また堂畝さんは、こうしたテーマに対する広島・ 長崎とそれ以外の地域での温度差も感じています。 これからの目標は、原爆や戦争、平和の話がローカルで終わらず、広くみんなが考えられるような場を作っていくことです。来年5月には東京でも写真展を開催することが決まっています。
世界の平和を想う時、とてつもなく大きなテーマにも感じられますが、まずは一番足元の家族で話すことから。家族や親せきのなかで、戦争の記憶や平和への想いを聞くことのできる時間は、じわじわと消えつつあります。 聞くことで何かがすぐ変わるわけではないかもしれないけれど、少なくとも知って感じて考えることはできる。日常の中で、戦争や平和、政治などのテーマを、家族や友人、同僚など身近な人たちと話してみることは、社会に蔓延する「無関心」や「他人事」 を少しずつ変えていく一番の近道かもしれません。
最近はずいぶん減りましたが、まだまだ見かけるポイ捨てタバコ。 もし街中にこんな灰皿があったら、どうでしょう? タバコを入れる2つの穴の上に、「どっちのチームが一番? バルセロナかレアル・マドリード」と書かれた「投票ごみ箱」です。思わず、自分がいいなと思ったほうにタバコを入れてみる=タバコをきちんとごみ箱に捨てる、という結果になるわけです。結果もさることながら、地域やコミュニティでユニークなゴミ箱が話題になることで、タバコのポイ捨てについて考えるきっかけになります。
これは、イギリスの環境保全団体「Hubbub Foundation(ハバブ財団)」のポイ捨て削減キャンペーンで企画されたものです。この「投票ごみ箱」を設置したロンドンのサットン地区では、ポイ捨てタバコの量が46%も削減されたそうです。投票ごみ箱は、英国内だけでなく世界中から注目され、導入したいとの声が寄せられたため、初年度だけで21カ国で約560個も販売されました。アメリカでも、5都市でテスト導入され、今後全国展開も検討されているそうです。
特にタバコのポイ捨てが多い若者が、どうしたら灰皿に捨てるようになるか? 投票ごみ箱のコンセプトや実例を紹介する映像
ハバブ財団は、直訳すると「大騒ぎ財団」というユーモラスな名前。 私たちの日々の暮らしと密接につながっている社会や環境の問題を、人びとに考えて行動してもらうために、遊び心のあるキャンペーンを数々展開しています。これまでに展開されたキャンペーンをいくつかご紹介しましょう。
イギリス南西部にあるディーンの森では、毎年250トンも捨てられるごみを減らす「LoveYourForest(森を愛そう)」キャンペーンを展開。「誰かに見られているとごみは捨てづらい」という視点から着想を得て、森でよくごみが捨てられる15カ所で 、木々に面白おかしい50個もの「顔」をつけ、「コミュニツリー(Communitrees)」と命名。コミュニツリーを巡るマップも作成して、人びとの関心を喚起しました。その結果、7カ所で30%のごみ削減につながりました。
©Hubbub Foundation
また、森で拾ったゴミを、ホットドリンクやポップコーン、 野草の種などと交換できる「ごみ交換トラック(Trash Converter Van)」を設置。最初の2週間だけで2000リットル分のゴミを回収しました。この他、イギリス初の「ごみショップ」を開店し、 森で集められたごみを陳列するという面白い試みも。80年代のお菓子の袋や飲料水ボトルも発掘され、「ビンテージコレクション」として紹介するなどユーモアにあふれ、店は訪れる人でにぎわいました。
©Hubbub Foundation
ポップなデザインのごみ交換トラック
©Hubbub Foundation
まるで商品のようにごみが並ぶ「ごみショップ」
また食品ロス問題への取り組みとして、それぞれの家で余った食材を自由に置いたりもらったりできる「コミュニティ冷蔵庫」を設置。 設置したダービーシャー州スワドリンコートの町では、最初の半年で9000個の食材(2トン相当)が冷蔵庫を通じて交換されたそうです。
©Hubbub Foundation
「コミュニティ冷蔵庫」に、余ったり使わなくなったりした食材を持ち込む住民
ハバブ財団は、斬新なデザインやアプローチによって、普段その問題を考えたことがなかったり、関心がなかったりする層も巻き込んで、地域にインパクトを与えています。あらゆる社会問題への取り組みで大きな鍵となるのは、「知っているだけでなく、実際行動する人を増やせるかどうか」です。これについてハバブ財団の創始者トレウィン・レストリック氏はこう語ります。
「人は考えていることと、 実際行動することの間に確かに溝があります。ですから、できるだけ身近で関心の高いテーマ(食べ物やファッション、 家庭、地域など)に焦点を当て、人びとが誰かに伝えたくなるような面白い企画を心がけています。 それによって、人びとがそのテーマについてお互い話をするようになり、日々の暮らし方や行動が変わるきっかけにもなります。また、シンプルで簡単にできるアクションを提案するようにし、大きなムーブメントやグループの一部としてアクションできる仕掛 けにすることで、人びとが参加しやすくなります」
ハバブ財団創始者のトレウィン・レストリック氏
こうしたキャンペーンが単発で一過性のものに終わるのでなく、地域やコミュニティに根付いて、持続していくかことも大切です。 ハバブ財団では、キャンペーンが終わった後も、ハロウィーンやクリスマスなど年間行事などにあわせて、定期的にイベントを企画したり、フェイスブックなどのSNSでコミュニティを作ったりして、地域で継続するような仕掛けを作っています。また、他の地域でも応用できるように、テーマにあわせて「インスピレーション・ガイド」と呼ばれるガイドブックを作成しています。
また、より大きな社会的インパクトをもたらすべく、企業との連携も深めています。以前地球ニュースでもご紹介したコーヒーカップリサイクルプロジェクトには、大手コーヒーチェーン各社やロイズ、デロイトなど大手企業を含む36社が参加。どの店舗のコーヒーカップでも回収する巨大なごみ箱をロンドン中心部に設置し、1カ月で50万個のリサイクルに成功しました。そ の他「コミュニティ冷蔵庫」では大手スーパーのセインズベリーと組んだり、インテリアショップのイケアと共同でサステナブルなライフスタイルを提案するプロジェクトも手掛けたりしています。ただ、こうしたプロジェクトでは、「人の意識や行動が変わるには時間がかかる一方で、企業は短期間で具体的な成果を求めるという難しさもある」とレストリック氏は語ります。プロジェクトの長期・短期の効果をしっかりモニターしながら、コミュニティそして企業のニーズをうまく合わせていくよう取り組んでいます。
©Hubbub Foundation
企業が多く参加したコーヒーカップリサイクルのプロジェクト。 ロンドン中心部に約130個の回収箱が設置された
あらゆる社会問題は、誰かが解決してくれるわけではなく、一人ひとりの市民が動かなければ、最終的には解決しません。 面白いデザインと発想で、興味がある人もない人も、さまざまな人を巻き込んで、地域に根付かせていくハバブ財団。その活動は、社会の問題に取り組むさまざまな団体や企業、行政にとって、参考になりそうですね。
ヨーロッパで最も多い難民を受け入れているドイツ。アンゲラ・メルケル首相が難民の受け入れを発表し、次々と難民を乗せた列車がミュンヘンへと到着した時、新聞・テレビなどのメディアはこぞって報道合戦を繰り広げました。しかし、その後は―? どこに行けばいいのか、何をすればいいのか、不慣れな土地で右往左往する日々。未知の国にやって来て暮らしの基盤を作ろうとする人たちの姿を、漫画で描く「到着のABC(Alphabet of Arrival)」が、5月、オンラインで発表され、静かに話題を呼んでいます。
この「到着のABC」で紹介されている12の物語は、ドイツを始め、ポーランドやイタリア、シリアなど10カ国から集まった12人のジャーナリストと漫画家による、共同ワークショップから生まれました。公募で選ばれた漫画家とジャーナリストは、まず自らの作品と、取材した話をプレゼンテーションし、テーマや作品のスタイルに合いそうな相手を決めて、一週間話し合いながら制作を進めたそうです。
「"難民"ではなく、"新しい場所にきて、そこで暮らしていくこと"、"新しいスタート"がテーマだったので、私自身も共感しやすく、挑戦してみたいと思って応募しました」と、ベルリン在住のトルコ人漫画家、ブルク・トゥルカーは言います。
彼女の漫画の主人公となったのは、2016年にシリアから、西ドイツにやってきたクルド系シリア人のラズキン・モハンマド・ヘッソ。海を越え、数々の国境を経てドイツへと到着した彼には、幼い2歳の息子と妻がいます。落ち着いたら呼び寄せようと考えていたそうですが、彼の前にドイツの法律が立ちはだかったのです。
2016年3月17日以降に滞在許可が発布された、補完的保護権利者(注)には、2年間の経過期限が与えられる。その2年間の間、家族の呼び寄せは不可
ラズキンは、しばしば爆発や紛争があるシリア北東部の街、カーミシュリーに妻子を残し、ドイツでただ待つことを余儀なくされています。
注:subsidiär Schutzberechtigter (Subsidiary protection) 補完的保護権利者
ジュネーブで締結された難民の地位に関する条約に定義された難民の要件に該当しないが、本国に送り返されると死刑になるなどの確固たる理由で重大な損失の恐れがあるため、故国に送還できない人に与えられるもの。
家族を安全なドイツに呼び寄せる日を待ちわびながら、語学学校に通い、いつかは別の街で仕事を探し、カーミシュリーにいる2人にお金を送ってあげたいと考えるラズキン。ブルクは、彼を取り巻く風景を静かなタッチで描いています。
ラズキンから送られて来た大量の写真や、映像を元に様々なシーンを描いた。原作者であるジャーナリストとのディスカッションも、制作の糧となる
実は、漫画にする段階で、もっと感情的で激しい物語や絵を盛り込むというアイデアもありました。下描きの中には、涙を流す妻の姿や、子供の成長を思うラズキンや戦う兵士の姿も。文章を担当したジャーナリストのエレンド・シェイキーは、ラズキンの友人でもあり、自らもシリア人。シリアの爆撃の様子や傷ついて血まみれになっている市民の姿などを生々しく盛り込んで欲しいと、ブルクに頼んだそうです。しかし、彼女はあえて、ラズキンのパソコンの中の映像として描くことを選びました。
「私も含め大半のドイツ人は、こういった映像を毎日のように目にしています―でも、テレビやネットというモニターを通じてね。難民収容所、語学学校、ラズキンの部屋、そして彼が持っているパソコン、愛する家族とつながるスマートフォン......彼のいまの暮らしを形作っている全てが、モニターのような、四角い形をしていると感じたのです」
「フィルゼンの待合室のベンチで」
文:エレンド・シェイキー
漫画:ブルク・トゥルカー
繰り返し現れる四角い空間、そしてラズキンのデスクの上の雪だるま柄のテーブルクロス。ブルクの鉛筆に水彩という淡白な描写は、独特の距離感を保ちつつも、ラズキンの日常生活をぐっとリアルに立ち上がらせます。
アメリカやフランスなどに比べ、まだコミック文化が根付いていないドイツ。しかし、だからこそエンターテイメントではなく、コミック・ジャーナリズムという新たな分野の可能性は大きいのではないかと、「到着のABC」企画者のジャーナリスト、リリアン・ピタンは言います。「ほかのメディアでは扱いづらい、記事にしづらいことでも、漫画なら伝えられる、作品化できることも多い」
「パンと塩と、おかしなチーズ」
文:ムハンマド・アル・アジィール
漫画:ユリア・クルーゲ
シリアとドイツ、食を通じての交流を描く
「住むところはない?」
文:マルセル・ラーベ
漫画:ヨハネス・シュタール
難民として滞在許可をもらい、住む場所を探すー難民に限らず、ひたすら待たされるドイツのお役所の閉塞感の描写がうまい
ビデオや写真といった映像のほうが生々しく、インパクトのあるビジュアルを伝えることはできますし、文章の方が数値などの情報量は盛り込めるわけですが、漫画にしかできないこともあります。まず、とっつきやすく、わかりやすくするということ。そして、作家の解釈を加えて映像化するということ。
難しくてわかりにくい政治的なテーマを噛み砕いたり、歴史的な話を身近に、そしてリアルに再現して描き出したり。ブルクは、この漫画の後に、ワークショップで出会ったジャーナリストから声をかけられ、歴史上の女性の偉人をテーマとした漫画作りに取り掛かっているそう。
複雑な政治問題が次々と登場するいま、ドイツ発のコミック・ジャーナリズムのこれからの動きに、注目していきたいと思います。
参照サイト:ドイツ連邦移民難民局
]]>どこへ行こうかな、何をしようかなと思った時、 皆さんはどうやって情報を集めますか?
レストランならグルメ情報サイト、 観光やイベントならおでかけ情報サイト、ファミリーだったら子育て情報サイトなど、 今はあらゆる情報検索ツールがあります。しかし、自分が暮らす街という小さなエリアのイベントや集まりを探そうとすると、公共施設に置いてあるチラシや街の掲示板、 自治体や主催団体のホームページなど、思いのほか限られています。 それぞれの場所へ行ってチラシをもらったり、 ネットで情報を細かく検索したりすることは、いつでも誰でもできるわけではありません。忙しい、子育てや介護で手一杯、高齢で行動範囲が限られている、どのページを見ればいいかわからないなどさまざまな理由で、 地域の情報がなかなか簡単に手に入らないことがあります。
雨季のノコプロジェクト・第2回世界森会議へ向けた準備が進んでいます。開催は9月、雨季のワルリ族の村。深い緑の中、川で泳ぎ、魚を獲り、薪でカレーを作り、ダンスを踊り...。ワルリ族が当たり前に尊ぶ、生物多様性の暮らしを体感し、水、土、木、種、生き物をテーマに集う会議を設けます。各テーマの専門家はもちろん、市井の人々もスピーカーとなり、一人ひとりの心に「世界を考える」、地球市民としての種を蒔(ま)き合うのがこの世界森会議の目的です。ワークショップで、乾季にエディブルガーデンを実現する雨水タンク計画を立てています。
私がこの村へ初めて行ったのは去年のこと。インド・ムンバイから車で2時間ほど走ると、喧騒が嘘のように夜の静寂につつまれていました。車を降りるとわずかに虫の声が聞こえます。小さな明かりがポツポツと見えます。村人にはそれだけで十分で、重い荷物をかかえながら早足で歩いていきますが、私は携帯用の懐中電灯をかざしながら慎重に歩を進めねばなりません。足元はぬかるみ、粘土質の土が両足を包み込みます。9月のインドは雨季の只中にあり、今は上がっていても、いつ滝のような雨が降ってくるかわかりません。
村人の家に上がる前にバケツの水で足を洗います。ここに水道はありません。井戸水、雨水を少量使う生活です。電気は通っていますが1日に数回は停電します。部屋には小さな電灯がありますが、そのほかの家電といえば扇風機くらい。煮炊きには薪をつかっています。
こうした風景は発展途上国でよく目にします。水や電気のない生活を目の当たりにして、水道を敷設し発電所をつくれば、今より豊かで便利な生活ができるのにと考える人もいるでしょう。しかし、この村の人たちは自ら選んでこうした生活しています。村には「ノコ」という言葉があります。それは「もう十分」という意味です。
足を洗った私はゴーバル(牛糞)でできた家の床を踏みしめました。湿気をわずかに含んだ床が足裏に心地よくフィットします。ゴロンと寝転ぶと大地に包まれるようです。もちろん嫌な臭いなどしません。ワルリの人々の伝統的家屋は、木、土、石、ゴーバル(牛糞)でできています。身近なところで手に入れられる材料を使い、自分たちで建ててきました。この家は実に合理的です。雨季には湿った温かい空気を逃がし、乾季には熱を保持し、快適な暮らしを支えます。
ところが十数年前からインド政府がレンガづくりの家を推奨し、補助金を出したのです。安く家が建てられる政策は最初こそ歓迎されたものの、次第に違和感が広がっていきました。
そんなときガンジャード村と日本のNPO法人「ウォールアートプロジェクト」(代表おおくにあきこさん)との出会いがありました。このプロジェクトは村の学校を舞台に国際的芸術祭「ウォールアートフェスティバル」を開催してきました。学校の壁に絵を描き、子どもたちとその保護者に学校に足を運んでもらうきっかけ作りをするのがねらいです。日本人現地コーディネーターの浜尾和徳さんが、村に住み込み、「おかず塾」という村の有志たちと実行委員会を組織し、ワルリの人々と日本人のアーティスト、ボランティアが一体となって芸術祭をつくりあげました。
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お米にニホンコウジカビがくっついてモコモコした糀
小倉ヒラクさんは、まさにその奥深い発酵の世界にどっぷりハマってしまったデザイナーです。自らの肩書も「発酵デザイナー」と名乗るほど。全国津々浦々に足を運び、みそや日本酒、ワイン、しょう油など、こだわりのお酒や調味料を作り出す若き醸造家たちと商品開発をしたり、ワークショップを開いたりしています。2012年には、みその仕込み方をシンプルな歌詞にし、アニメをつけた「手前みそのうた」でグッドデザイン賞を受賞。この曲をかけながら楽しくみそを仕込むワークショップが評判を呼んだことが、ヒラクさんが発酵デザイナーを名乗るきっかけともなりました。
デザイナーとしてだけでなく、発酵研究家としてもフィールドワークや研究を積み重ねてきたヒラクさん。これまでの見聞を基に思索を深め、書き下ろしたのが、4月中旬に発売された著書『発酵文化人類学』(木楽舎)です。「発酵文化人類学なんて面白そうな専門分野があったの?」と思いきや、これはヒラクさんの造語。「発酵を通して、人類の暮らしにまつわる文化や技術の謎をひも解く学問」のことをそう名付けたのだそうです。
地球温暖化の問題を世界中に突き付けたドキュメンタリー映画「不都合な真実」の続編「An Inconvenient Sequel: Truth To Power(不都合な真実2:放置された地球)」 が5月17日から開催されたカンヌ国際映画祭で特別上映されました。アル・ゴア元米副大統領が主演し、温暖化の影響により規模が拡大する気候災害や、対策の要となる再生可能エネルギー促進の現状について、予告編で見る限り前作と同様に力強く語る姿は、地球温暖化のコミュニケーターとしての意気込みを感じます。
しかし、ゴア元大統領のおひざ元の米国では、温暖化を全面的に否定する勢力が不都合な真実をもみ消そうと躍起になっているようです。その最前線に立つのがトランプ大統領。大統領選挙運動の最中から「気候変動はでっち上げ」といった科学を軽視する発言からその動向が注目されていました。そして、大統領に就任早々、オバマ前政権が進めてきた温暖化対策を見直す大統領令に署名し、米環境保護局(EPA)の予算を大幅に削減し(前年度比31%減)、国内政策だけでなく、気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」の離脱をもほのめかしています(政権内でも「離脱」か「残留」かで分かれていたが、「離脱」する方針で決定した)。米国は世界第2位の温室効果ガス排出大国ということを考えれば、この国が環境規制を撤廃し、石油メジャーズ(エクソン・モービルなど)が制限なく化石燃料を燃やし続ければ、ほかの国がどれだけ対策を講じても、パリ協定で目標に掲げたように気温上昇を2度未満に抑える効果は限定されることになります。
こうした科学軽視の米政策を深刻に受け止めた科学者たちが中心となり、アースデイ(地球の日)の4月22日、ワシントンをはじめ、ロンドンやパリ、日本では東京やつくば市など世界主要都市600カ所以上で抗議デモ「科学のための行進」を行いました。「科学はリベラル派の陰謀ではない」「無知は至福ではなく、受け入れられないものだ」「科学にはもうひとつの事実はない」(トランプ政権の上級顧問が報道官の誤った発言について「もうひとつの事実(alternative facts)」を述べただけとコメントし、事実を捻じ曲げていると話題になった言葉を受けたもの)科学者だけでなく、子どもから高齢者まで一般市民がそれぞれの思いを綴ったプラカードを掲げて、政策に科学的知見を取り入れる大切さを訴えました。
March for Science:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Tom Hilton
車いすで参加する男性
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実は、米国には宗教が理由で、科学を信じない人たちが4割近くいるそうです。筆者が以前、地球ニュースで紹介した米小説『Flight Behaviour(飛翔行動)』に登場する家族やコミュニティもそうでした。身の回りのあらゆる現象(例えば、異常な大雨)を神の仕業だと信じているのです。日本では考えられませんが、公立学校で「進化論」だけでなく「創造論」(神が地球上のすべてのものを創造したという考え)を教えるよう求める運動もあります。トランプ大統領の科学軽視政策は、こうした保守派の人たちの考えに後押しされているとも言えます。
米国は2005年にハリケーン・カトリーナの直撃によって大きな被害を受け、次の年に「不都合な真実」がアカデミー賞受賞で注目を集め、多くの人が温暖化に関心を寄せて危惧するようになりました。それでも及び腰だった共和党のジョージ・W・ブッシュ政権から、民主党のオバマ政権に交代すると、環境規制や再生可能エネルギーの導入など温暖化対策が急速に進展し、ようやく2015年12月にパリ協定で各国との連携を約束するに至りました。
パリ協定が採択。オバマ元大統領が積極的に働きかけたこともあって合意にこぎつけた
Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by WeMeanBusiness
オバマ前政権はパリ協定で、2025年に2005年比26~28%の二酸化炭素(CO2)排出量削減目標を打ち出しています。目標達成に向けた主な政策が、火力発電所からのCO2排出量を規制する「クリーン電力計画」と大型車両の燃費基準や建物の省エネルギーなどを推進する「気候行動計画」です。科学者グループの非政府組織「クライメート・アクション・トラッカー」によると、「クリーン電力計画」によって2005年比10%減が達成される予想でしたが、トランプ政権はこの規制をすでに撤廃しているため、2005年比7%減にとどまるとしています。
地球温暖化は、汚染地域が限定されるようなほかの環境問題と違い、米国のような大国ならたった一国であってもその動向によって世界全体に大きく影響します。米国に追随してほかの排出国がパリ協定を離脱したり、削減目標の達成を放棄したりすることになれば、さらに深刻な事態となるでしょう。この10年間にどれほど温暖化が進んだかは「不都合な真実」続編が伝えてくれるはずです。科学を信じない世界の未来がどんなものか想像できるでしょうか。
Pullman Dubai Creek City Centre Case Study
ドバイのホテル「Pullman Dubai Creek City Centre & Residences」では、同社アプリを採用してから4か月間で、食品調達費を4%削減(約2万ドル/約220万円)
ウィノウ・ソリューションズの他にも、世界各地で食品ロスを減らすためのアプリが広まっています。レストランやスーパーなどで余った商品の値下げ情報を消費者に知らせるアプリには、 ヨーロッパで広まる「Too Good to Go」(本サイトの記事はこちら)や「NoFoodWasted」、「11th Hour」(シンガポール)などがあり、消費者のニーズを満たしながら食品ロスの削減につながっています。また、「Food Cloud」(英国)や「No Food Waste」(インド)など、小売店などで余った商品を慈善団体へ寄付する仕組みを支えるアプリもあります。
深刻な食品廃棄問題を抱える先進国と、食糧難に苦しむ国ぐに。この不均衡な世界は、待っていたら誰かが変えてくれるわけではありません。一人ひとりの個人、企業、行政などそれぞれが意識を持って、行動すること。これは、誰もが簡単にすぐできることではないかもしれませんが、食品ロス削減アプリのような新しい発想とテクノロジーが大きく後押ししてくれるのではないでしょうか。さまざまな場で活用できる食品ロス削減アプリ、日本でも広まることを期待したいですね。ウィノウ・ソリューションズ社も、「日本市場は、人口の規模も大きく、巨大な外食産業やホスピタリティ産業があり、このアプリで問題解決に貢献できる」と語っており、今後日本での顧客開拓にも力を入れていくそうです。
これまでは農地法の問題で、農地を使って太陽光発電をすることは出来ませんでした。しかし、2013年に農林水産省が出したガイドライン(支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて)によって、農地でも発電ができるようになりました。
「農地を太陽光パネルで遮(さえぎ)ってしまったら、農作物が育たないのでは?」という疑問が湧くと思いますが、実は、農作物が光合成に必要な太陽光には上限(光飽和点)があり、それ以上の太陽光は逆に作物が傷む恐れもあります。ソーラーシェアリングでは、ちゃんと農作物に必要な太陽光が届くように隙間を作ってパネルを設置することで、十分な日射量を確保しながら、光合成に使われない太陽光で発電することが可能です。
ソーラーシェアリングでは、農作業に必要な機械が通れるように支柱の高さを設定する必要があるため、横に立つと見上げる位置にパネルが設置されています
千葉県匝瑳(そうさ)市では、地元の農家の方たちが中心となって合同会社を設立し、2017年4月より耕作放棄地を活用した国内最大級規模のソーラーシェアリング「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」の商用運転を開始しました。匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所の最大出力は1メガワット、想定年間発電量は約1424メガワット時(20年平均)で、一般家庭約288世帯分の消費電力をまかなえる見込みです。「匝瑳市飯塚地区の世帯数は230ほどなので、この地域の電力を地産地消でまかなえる計算になります。また、売電収入の一部を農家の方の安定的な収入として提供することで、農地の再生と自然環境を守りながら、地域を活性化させていきたい」と匝瑳ソーラーシェアリング合同会社代表の椿茂雄さんは4月3日の落成式で語っていました。
匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所では、パネルオーナー制度を導入し、地域の人びとがパネル1枚から発電所のパネルオーナーになることが可能
現在、日本の農業は、海外との価格競争や後継者不足、耕作放棄地の増加など様々な問題を抱えています。また、日本のエネルギー自給率はたったの6%。限られた日本の土地でどう再生可能エネルギーを増やしていくかは、エネルギー自給率を上げるために日本が解くべき課題のひとつです。
すでに確立された太陽光発電の技術を今まで活用されなかった農地に導入する
ソーラーシェアリングは、農業とエネルギー、どちらの問題に対しても解決の糸口になるかもしれません。とはいえ、まだまだソーラーシェアリングの導入事例は多くはありません。今後の広がりに期待したいです。
参考資料:
日本初、メガソーラーシェアリング向けプロジェクトファイナンスによる
営農型太陽光発電所が千葉県匝瑳市にて稼働開始
http://www.sbigroup.co.jp/news/2017/0403_10630.html
一般社団法人ソーラーシェアリング協会
http://solar-sharing.org/
http://solar-sharing.org/solarsharing/index.html
資料館には、 さまざまな国ぐにから幅広い世代の観光客が訪れていて、 それぞれ多くを感じ、 考えていることがひしひしと伝わってきました。出口近くには、 誰でも感想を書けるノートが何冊か置いてあり、 さまざまな言語で想いが綴(つづ)られていました。 これだけの事実を目の当たりにした時、 人びとは感じたことや考えを発信し、誰かとシェアしたくなるでし ょう。多様な国の人びとが集っているからこそ、 もっと語り合える場がほしいと感じた人は多いはずです。
広島市の平和記念資料館
人びとが気軽に平和について知り、学び、語り、つながることができる場所。今、そんな場としてソーシャルなブックカフェをつくりたいと、 一人の女性が動き出しています。安彦(あびこ)恵里香さんは、かつて国際NGOピースボートに勤め、転勤を機に広島へ移住し、それ以来10年以上にわたり平和活動を行っています。その原動力は、世界のさまざまな問題で苦しむ人たちがいることに対して、傍観者でいたくない、あきらめずにできることからやろう、という想いを持ち続けていることです。
人を巻き込む魅力とエネルギーに溢(あふ)れた安彦恵里香さん
2009年に核拡散防止条約を強化する「ヒロシマ・ ナガサキ議定書」への署名キャンペーン「Yes!キャンペーン」の事務局長を務め、2011年には広島・長崎から54人のアーテ ィストを巻き込んで、アートの視点から核兵器を捉えなおすアートブック「 NOW!」を発刊。 平和を考えるアートイベントや勉強会などを行う団体「PROJE CT NOW!」を立ち上げ、2013年からは原爆投下時刻に一斉に空を見上げるアートアクション「みあげる」を開催。2015年には、夏に広島・長崎で行われる100を超える平和イベントを検索できるウェブアプリ「Peace Week Hiroshima Nagasaki」をスタート。 さまざまなアプローチで、できるだけ多くの人が平和について考えられる場を生み出してきました。
6000冊を売り上げたアートブック「NOW!」
7-8月に数多く行われる広島・ 長崎の平和イベントを検索できるサイト「Peace Week Hiroshima」
この10年の活動を経て、 安彦さんが平和を実現するために一番大切だと思うことは、「思考停止しないこと」「一人ひとりが社会の主人公になり、 発信者になること」。そのためには、 単発のイベントを続けるのではなく、人びとがそこへ行けば、 平和や社会の課題について主体的に考えることができ、発信し、 誰かとつながって、 次のアクションが生まれるような場が必要だと感じたそうです。
安彦さんは今、平和記念公園から歩いて2分の場所に、「Social Book & Cafe ハチドリ舎」をオープンする準備を進めています。 このブックカフェでは、美味しいごはんやお茶をいただきながら、平和や社会的なテーマの本を自由に読め、 さまざまなイベントにも参加できます。 被爆者の方々と交流する会、多様なゲストを招いたトークショー、上映会、ワークショップなど、毎月10回程度開催される予定です 。7月23日のオープンに向け、現在クラウドファンディングで資金を集めながら、 外国人観光客も気軽に立ち寄れるよう、 通訳ボランティアを募集するなど奔走しています。
平和や戦争、環境などあらゆる社会的な課題は、 時としてあまりに大きな問題に見え、 自分ひとりではどうしようもないと感じることもあるかもしれませ ん。しかし、結局社会を変えられるのは、 この社会に生きる私たち一人ひとり。「 あなたの一歩がすごく大事」と語る安彦さんは、 このカフェで一人でも多くの人にきっかけを提供し、 人と人とをつなげたいと考えています。 なんとなく世界や社会のできごとが気になってはいるけれど、 何ができるのかわからずモヤモヤしている人も、 誰かの話を聞いてみたい人も、語り合いたい人も、「Social Book & Cafe ハチドリ舎」へ行けば、 小さくて大きな一歩が生まれるかもしれません。
現実には険しい地中や水中への旅も、例えば、この『アンダーアース・アンダーウォーター』という絵本の世界でなら、ずんずん潜っていけます。『マップス 新・世界図絵』が世界中で300万部以上を売り上げたポーランドのミジェリンスキ夫妻による待望の最新作です。前作同様、紙芝居サイズのずしりと重い絵本は、110ページに渡る本の真ん中がちょうど地球の中心。両面共に表紙という構成で、赤い表紙からは「EARTH」(地面)の下へ、青い表紙からは「WATER」(水面)の下へ、どちらでも好きな方から潜っていくことができます。
EARTHのページをめくると、地表すぐ下のアリの巣の世界から動物たちが眠る巣穴、植物の根っこ、地中に張り巡らされた配線や配管、地下鉄、トンネル、洞窟、化石、鉱物、地球の奥深くで煮えたぎるマグマまで―。「とりあげたいテーマを片っぱしから挙げていった。それをしぼりこんで、本全体の構成を考えてから、ラフを作っていった」、ダニエル・ミジェリンスキさんはそう説明します。今作は2012年から3年の月日をかけ、日本では昨年末に発売されました。彼らの本職はグラフィックデザイナーなので、ほとんど何も知らないところから興味のフィルターに引っかかったあらゆることを一から調べまくったそうです。知らなかった事実や現象に胸踊らせながらの製作は「とても楽しかった」とダニエルさんは振り返ります。
例えば、世界で最も深いところを走る地下鉄は北朝鮮にあること。日本の地下鉄の年間利用客は約30億人と世界一で、これはヨーロッパの全人口の4倍にもなること。冬の凍結道を避けるために作られたノルウェーのベルゲンとオスロを結ぶトンネルは単調なため、眠気を防ぐために青と黄色の光で照らされた洞(ほら)穴の休憩所があること。ダイオウホウズキイカという巨大イカの目は現在知られている動物のなかで一番大きく、サッカーボールにも匹敵すること―(目がページいっぱいに描かれています)。どのページにも誰かに「ねぇねぇ、知ってる??」とシェアしたくなる面白い情報がぎっしり。電気をどうやって遠くに流しているかなど、大人の私も案外知らないことだらけなのだなと気づかされます。
世界の多様性に対する作者夫妻の目は非常に謙虚です。「世界の子どもたちが読む。僕たちはこうだけど、違うかもしれない。ヨーロッパでは電線は地下に埋められているけれど、日本では違うでしょ」、ダニエルさんはそう言います。当たり前だと思っていることでも、まずは確認してみる。そうした姿勢でいるからこそ、地球が実は少し平べったい形をしているので、地球の中心から最も遠いのはエベレストの頂上ではなく、エクアドルのチンボラソ山の頂上である、といった事実にもたどりつくことができます。
鋼鉄をつなぎ合わせて作った380キロもある昔の潜水服は、「実際に使われたどうかはわからない」とあります。調べまくってもわからなかったことは正直に「わからない」と書いてあるので、子どもたちも、疑問にいつも答えが用意されているわけではないことを理解します。地面の下、海の中を探検しながら、夫妻が克明に記している調べごとの面白さ、学びの楽しみを追体験できてしまうところも、この絵本の大きな魅力である気がします。
4月23日は、親しい人に本を贈る記念日とされるサン・ジョルディの日。子ども読書の日にも定められています。好奇心いっぱいの子どもたちにオススメしたい、とっておきの一冊です。
]]>創業者の牛来千鶴さん。EARTH Hiroshimaの折り鶴ピアスを身に着けて
このモノづくりプロジェクトに取り組むなかで、自社製品開発に苦労する製造業に新たな利益をもたらし、消費者には心に残る商品を届け、広島そして世界に良い変化をもたらすことができる「三方良し」を求めて生まれたのが、「EARTH Hiroshima」です。牛来さんは山口県出身の被爆2世で、30代の頃に大病を患ったことをきっかけに、いつか地球のために役立つことをしたいという想いを温めてきました。広島から地球のために発信できることを考えた時、核にまつわる平和だけでなく、貧困や人種差別などさまざまな課題を広く内包するような平和について、多くの人が考えたり感じたりするきっかけをつくりたいと考えたそうです。そのモチーフとして「アース(地球)」をブランドの冠にしたのは、まず「世界はみんなつながっている、ひとつながりの地球」という意識が大切との想いから。これまでに、地球や折り鶴をモチーフにしたアクセサリーやビーズ入りポストカード、クラフトカード、けん玉、化粧筆などの商品が生まれました。
地球や平和をテーマにしたポップなデザインの商品
ビーズ入りのポストカードは、高品質なグラスビーズで世界的にも定評のあるトーホーとのコラボによって生まれた
過去を振り返るだけでなく、未来に向けて明るく前向きな気持ちになれるようにと、ポップでかわいいデザイン。生産を担うのは、高い技術力を誇るビーズやけん玉、筆のメーカー、自動車部品で培った形成・塗装技術を持つメーカーなどさまざまです。商品は、平和記念公園内のレストハウスやおりづるタワーなどの市内名所のほか、東京都内の広島県アンテナショップでも販売され、現在生産が追いつかないほどの状況だそうです。売り上げの一部は、原爆ドームの保存のためなどに寄付されます。今後は年内に新たに10商品を発売する予定で、5年で広島の製造業300社が参加する規模を目指しています。
今日本は、被爆国でありながら核兵器禁止条約に反対の立場を示すなど、政治の世界では平和に向けた明確な発信やアクションを行うことができていません。しかし日本だからこそ、広島だからこそ、未来に向けてできることはたくさんあるはずです。企業やクリエイターが集うEARTH Hiroshimaの平和への取り組みは、政治とは違う次元で、もっと柔軟にもっと自由に、平和に向けて何ができるのか、私たち一人ひとりに問いを投げかけてくれているのではないでしょうか。
スウェーデン南部、エシルストゥーナ。この街に2015年8月にオープンしたショッピングモール「ReTuna Återbruksgalleria」は、世界初のコンセプトで大きな話題を呼んでいます。
なんと、ここで販売されているものは「新品」ゼロ! 洋服から家具にいたるまで、リサイクル、リユース、アップサイクルしたものだけを取り扱うモールなのです。
広々とした空間にゆったり展示。リペアのために50人の地元のアーティストを起用。「循環経済」は新たな雇用をも生み出す
市のリサイクルセンターと連携しているこの「ReTuna Återbruksgalleria」。運んできてもらいやすいようにドライブスルー形式に作られているリサイクルセンターでは、お客さんが持参した不用品を修理が必要なものは直し、きれいにして家具や家電、衣料品や玩具、ガーデニング用品など取扱小売店別に仕分け、モール内で販売。どうしても売れなそうなもの、修理不可能なものは、市の廃品回収に回します。モール内にはオーガニックの食事を提供するカフェが併設されていて、リサイクルを学ぶための学校や、展示スペースや会議室などもあり、環境に関するイベントなども企画されています。
人気のガーデニングコーナー。自転車やパソコンなどもある
昨年4月にモール内にオープンしたCAFÉ RETURAMA。ベジタリアンのオーガニックの軽食やケーキを提供する
既存のリサイクルショップに比べ、より「買い物を楽しんでもらう」ことに重点を置き、14店舗という種類の豊富さで、お客を呼び込みます。お客が増えれば、自動的に集まる不用品も増え、リサイクル率もアップするというわけ。
スウェーデンは、イケアや、H&Mといったファストファッション・ブランドなど低価格で、消費サイクルの短い商品を作り出している国でもありますが、実はゴミを他国から輸入しているほど(!)に、システムが進み、徹底されているリサイクル大国。いま、最終的に埋め立て処分場へ運ばれる家庭ゴミは、なんと全体の1%弱。そのため、ゴミを焼却しエネルギーにする革新的なリサイクル施設をより活用できるように、ノルウェーやイギリス、アイルランドなどから2015年には130万トン以上のゴミを輸入したというから驚きます。
「サステナビリティとは、我慢して生きることではなくて、今あるものをより豊かに生まれ変わらせることではないでしょうか」と、「ReTuna」は呼びかけます。毎日600人から700人のお客がここを訪れ、毎週火曜日15時から行われている見学ツアーも好評だそう(要予約、有料)。
限られた資源の中で、どうやって工夫して、楽しく生きるのか。「ReTuna」が提案する、新しいショッピング、ライフスタイルのあり方から学べることは多そうです。
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