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初期拡散:狩猟採集民の移動

 では地球儀を見ながら、人類が移動していった様子を見てみましょう。

 現在の私たちにつながる人類は、今から20万年前から15万年前に東アフリカの大地溝帯に誕生したと考えられています。左の地球儀でオレンジの楕円で記しているのがその場所です。彼らはアフリカ内では移動していましたが、長くアフリカ大陸を出ることがありませんでした。その人類がついに7-6万年ほど前に紅海を越え、アラビア半島を渡ってアフリカを出ていくことになります(出アフリカ)。その頃は氷河期だったために、紅海の幅が今よりも狭かったと考えられていますが、それでも過酷で困難な旅だったと想像できます。おそらくは何度も挑戦し失敗した末に、初めて成功したグループが現れたのでしょう。この時の人数はせいぜい150人程度だとされています。彼らは魚介類を採りながら命をつなぎ、海岸線にそって移動していきました。

 その後、人類は徐々に子孫を増やしながら海沿いにインド、アジアへと進み、4万7000年前くらいにオーストラリアに到達しています。

 ヨーロッパに新人が現れたのは4万年ほど前と考えられています。当時ヨーロッパにはネアンデルタール人が暮らしていましたが、新人と1万年ほど共存した後に、謎の絶滅を遂げてしまいました。

 3万年から2万年前は気候が比較的安定したため、人類は北のシベリアにも進出します。2万年前に再び氷河期になり、南下する動きが見られます。同時に、海水面が下がって陸続きになったベーリング海峡を進んでアメリカ大陸に移動していく集団も現れます。北アメリカに渡った彼らは、わずか5000年あまりの間に赤道を超えて南アメリカに到達します。人類の拡散は、初期はゆっくりしたものでしたが、徐々に環境に適応する経験値が高くなり、速度が早まっていったのだと考えられています。

  太平洋への進出は6000年前頃で、中国南部か、もしくは台湾にいた人たちが海岸線にそって移動してパプアニューギニアにたどり着き、そこを拠点に3000年ほど前から太平洋へと進出を果たしました。ただし、この移動は人類が農耕を行うことによって初めて可能になりました。

 ネアンデルタール人や北京原人など、現代の私たちにつながる新人以外の全ての人類は、多くても数万人程度の人口だったそうです。私たちだけが、世界のありとあらゆるところに拡散し、しかも70億人近くにまで膨れ上がりました。その決定的な違いがどこにあるのかは、まだ謎に包まれています。

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