2012年12月05日

そして日本に帰国してから。

地球日記

そして私は日本帰国後すぐに、岩手へ向かいました。旅に出る前から東日本大震災の復興のお手伝いをしていたのでやっぱり気になっていました。
岩手では、紅葉が目の前いっぱいに広がっていてすごくきれいでした。しかし、地面に目を向けてみると、がれき撤去が終わり、まっさらで何もありません。
復興はまだまだというのが現実だそうです。現地の方は、時が経つにつれて東北へ支援に行く人が減ってきており、このまま忘れられてしまうのではないかと不安そうに話していました。
紅葉.jpgのサムネール画像
今回お手伝いさせていただいたのは「遠野まごころネット」という団体で、復興に向けた各種プロジェクトを立ち上げています。
12月のクリスマスに「サンタが100人やってきた!」というイベントが行われる予定です。岩手県三陸沿岸の被災地で、ボランティアが扮する100人のサンタクロースがクリスマスプレゼントを配ります。
しかし、震災の記憶が風化しつつある今、なかなか資金が集まらないそうです。
これではサンタは来てもプレゼントがない!そんな悲しい状況をみんなで協力すれば変えられます。

去年のプロジェクトの様子

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ボーダーレスに、誰かを笑顔にしたい。その笑顔に自分もハッピーになる。そんないいサイクルが循環していく世界がいいですよね!
クリスマス特に予定もないし、私も東北でサンタになろうかな!

まごころサンタ基金
http://tonomagokoro.net/santakikin

(インターン 加藤彩菜)

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2012年12月05日

アジアの旅から帰ってきました!

地球日記

大変ご無沙汰しております。Think the Earthインターンの加藤です。
約6ヶ月前に、旅へ出ると言い、ついこの間日本に帰国しました。

私が訪れたところはインフラ整備が整っていないところも多く、数ヶ月インターネットが繋げないこともありました。今、安定してインターネットが使える日本にて、私が旅・ボランティアを通して感じたことをちょっとばかりお伝えしたいと思います。
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私はその国の普通の日常を知りたかったので、ツーリストが集まる観光地より現地の学校や孤児院にずっといました。現地のNPO・NGOに行き、ソーシャルワーカーの方々と貧困について熱く語る機会もありました。

私が3ヶ月半滞在していたインドでは、ストリートチルドレンの問題が深刻です。ふつうの道を歩いているだけで、ストリートチルドレンの子どもたちがお金をねだってきます。相手にしないでいると足にしがみついて離さない子もいました。どうするのがベストなのか答えが出ません。

孤児院の子どもたち

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そんな状況を変えて行こうとインド国内でもソーシャルワーカーの人たちが活動をしています。
ある孤児院と小学校の立ち上げをひとりで始めた人に出会いました。
彼はインドの中で再貧困地域と言われるところに生まれました。大人になった彼は自分の生まれたところに、満足にごはんも食べられず、学校にも行けない子どもたちがたくさんいることに心をなやませ、ひとり、子どもたちを救う孤児院と学校を立ち上げることにしたそうです。
お金も交通手段もなかった彼は数十キロも離れた村の一軒一軒を尋ね、自分の想い伝え、寄付を募りました。
何年もそれを続け、現在では300人規模の小学校と、20人ほどの子どもたちが生活をする孤児院がインドの再貧困地域に建てられました。
この孤児院、小学校にはスタディツアーで日本人が訪れ、子どもたちに授業をしたり一緒に遊んだりします。
子どもたちは自分の知らない世界を知ることで楽しんでいます。
学校に行けない子どもたちの為のフリースクール

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たくさんの人々が誰かのために必死になっている。私はその姿に感動しました。
彼と貧困問題について毎日のようにディスカッションし、未来について話しをしました。
そして、誰かが問題意識をもちアクションを起こす事で世界は少しずつ変わって行くのだなとそこで実感しました。私ももっと勉強して、少しずつ誰かのためになることをやっていきたいと思います。

(つづく)

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2012年11月30日

AQUA SOCIAL FES!!2012最終回@鶴見川 

地球日記プロジェクト裏話

こんにちは、曽我です。
先日、AQUA SOCIAL FES!!2012〜みんなの鶴見川流域再生プロジェクト〜「保水の森 ツル草切とオーナメントづくり」の回に参加してきました。

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今まで参加したいなと思いつつ、なかなか日程が合わず最終日の参加となりましたが、晴天の中、淵野辺まで行ってきました!

AQUA03.jpg70名を超える参加者の皆さん。おおお、すごい数です。

出発する前に、AQUA SOCIAL FES!!オリジナルの軍手・タオル・ビブスを着用。そして、みんなで準備体操をします。

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身体が暖まってきたところで、3班に分かれていよいよ出発!出発直後、出会えたらラッキーといわれた、AQUA SOCIAL FES!!号を発見!!近くでみてみたいなぁと思いましたが、まずは森に向かいます。

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今回活動する「源流保水の森」と呼ばれる森は、町田市にある鶴見川源流の泉を中心とした地域のことをいいます。2005年度より保全活動が行われている保水の森は約50万トンの水を貯えることができるそう。50万トン。んんん。なかなか想像ができない量ですが、「緑のダム」ともいわれ、水源の豊かな緑と水辺のもとに多くの生物が暮らしているそうです。

AQUA06.jpgAQUA08.jpg2枚目写真右上:途中きのこを発見しました!

ずんずん歩いて行くと、15分ほどで保水の森に到着。途中アップダウンがあり、少しきついところはありましたが、あっという間に到着しました。

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さて、ここからいよいよ1回目のアクティビティスタート!今回は第3回「保水の森 春の植樹・草刈体験」で植樹したエノキの木の周りに生えるツルを切り出し、森に生きる昆虫たちの冬支度のお手伝いをします。

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エノキの木はマジックツリーと言われ、宝石のようにキラメク生きものたちを育む木と言われているそう。上の写真がツルを切り出す前のエノキの様子。

みんなでえっこらせ、えっこらせとツルを切り出します。切り出したツルはエノキの根元に円を描き、堤防を作るように置きます。これは霜よけのためと、エノキの木に暮らす昆虫たちが、冬、風が吹いて飛ばされなようにするためだそう。

作業中違う班のグループがなにやら騒いでいます。何かあったのかな?と思って聞いてみると、アカボシゴマダラの幼虫がいたと!3枚目の写真なんですが、幼虫がいるのがわかりますか??

AQUA12.jpgAQUA11.jpgAQUA13.jpg

角のようなものが背中についているのが幼虫。角の数や大きさで成虫したときの蝶の種類を見分けるそう。大きい角ばかりだとオオムラサキだそうです。

みんなでかかればあっという間!20分ほどで作業は終了しました。お昼休みの後、鶴見川流域ネットワーキングの岸さんがエノキの木についての豆知識を教えてくれました。

エノキの木は春に花を咲かせ、その後果実がなり、その果実が甘くて鳥が好むそう。昔、日本の至るところでエノキの木があったそうですが、鳥が飛んでくるため、農家の人がエノキが見つかれば伐採していたとか。そのため、エノキの木が少なくなり、そこで生きる昆虫たちが少なくなったそうです。今回のAQUA SOCIAL FES!!2012で活動した保水の森は、いまは農地として使わなくなったので、エノキの木を植樹したと教えてくれました。

なるほど。そんなエピソードがあったとはまったく知らなかったので、とっても勉強になりました。

さて、本日の2回目アクティビティはクズのツルを切り取り、クリスマスなどに使うオーナメント作りです。またみんなで力を合わせ、えっこらせ、えっこらせとツルを切り取ります。先程のツルとは違い簡単には切れません。綱引きをするような体制で引っ張っても切れず、最終的にはハサミで切ってもらいました。力がいる作業でとっても大変でした。

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さて、気をとりなおして、切り取ったツルでオーナメント作りです。欲張って太いツルを選んだため、こちらの作業も大変...。

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こんなに大きなクリスマス用のリースが完成しました!オーナメント作りの続きは家に帰ってから。AQUA TALKの会場へ向かうため、また山道を歩き、バスに乗り込みます。

山道の途中、素晴らしい景色がみえる展望台に立ち寄りました。鶴見川源流保水の森から、鶴見川の下流が見えたのです!写真では少しわかりづらいですが、遠くの方に鶴見川に架かる橋も見えました。

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本日最後のアクティビティはAQUA TALK。AQUA TALKとは、今回参加して気づいたことや大切に思ったことをひとことで表現し、みんなと共有します。

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私がお話ししたのは、本日初参加という星本祐里さん17歳。大学に進学する前にボランティアに参加しようと思い、高校の友だちと一緒に参加したそうです。祐里ちゃんは日本人と中国人のハーフで、今回書いていた言葉は中国語だそう。「感恩」とは、日本語に訳すと、人の好意や恩義に感謝する思い。けど、感謝よりもう少し深い恩を思うことだと教えてくれました。

今回のAQUA SOCIAL FES!!2012に参加して、自分が知らないところで森や自然を守ってくれている人がいるから、自分たちや生き物たちが豊に暮らせるんだなと感じたからと言っていました。

そして、私が考えた言葉は「知ること」。私も祐里ちゃんと少し似ていて、自分たちが知らないところで活動している人がいるからこそ守られている自然がある。森や植物や生き物に対する知識を深めることで、より身近に感じることができる。「知ること」で人に感謝する気持ちや、自然を守りたいという想いが生まれるんじゃないかなと思ったからこの言葉を選びました。

今回初参加だったAQUA SOCIAL FES!!2012。とってもとっても楽しくてまた行きたいと思いました。来年も活動は続くといっていたので、来年はもっと多く参加したいと思います!!

(曽我直子)


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2012年11月09日

食卓の向こう側〜いのちをいただく

地球日記

絵本「いのちをいただく」をご存知でしょうか。
西日本新聞社より「食卓の向こう側シリーズ」として発行されているこの本は、熊本県の食肉加工センターで働く坂本さんと、坂本さんの息子しのぶくん、牛の「みいちゃん」を通して私たちの命・生を見つめます。

絵本の舞台となる熊本など、九州の情報を動画配信している情報サイト「さぐる九州大陸」さんが、「いのちをいただく」の読み聞かせ動画を配信していらっしゃいます。
許可を頂き掲載させて頂きましたので、ぜひご覧ください。
また、語り手 徳永玲子さんのインタビューも合わせてご覧ください。
さぐる九州 「いのちをいただく」

「みいちゃん」が「牛肉」になる。それは私たちのいのちが、ほかの動物たち、植物たち、たくさんの命に生かされているということ。
いのちをいただいて生きていく。
私が最初にこのお話しに出会ったのは、紙芝居「いのちをいただく」を読んでもらった事がきっかけでした。小学生の息子と一緒に聞いた後は、お互いにさまざまな思いが湧いてきて、二人でいろいろと語り合ったことを覚えています。「いただきます」って日本独特の食卓文化なのですよね。その夜の食卓には、自然と感謝がこもった「いただきます」が響きました。

忙しい毎日の中、1日3回の食事で食卓の向こうにある「いのち」に向き合うことが難しい方も多いと思います。
そんな日々をおくる方もまずは月に一度、お箸が並ぶ様子に似た「11日」に心のこもった「いただきます」を始めてみませんか?
「いただきます」という言葉は、いのち・いのちを育む自然・たくさんの手を借りて食卓に届く、多くの方の労働・調理法や保存法などの知恵・食卓を共に囲む周りの人への感謝がつまった、とてもすてきな日本語です。
11月11日(日)は、絵本「いのちをいただく」の著者 内田美智子さんの講演会を開催します。たいせつなみなさんと共に、食といのちに向き合う時間を共有できたら嬉しいです。

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「いただきますの日」感謝祭2012


■「いただきますの日」記念講演
「生」「性」「いのち」「食」をテーマに全国で講演活動をされて来られた内田先生を講師に迎えてお送りします。
・講師:内田美智子先生  テーマ:「いのちをいただく」
・日時:2012年11月11日(日)13:30〜15:00(13:00開場)
・場所:アサヒグループ本社ビル 3F大会議室
東京都墨田区吾妻橋1-23-1
・定員:100名
・参加費:無料


内田美智子先生 プロフィール248xauto-211x300.jpg
国立小倉病院附属看護助産学校助産師科卒。1988年から内田産婦人科医院に勤務。夫は同病院院長。 同院内で子育て支援の幼児クラブ「U遊キッズ」を主催。 「生」「性」「いのち」「食」をテーマに全国で講演活動を展開。思春期保健相談士として思春期の子どもたちの悩みなどを聞く。九州思春期研究会事務局長、福岡県子育てアドバイザー、著者に『ここ 食卓から始まる生教育』『いのちをいただく』(いずれも西日本新聞社、共著)など。

▶記念講演のお申し込みはこちら

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また、10日(土)のお箸作りワークショップも、若干ですがお席がご用意できます。
親子で間伐材を使ったお箸作りにチャレンジしてみませんか?
3歳のお子様でも参加できる、カンナを使ったワークショップです。

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昨年の「いただきますの日」では、私と息子もお箸作りワークショップを体験しました!
カンナでシュルシュルと木を削る面白さ、すっかりハマってしまいました。部屋中がヒノキの香りにつつまれて、とても気持ちのよい時間でしたよ^^

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■お箸作りワークショップ
親子を中心に "間伐材"を利用したお箸づくりのワークショップ。
アサヒの森」の間伐材を使用します!
・講師:ミナトファニチャー 湊 哲一氏
・日時: 2012年11月10(土)10:30〜12:30(10:00開場)
・場所:アサヒグループ本社ビル 3F中会議室
・定員:10組20名(3歳以上)
・参加費:無料

▶お箸作りワークショップ(11月10日開催)のお申し込みはこちら

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食欲の秋、手作りのお箸をつかって美味しく楽しい食卓を!
そして、食卓の向こう側に思いを馳せ...
「いただきます!」

(長谷部 智美)

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2012年11月07日

Think the Earth × Designing Emotion

地球日記理事からのメッセージ

みなさん、こんにちは。
毎月一回、Think the Earth理事メンバーがスタッフブログに登場するコーナー、
第二弾は宮崎光弘理事の登場です。

理事の紹介はこちら
http://www.thinktheearth.net/jp/about/organization/board.html
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こんちは。Think the Earthで理事を務めております宮崎です。
初めてスタッフブログを書かせていただきます。

私はデザイン誌「AXIS」を発行している株式会社アクシスでデザインの仕事をする傍ら、多摩美術大学情報デザインの教育に携わっています。多摩美大では3、4年生を対象に「デザイニング・エモーション:人の感情や感覚に働きかけるモノやコトのデザインの研究と実践」というゼミを行なっております。

5年前、そのゼミで具体的な課題を考えるにあたってThink the Earthの上田さんに相談をしました。ゼミの課題のひとつとして「地球について考えるきっかけをデザインする」というプロジェクトを学生たちと進めたいと思っているのですが、上田さんに協力してもらえないでしょうか・・・。超多忙な上田さんへの無理なお願いだったのですが、喜んで協力しますという嬉しいお返事をいただいて、多摩美大でのThink the Earth × Designing Emotion のプロジェクトがスタートしました。
今回はそのプロジェクトとそのゼミに参加した学生たちの卒業研究制作をいくつか紹介したいと思います。

さて、上の写真はゼミのオリエンテーションの時に最初に学生たちに見せる写真です。
実はこの写真は私にとって大変懐かしい写真であります。Think the Earthの最初のプロダクトである地球時計wn-1が生まれるきっかけとなったプロジェクトを進めている時に、上田さんが考えているコンセプトを聞いて、それってこういうことですか?と作ったイメージビジュアルだからです。
ポケットから出てきた小さな地球が今現在の地球環境そのものを表していたら、生きている地球を携えて生活していたら、誰もが地球のことを今よりもずっと考えるようになるに違いない。当時は奇想天外なアイデアでしたが20数年経った今では実現可能なデバイスかもしれません。シンプルだけど強いアイデア。そのアイデアによって多くの人の気持ちを動かす表現。そんなデザインが学生たちから数多く生まれることを願ってこのプロジェクトを続けています。

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最初に紹介する作品は、中西友香さんの「肌色クレヨン」です。
彼女はこの作品を2010年度の卒業研究制作として作りました。
彼女は3年生の時にThink the Earthの課題で、「1万円で世界中で何が買えるかのカード」という作品と、落ちているゴミに気づかせるための作品を制作しました。
講評会の時に初めて分かったのですが、両方の作品は彼女自身の旅の体験を元に作られたものでした。
彼女は大学在学中に数十カ国にわたって海外へ旅をしています。それも学生が好んで行く美術館や博物館が多くある欧米の都市や遺跡のあるような街だけでなく、治安が不安定な中近東やアジアの地域にも多く訪れました。「肌色クレヨン」も彼女のそのような実際の体験を元に制作されました。

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彼女は旅に出るごとに旅行記を制作していました。現地の子供と撮った写真、子供達と一緒に描いた絵、そこで感じたことを綴った文章、現地での様々なチケットやレシートや紙切れなど。それらを何冊もの手作りの本として纏めていました。その膨大な資料がこの「肌色クレヨン」という作品の背後に存在していて、それらと一緒に作品を眺めると、一本一本のクレヨンに対する思いは、彼女が現地で出会った子どもたちへの想いであることがよく理解できました。クレヨンは彼女の手作りで微妙な色出しもすべて行なっています。この作品が見た者の心を動かすのは、そういった作者のリアルな深い経験がベースになって作られているからでしょう。

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次に紹介するのは、加藤早織さんの「婆なる星、地球」という一風変わった本の作品です。本人の解説文を引用すると・・・
「地球と人との関係はどんなものなのか。地球にとっての人とは......? 人にとっての地球とは......? 相手を知るために大切なもの、それにはまず「時」の共有なのでは!? 人の平均的な寿命の年数を人生の酸いも甘いも知っている祖母の一生をモデルにし、それに地球誕生からの46億年の年数を割り振り、この2つが同じ時間の間隔で時を進めているように構成した本を制作した。人の一生は地球の進めてきた46億年の時間から見ればほんの一瞬のものだが、とても濃く波瀾万丈なものだ。その差が面白く、またとても不思議に感じて、この作品を制作した。」
具体的には、この本は見開きで作者の祖母と地球の一生が同時に進行します。この単純にして明快な構成が実際に手に取ってページをめくっていくと本当に面白いのです。どうしたらこういう発想が生まれるのだろうと思ってしまいます。

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例えばこんな感じです。祖母:22歳(昭和23年)服の仕立ての仕事に就く。この頃ミシンが流行っていた。地球:12億2千万年(33億7千万年前)様々なバクテリア類が誕生する。祖母:40歳(昭和41年)父兄会で選ばれてバレーボールの選手をやらされる。地球:22億2千万年(23億8千万年)地球にとって初めての氷河期が訪れる。祖母:78歳(平成16年)実の母が亡くなる。地球:43億2千万年(2億7千万年前)5度目の超大陸、パングア大陸ができる。恐竜の誕生。同時にネズミのような最初のほ乳類が産まれる。
もちろん2つのストーリーはまったく関係がないのですが、なぜか2つの事柄を脳が勝手に関係づけようと考え始めてしまうのです。彼女の独特な文体とイラストレーションによって、読者は自然と引き込まれてしまう不思議な作品です。
加藤さんは3年生のThink the Earthの課題でこの「婆なる星、地球」を制作して、卒業研究制作では「ひとかぞく」というやはり本の作品を制作しました。32の家族の日常を詳細なインタビューによって纏めた本です。家族が家族をひとりの人間として感じる瞬間を聞いて集め、その話しを一冊の本に纏めました。面白い話しを読み進むうちに、ひとつも同じ家族はないことに気づきます。そしてやはり、家族って何だろう、人って何だろうと考えさせられてしまう作品でした。

加藤さんと中西さんは実は同級生で、3年生の時に一緒にThink the Earthの課題に取り組みました。ふたりとも「日常」から地球に対して考えるきっかけを見つけようとしていたのですが、両者にとっての「日常」はまったく違うものでした。中西さんの「日常」が日本から遠く離れた世界での出来事なのに対して、加藤さんは家族という身近な単位の「日常」から地球を考えました。しかし、そのどちらも「人」を中心にアプローチしていたのが印象的でした。そしてふたりの卒業研究制作のテーマは「人」となっていきました。

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最後に紹介するのは、藤原惇くんの「Re:Sound Bottle」という作品です。
この作品は環境音を採集して、それを素材としてもう一度音楽を作り出すという作品です。ボトルの蓋の開け閉めによって空間に浮遊する音を捕まえ、ボトルを置いた状態で蓋を開けることで音楽として解き放ち、ボトルを振ることで採取した音を逃がす。人の自然な振る舞いをインターフェイスに取り入れることで誰もが自然に操作できる作品となっています。そして何よりもこの作品の一番の特徴は自分で音楽を創り出すことの楽しみを感じさせる点でしょう。実際に「Re:Sound Bottle」を使うと誰もが楽しくなって、何度も自分で音楽を作りそれを人に聞かせたくなります。
「Re:Sound Bottle」は藤原くんの卒業研究制作ですが、彼は3年のThink the Earthの課題では絶滅危惧種の動物たちをテーマにした作品を制作しました。動物の目の周辺をアップにしたポスターで、その瞳はミラーになっていてポスターに近づいて見ると動物の瞳の中に自分自身を見つけるという作品でした。この作品の大きなテーマは自然環境と人間の関係でした。
彼は一度社会に出てから多摩美大に入ってきた学生で、プロとして音楽の仕事などを経験し、もう一度大学でデザインを学ぼうと志しました。大学ではあえて音楽の作品は作って来ませんでしたが、最後に卒業研究制作で音の作品に挑戦しました。
「Re:Sound Bottle」のもうひとつの特徴は音楽を作る要素がすべて自然音で成り立っているという点です。世界を構成する様々な音に着目したのはThink the Earthの課題で自然環境と人間の関係をテーマにしたことと繋がっています。
3年生の時のThink the Earthの課題作品も優秀な作品でしたが、ある意味、優等生的な作品でした。しかし、そこで見つけたテーマを自身が最も興味のある音楽や音と結びつけて、彼は卒業研究制作へと昇華させていきました。
この作品は未来の一流デザイナーを目指す学生の優れた卒業制作を表彰するコンペティション「MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 2012」で今年、坂井直樹賞を受賞しました。インターネット上に動画もあるので興味のある方はぜひご覧ください。

他にも多くの優秀な学生作品を紹介したいのですが、それはまたの機会にさせていただきます。

さて、ここまで多摩美大でのThink the Earth × Designing Emotionプロジェクトとそのゼミを経験した学生たちの卒業研究制作を紹介してきました。あえてThink the Earthの作品ではなく、その後の彼らの卒業研究制作を紹介したのは、このゼミに参加した学生が、この課題を経験する前と後で大きく変化し成長したと感じているからです。
美術大学での教育は「教える」ことよりも「学ぶ」ことが大切だと私は考えます。学生たち自身が、デザインによって生み出される価値や楽しさを自ら学んでいくことは、今後彼らが長くデザインをしていく時にとても重要なことだと思います。このゼミに参加した学生たちが、今まで自分たちが気づいていなかった何かを学んで、それを発展させて卒業研究制作に繋げたのだとしたら、それは私にとって大変嬉しいことです。

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最後に5年間このプロジェクトを続けてきて、学生たちの反応が微妙に変わってきていることについて少し書きたいと思います。

毎年、初回のゼミは上田さんのレクチャーから始まります。Think the Earthが行なってきた様々なプロジェクトを学生たちは目を輝かせて聞き多くの刺激を受けます。もともと美術大学の学生の多くにとっては、環境問題や社会問題はあまり興味が高くない問題です。しかし、上田さんの話しを聞いて、そのような問題もクリエイティブな力で解決していける可能性を知り、自分たちにも何か出来るかも知れないとモチベーションが高くなっていくのです。

5年前に始めたこのプロジェクトは、実は昨年お休みしました。そして1年ぶりに再開した今年、学生たちの反応が微妙に違うことに上田さんと私は気づきました。
事前の学生へのアンケートを見てみると、今年の学生は明らかに数年前の学生に対して環境問題についてよく知っていることが分かりました。特に地球温暖化問題については多くの学生が一様に同じ知識を持っていました。そして様々な環境問題や社会問題を知識として知っていても、その問題に対してよく言えば冷静な、悪く言えば冷ややかな態度であることに驚きました。
例えば「不都合な真実」や「世界がもし100人の村だったら」は、むかし学校の授業で見せられたコンテンツでした。学生たちに聞いてだんだん分かってきたことは、時代を遡ると彼らが中学生ぐらいの時から環境問題に対する教育が盛んに行なわれるようになったということでした。今年のゼミ生にとっては環境問題はすでに昔、学校の授業で習った問題だったのです。
1〜2年の差でこんなにも変わるのかと驚きましたが、確かに今年の学生の反応は一昨年とは違っていました。特に地球温暖化問題は当時、様々なところで取り上げられ、それはある意味ブームとなり教育の現場にも大きな影響を与えていたのだと思います。事実を伝えることは意識せずとも危機感を煽ることになっていたのかもしれません。このままではいけない、だからこんなことをしてはいけない。という教育内容は彼らにとって息苦しいものとなり、それらの問題に対して素直に心が開けなくなってしまったのかも知れません。そんな経験をした彼らが大人へと成長していく中で、自分たちの周りで繰り広げられてきたエコブームとアンチエコブーム。そのどちらもが美術やデザインを志す彼らにとって、ポジティブで魅力的な事柄には映らなかったのでしょう。
でも、もしそうだったとしても、今年のゼミの学生にも私は期待しています。新たな視点を持って、Think the Earth × Designing Emotionの課題に取り組んでくれることを。なぜなら、そんな彼らも今年の上田さんのレクチャーを聞いていた時は、目を輝かせてクリエイティブな力で何かを変えられるのかも知れないときっと感じていたからです。彼らはこのプロジェクトで、また新しい何かを発見し人に伝える作品を作ってくれることでしょう。たとえ、それが今は奇想天外なアイデアだったとしても、未来につながる表現になっていくと私は信じています。その結果は、またいつかこのブログで報告したいと思います。

(宮崎 光弘)

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