高度経済成長期、テレビや冷蔵庫とともに「三種の神器」と呼ばれ、家庭に普及した洗濯機。しかしその裏側では、石油由来の合成洗剤よる発泡現象や悪臭で日本のあちこちの河川が汚染され、大きな環境問題となりました。「水環境やいきものにやさしい洗剤」はつくれないのでしょうか? サラヤ㈱ バイオケミカル研究所に聞いた、未来型洗剤をレポートします。
※上記写真は、1960年代前半の石油系合成洗剤(アルキルベンゼン系)で汚染された東京・多摩川の様子です。

執筆:石井美智子(Playce) 資料提供:サラヤ㈱ バイオケミカル研究所 写真:(c)サラヤ株式会社



排水溝は川・海につながっている

バスタブイラスト:得地直美さん
シャワーを浴びたり食器を洗ったり、洗濯したりと、近代的な生活によって使う量が増えた水。日本では、家庭における1人1日当たりの使用水量は約239リットル(平成19年度)※1で、そのうちトイレが28%、お風呂が24%、炊事が23%、洗濯が17%を占めています。

そうして家庭内で使われた水や食べ残しなどは排水溝から下水道※2へと流れ、やがて川や海ともつながります。例えば、しょう油大さじ1杯を流したら、魚が棲める水質※3に戻すには、バスタブ(300L)1.7杯分の水量が必要です。シャンプー1回分(6mL)はバスタブ1.6杯、洗濯用合成洗剤※4 1回分(30g)はバスタブ6.7杯分、洗濯用せっけん※4 1回分(40g)はバスタブ50杯分にもなります。


川には、水中の酸素を利用して微生物が汚れを生分解する自浄作用がありますが、汚れが多すぎるとアンモニアなどの悪臭が漂ったり、ヘドロが溜まったりします。実は、東京都内で川や海へと流れる汚濁の7割以上が、トイレやお風呂、洗濯、台所から出る生活排水に起因しているのです。

都会の川


"いきもの"だって洗剤がつくれる!
1960~70年代初頭の高度経済成長期に、急速に家庭に普及した洗濯機。同時に、石けんに替わって汚れを落とす主成分である「石油由来の合成界面活性剤(ABS:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)」を含む合成洗剤も多く使われるようになりました。

洗濯や食器用などの合成洗剤が作る泡で河川や湖は汚染され、洗剤に含まれるリン酸塩による富栄養化で赤潮などの被害が発生するなど、環境問題として大きく取り上げられるようになりました。

サラヤ㈱ バイオケミカル研究所(以下、サラヤ)「合成洗剤の場合、平均的に粉末タイプに比べて液体タイプの方が、界面活性剤排出量が多くなります。石けんは合成洗剤より生分解性※5が良く環境イメージが良いですが、ある濃度以下で著しく洗浄力が低下する石けんの特性上、環境における界面活性剤排出量としては合成洗剤よりもむしろ多くなります。」

また、一部の界面活性剤は内分泌かく乱物質である疑いも指摘されていて、洗濯後の衣類に微量でも合成界面活性剤が残留すると、敏感肌の人、特に化学物質過敏の人はかぶれたり赤くなったりすることが懸念されています。

サラヤ「水といきものの未来を考えると、合成界面活性剤、石油由来成分は一切使わず、生分解性に優れていることはもちろん、界面活性剤排出量(水環境への負荷)が少ない洗浄剤が望ましいですね。」

20世紀の中盤に、いきもの=天然酵母の発酵によって界面活性剤をつくれることがわかったため、サラヤ㈱では1990年代から、"肌と地球にやさしい"低刺激で天然由来の製品開発に着手しました。アブラヤシの実から搾るパーム油に、天然酵母とブドウ糖を与えて発酵させることで、天然の発酵洗浄成分<ソホロリピッド>が生み出されることに着目し、日本で初めて洗たくパウダーに配合。そうして出来上がったのが「ヤシノミ洗たくパウダーネオ」です。

sl_koubo.jpg

サラヤ「neoは食品成分である炭酸塩を洗浄主剤として、これに天然界面活性剤<ソホロリピッド>を洗浄助剤として配合したもので、界面活性剤排出量は合成洗剤と比べても非常に少なくてすみます。そのほか、洗浄に不必要な香料、色素はもちろん、見せかけだけの白さを付与する蛍光増白剤も無添加です。」


→界面活性剤濃度と使用量の目安を見る(PDFファイル:124KB)
saraya_data.jpg


驚くことに、OECDテストガイドライン※6に準じて水生いきもの影響評価を実施したところ、「neo」標準使用量(30g/水30L)に相当する天然界面活性剤<ソホロリピッド>溶液の中でも、メダカやミジンコ、藻は生きていました。さらに、皮ふ科医による皮ふ刺激テスト※7でも、"肌にやさしい"ということが証明されています。

neo_package.jpg

サラヤ「実際の川や湖には多様な水生生物が生息しているので、本試験では、魚類(ヒメダカ)、甲殻類(オオミジンコ)および藻類という淡水に棲む代表的な生物種で試験しました。皮ふ刺激テストでは、生理食塩水と比較しても、それと同程度にneoの希釈液が皮ふに刺激を与えることが少ないと考えられます。刺激性接触皮膚炎の日常的な予防策の一つとして、低刺激性の洗濯用洗剤を選ぶことは重要であり、neoはそれに十分値することが示されました。」


使うものを考える、選ぶ生活
2010年は国際生物多様性年です。10月には愛知・名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されます。WHO(世界保健機構)の調査では、淡水魚の20%にあたる生物種が、汚染によって絶滅の危機に瀕しているとの報告もありました。

私たちは、地球上の生物と水をわけあって生きています。また、生物多様性を考える際は、水環境だけでなく、水辺や水中で生息するいきもの、そして洗剤を使う人間自身にも負荷をかけないという視点が求められます。

サラヤ「持続可能な世界の実現のために、未来の洗剤はすべてバイオサーファクタント(微生物が生み出す界面活性剤)で作られることが望ましい。何十年かかるかわかりませんが、サラヤの課題として取り組んでいきます。」

もちろん洗剤だけではありませんが、日常的に使うものだからこそ、たくさんある商品の中から、"本当に環境に負荷をかけないもの"か"人間を含むいきものにやさしいもの"かどうかを考えて、選ぶことが大切です。私たちの普段の洗濯=選択の積み重ねが、未来の水を作っていくのです。



備考:
サラヤ㈱はRSPOのメンバーです。また、「ヤシノミ洗たくパウダーネオ」の売上げの1%は、ボルネオ保全トラストの活動に使われています。



saraya_BCT_logo.jpgボルネオ保全トラスト(Borneo Conservation Trust) とは? 
生物多様性保全のため、マレーシア・サバ州認可のもと、かつて熱帯雨林だった土地を買い戻し、野生生物が行き来できるよう「緑の回廊」づくりを行う団体。また、現地住民が持続可能な資源活用やエコツアーなどを行えるようにし、環境教育を通じて人間と自然が共生できる、持続可能な地球環境を次世代に引き継ぐことを目的としています。

RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil) とは?
持続可能なパーム油(アブラヤシ)のための円卓会議。パーム油の生産から販売、流通に関わる誰もが加入することができ、環境や社会に悪影響を与えない、良いパーム油を作り出していこうという国際NGOです。サラヤ(株)は、日本に籍を置く企業として初めて加盟し、環境に配慮したパーム油産業のルールづくりに取り組んでいます。



※1 参考Webサイト:東京都水道局(PDF)
※2 全国の下水道普及率は、平成18年3月現在で69.3%(下水道利用人口/総人口)です。東京都の下水道普及率は98.4%。
※3 魚が棲める水質をBOD 5mg/Lとした場合。BOD(生物化学的酸素要求量)とは、微生物が有機物を分解するために必要な酸素量を示し、汚染された水域ほど値が大きくなります。
※4 粉末で無リンとした場合。
※5 物質が土中や水中の微生物によって分解される性質であること。
※6 化学物質の安全性の評価に用いられる、国際的に共通な試験方法。OECDテストガイドラインによると、「28日以内に60%以上分解した物質を、易生分解性とみなされる。この場合10%以上の生分解があってから10日以内にこのレベルに達しなければならない」と勧告されています。「neo」は、10日以内に60%の生分解度に達しました。
※7 希釈濃度とpHの異なる4種の「neo」水溶液と生理食塩水を試薬として使用。ろ紙に各試薬を少量(0.5ml)しみ込ませて左上腕内側に貼り付け、15分後と24時間後に目視による判定を行った結果、皮ふが赤くなったり水ぶくれを起こすなどの反応が出た方は25名中0名でした。




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★9月30日(木)東京・品川  トークイベント|手洗いから紐とく地球の水問題

水と"いきもの"の未来へ 〜"いきもの"がつくる未来型洗剤〜


高度経済成長期、テレビや冷蔵庫とともに「三種の神器」と呼ばれ、家庭に普及した洗濯機。しかしその裏側では、石油由来の合成洗剤よる発泡現象や悪臭で日本のあちこちの河川が汚染され、大きな環境問題となりました。「水環境やいきものにやさしい洗剤」はつくれないのでしょうか? サラヤ㈱ バイオケミカル研究所に聞いた、未来型洗剤をレポートします。
※上記写真は、1960年代前半の石油系合成洗剤(アルキルベンゼン系)で汚染された東京・多摩川の様子です。

執筆:石井美智子(Playce) 資料提供:サラヤ㈱ バイオケミカル研究所 写真:(c)サラヤ株式会社



排水溝は川・海につながっている

バスタブイラスト:得地直美さん
シャワーを浴びたり食器を洗ったり、洗濯したりと、近代的な生活によって使う量が増えた水。日本では、家庭における1人1日当たりの使用水量は約239リットル(平成19年度)※1で、そのうちトイレが28%、お風呂が24%、炊事が23%、洗濯が17%を占めています。

そうして家庭内で使われた水や食べ残しなどは排水溝から下水道※2へと流れ、やがて川や海ともつながります。例えば、しょう油大さじ1杯を流したら、魚が棲める水質※3に戻すには、バスタブ(300L)1.7杯分の水量が必要です。シャンプー1回分(6mL)はバスタブ1.6杯、洗濯用合成洗剤※4 1回分(30g)はバスタブ6.7杯分、洗濯用せっけん※4 1回分(40g)はバスタブ50杯分にもなります。


川には、水中の酸素を利用して微生物が汚れを生分解する自浄作用がありますが、汚れが多すぎるとアンモニアなどの悪臭が漂ったり、ヘドロが溜まったりします。実は、東京都内で川や海へと流れる汚濁の7割以上が、トイレやお風呂、洗濯、台所から出る生活排水に起因しているのです。

都会の川


"いきもの"だって洗剤がつくれる!
1960~70年代初頭の高度経済成長期に、急速に家庭に普及した洗濯機。同時に、石けんに替わって汚れを落とす主成分である「石油由来の合成界面活性剤(ABS:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)」を含む合成洗剤も多く使われるようになりました。

洗濯や食器用などの合成洗剤が作る泡で河川や湖は汚染され、洗剤に含まれるリン酸塩による富栄養化で赤潮などの被害が発生するなど、環境問題として大きく取り上げられるようになりました。

サラヤ㈱ バイオケミカル研究所(以下、サラヤ)「合成洗剤の場合、平均的に粉末タイプに比べて液体タイプの方が、界面活性剤排出量が多くなります。石けんは合成洗剤より生分解性※5が良く環境イメージが良いですが、ある濃度以下で著しく洗浄力が低下する石けんの特性上、環境における界面活性剤排出量としては合成洗剤よりもむしろ多くなります。」

また、一部の界面活性剤は内分泌かく乱物質である疑いも指摘されていて、洗濯後の衣類に微量でも合成界面活性剤が残留すると、敏感肌の人、特に化学物質過敏の人はかぶれたり赤くなったりすることが懸念されています。

サラヤ「水といきものの未来を考えると、合成界面活性剤、石油由来成分は一切使わず、生分解性に優れていることはもちろん、界面活性剤排出量(水環境への負荷)が少ない洗浄剤が望ましいですね。」

20世紀の中盤に、いきもの=天然酵母の発酵によって界面活性剤をつくれることがわかったため、サラヤ㈱では1990年代から、"肌と地球にやさしい"低刺激で天然由来の製品開発に着手しました。アブラヤシの実から搾るパーム油に、天然酵母とブドウ糖を与えて発酵させることで、天然の発酵洗浄成分<ソホロリピッド>が生み出されることに着目し、日本で初めて洗たくパウダーに配合。そうして出来上がったのが「ヤシノミ洗たくパウダーネオ」です。

sl_koubo.jpg

サラヤ「neoは食品成分である炭酸塩を洗浄主剤として、これに天然界面活性剤<ソホロリピッド>を洗浄助剤として配合したもので、界面活性剤排出量は合成洗剤と比べても非常に少なくてすみます。そのほか、洗浄に不必要な香料、色素はもちろん、見せかけだけの白さを付与する蛍光増白剤も無添加です。」


→界面活性剤濃度と使用量の目安を見る(PDFファイル:124KB)
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驚くことに、OECDテストガイドライン※6に準じて水生いきもの影響評価を実施したところ、「neo」標準使用量(30g/水30L)に相当する天然界面活性剤<ソホロリピッド>溶液の中でも、メダカやミジンコ、藻は生きていました。さらに、皮ふ科医による皮ふ刺激テスト※7でも、"肌にやさしい"ということが証明されています。

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サラヤ「実際の川や湖には多様な水生生物が生息しているので、本試験では、魚類(ヒメダカ)、甲殻類(オオミジンコ)および藻類という淡水に棲む代表的な生物種で試験しました。皮ふ刺激テストでは、生理食塩水と比較しても、それと同程度にneoの希釈液が皮ふに刺激を与えることが少ないと考えられます。刺激性接触皮膚炎の日常的な予防策の一つとして、低刺激性の洗濯用洗剤を選ぶことは重要であり、neoはそれに十分値することが示されました。」


使うものを考える、選ぶ生活
2010年は国際生物多様性年です。10月には愛知・名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されます。WHO(世界保健機構)の調査では、淡水魚の20%にあたる生物種が、汚染によって絶滅の危機に瀕しているとの報告もありました。

私たちは、地球上の生物と水をわけあって生きています。また、生物多様性を考える際は、水環境だけでなく、水辺や水中で生息するいきもの、そして洗剤を使う人間自身にも負荷をかけないという視点が求められます。

サラヤ「持続可能な世界の実現のために、未来の洗剤はすべてバイオサーファクタント(微生物が生み出す界面活性剤)で作られることが望ましい。何十年かかるかわかりませんが、サラヤの課題として取り組んでいきます。」

もちろん洗剤だけではありませんが、日常的に使うものだからこそ、たくさんある商品の中から、"本当に環境に負荷をかけないもの"か"人間を含むいきものにやさしいもの"かどうかを考えて、選ぶことが大切です。私たちの普段の洗濯=選択の積み重ねが、未来の水を作っていくのです。



備考:
サラヤ㈱はRSPOのメンバーです。また、「ヤシノミ洗たくパウダーネオ」の売上げの1%は、ボルネオ保全トラストの活動に使われています。



saraya_BCT_logo.jpgボルネオ保全トラスト(Borneo Conservation Trust) とは? 
生物多様性保全のため、マレーシア・サバ州認可のもと、かつて熱帯雨林だった土地を買い戻し、野生生物が行き来できるよう「緑の回廊」づくりを行う団体。また、現地住民が持続可能な資源活用やエコツアーなどを行えるようにし、環境教育を通じて人間と自然が共生できる、持続可能な地球環境を次世代に引き継ぐことを目的としています。

RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil) とは?
持続可能なパーム油(アブラヤシ)のための円卓会議。パーム油の生産から販売、流通に関わる誰もが加入することができ、環境や社会に悪影響を与えない、良いパーム油を作り出していこうという国際NGOです。サラヤ(株)は、日本に籍を置く企業として初めて加盟し、環境に配慮したパーム油産業のルールづくりに取り組んでいます。



※1 参考Webサイト:東京都水道局(PDF)
※2 全国の下水道普及率は、平成18年3月現在で69.3%(下水道利用人口/総人口)です。東京都の下水道普及率は98.4%。
※3 魚が棲める水質をBOD 5mg/Lとした場合。BOD(生物化学的酸素要求量)とは、微生物が有機物を分解するために必要な酸素量を示し、汚染された水域ほど値が大きくなります。
※4 粉末で無リンとした場合。
※5 物質が土中や水中の微生物によって分解される性質であること。
※6 化学物質の安全性の評価に用いられる、国際的に共通な試験方法。OECDテストガイドラインによると、「28日以内に60%以上分解した物質を、易生分解性とみなされる。この場合10%以上の生分解があってから10日以内にこのレベルに達しなければならない」と勧告されています。「neo」は、10日以内に60%の生分解度に達しました。
※7 希釈濃度とpHの異なる4種の「neo」水溶液と生理食塩水を試薬として使用。ろ紙に各試薬を少量(0.5ml)しみ込ませて左上腕内側に貼り付け、15分後と24時間後に目視による判定を行った結果、皮ふが赤くなったり水ぶくれを起こすなどの反応が出た方は25名中0名でした。




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