知れば知るほど全体像をとらえるのが難しい"みず"。これまで教わってきた2回の授業を思い返しながら、橋本淳司 副校長先生ならではのユーモア溢れる水ワークショップに参加しました。 執筆:風間美穂(Think the Earthプロジェクトスタッフ)、撮影:長岡泰広さん
授業概要
橋本先生と、水のスマートユースを考えよう
日時:9月10日(水)
場所:東京・世田谷区 IID世田谷ものづくり学校
主催:Think the Earthプロジェクト
先生:橋本 淳司さん(水ジャーナリスト)
参加人数: 31人
プログラム:アイスブレイクを兼ねて、ちょっと変わった自己紹介タイム。続いて3つのステップに分かれてワークショップを行い、最後は橋本先生よりスマートユースを考えていく上での"ヒント"を教わりました。模造紙を囲むかたちで、5つの班に分かれて話し合った「循環する水の賢い使い方」は、多種多様な意見を柔軟にまとめながら、4つの解決策を導き出しました。
天気:晴れ
水循環マップをつくってみよう
廃校となった中学校をリノベーションし、新たな学びの機会を提供するIID 世田谷ものづくり学校。その教室に集まった参加者のみなさんは、初対面の人と隣同士で座る小さな机や椅子に戸惑いながらも、どこか懐かしそうに腰を掛けて待っていました。
*今回は女性と男性の比率を考慮しながら、5人一組の班に分かれて、座ってもらいました
橋本先生が颯爽と現れるやいなや、ジョークを織り交ぜつつ、早々に自己紹介タイムの始まりです。まず課題として出されたのが「あなたの好きな水の音を思い浮かべてください」というもの。水といえば●●●●という音が好きな△△△△です、と名前を添えて答える形式なのですが、あなたならどんな音をイメージしますか? 20人以上の参加者でも、次々と水の音が登場します。日本語というのは、じつに多くの擬音語がありますね。ポチャポチャ、サラサラ、ざぶんざっぶーん、ピシャンピシャン。四方を海に囲まれ、豊かな森がそこかしこにある日本は、豊かな文化も継承していることに気づかされます。
そして、初めの段階から"周りのみんなの意見"にグッと引き込まれたことにより、後のグループワークが素早く活性化されました。このステップを経て、かなり頭が柔らかくなったところで、いよいよ本格的にワークショップがスタートします。
*ミツカンの調べによる人気の水の音ランキングを見ながら、順位の高い音を答えた人は自動的に各班の班長へ!と橋本先生から任命されていました
各班には一枚のA3模造紙が置かれ、中央にA4の水の循環図が貼られていました。班長が書記となり、ここへ二回に分けて課題を書き込んでいきます。
課題とステップは以下の3つ。
1)基本となる水の循環図に、人が水環境に及ぼす影響を書く(10分)
2)それらの影響を減らすための解決策を書く(10分)
3)各班の特徴や完成した水循環マップを発表し、他の班と比べてみる(15分)
長いようで意外と短く感じられた10分間、本当にみなさん真剣に頭と口と手を動かしていました!

水と人の暮らしとの接点を探る
家庭、工場、地下水、農業、林業、漁業...さまざまな人間の営みにおいて、水は無くてはならない貴重な資源です。ひと口に水環境といっても、循環図を目の前にしたところで、地球上をめぐる"水の旅路"はとても複雑なので、人が自然に与える影響とそこに在る水との繋がりを整理するだけでもひと苦労。そのためか、この整理の仕方によって、出来あがった『水循環マップ』は各班で千差万別。3つめのステップでは、自分たちのA3模造紙を見せながら、それぞれの班で出た特徴ある意見などを発表しました。

ある班はルールを横目に全員(!)で思いつく限り文字を書き込んだようで、図の上を網目状に行き交う矢印がいっぱい。またある班は丁寧に、慎重に問題点と解決策をリストアップし、水が必要な場所毎にまとまりで表現しています。
私たちの班は(書記の方が右脳派!だったのか)循環図の上に絵を描いて、視覚的に整理しながら考えました。

「海水を淡水化したり、中国などの興新国へ技術指導していく」といったように、科学の力でなんとか解決策を見出そうとした私たちに比べ、かなり対照的だったのはこちらの班。
班長が開口一番に「好きですが、やはりゴルフも行かない。贅沢な暮らしは程ほどに我慢し、あとは人間たちがお互いに仲良く暮らすべし」と、なんとも素朴で禁欲的な発言を。こちらの班は、出版社の方が何人か参加されていたそうですが、「このままでは水を奪い合って戦争が起き兼ねない」といったシリアスな意見もあったので、「色々な問題点の対策を考えていったら、思想的な考え方でまとまっていった」と話していました。(でも、個人の生活はやっぱり楽しくないとね!と添えられたり、意識や価値観の転換が必要、といいたような話も出たりしました)
他にも、面白い意見や特徴のある『水循環マップ』が完成していたので、写真を是非じっくりと眺めてみてください。
水をスマートに使うために
全ての班の発表が終えたところで、橋本先生から総括のコメントが。「スマートな水の使い方をしていくと、水の音って変わるんですよ」「たとえば、使う水の量を減らそうと考える。20年前のトイレは"ジャッバー"と一回20ℓもの水が流れていたけど、最近は5ℓ弱まで少なくなったから、"シャー"ですむ」と、水の音の話題がここにも繋がっていたことを話され、水をスマートに使うための4つの考え方と1つのヒントを教えてくれました。
①使う水の量を減らす
・・・節水型の農業に取り組んだり、食べ残しを減らす、雨水や海水を活用する etc...
②一度使った水をもう一度使う
・・・工場廃水の再利用化、生活排水や下水を処理して飲み水にする etc...
③自然の水や綺麗な水は汚さない
④水環境への介在を減らす
・・・透水性舗装の道路を増やす、多自然護岸や水源林の整備 etc...

「水循環を考える上では、背景エネルギーの少ない水を選ぶことがポイントです」
橋本先生はこれまでの授業を通じて、何度かこの話をされてきましたが、"水と食料とエネルギーの問題"は三つ子の問題と言い表し、これらは一気に解決できる可能性があることを教えてくれました。
水はどんな生きものにも欠かすことの出来ない貴重な資源ですが、都市で暮らす私たちにとって、同じくらい不可欠なものは"食料とエネルギー"です。水問題は、大きくて漠然としている地球温暖化の問題や国際情勢の問題などと比べると、「自分たちの事」として考えやすい"目に見える問題"も多くあります。

背景エネルギーの少ない水、食料をつくるために必要な水、自然環境と人間の営みと水との関係性などなど...個々の問題は複雑でも「水の全体像」を頭に描き「身近な自分たちの問題」に置き換えてみると、今日からでも出来ることはたくさんあることに気づきます。そして、授業から学んだ"みず"をめぐる問題と解決策を誰に、どのように伝えていくのかは、参加者ひとり一人の来年の夏までの宿題になりました。
共感を生んだワークショップ
出来あがった『水循環マップ』は多種多様でしたが、ひとつの授業を通じて、参加者は多くの気づきと共感を得たようです。アンケートには「解決策の中で「欲望を抑える」という意見がツボでした。便利を追求すると環境は悪くなる。工夫次第で楽しく暮らせると思う。」(40代女性)、「世界で使う水の量の割合。農業が工業より多い事に驚きました。」(20代女性)など水循環マップづくりで気づいたことや、「シンガポールで、生活排水を飲み水にし始めていること。宇宙飛行士だけかと思ってました。」(40代男性)、「日本は大量に食べ物を残して捨てている。捨てるくらいなら、作らなければいい。本当にその通りだと思います。でも何故...こんなにたくさんの、食べきれない量の食べ物を作らなければいけないのでしょうか。」(40代女性)といった、授業後半の解説を聞いて感じた率直なコメントが多く寄せられました。

また、「闇雲に不安を煽ったり、情報を検証せず無闇に信じたりせず、「一緒にみんなで考えるという事が大切」という橋本先生の言葉が一番印象に残った」(30代女性)という方の意見にも、全員が大きく頷いた授業でした。








