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宇宙の中の地球

 まず、左の地球儀で月を見てみましょう。表面が無数のクレーターに覆われていることがわかりますよね。月には空気がなく、またプレート運動もないのでクレーターが風化して消えてしまうことはありません。ですから、月の表面は、過去の天体衝突の歴史がそのまま残っているのです。月のクレーターのほとんどは、38億年より前に作られたものだと考えられています。太陽系は約46億年前に誕生しました。誕生直後の太陽系には、無数の小天体が飛び交っており、天体どうしの衝突は幾度となく繰り返されていました。

ティコ・クレーター ティコ・クレーター。月面では最も若いクレーターのひとつで、1億年前の衝突と考えられている。© NASA

 月だけでなく、太陽系にはクレーターで覆われている天体が多くあります。中でも有名なクレーターをひとつだけ紹介しましょう。土星の衛星ミマスにあるクレーターです。この衛星の発見者である、ウィリアム・ハーシェルの名前をとって、ハーシェル・クレーターと呼ばれています。その大きさは130kmで、ミマスの直径の1/3にも達します。その大きさから、ミマスを壊しかねないほどの大きな衝突だったと考えられていますが、いつ衝突したかはわかっていません。まるでスターウォーズのデス・スターを思わせる姿です。

土星の衛星ミマス 惑星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星ミマス。© NASA

 月やミマスの表面には、今も数千から数万に及ぶクレーターがありますが、なぜ地球のクレーターはあまり見つからないのでしょうか? もちろん地球も、月やミマスと同じように、これまでに多くの天体が衝突し、無数のクレーターができたはずです。しかし、地球上には空気や海があるため、風や雨による浸食によって風化してしまうこと、またプレート運動によって大陸が動いていることなどの理由で、長い時の流れの中で、ほとんどのクレーターが消えてしまったのです。

 地球上には、現在わかっているだけで約180の衝突クレーターが見つかっています。古いもので20億年前のものから、新しいもので数千年前のものまでさまざまです。左の地球儀でその分布を示してみました。オーストラリアや北米など、古い大陸に多く見られることがわかります。これらは最近40年ほどの間に、衝突クレーターと確認されたものばかり。1970年代にアポロ計画の一環で世界中のクレーターが詳しく調べられた結果です。
 こうしてみると、地球もまた、月と同じように、宇宙空間の中で他の天体とぶつかりあいながら、今の姿になったということが、おぼろげながら見えてはこないでしょうか。

※衝突によってできたのか、火山活動によってできたのか議論が分かれているクレーターもありますが、アースリウムではカナダのニュー・ブルンズウィック大学が運営する地球衝突データベースを参考にしました。

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