP(紙芝居プレゼンテーション)法を生み出した川嶋直(かわしま・ただし)さんがゲストです! 川嶋さんは、公益社団法人日本環境教育フォーラム理事長であるとともに、1985年代半ばからの30年間は山梨県清里のキープ協会で「環境教育・インタープリテーション」として活躍されていました。

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「みなさんこんばんは、川嶋直と言います。本名は『ただし』なんですけども『ちょくさん』と呼ばれています。今日は紙芝居を20セットほど持ってきました。」とおもむろに取り出したのは、厚さ3cmもある紙の束。

「この中から10数セットを抜き出して使います。本当はこの20セット以外にもたくさんあるんですけどね」

KP法のセットの新作をどんどんつくるので、川嶋さんのご自宅には、この15倍の量(300セット!)が置かれているそうです。どんな話が飛び出すのか、ワクワクしますね!


次々と出てくる直筆のスライド

1時間半をお話いただくセミサロ。今回は、前半「環境教育について」後半「KP法について」の2部で構成されています。まずは川嶋さんの自己紹介からスタート。川嶋さんがファシリテーターとして踏んできた"数えきれないほどの場数"とはどんなものだったか、生い立ちを交えながら話が展開されます。

一つ目のセットは『川嶋直のファシリテーター修行歴』というタイトルです。「いま思えばこれも場数のうちでした」と「ボーイスカウトと学校」と川嶋さん直筆で書かれたA4用紙が出てきます。異なる2つの異空間に所属することで自分自身を客観的に見る力が培われたそう。次の1枚は「生徒会長(15才)」。「ここで、みんなの意見が自分とは違うことを、身を持って体験し......」と「高校で学生運動」「32才--清里」と次々とホワイトボードに貼りだされます。

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川嶋さんの口からポンポンとでてくる言葉と貼りだされるA4用紙のテンポの良さに、聞いているうちに楽しい気分になってきます。

ちなみに、川嶋さんが自己紹介につかった時間は10分弱。本当は1セットにつきおよそ4分〜5分が目安だそうで、「ちょっとゆっくりすぎたかな......」と参加者の笑いを誘います。プレゼンをしている間にも参加者に話しかけたり、腕を大きく動かしたり、ととにかくコミュニケーションを絶やしません。


環境教育は子どもだけが対象ではない

環境教育については、川嶋さんの考えがあるそうです。

環境問題を解決するための方法はたくさんあります。その中でも以下の3つの方法が重要だとよく言われています。

1、規則
2、技術
3、教育

この3つのうちどれが欠けても、地球の環境は改善されません。さらに、川嶋さんは「環境教育は子どもだけが対象なのではない」といいます。

「大人を教育しようと思ってもいまさらダメだから、未来を担う子どもにこそ環境教育を、という意見もありますが、そんな無責任なことを言う大人の言うことを、どこの子どもが聞くのでしょう? 子どもは大人のツケを払うためにいるのではありません」

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「子どもたちへの環境教育で大事なことは2つあります。1、自然のなかで遊ばせること 2、環境問題の解決に向かって頑張っている大人の姿を見せることです」

子どもたちは親しんできたものが好きになる、というお話もありました。自然と遊ぶこと、普段から自然に親しむこと、その自然と共にいる人たちを身近に感じてもらうことが、地球を大事にすることに繋がるのですね。


良いKP法のポイントは情報を詰め込みすぎない

後半は川嶋さんによるKP法の作成方法です。

KP法の基本を、5つのポイントに絞って教えてくれました。

1、絞り込んだキーワードで構成する
2、詰め込みすぎない
3、レイアウトをデザインする
4、色をデザインする
5、良いKPとは?

「重要なのは内容を絞って詰め込みすぎないこと。伝えなくてもいいことはどれかを判断して捨てる。15枚5分以内でまとめて構造化するのが良いです。」

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「色も大事です。同じ種類の言葉には同じ色を当てましょう。良いKPと言うのは、話を聞かなくても後でそのKPを見ただけで内容がわかるもの、最も伝えたいことが記憶にのこるものです。YouTubeにKP法の動画を24本上げているので、もし興味がでたら、そっちもチェックしてみてください!」

「KP法 Kamishibai Presentation」のチャンネル

川嶋さんのさりげない1言で、会場の空気が和らぎます。プレゼンの最中にも、1セットが終わり片付けている時にも小ネタが出てきます。「用紙を片付けている間には、力を抜いて参加者同士で雑談もしてください、KP法は呼吸のようなものなんです」と呼びかけました。

さらに、説明とプレゼンの違いを解説します。

「説明は論理的に、プレゼンは感性に訴えます。知性と感性、どちらで人が動くのか。"感動"という言葉はあるけれど"知動"という言葉はないでしょう? 感性に訴えて裏に理論を付けることが大事です。僕達は、人に行動を起こしてほしいからプレゼンをしているのです」

参加者で振り返り

今回のセミサロでは、前半と後半の間と最後に、「ペチャクチャタイム(PKT)」の時間がありました。参加者同士で思ったことを話すこの時間では「1セット終わるごとに、ひと目で全体が見えるのが楽しい」「KP法を会社のプレゼンでも使いたい」という率直な感想が聞けました。

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その他、じゃんけんでアンケート(GCPアンケート)を取るなど、内容のバリエーションも豊富です。

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「これを押さえれば大丈夫です! 不安な人には本もあります!」とさりげなくご自身の著書も宣伝される川嶋さんのお話は、1時間半もあっという間に過ぎてしまうほど、とても濃密で楽しい内容でした。



\川嶋さんのKP法がよくわかる本です!/

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『アクティブラーニングに導くKP法実践:教室で活用できる紙芝居プレゼンテーション法』(みくに出版)


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『KP法 シンプルに伝える紙芝居プレゼンテーション』(みくに出版)



(まつもとあさみ)

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2016年03月08日

「カフェからはじめる、新しい社会・経済のつくり方」 [セミナー&サロン]

セミナー&サロン

今年度最後のセミナー&サロンのゲストは書籍『ゆっくりいそげ』の著者であり、食べログ1位になったクルミドコーヒー@西国分寺のオーナーである影山知明さんにお越しいただきました。

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「クルミドコーヒーに来たことがある人はどれくらいいらっしゃいますか?」と影山さん。聞くと参加者の半分がクルミドコーヒーに来たことがありました。

「今日はパワーポイントを使いません。」参加者から聞きたい話を聞いて、それに影山さんが応えるスタイルでセミナーが始まりました。

「影山さんの書籍を読んでいます。なので書籍に載っていないお考えを知りたい。また、経済において、手段と目的がすり替わる瞬間、それがなぜ起きるのでしょうか?」

「カフェの人材採用をどうやってやっているんですか?採用について聞いてみたい。」

また、来年から社会人になる学生さんからは「カフェを運営するにあたって疑問はどのように変わっていきましたか?」などたくさんの質問が。そのひとつひとつの質問に対して、影山さんは語りかけるように話し始めました。

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質問をホワイトボードに記入する影山さん。

「私は以前マッキンゼーカンパニーに務めていました。そこで3年間、すごく鍛えられた。その後27歳の時にベンチャーキャピタルを始めました。ベンチャーキャピタルは、事業計画を作り、うまく運営できれば、5000万円が5億円、10億円になる可能性がある。事業がうまくいって初めてお金ができるという、成功報酬型のコンサルティングです。夢に燃えてスタートしたけれど、いくつか疑問が残り、クルミドコーヒーを立ち上げることになりました。」

「ベンチャー企業は、最初は理念を実現することが大切で、それを成し遂げるために利益を生む必要がある、という考えで経営が始まります。成長することは、その理念を実現する手段に過ぎません。ただ、3年経ち、5年経ち、7年経つと仕事をする目的がある時から入れ替わる瞬間が起こります。」と影山さんは言います。

会社が成長し銀行からお金を借りて投資ファンドから投資を受けるようになると、お金に縛られ、売り上げや成長が大事になってきます。一方のベンチャーキャピタルも売り上げが倍になることを期待しているし、自分たちも経営陣の一人に加わっているので、その責任を持っています。そこで、ある時から経営議題が「○億円の利益を生み出すにはどうしたらいいのか?」に変わってくる。これが、目的と手段が入れ替わってしまう瞬間です。

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セミナーの様子

こういった瞬間に立ちあうようになって、影山さんは「○億円達成することを本当に求めているのは一体誰なんだろう?」と疑問を持ちます。個人としては、お金はなくてもやりがいがある方を選びたい。でも職業人としては、お金が儲かる方を選ばなければならない。投資家たちに短期間でリターンを生まなければならない。そういった約束が数珠つなぎになっている今の経済システムに違和感を感じたことが、カフェをはじめたひとつのきっかけになったそうです。

クルミドコーヒーがある西国分寺に、影山さんは最初まったく期待していなかったと言う。しかし、生まれた場所は1カ所しかない。やるんだったら、自分が頑張りたいと思える場所でやりたいという気持ちから、最初はシェアハウスマージ西国分寺をつくりました。そして、地域の縁側的な場所を現代に再現するならば、カフェだと考えました。「東京にはパブリックがないとよく感じます。他者の存在を全く想定していない、耳はiPhone、目はスマフォ。自分のプライベートを外に持ち出して、傍若無人に行き交っている。だからぶつかっても謝らない。その状況がとても残念です。」と影山さん。私も同じようなことを感じたことが多々ありました。私たちはいつからこんなにプライベートを全面に押し出して生活をするようになったのでしょう。

冒頭に「食べログ1位になったクルミドコーヒー」とさらりと書いたけれど、これは並大抵のことではない。おそらく日本で一番知名度があるグルメサイトに、全国1位のカフェとして名前があがる秘密は、きっと影山さん独自の経営哲学だろう。

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書籍『ゆっくりいそげ』でも書かれていたことだが、経済を目的にすると、人が手段になる。お店の場合、売り上げが目的になると、社員やお客さんが手段になる。お店に貢献出来る人は価値がある、貢献できない人は価値がない。そんなこと言われたら不安になりますよね?現代の生きずらさは、お互いがお互いを利用価値でみているのが大きな原因かもしれない。今とは違う社会のあり方を考えた時、最初に考えたのが社員の存在でした。

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西国分寺にあるクルミドコーヒー

「クルミドコーヒーの目的が利益だったら、スタッフは手段になってしまう。そうではなくて、人に仕事をつける、ということをしたいと思いました。カフェを運営する、という基本は押さえるけれど、社員6人、アルバイト8人、 ひとり一人が持っている才能を活かして、個人として表現したいことを探してもらっています。」

次にお客様との関係。「お客様からたくさんのお金をとること」を目的とするのではなく、「来てくれたお客様が来た時より元気になる」ことを目的にすると、やじるしの向きが変わります。

「take=消費者的な感覚」と「give=受贈者的な感覚」。どちらのスイッチを押すのかで、お客様との関係は劇的に変わってしまいます。例えば、ポイントカードは、払った分だけ得をしようと消費者的な感覚を刺激してしまうし、安い日を作ると、安い時にしかお客様は来なくなる。

一方でクルミドコーヒーにはクルミがおいてあって、自由に食べれる。目的はもちろん、お客様に喜んでもらうためだ。きっとtakeの気持ちでお客様が来ると食べたくもないのに、ひとつでも多く食べよとしてしまう。でも、お店がgiveの気持ちで対応すれば、自然とお客様もgiveで返してくれるのだと影山さんは教えてくれました。

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お店に置いてあるクルミたち

とはいえ、当然売り上げや利益は必要。片手間ではできないし、真剣に向かわなくてはいけない。
だからこそ、言葉だけではなく、実際に毎日カフェに足を運び、台風だろうが嵐だろうが、来てくれるお客様のために休まず営業する。小さな努力を積み重ね、全国1位のカフェまでに成長させた影山さんは本当にすごいと思いました。

書籍『ゆっくりいそげ』をまだ読んでいない人はぜひ、一度読んでみてください。

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(笹尾 実和子)

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2016年02月16日

「シビックテックで地域の課題を解決!」 [セミナー&サロン]

セミナー&サロン

みなさんこんにちは。笹尾です。
ブログの更新、かなり久しぶりです。
時の流れは早いですね・・・。

すでにだいぶ時間が経ってしまったのですが、昨年の12月16日に開催した第28回セミナー&サロンの内容をレポートしたいと思います。今回はCode for Japan 代表理事の関治之さんをゲストに迎えました。

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場所はThink the EarthのオフィスがあるSodaCCoビル。最近夜はライトアップされていて、とてもキレイ。

【新しい寄り合いを作ろう!】

みなさんは、シビックテックという言葉を聞いたことがありますか? 私の理解は「地域の問題について、行政や企業、住民が一緒にテクノロジーを活用して解決策を考え、実施する」こと。関さんはこれをより分かりやすく伝えるために「ITによる新しい寄り合いをつくること」だと話してくれました。

寄り合いとは、室町時代から続く、地域コミュニティの元。昔は地域の人たちが集まって、お祭りをしたり、神輿を直したり、といったことを通じてコミュニティが自然と形成されてきました。それがだんだんと地域のつながりが切れて、行政の役割が増大し、今では「個」がバラバラになってしまっています。隣の部屋の人の顔も見たことない、という一人暮らしの人も多いのではないでしょうか。でも、それでいいのでしょうか? 自然災害は増えていますし、自分の住む地域のことに、隣人のことに、もっと関心を持つ必要があるように私は感じます。でも、地域とどう関わっていけばいいのでしょうか。関さんは改めて現代で通用する「新しい寄り合い」が必要だと言います。

地域コミュニティはどうやったら復活するんだろう? 関さんは、ずっと考えていたそうです。
まずは市民がつながること。自分ごととして考えて、地域の人とつながって、実際コミュニティを作ってみる必要がありました。

そうして、Code for Japanが立ち上がり、今では全国で50ほどのコミュニティが存在しています。各コニュニティの参加者は企業、自治体、市民、NPO、技術者など様々。多様な人が集まって、地域の課題の解決策を考え、自ら作り出しているのです。例えば、奈良県生駒市では、子育てアプリのアイデアワークショップを地域の子育てNPOが実施したり、富山県南砺市では、五箇山という世界遺産で公共交通のアイデアソン・ハッカソンが実施されました。

「これまでの寄り合いは、時間がある人だけが参加したり、偉い人が決めていて、合意形成に時間がかかるものでした。でも、これから必要な新しい寄り合いは、忙しい人も参加できる、合意形成はワークショップで明確に、そしてみんなが主体者であることが大事です」

そう言うと、関さんは行動を起こします! ゲスト自ら「座っている前後の人でグループを作って僕への質問を考えてください」という時間が開始15分で設けられました。

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近くの人と集まって、意見を共有する参加者のみなさん

【コミュニティデザインとの違い。ITだから出来ること】

どうやってコミュニティの質を保てるか?
どうやって合意形成しているのか?
資金は? サーバーは?
地域の企業と競合しないの?
誰が責任をもって活動をすすめるのか?

数分後、参加者からはたくさんの質問が出てきました。
その中のひとつに、「コミュニティデザインとの違いは?」という質問がありました。関さんは「基本は同じ。でも ITを使うことで、新しいコミュニケーションの提供が出来たり、解決策の再利用が出来たりと、すごく可能性の幅が広がる」そう言って、いくつか事例を教えてくれました。

ゴミを出す日が簡単にわかるアプリ 5374(ゴミナシ).jp
5374.jpを開くと、明日は可燃ごみ、明後日は資源ごみ、といったように、どのゴミをいつ出せばいいのかが簡単にわかる。さらに「可燃ごみ」「資源ごみ」に含まれるごみの種類も細かくわかるような機能も付いている。元々はCode for Kanazawaが開発。そのデータを共有し、今では各地に広がりを見せています。

保育園を地図から探す さっぽろ保育園マップ
こどもを「どこに」預ければいいんだろう? と迷うお父さん、お母さんのために、条件の合う保育園を地図上で探せるサービス。また、何時まで受け入れできるか、などの細かい検索もできる。

地域の困りごとをみんなで共有するオンラインプラットフォームSeeClickFix
これはアメリカの事例で、らくがきがある、木の枝が倒れてる、ライドが切れている、などちょっとした困り事をスマフォで写真をとって行政に送るサービス。ITを使うと普通の人がもっと行政に近くなる好事例。

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ひとつひとつの事例を丁寧に説明してくれる関さん

また、地域の課題は複雑なことが多いので、課題そのものを共有することもとても大事だと言います。課題を共有したり、離れた人同士をつなぐためにも、ITはとても有効です。

例えば、グーグルハングアウトを使って、各地のオーガナイザー同士がオンラインで毎月情報共有をしたり、毎日誰かがブログを書いて情報を共有する、などで各コミュニティの知恵が深まり、お互いのイベントの手伝いや連携が出来るようになります。

なんだか関さんの話を聞いていると、自分たちの町のことをよくするには、自分たちが動けば解決するんじゃないか、という気になってきます。

関さんはいい寄り合いを作るには、つなぐ人が重要だと教えてくれました。多様なプレイヤーを集めるためには、「自分のイベントに来てください」だけじゃなくて、他のイベントに出たり、行政に出向くことも大事。そして最終的に地域の問題を解決するのは、その地域の人たち自身なのです。

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関さんが活動をはじめたきっかけは3.11が大きいと言う。ITをもっとうまく使えるはずなのに!と強く思ったそうです。

まずは、人の気持ち。それにITの力を加えることで、公共サービスのあり方がもっといい方向へ変わっていく。いや、変えていく気持ちを自分も持ちたいと思いました。

最後に、関さんが当日使用したスライドも共有されていたので、ご紹介します。
ITによる新しい寄り合い作り - Code for Japan

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(笹尾 実和子)

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