安全な飲み水がじゅうぶんに確保できないスーダンで、井戸建設などに取り組むPWJ。今春まで駐在していた西野ゆかりさんが、海外派遣の合間をぬって、現地の水事情と支援活動について紹介してくれました。
授業概要
「ピースウォーターの現場@スーダン:難民の帰還を支える水」 →授業情報を見る
日時:2009年7月29日(水)19:00-21:00
場所:東京・千代田区 グローバルひろば(毎日エデュケーション内)
先生:PWJ スタッフ 西野ゆかりさん
参加人数:25人
主催:Think the Earthプロジェクト
協力:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)
プログラム:西野さんのスーダン支援活動レポートをお聞きしたあと、参加者のみなさんからの質疑応答タイム。さらに、現地支援活動のDVD上映も行われました。国際支援のプロとして、世界中、必要とする人たちのすぐ隣で働き続ける西野さんに、会場からはたくさんの熱い質問が寄せられました。授業内で語られた西野さんの言葉を中心にレポートいたします。
天気:晴れ
スーダンに平和が戻ったとき、
みんなが一番求めていたのは水だった
スーダンはアフリカの北東、エジプトの南に位置する国です。面積は日本の約6.6倍。この国では1983年から2005年までの22年間も内戦が続き、世界最大級といわれる400万人の難民が発生しました。和平が実現して、避難民の人たちが故郷の村に戻るために必要なもの、それは、「水・学校・診療所」です。もともと乾季には生活に使える水がほとんど枯れてしまう苛酷な環境。さらに内戦で国中のインフラが荒廃していました。村に避難民が帰ってきたときに、水をめぐる新たな紛争が起きる危険性もあります。さらに、安全な水がないと、病気が蔓延したり、女性や子どもが遠くの井戸に水くみに行くために学校にいけなかったり、ほかにも問題を生んでしまいます。そこで私たちはまず、安全な水を提供すること、各地に井戸をつくることを決めました。


*「スーダンの内戦の主な原因は、宗教や部族間対立、さらに植民地時代の政策がもたらした南北問題です。これに、内戦中、石油が発見されたことから、米ソを巻き込んだ利権闘争もからんでさらに複雑な争いとなりました」(西野さん)
2年間で105本の井戸が完成。
村に避難民が帰ってきた
井戸をつくるときにまず行うのが村での実地調査です。長老はもちろん、いつも水くみをしている女性たちの意見も聞き、最適な設置場所を決めます。工事は、隣国ウガンダのエンジニアたちと協同で実施。巨大な掘削機で60mから100mほどの深さを一気に掘りあげます。1つの井戸をつくるのにかかる費用は150~200万円ほど。少しでも長く使ってもらいたいから維持管理も指導します。「50年生きてきて、はじめてきれいな水を使った」「水くみの時間が短くなった」「病気がなくなった」という現地住民の方々の声と共に、「帰還民がスムーズに村にとけこめた」「井戸をめぐる部族間の衝突が減った」など、地域の平和に役立っていることも支援活動の成果として報告されています。私たちは現在までに105本の井戸を完成させました。

*スライドの1枚をご紹介。井戸を掘れるのは、乾季の間のみ。雨季は道がドロ沼になってしまうため、作業ができなくなってしまうそう。PWJはこれまでにスーダンで、井戸のほかに10基のトイレ、小学校2校、診療所を建設しました
水ひとつとっても、世界はこれだけ違う。
視野を広げて生きると、もっと自由になれる
海外から帰ると、年々、日本が複雑かつ内向的になっているのを感じます。自分のことだけでなく、視野を広げて生きると、もっと楽に自由になれるのではないでしょうか。具体的には、水というテーマひとつとってみても、世界は多様で相対的であると知ること。その中で、今、ここで生きている自分の存在の偶然性や不思議さを含めて、自分は誰なのか、何が大事なのかをつかめると、生きることがずいぶん楽になる気がします。いろいろなことに興味を持つこと・考えることを通して、自分の殻を持ちつつも、浸透膜を通して外界を観察し、混ざる楽しさを伝えていきたいです。

*PWJ 広報の三澤さんと、西野さん。
西野さんは、学生時代、世界の平和を求めて国際関係を学ぶ。卒業後、政策秘書の仕事に携わり、とある縁から20代後半でPWJに転職。現職5年目。来週から、次の赴任地のスリランカに出発されます。

*「ナイル川に水を送るビクトリア湖が縮小し始めているという情報もあります。地下水を水源にする井戸はあくまで有限だ、と認識するための教育も必要では?」質疑応答では参加者の方から一歩踏み込んだ意見もあがりました。

*「難民キャンプのほうが水も、教育も、医療もましだからと帰還を躊躇する人も少なくありません」(西野さん)

*井戸に水くみにいくのは、子どもと女性の仕事。片道2・3時間の道を1日3・4回通うこともあるとか。井戸の周りは行列ができるほどで、あえて夜の空いた時間にいく人も。

「どこでも自分が選んだ場所で役に立てるような、自由と強さを備えた人間になりたいと思っています。この仕事は、異なるバックグラウンドの人たちと一緒に、世界のいろいろな場所で働けることが魅力です。日々、仕事を通して知力(判断力や熟考する力)・体力・コミュニケーション能力を鍛えられています」(西野さん)


