いつもたくさんの人が行き交う表参道の交差点。そのすぐ脇にある三洋堂書店。120年続いた歴史ある書店が、今年の6月からギャラリーを併設し、生まれ変わりました。「みんなに新しい気づきを提供できる場を作りたい」と山陽堂書店の遠山秀子さんは話してくれました。
そんな素敵な思いのある空間で、今回「川ガキ」を撮りつづけている村山嘉昭さんのトークイベントが開催されました。村山さんはサバニで6月28日沖縄本島出発し約1ヶ月かけて宮崎まで行き、イベント直前に帰って来てくれました。真っ黒に焼けた村山さんから楽しい体験談をたくさん聞いてきました。
授業概要
トークイベント|「川ガキのいるところ」
先生:村山嘉昭さん
:Think the Earthプロジェクト 上田壮一
日時:2011年8月4日(木)19:00〜
場所:ギャラリー山陽堂(東京・表参道)
参加人数:30名
プログラム:村山嘉昭さんが撮った川ガキの写真を見ながら、川ガキたちとの出会いや彼らの住処や現状などをお聞きしたあと、参加者のみなさん同士でも川ガキついて思いを話し合ってもらいました。そして最後は質疑応答タイム。参加者の皆さんはそれぞれに川への思いがある方ばかりで、一人ひとりがみずを感じ、考える授業となりました。
※授業内で語られた村山さんの言葉を中心にレポートいたします。
主催:Think the Earthプロジェクト
共催:山陽堂書店
協力:株式会社インディード
写真:(C)村山嘉昭
川ガキってどんな子どもたち?
「村山さんはThink the Earthプロジェクト立ち上げ当初から関わってもらっているんです」と語るのはThink the Earthプロジェクト プロデューサーの上田。川ガキの写真をみて、「日本にはまだこんな景色があったんだ!」と感動したそうです。ギャラリーの壁に飾っている写真を見て・・・確かに!!!村山さんの撮る写真は子どもたちが本当に元気で、日本の古き良き時代を感じます。「川ガキは絶滅危惧種なんだ。ぼくはそれを追っているんだ。」そう言って村山さんが話し始めました。

村山さんは川で遊ぶ子どもたちのことを「川ガキ」と呼んでいます。でもキャンプの合間にちょっと川に来て遊んでいる子どもたちは「川ガキ」ではありません。家から水着を来て出かけ、夏休み中、飽きもせず川に潜り続けるような、日常的に川と親しむ子どもたちのことを川ガキと呼んでいます。
村山さんには20年以上も通っている大好きな川があります。球磨川と合流する「川辺川(かわべがわ)」です。この川にはいたるところに川で遊ぶ子どもたちがいます。プールに行く感覚で子どもたちは川に向かっていくのです。川に入る前に、子どもたちは決まって掲示板みたいなところに命札をかけます。みんな命札を持って出かけて、川遊びをし、帰るときにはちゃんと持って帰ります。そうすることで、誰が遊びに来て、誰がまだ帰ってこないのか掲示板を見れば一目瞭然です。
(C)村山嘉昭
川ガキたちの挑戦
川ガキたちが住む川では、橋に行くと必ず誰かいます。同級生がいたり、友達がいたり。橋の下から子どもたちの声がわいわいと聞こえます。どこかの工事現場からもってきたロープをもって、ターザンゲームをしています。また、橋の上ではじゃんけんをして、負けた人は橋から川へ飛び込んだりしています。
(C)村山嘉昭
友だちと競いあって、何度も何度も飛び込んでいく。これは川ガキにとって夏を楽しむ最高の遊びです。勢いよく橋から飛び降りる子どもたちの笑顔を写真で見て、「どれだけ楽しいんだろう??」と思い、私も飛んでみたくなってしまいました。
でも、みんながみんな、飛びたいわけではない。出来たらやりたくない子どもだっています。そんな子がたまたまじゃんけんに負ける・・・・・これは大変です!仕方なく橋の上に立つも・・・もじもじ。うずうず。飛び込むのに15分くらいかかることだってあります。
まわりは早く飛ぶように声援を送ったり、はやし立てたりはするけれど、絶対押したりなど、無理なことはしません。10メートルもある高さを飛ぶことの危なさと怖さを知っているからです。そして勇気を出して、川に飛び込めば立派な川ガキの一員です。彼らは川で冒険し、川に生きる生き物を発見し、また自然の怖さを知り、ひとつずつ成長していきます。プールやゲームセンターでは体験出来ない、川や海など自然が子どもたちにとって一番の遊び場である理由は、きっとここにあるんだと思います。
(C)村山嘉昭
川ガキたちの住処
ある日村山さんは3人の男の子が川で遊んでいるところを見つけたそうです。村山さんが「なにやってるの?」と声をかけると、「手長エビや魚をとっているんだ!」と元気に答えてくれました。
(C)村山嘉昭
今日のバーベキューのためにみんなで狩りをしていたそう。家も川からすぐ近くとか。川の近くの看板にはこんな言葉が書いてありました。『河川は大切な水資源であり子供たちの貴重な遊び場です。ゴミの不法投棄をやめて自然を守りましょう。』
「きれいな川に川ガキがいるわけじゃない」と話す村山さん。もちろん川がキレイで魅力的なことも大切です。でも、大事なのはそこに住む大人たちです。川ガキがいる川には、決まって川遊びに対し、理解がある大人が多いそうです。大人たちもかつて自分が川ガキであり、川と遊んだ経験があるから、同じように子どもたちに遊ばせてあげようと考えます。いくら川がキレイでも、「危ないから」と川への侵入を禁止してしまえば、子どもたちは「安全」かもしれませんが、川での遊ぶ「機会と自由」を失います。大人たちが理解し、見守ってくれる環境があって初めて、こどもたちも安心して川で遊べるのです。
東京にだって川ガキはいます。彼らは靴のまま、川で遊んでいました。それを見て、村山さんは「ここの親は子供がぬれた靴で帰ってきても怒らないんだ」と関心したそうです。楽しそうに「ザリガニを見つけた!」とはしゃいでいる子どもたち。どうやら場所は関係ないみたいです。
(C)村山嘉昭
忘れてはいけないこと
川の遊び方を知らないと、稀に悲しい事件が起きてしまったりします。
岐阜県にある郡上八幡。ここは、釣り人と川ガキが共存している場です。そんな郡上八幡で飛び込みが禁止になったことがあります。それは川で遊んでいた子どもが一人、死んでしまったからです。
確かにものすごくショックな出来事です。でも、一回事故を起こしたからといって、川遊びを全部禁止にしてしまったら、川遊びの伝統が途切れてしまいます。親の世代が川で遊んだことがなかったら、川のどこが危険でどこが安全かわかりません。そうなると、次の子どもたちも当然川の遊び方がわからないので、ずっと遊べないままです。川との遊びから人が一度離れてしまうと、次に戻すのは本当に大変なことなんです。
(C)村山嘉昭
また、危ない時に川で遊んでいるのは、よそから来た人の場合が多いそうです。地元のひとたちはリスクヘッジが出来るから、川が増水していれば飛び込むことをやめる判断ができます。でも、遠くから来た人は、「今日しかない!」と自分の都合で選択を間違えて、怪我をしてしまいます。だから、行ったから必ず遊ぶと言う感覚は絶対にやめたほうがいい。川は何がおこるかわからないから、リスクをとることが大切なんです。
(C)村山嘉昭
話は変わって、サバニの話。
みなさんはサバニをご存知ですか?沖縄で乗る人がいなくて絶滅寸前の手漕ぎの船。それがサバニの正体です。村山さんはサバニで沖縄のちゅら海水族館の近くからスタートし、宮崎まで行ってきたそうです。
サバニの旅は1日10時間ほど漕ぎ、あとは寝るか食べるかのサバイバル生活。クリエイター・料理経営者・サラリーマン・フリーの映像系など、参加者は様々です。日の出とともにスタートし、夜は島で休憩をします。時々、夕立にあうこともあれば台風が来て、進路をすすめることが出来ず停滞していた時期もあったそうです。一見過酷に見えるサバニの旅。でも、旅での出会いや海での経験を聞き、美しい写真の数々をみると不思議と行きたくなってしまう。村山さんのサバニの話から自然の恐ろしさと美しさを教えてもらいました。
「自然遊びに惹かれる理由は何ですか?」会場に来た一人の男性からこんな質問が出てきました。

「それは・・・自然には絶対かなわない。自然の危なさ、台風や海や川などに人間はどうしたってかなわない。けど、そこにすごい惹かれる。自分のテーマは自然の中で働くひと、例えば漁師さんやサバニに乗る人、川ガキ...自然と関わる人に惹かれるんだ。」
川ガキの写真も昔は撮っていなかったそう。でも、ある時から川と関わるようになり、その魅力にハマったと話す村山さん。「関心がなければ、それまでだけど、関心があれば何かが始まる。そもそも川を知らないと、川を守ろうとか、川を好きになろうという気持ちが生まれないはずだ。僕の写真を見て、川に行くきっかけを作って、川を好きになってほしい。」
(C)村山嘉昭
昔は川ガキは至る所にいたのに、今じゃ絶滅寸前というくらい川で遊ぶ子どもたちはすごく数が減ってしまったそうです。水辺まわりの汚染や河川自体の数の減少ももちろん理由のひとつですが、川と触れ合わなくなった大人たちが子どもたちを川から遠ざけてしまったことが、川ガキがいなくなった原因だろうと教えてくれました。
最近の傾向では、子どもに対して過保護すぎることがたくさんあると思います。もちろん虐待などはあってはならない話だけれども、自然は危ないからといって子どもたちを遠ざけるのは、逆に子どもを弱体化してしまうのではないでしょうか。自然の中で多少の冒険や危険は、子どものうちにぜひ体験するべきたと私は思っています。子どもの頃、森の中に秘密基地を作って、道なき道を開拓し、あまりに奥地へ行き過ぎて夜まで家に帰れなくなったことがあります。大変な騒ぎになって怒られましたが、あの時のわくわくした気持ちや怖いと思った経験は今でも覚えています。知らないところへ行き、自分で判断し、何かを見つける。きっと用意された環境では、学べないことがたくさんあるはずです。
来年の夏は郡上八幡で、元気な川ガキに会ってみたい。どうかいつまでも日本に川ガキが住める川がたくさんあり続けますように。