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    <title>地球リポート</title>
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    <updated>2011-12-07T23:50:00Z</updated>
    
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    <title>福島の子どもたちを救え 　〜猪苗代で始まった「外遊び支援」の試み</title>
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    <published>2011-12-07T11:50:25Z</published>
    <updated>2011-12-07T23:50:00Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 暮らしが一変した福島の子どもたち 福島第一原発の事故以後、福島の子...</summary>
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        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>暮らしが一変した福島の子どもたち</strong>
</p>

<p>
福島第一原発の事故以後、福島の子どもたちの生活は大きく変わりました。食べ物は大丈夫なのか、外で遊んでも平気なのか。砂場は？　水は？　いくら安全が強調されても、親の不安が消えるわけではありません。玩具会社ボーネルンドが０歳から６歳の子をもつ母親を対象に9月に実施した調査によれば、<strong>昨年より外遊びを減らした親は全国平均で14.5%、福島県で75%にのぼります。そして、56.7％が外遊びを減らしたことで子どもの成長に不安を感じると答えています。</strong>

<p><strong>感受性の強い幼児期に自然と密接にかかわることは、好奇心を刺激し、協調性を育む</strong>とされ、近年とくに自然体験の大切さが強調されています。アップダウンのある森や林を歩いたり、木登りをしたりすることで基礎体力の向上にもつながります。1990年代半ばにデンマークで生まれた「森のようちえん」をモデルにした幼児教育の場が全国に広がっている背景には、心身ともに豊かな子に育ってほしいという親たちの願いがあります。</p>

<p>猪苗代に拠点を置くNPO法人こどもの森ネットワーク理事長の橋口直幸さんは、2000年から磐梯高原をフィールドに森の楽校フォレストランドを開催。幼児を対象に外遊びの楽しさを伝える「森のようちえん」、原生林の奥にある川や滝で遊ぶ「リトルアドベンチャー」、木の実を食べたり昆虫を探したりして自然に親しむ「里山遊び」など、さまざまな自然体験プログラムを開催してきました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-002.jpg" width="500" height="346" class="mt-image-none" style="" /></span>
「自然は人間教育そのもの」と語る橋口さん
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>外遊びができないストレスが体を悪くする</strong>
</p>

<p>
そんな橋口さんにとって、外で遊びたくても遊べない子どもたちがいることはとても気がかりでした。

<p>「今は原発事故後の第二段階にあると思います。新たな放射能の放出はないであろうことを前提にしても、一度降った放射性物質は除染しないかぎり、その数値は下がりません。室内遊びしかできないとストレスがたまって、健康への悪影響も心配されます。<strong>除染がなかなか進まない中でなにができるのか。せめて週末だけでも子どもたちを外で遊ばせてやりたいという思いでした</strong>」</p>

<p>幸い、猪苗代町は比較的放射線量が少ないため、橋口さんの活動の場である猪苗代に、ともかく子どもたちを連れてこようと。それも継続的な活動でなくてはいけないと、枠組みづくりに動き出します。</p>

<p>バスを手配するだけでも費用がかかり、幼稚園や学校が自ら負担するのは大変です。とはいえ 寄付だけでは 継続的な活動はむずかしいと、平成23年度福島県地域づくり総合支援事業に申請。活動が認められて、この10月に「外遊び支援」が本格的にスタートしました。来年３月までに全35回、延べ1500人（引率の大人を含む）を、協働体を中心とした県内の自然体験施設数箇所に招く計画です。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-001.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-001.jpg" width="500" height="350" class="mt-image-none" style="" /></span>
紅葉シーズンの磐梯山（写真提供：NPO法人こどもの森ネットワーク）
</p>

<p>
橋口さんはもともとアウトドア雑誌のライターをしていました。取材でよく訪れていた磐梯山が気に入り、1994年に猪苗代に移住。その後、湿原を紹介した自分の記事がきっかけで心ならずもモラルの低い観光客を呼び込んでしまったと思えることがあり、自然が荒らされることに自己矛盾を感じるようになったと言います。

<p>「自然のすばらしさを紹介することが、逆に自然にとって悪いことなのではないか」と感じたそうです。<strong>自然を守るためには一方通行で発信するのではなく、長期的にメッセージを伝えることが大事だと考えて</strong>方向転換、ネイチャーガイドとして活動をはじめます。ガイドとして一日に接するのが10人だとして、10回やれば100人にメッセージを伝えられると考えたのです。</p>

<p>ガイドとしての活動を続けるうち、もっと大事なのは子どもたちを導くことだと思いいたります。<strong>価値観が固まっていない子どものほうが自然のメッセージを敏感に感じ取れる。幼いうちに自然を体験ができる場を、とNPO法人こどもの森ネットワークを設立しました。</strong><br />
 <br />
橋口さんは言います。</p>

<p>「自然には多くの学びの場があります。私自身も森から多くを教わりました。<strong>本物の体験の強さは何ものにも変えられない。園庭や公園と野外の森では多様性が違う。</strong>多様な環境で、多様な経験することで、社会や学校での変化に適応する力が高まるといわれています」</p>

<p>とはいえ、ただ子どもたちを自然に放てばうまくいくわけではありません。自然を理解している指導者が導くことが気づきにもつながるのです。</p>

<p>橋口さんが<strong>「外遊び支援」で心がけているのは、子どもたちに放射能を意識させないこと。</strong>通常の生活で、子どもたちはすでに放射能を意識しながら暮らさざるを得ない状況に置かれています。<strong>そうした状況から解放させ、思い切り自然の中で遊ばせてやるのが活動の主目的です。線量は事前に計測し、雨水や落ち葉のたまりやすい場所などは避けます。</strong></p>

<p>橋口さん自身、原発事故後、先行きが見えない不安はあったと言います。けれども、会津の人たちは我慢強いのであまり口に出さない。Ｉターンの自分だからこそできることがあると、橋口さんは福島に残る決心をしました。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>子どもたちが数値を気にする現実</strong>
</p>

<p>
私たちが訪れた11月14日は、「外遊び支援」の３回目。これまでいわき市、福島市の子どもたちがバスでやってきました。この日は須賀川市にある「プリムラ保育園」の子どもたちを招きます。
　
遊ぶ場所は猪苗代駅から車で10分ほどの「昭和の森」。猪苗代湖が見える絶景ポイントとして知られる自然の里です。駅からの景色には磐梯山がそびえ、道の両脇に広がる田んぼには、白鳥たちが集まっていました。冬に備え、稲刈りをした後の落ち穂を食べているのだそうです。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-003.jpg" width="500" height="360" class="mt-image-none" style="" /></span>３歳から６歳の子どもたちがやってきました。遊ぶ前に注意事項をよく聞いて
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-004.jpg" width="500" height="373" class="mt-image-none" style="" /></span>子どもたちはあっという間に散らばっていきました
</p>

<p>
当日はあいにくの曇り空。残念ながら猪苗代湖も霞がかってよく見えません。それでも子どもたちにとっては、特別な日になるはずです。３歳児から6歳児まで、総勢36人が大型バスで１時間かけてやってきました。

<p>プリムラ保育園はもともと自然とのかかわりを大切にしていて、昨年も橋口さんの協力のもと、園の近くの里山で「森のようちえん」活動を行いました。今年は無理だとあきらめていたのですが、橋口さんが外遊び支援を始めたことを知り、より安心な猪苗代まで足を伸ばしたそうです。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-005.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
何が見つかったかな？　サポーターの土屋さんと
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-006.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-006.jpg" width="500" height="250" class="mt-image-none" style="" /></span>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-007.jpg" width="500" height="380" class="mt-image-none" style="" /></span>まつぼっくりこんなにいっぱい拾ったよー
</p>

<p>
バスから降りた子どもたちは、はじける笑顔でさっそく四方八方へと走っていきます。呼び戻すのが大変なほど。まつぼっくりやどんぐりを見つけては歓声をあげ、石の下にダンゴムシを見つけて、おそるおそる触ってみます。大きなきのこを見つけてくる子も。きのこは食べちゃだめだよ、と教えて元の場所に戻します。

<p>どんぐりや葉っぱを拾いながら、ちょっと心配そうな顔でこちらを振り返る女の子がいました。「これ放射能ついてない？　触っても大丈夫？」。４歳の幼い子どもの口から、放射能という言葉が出ることに胸を突かれました。年長の子が年少の子に「触っちゃダメだよ」と諭したり、「息を吸ってもいい？」と聞くこともあるそうです。<br />
 <br />
熊田富美子園長によれば、保育園周辺の放射線量はそれほど高いわけではないとのこと。それでも、親にとっては不安なもの。外遊びには慎重な保護者もいるため、外遊びをするかしないかについては保護者の希望を尊重し、通常の園生活では、外で遊ぶ子と遊ばない子に分かれて行動します。</p>

<p>ここには、小さい子どもたちの「日常」が奪われている現実がありました。実際、外に出ないことによる子どもたちへの健康被害も心配されています。郡山市によれば、外遊びができないために、成長期である幼児たちの体重が増えていないという調査報告もあります。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>子どもたちの笑顔がすべての答え</strong>
</p>

<p>
「<strong>子どもたちにとっては放射能よりも、ストレスのほうが体への影響が大きいのではないでしょうか。</strong>福島に残ると決めたからには親が決心しましょう、と親御さんには伝えています」と、熊田園長は言います。

<p>「親や先生たちの動揺が子どもたちに伝わると、それが子どもたちのストレスになって免疫力が低下して、体が弱ってしまうほうが心配です」<br />
 <br />
この夏は園でのプール遊びは中止。園で出す給食も、地震の前は地産地消として県内の野菜やお米を使っていたのが、今は福島県外の材料を選ぶようになりました。<strong>あの日を境に、すべてが変わってしまったことに、子どもたちを預かる身として無念でいることが伝わってきます。</strong><br />
 <br />
この日は園児みんなが一緒に外で遊べたことがうれしかったと、熊田園長は言います。</p>

<p>「（今日の活動の成否は）子どもたちの表情がすべての答えです。つらいことが多いですが、こうして支援してくれる人がいるのはとてもうれしいことです。みんなに支えられることが、お母さんたちの支えにもなっています」<br />
 <br />
「むやみに怯えない、そして決心すること」が大切だと、穏やかに語る熊田園長の姿に、子どもたちの前で大人が弱気を見せてはいけないのだという信念を強く感じました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-008.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-008.jpg" width="500" height="346" class="mt-image-none" style="" /></span>「子どもたちの笑顔が答えです」と熊田園長
</p>

<p>
この日は小雨が降ってきたこともあり、外で遊ぶ時間は１時間半ほどでしたが、小さい子どもたちには十分な時間です。「楽しかった？」と聞くと、目をきらきらさせて「楽しかった！　また来たい！」と口々に答えてくれました。
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>自然の恵みをアートに変えて</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-010.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-010.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>今度は工作の時間です（緑の村内の「創作体験館わくわく」にて）
</p>

<p>
昼食の後は、橋口さんが震災前から活動の一環としてきた「森の工作どんぐり」の時間です。木の枝やまつぼっくり、どんぐりなど木の実を使って、自由に作品をつくります。飾りを上に高く積み上げていく子もいれば、「春」を表現した子もいて、子どもたちの柔軟なアイデアに驚かされます。それぞれが見事なアート作品を完成させました。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-011.jpg" width="500" height="346" class="mt-image-none" style="" /></span>どれにしようかな――めざせ芸術作品！
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-012.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-012.jpg" width="500" height="440" class="mt-image-none" style="" /></span>みてみて、こんなに素敵なアート作品ができました
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-009.jpg" width="500" height="325" class="mt-image-none" style="" /></span>楽しい時間を過ごしてご機嫌です
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>自然とは「自分を肯定してくれる」存在</strong>
</p>

<p>この日の活動を２人の若者が支えていたことも、とても印象に残りました。

<p>１人は地元の猪苗代出身で、東京の大学を卒業したばかりの土屋勇輝さん。アルバイト先から就職の誘いを受けていましたが、３.11の地震を受けてそれを断り、ともかく何か自分にできることがしたい、と故郷に帰ってきました。橋口さんと知り合ったのは、避難所となっていた総合体育館（一時は500人が避難）に飛び込みでボランティア活動をしていたときです。橋口さんは町役場に掛け合って、避難所に子どもの遊び場を作るなど精力的に活動してきました。それを土屋さんも手伝ってきたのです。<br />
 <br />
米農家を営む父親からは「お前に何ができるんだ」と叱責されたとか。それでも今は、家業の傍ら地元のためにさまざまな活動に取り組む息子に理解を示してくれています。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-013.jpg" width="500" height="350" class="mt-image-none" style="" /></span>いてもたってもいられないと福島に戻ってきた土屋さん
</p>

<p>
もう１人が、福島大学４年生の西海明香里（さいかいあかり）さん。小学校教諭、保育士、幼稚園教諭の資格取得に向けて勉強する傍ら、１年ほど前から森のようちえんの活動を手伝ってきました。

<p>「子どもたちと一緒に自然の中で遊ぶことで、自分も自然と向き合うことができました。子どもたちの関心の深さには学ぶことが大きく、違った目線を教えられた気がします」<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="059-014.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/059-014.jpg" width="500" height="350" class="mt-image-none" style="" /></span>子どもたちに自然に対する姿勢を教えられたと語る西海さん
</p>

<p>
「自然と向き合うとどんなことを得られますか？」
 そう尋ねると、ちょっと考えて「自分が肯定されている気がします。すべてを受け入れてくれるというか」と西海さん。

<p>土屋さんもそれには大きくうなずきます。「自然は寛大なんですよ。生きる力を育ててくれる。東京に行って初めて、自然と相対することがない社会があることがショックだった。人間のルールしかない社会があった。自分は自然と切り離せない環境で生まれ、海や山、川すべてがフィールドだったから。<strong>学生時代に環境教育活動などもやってみたが、どこか違うと感じていた。ここでは本当の自然を教えられる。自然を知っている子にはもろさがないんです。</strong>知らないフィールドで鍛えられることで、心も強くなれる」</p>

<p>自分という存在を無条件で肯定してくれる自然が、子どもたちにとってどれほどかけがえのない存在なのか。自然と共に生きてきた２人の言葉には説得力がありました。橋口さんも、「自然はすべてを受け入れてくれる」と言います。自己肯定を育むには、包容力のある自然は絶好の教材というわけです。それなのに、自然の風の心地よさに包まれるどころか、風向きを心配する子どもたちがいるという悔しさが言葉の端々ににじんでいます。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>1年や2年で終わる問題ではない</strong>
</p>

<p>
けれども逆にそんな状況だからこそ、自然の力が子どもたちの心を解きほぐす頼もしい味方になってくれるかもしれません。<strong>「外遊び支援」の活動を一過性のものにしたくない</strong>と橋口さんは言います。夏休みや冬休みの長期休みに県外に子どもたちを連れ出す活動もありますが、もっと日常的な支援の場も必要です。福島県の子どもたちに継続的に外遊びの活動を支援していくには、億単位の予算が必要だと言います。

<p>「決して小さくない額ですが、福島の子どもたちのためになんとかして予算を確保して、長期的に取り組んでいきたい。<strong>これは1年や2年で終わる問題じゃないんです。同じような活動をしている団体をつないでネットワークをつくり、福島県内広域で活動できる仕組みを整えるべく動いています</strong>」と、橋口さんは言います。<br />
 <br />
今回現地を訪れて、最も胸が痛んだのは、子どもたちが放射線量を気にしながら暮らしていることでした。福島原発から離れた地域では、たとえ大人たちが不安を抱いていても、幼い子どもたちまでは伝わっていません。</p>

<p>デイヴィッド・ソベルは著書『足元の自然からはじめよう』の中で、「重要なのは子どもが自然の世界と結びつく機会をもつこと、自然を愛することを学び、自然に包まれて居心地の良さを感じることだ。環境破壊について教えるのはそれからでいい」と書いています。</p>

<p>福島の子どもたちは、小学生どころか幼児の段階で、環境破壊の恐ろしさを知ってしまいました。そして、この状況がいつまで続くかわからないという不安につつまれています。子どもたちは、美しい福島の自然という遊び場を失っただけではなく、人生の大切な時間を奪われてしまった、そう感じずにはいられませんでした。</p>

<p>もちろん、私たちが見たのは福島の今のほんの断片です。もっと線量が高い地域に住む子どもたちのより過酷な実情を伝えられるものでもありません。それでも、大人である私たちが二度とこうした事態が起きないよう、声を上げていかなければいけないことを痛感させられました。そして、福島で今を生きる子どもたちのために、金銭的・精神的・物理的な支援を続けなければいけないことも強く感じました。子どもたちの大切な時間と未来をこれ以上奪わないために。<br />
</p></p>

<p>
関連URL
<br>外遊び支援事業　<a href="http://www.sotoasobi.info/" target="_here">http://www.sotoasobi.info/</a>
<br>森の楽校フォレストランド　<a href="http://www.fr-land.com/" target="_here">http://www.fr-land.com/</a>

<p>
<strong>著者プロフィール</strong><br />
小泉淳子<br />
ニュース週刊誌の記者・編集者を経て、現在は書籍の編集に携わる。教育問題やカルチャーなどを取材。環境や人にまつわる問題を多面的な視点で発信していきたいと考えている。</p>
<br />

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆：小泉淳子<br />
写真・編集：上田壮一（Think the Earth）<br />
</small></p></div>]]>
        
    </content>
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    <title>水道シフトをおこそう！　震災を機に見なおされる生物浄化法</title>
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    <published>2011-07-15T10:31:15Z</published>
    <updated>2011-09-05T11:41:33Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 大量のエネルギーを使う上下水道 被災地で給水を受ける人々 3月11...</summary>
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        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>大量のエネルギーを使う上下水道</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-001.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-001.jpg" width="500" height="354" class="mt-image-none" style="" /></span>
被災地で給水を受ける人々
</p>

<p>
3月11日に発生したM9.0の巨大地震、それにともなう大津波は、生活インフラに大きな被害をもたらし、私たちの生命線ともいうべき水インフラが壊滅的な被害を受けていました。

<p><strong>被災地では水道管が壊れ、まちなかに水があふれ出していました。浄水場の地盤が陥没したり、貯水池が崩れたりしました。電源を失い機能停止になった浄水場も多くありました。水をつくるのに電気が必要であることをあらためて認識させられました。</strong>こうして岩手、宮城、福島、茨城、千葉を中心に220万戸以上が断水したのです。</p>

<p><strong>そうしたなか稼働し続ける浄水場がありました。たとえば、大きな被害を受けた石巻市にあって、大街道浄水場は、電源を失ってからも浄水することができ、給水拠点となっていました。激しい揺れに耐え、電源を失っても動き続ける。この浄水場にはどんな秘密があったのでしょうか。</strong><br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>水道にかかるエネルギー</strong>
</p>

<p>
ところであなたは、自分が利用している水道水が、どこの浄水場でつくられたものか知っていますか。浄水場によって、できる水の質、かかるコストやエネルギーは変わります。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-002.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>
水道のエネルギー使用量
</p>

<p>
そもそも上下水道には多くのエネルギーが使用されています。上水道では、水源からの取水・導水、浄水処理、各家庭まで送水・配水に、年間約79億kWh。下水道でも、導水、下水処理、放水に年間約71億kWh。<strong>上下水道合わせて年間約150億kWhということになり、これは原子力発電所1.5基が創出するエネルギー量に匹敵します。</strong>

<p>浄水方法には、緩速（かんそく）ろ過、急速ろ過、膜ろ過があります。それぞれにかかるエネルギーを比べると、緩速ろ過、急速ろ過、膜ろ過という順番になります。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>安全・低コスト・省エネの生物浄化法</strong>
</p>

<p>
そこで緩速ろ過に詳しい中本信忠さん（<a href="http://www.cwsc.or.jp/" target="_here">地域水道支援センター</a>理事長・信州大学名誉教授）に話を聞きました。</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-004.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>JICAの研修で緩速ろ過のしくみを簡易的な装置をつかって指導する中本さん（右端）
</p>

<p>
「緩速ろ過という名前は、砂にゆっくり水を流して物理的にろ過することからつけられましたが、これは古い認識です。

<p><strong>実際には、ろ過槽の表面に棲んでいる、目に見えない生物群集の働きで水をきれいにすることだとわかっています。そのスピードは速く、けっして緩速ではありません。ですから『生物浄化法』という名前で呼ぶほうが実態にあっています。</p>

<p>薬の力は使わず、自然の力で水をきれいにするしくみは、森の土壌が水をきれいにする自然界のしくみをコンパクトに再現したものです。</strong></p>

<p>震災直後も生物浄化法（緩速ろ過）の浄水場は、安全な水をつくる役割を果たしました。</p>

<p>その理由は、<strong>シンプルで壊れにくい構造であること、浄水過程で電力を必要としないこと、塩素以外の薬剤を必要としないこと</strong>によります。過酷な状況下でも平常の機能を失いませんでした」</p>

<p>さらに放射性物質の除去にも優位に働くというデータもあります（島根県衛生公害研究所報　第28号）。ヨウ素-131の除去率は34〜38％、ルテニウム-103は66〜68％、セシウム-137は82％とそれぞれ報告されています。</p>

</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-003.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>
長野県上田市の腰越浄水場
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-005.jpg" width="500" height="230" class="mt-image-none" style="" /></span>ろ過槽の表面に住む生物群集
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>急速ろ過の欠点</strong>
</p>

<p>
<strong>一方、現在もっとも一般的な浄水方法は急速ろ過といいます。もともと日本では生物浄化法が採用されていましたが、戦後多くの浄水場が、急速ろ過に切り換えられました。</strong>

<p>急速ろ過は、薬（凝集剤）によって水に含まれる汚れを沈め、上ずみをジャリや砂でろ過し、スピーディーに大量の水をつくることができます。</p>

<p>「大規模」「集中」型の施設で効率よく浄水する反面、いくつかの欠点もあります。まず、水溶性有機物やアンモニアを除去することができないので、塩素による殺菌を行う必要があります。また、マンガン、臭気、合成洗剤なども除去することができないので、水の味は悪くなります。</p>

<p>このため東京など都市部の水道では、高度浄水処理が行われるようになりました。急速ろ過では十分に対応できないカビ臭、カルキ臭などの原因物質をオゾン処理、生物活性炭などで処理します。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-007.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>急速ろ過の浄水場で凝集剤を入れているところ
</p>

<p>
クリプトスポリジウムという原虫により水道水が汚染され、集団下痢が発生したこともありました。クリプトスポリジウムは塩素では死滅しないので、膜ろ過（ミクロの孔のあいたフィルターを通し、原水中の濁りや汚れを除去する）が奨励されました。

<p>中本さんはこう語ります。</p>

<p>「生物浄化法が急速ろ過へと移行することで、水需要の急速な伸びに大規模・集中的に対応し、維持管理の自動化など合理的な面もあります。しかし、一方でカビ臭問題、クリプト原虫の汚染問題などは急速ろ過法の技術的な「穴」であって、生物浄化法のままであれば問題はおきなかったことでしょう」</p>

<p><strong>これらの問題に技術力で対処すべく、活性炭投入、オゾン処理、膜処理など、さまざまなアップデートが繰り返されました。</strong>これによって設備投資や消耗品などのコストとエネルギーが必要になり、水道事業の財政は苦しくなりました。</p>

<p>水道事業は、コストを利用者数で頭割りすることが原則なので、利用者数の少ない小規模コミュニティーほど、水道料金が高くなるなど負担が顕在化しています。</p>

<p>自治体ごとの水道料金差は大きく、一般家庭での平均的な使用料である月20トン（口径20ミリ、2010年4月現在）の料金を比較すると、全国で一番高いのは熊本県宇城市旧三角町地区の1万2600円、最も安いのは山梨県笛吹市旧芦川村地区の840円となっています。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>原虫対策で生物浄化法を選択した町</strong>
</p>

<p>
1997年、岡山県哲多町（現新見市）は、県の水質検査機関から、原水にクリプトスポリジウム（原虫）らしきものを検出したという通知を受けました。厚生省（当時）は緊急給水停止と浄水処理を要請しました。

<p>哲多町の水道担当者に当時の話を聞きました。</p>

<p>「もともと哲多町は、浄水施設がなくてもよいほどの良質な原水に恵まれていました。浄水場のなかった哲多町は、この問題によって浄水場を新設しないと給水できないという事態に直面したのです」</p>

<p>哲多町では会議が重ねられ、「安全でおいしく安い水を供給できる」（担当者）と生物浄化法（緩速ろ過）の浄水施設の導入を決めました。</p>

<p>厚生省は、クリプト対策指針では急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過のいずれの処理施設でもよいとしながら、膜ろ過以外には補助金を出さない方針でした（後に急速ろ過、緩速ろ過にも補助金を出す方針に転換）。</p>

<p>それでも哲多町は生物浄化法（緩速ろ過）の導入を決めました。その理由について担当者はこう言います。</p>

<p>「建設費、維持・管理費が安いからです。また急速ろ過では、それまでと比べて塩素投入量が格段に増えるので、町民の健康リスクが高くなると考えました」<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>ビール会社に選ばれた剣崎浄水場</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-009.jpg" width="500" height="239" class="mt-image-none" style="" /></span>剣崎浄水場
</p>

<p>
群馬県高崎市にある剣崎浄水場は、明治43年に創設された高崎市で最も古い浄水場です。生物浄化法の浄水場はシンプルな構造で長持ちするので、明治、大正期に建設されたものが、いまでも現役で稼動しています。

<p>ここにはかつてキリンビールの工場がありました。ビール会社が醸造工場を建設するに当たり、日本各地の水源や水道を調べ、この地を選んだのです。</p>

<p>この浄水場を訪ね、特別に水を飲ませてもらったことがあります。浄水場の人が、ろ過したばかりの塩素を加えていない「できたての水」をもってきてくれました（本来、水道水は塩素を添加して供給することが法律で定められています）。浄水場の人は、紙に赤マジックで線をひき、そのうえに水の入った透明のコップをおきました。<br />
「どうです。すごい透明度でしょう」</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058_016.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058_016.jpg" width="300" height="286" class="mt-image-none" style="" /></span>コップの下の赤線がくっきり見えるのはきれいな水の証
</p>

<p>私も水の透明度をみるときに、しばしばこの方法を使いますがが、これほどはっきりと赤線の見えた水は初めてでした。<br />
「飲んでみてください」<br />
水を口にふくむと、少し甘みを感じました。すっきりとしていますが、飲みごたえがありました。その後、この水でコーヒーをいれてもらいました。その味はいまだに忘れることができません。</p>

<p>剣崎浄水場では、烏川の水を、群馬郡榛名町の春日堰から取り入れ、土地の高低差を利用して浄水場まで運び、生物浄化法できれいにしています。導水にかかるエネルギーも使用しない、理想的なかたちと言えます。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>稼働以来一度もメンテナンスしていない西原浄水場</strong>
</p>

<p>
<strong>生物浄化法は適切に管理すれば、メンテナンスはほとんど必要ありません。</strong>腐った藻や砂ろ過槽にたまった汚泥をときどき取り除く程度です。

<p>長野県須坂市にある生物浄化法の西原浄水場は、草ぼうぼうで誰もいない小さな浄水場。電機は管理用のメーターのみ。設備のメンテナンスどころか、管理もいらないというのだから驚きます。</p>

<p>須坂市の水道担当者によると、<strong>「2004年に稼動開始しましたが、その後まったくメンテナンスをしていない」</strong>のだそう。それでもボトリングして売れるほどの水（『蔵水』。現在は販売中止）ができています。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-010.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-010.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>西原浄水場
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-011.jpg" width="250" height="187" class="mt-image-none" style="" /></span>蔵水
</p>

<p>
中本さんはこう説明します。

<p>「生物浄化法で大切なのは、生物群集にきちんと働いてもらえるよう考えることです。生物群集が働く環境さえ整っていれば、人間が手を加える必要はないのです。</p>

<p>『緩速ろ過』という名前が浸透しているために、水をゆっくり流さなくてはいけない、そのために給水量が少ない、といわれていますがそんなことはありません。自然の伏流水は流れにスピードがあっても、きれいな水が湧きだしています。</p>

<p>むしろ<strong>大切なのは水を流すスピードを変えないこと。速くても一定であれば生物群集は活発にはたらくことができます</strong>」<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>各地で復活する生物浄化法</strong>
</p>

<p>
最近、生物浄化法の安全・低コスト・省エネというメリットに注目し、浄水方法を見直す水道事業者が現れました。

<p>広島県三原市の西野浄水場では、急速ろ過と生物浄化法を併用していましたが、2004年に生物浄化法一本の浄水場となりました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-012.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-012.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>広島県三原市の西野浄水場
</p>

<p>
宮城県美里町では2008年に生物浄化法の浄水場が稼働しました。美里町の水道担当者はこういいます。

<p>「美里町では、これまで急速ろ過の浄水場で水を賄ってきましたが、老朽化にともない新しい浄水場が必要となりました。その際、住民の意思で緩速ろ過を採用したのです。おいしい水ができて、低コストであることが決めてとなりました」</p>

<p>沖縄県の伊良部島は生物浄化法でしたが、その後、急速ろ過と膜処理を導入しました。しかし、莫大な経費がかかり借金が膨らみました。そこで宮古島市との合併を機に、中止した生物浄化法と膜処理を一緒に動かすことでコスト削減を図っています。</p>

<p>沖縄県那覇市の北谷浄水場では、海水淡水化処理施設を建設しましたが、動かすと莫大な維持費が発生し、赤字が膨らみます。そこで緊急用にだけ動かすことにしました。</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>限界集落を救った緩速ろ過</strong>
</p>

<p>
大分県の山間部には、住民が十数人という小さな集落が点在しています。
大分県の水道担当者がこんな話をしてくれました。

<p>「こういうところは水道が敷設されておらず、昔からある浅井戸水を利用しています。ところが近年、井戸水から鉄やマンガン、雑菌などが検出されるようになり、飲用不適になりました。しかし、十数人の集落に新たに水道を敷設することが財政的に厳しい。そこで生物浄化法ユニットを設置しました」</p>

<p>金属製のコンテナのなかに石や砂をいれ、そこに汚れた井戸水を通過させると、生物群集のはたらきによってきれいな水ができあがります。</p>

<p>「十数万円という低コストで安全な水が供給できるようになりました。現在、時間をかけてさまざまなデータをとっており、安定的に使用できるとわかったら、生物浄化法ユニットを販売する計画もあります」</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-013.jpg" width="500" height="435" class="mt-image-none" style="" /></span>大分県の小集落で活躍する生物浄化法ユニット
</p>

<p>厳しい水道経営に対処するため、厚生労働省はスケールメリットで対応すべく「広域化」という方針を打ち出していますが、このような小規模集落までも含めた広域化は実際には厳しいと予測されます。そのようなケースでは、こうした生物浄化法（緩速ろ過）ユニットが活躍するでしょう。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>エネルギーを生み出す西野浄水場、砂払浄水場</strong>
</p>

<p>
広島県三原市の西野浄水場では、配水池（浄水がおわった水を地下のタンクに貯蔵する）の上の部分の土地を有効活用し、太陽光発電設備を備え、年間約１万1000kWhの電力を発電します。生物浄化法そのものには電力は必要ありませんが、西野浄水場で使うすべての電力の15.2％が太陽光発電でまかなえています。

<p><strong>今後、太陽光発電の性能が上がり、コストが下がっていけば、さらに多くのエネルギーを発電できるようになります。そうすれば浄水場はエネルギーを自給できるようになり、さらにはエネルギー基地として活躍できるようになるでしょう。</strong></p>

<p>太陽電池モジュールは、設置コストが高く、なかなか採算が合わないという課題がありますが、長野県飯田市の砂払浄水場は、おひさま進歩エネルギー株式会社が運営するファンドによって太陽電池パネルが設置されました。</p>

<p>同社の原社長はこう語ります。<br />
「砂払浄水場では、市民出資で太陽電池パネルが設置されました。太陽電池パネルは、浄水場内で使用する以上の電力を発電し、余剰分は中部電力に売り、出資者に還元しています。各地の浄水場には広い敷地があるので、このスキームを使って、水と電気を供給する存在になれるのではないでしょうか」</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-014.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-014.jpg" width="500" height="305" class="mt-image-none" style="" /></span>長野県飯田市の砂払浄水場
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="058-015.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/058-015.jpg" width="500" height="340" class="mt-image-none" style="" /></span>おひさま進歩エネルギーの原亮弘さん
</p>

<p>ふだん何気なくつかっている水道水ですが、その背景にはたくさんのコストとエネルギーがかかっています。これを減らしながら、安全な水を供給することがとても大切です。<strong>生物浄化法は、「安全」・「低コスト」・「省エネ」水道へのシフトを考えるうえで、キーとなる技術といえるでしょう。</strong><br />
</p></p>

<p>
<strong>著者プロフィール</strong><br />
橋本淳司<br />
著述家、アクアスフィア代表、日本水フォーラム節水リーダー（<a href="http://www.waterforum.jp/jpn/" target=_"here">http://www.waterforum.jp/jpn/</a>）。公正で持続的な水利用を願いつつ、各地の水問題を取材し、水をテーマに執筆活動を行っている。同時に、子どもや一般を対象に、水の大切さ、世界各地の水事情を伝える「水の授業」を行っている。著書に『水問題の重要性に気づいていない日本人』（PHP 研究所）、『おいしい水きれいな水』（日本実業出版社）『67億人の水 「争奪」から「持続可能」へ』（日本経済新聞出版社）など。Think the Earthプロジェクト「みずのがっこう」副校長。</p>
<br />

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆・写真：橋本淳司<br />
編集：風間美穂、上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>EARTHLING インタビュー：山崎直子（JAXA宇宙飛行士）</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2011/05/rpt-57.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2011:/jp/thinkdaily/report//7.2039</id>

    <published>2011-05-12T11:27:41Z</published>
    <updated>2011-05-12T11:27:50Z</updated>

    <summary>※本インタビューは2011年4月に予定されていたイベント EARTHLING 2...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    <category term="宇宙飛行士　山崎直子　日本実験棟「きぼう」　ディスカバリー号　スペースシャトル　国際宇宙ステーション　iss" label="宇宙飛行士　山崎直子　日本実験棟「きぼう」　ディスカバリー号　スペースシャトル　国際宇宙ステーション　ISS" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="caption">※本インタビューは2011年4月に予定されていたイベント EARTHLING 2011にあわせて2011年2月23日に収録されました。イベントは震災の影響で2011年7月30日に延期になりました。イベントの詳細は<a href="http://www.thinktheearth.net/jp/earthling/">EARTHLING 2011</a>をご覧ください。同じ内容がThink the Earth Paper Vol.8にも掲載されています。</p>

<p class="section-title">
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<strong>地球という生きものと対等にある</strong>
</p>

<p>
----世界中のほとんどの人は、まだ宇宙に行ったことがありません。でも、何が宇宙なのかと考えると、地球も宇宙ですし、いま、ここも宇宙の一部ですよね。だから宇宙にはもう行っているよね、としたときに、それでもなお「宇宙に行った」という感覚はどういうところから生まれるんですか？

<p>山崎　おっしゃる通り、<strong>ここも宇宙の一部なんですよね。自分の体も星と同じ成分でできている</strong>と小学生のときに知って感動したんですけれど、つまり全部、宇宙なんです。<strong>だから宇宙に行くという言い方はあまり正しくなくて、「宇宙の中で地球の重力圏を脱出する」という感じが近いですね。</strong></p>

<p>----重力圏を脱出すると何が変わるのですか？</p>

<p>山崎　そこはもう、全然"違う"んです。重力圏を脱出するまで、宇宙船はどんどん速度を上げて加速していくのですが、エンジンを切った瞬間、ふっと無重力になる。その落差がものすごく大きいんです。私が座っていたのはスペースシャトルのミッドデッキで、窓はちょっと遠くにあったので地球がよく見えたわけではないのですが、その落差で、「宇宙だ！」というのをまず感じました。その後、窓の前に行って地球を見たとき、ああ、ほんとうにきれいだなあと感じました。</p>

<p>----それは予想していた通りでしたか？　</p>

<p>山崎　もちろんきれいなんだろうな、とは思って行くんですけれど、<strong>実際に見ると圧倒されましたね。視覚だけではなく、五感全部で圧倒されました。</strong></p>

<p>　昨年の２月、宇宙ステーションの端に地球観測用のキューポラという窓が新しく取り付けられました。私たちのミッションは昨年４月でしたので、その直前のことです。キューポラは上半身が全部入るようなドーム型をしていて、180度プラネタリウムみたいに景色が見えるようになっているんです。位置的には地球と逆さに立っている感じなのですが、キューポラに入ると、地球が真上に見えるんですね。飛行機で地上を飛ぶと眼下に景色が広がって、高いところにいるな、という感じになりますよね。でも宇宙だと上下の感覚がないため、どの姿勢をとっても違和感がないんですけれど、<strong>「地球が真上に見える」というのは結構ショッキングな構図なんです。</strong>そういう見え方を体験すると、<strong>「宇宙にいる」という感覚は、地上より高いところにいるのではなく、地球という生きものと宇宙船とが向き合っている、対峙している、互いが対等であるような感じになるんですね。</strong>その感覚は自分でもすごく面白いなと思いました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="057-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/057-002.jpg" width="500" height="342" class="mt-image-none" style="" /></span>
キューポラの中で船内を見上げる山崎宇宙飛行士（写真：NASA）
</p>

<p>
----宇宙空間でけんかしたり、ネガティブな感情のぶつかり合いはあるんですか。

<p>山崎　あるときはありますよね。でもひとつのチームでミッションを達成しようという共通の目的意識が高いですし、結構忙しいので、けんかしている場合じゃない（笑）。長期滞在をしていると微妙なすれ違いがおきたり、グループ的なダイナミックスがあるということは聞きます。なので、どんなに忙しくても、毎日夜ご飯は一緒に食べましょうと。食事はちゃんと食卓で顔を合わせてとろう、というようにみんな気を使っていますね。</p>

<p>----普通の家庭と一緒ですね（笑）。</p>

<p>山崎　そうなんですよ。今回私は２週間のミッションで忙しく、毎日は無理だったのですが、２週間で３回は全員で食事をとったんです。最初にロシア人飛行士がロシア料理を振る舞ってくれたので、２回目は野口さんと私とで日本食を振る舞おうということで、手巻き寿司を作ったんですね。南極の昭和基地で使っている保存食を宇宙にも持っていっていて、玉子焼きや生姜焼きを具にして、ご飯で巻いて食べました。そうやってみんなで一緒に食卓を囲むというのが、宇宙でも一番楽しいですね。</p>

</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>たくさんの人が宇宙に行く時代</strong>
</p>

<p>
----空を見上げると、地上からも宇宙ステーションが見えます。実際に行ってから見ると、行く前とは思うことに何か違いはありますか。

<p>山崎　あそこに人がいる。人があそこまで行けるんだというのは、何か不思議な気がしますね。空を見ていると、宇宙ステーションが横切っていくのも星のように見えます。でもその星は人がつくったもので、その中で人が生活している。人の力ってすごいなと思いますね。</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="057-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/057-003.jpg" width="500" height="322" class="mt-image-none" style="" /></span>
国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」にてクルーの集合写真（写真：NASA）
</p>

<p>----多くの人が宇宙ステーションを「理想のおうち」とイメージするかもしれませんが、すごい音もするし、空気も変えられないし、たぶん、そんなに居心地のいいところではないんじゃないかと思うんです。山崎さんは学生時代に宇宙ホテルの設計等の研究をされていたということで、実際の住み心地というか、居住性の点で感じられたことはありますか？</p>

<p>山崎　まずスペースシャトルで宇宙ステーションまで行くんですけれど、スペースシャトルは先端にあるコックピットの部分がものすごく狭いんですね。その下のミッドデッキが居住空間で、７人が３日間、宇宙ステーションに到着するまで生活します。まぁ狭いとはいっても、上下左右使えるので、そんなには気にならないんですが......。</p>

<p>　宇宙ステーションはスペースシャトルに比べれば、全然広くて快適です。<strong>宇宙ステーションの真ん中の部分が人が居住できるところなのですが、ジャンボジェット機にして大体２機分の容積があるんですね。</strong>ただ、閉じられた空間なので、空気がこもっているというか、匂いがこもっていてホコリっぽいなという印象はありました。とにかく、人工的な空間なんです。ほんの少し緑もありますが、それも人工的な緑であって、<strong>一歩宇宙船の外に出れば死んでしまう環境の中で、この宇宙船の中だけが生かされている空間だなという感じはします。</strong></p>

<p>----人が宇宙に行くというのは、地球と同じ環境を一緒に持っていくということ。そのうえで、人が宇宙で暮らす時代が来るのはどのくらい先だと山崎さんは捉えていますか？</p>

<p>山崎　私自身意外だったのが、宇宙での生活って結構普通なんです。朝起きて、顔をふいて、歯を磨いて、ご飯食べて、仕事をして、夜寝袋で寝て......と、ルーチン化して日常になるんですね。<strong>そういう意味では、宇宙で暮らす時代はすぐ来ると思います。実際に今も６カ月単位で人が宇宙ステーションで生活している。それよりも、どれくらい沢山の人が宇宙に行く時代になるか、というほうが大きいのかなと思います。</strong>まずは、弾道飛行から始まりますよね。上まで行って戻ってくるのから始まって、400キロくらいの低軌道で周回し、ずっと滞在するというようになるまでには......　あと50年くらいかなと思います。</p>

<p>----行かなければならない理由さえできれば、10年後でもあるような気がするんですが。</p>

<p>山崎　それはそう思います。もうひとつは、地球を離れることによって、地球のことがわかるんですね。一度自分の場所を離れること、宇宙に行くことは地球を見直す大きな目になりますし、<strong>この宇宙ステーションというのは、ミニチュアの地球みたいな感じがするんですね。いろいろな国籍の人もいますし、その中で水もリサイクルして、尿も飲み水に変えて、空気もできるだけ再利用する。まだ食べ物は補給に頼っていますが、宇宙ステーションでの生活を存続させる技術というのは、これからの地球のための技術につながっていくと思うんです。</strong><br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>開かれた宇宙に向けた2つのミッション</strong>
</p>

<p>
----今後、宇宙飛行士のニーズはどう変わっていくと思われますか？

<p>山崎　<strong>これからのミッションを考えたとき、宇宙飛行士の役割としては２つ方向性があるかなと思います。ひとつはフロンティアを拡大していくミッション。</strong>今はスペースシャトルにしても、宇宙ステーションにしても、地上から400キロメートル上空。まだまだ低軌道なんですね。それよりも遠く、月であるか、小惑星であるか、火星になるか、そのすべてになるのか、より遠くのフロンティアを拡大していく方向です。<br />
　<strong>もうひとつが、地球の低軌道の宇宙ステーションなり、あるいはもっと別の宇宙ステーションができるのかもしれませんが、それを活用していくミッション。</strong>たくさんの人が観光という形で宇宙へ行ったり、長く滞在するようになっていくという方向です。<br />
　<strong>地球低軌道のほうは、おそらくどんどん民間の力も入れるようになり、より開かれていくでしょうね。</strong>遠くのフロンティア拡大はどうしても国主導のプロジェクトになる可能性が高いと思います。火星まで行って帰ってくるとなると、何年もかかるミッションですよね。より強い精神力も求められますし、協調性も求められます。自分自身の健康も管理しないといけないということで、医学系の宇宙飛行士も必要となるでしょう。火星や月を探査するとなると、地質学に秀でた人が求められるかもしれません。それぞれのミッションによってニーズは変わってくるかなと思います。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="057-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/057-004.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
</p>

<p>
----サイエンティスト、エンジニア以外の方が宇宙に行くと、何か変わるんじゃないかなと思うのですが。

<p>山崎　そう思いますね。今、宇宙飛行士の条件が、日本でもアメリカでも理系の大学を出ていることになっているんですけれど、いずれは変わって欲しいですよね。特に芸術の感性を持っている人が宇宙に行くと、もっといろいろなことを発信できるだろうし、新しい文化も生まれるのではないでしょうか。今後50年のうちにそういう変化は起こり得ると思います。</p>

<p>----多くの人が宇宙に行くとなると、更にテクノロジー以外のことも必要になってくると思いませんか？</p>

<p>山崎　そうですよね。<strong>今までは、人もある意味システムの一部として完全に組み込まれていて、機械化されてしまっているところがあったと思うんですけれど、さまざまな個性をもった、たくさんの人が宇宙に行くようになると、とてもそういうモデルじゃやりきれない</strong>ですよね。地球上はまだ環境的に広いし、いろいろなマージンがある。だけど宇宙船の中は、今よりも少し大きくなったとしても、人工的な空間であり、かつリソースが非常にクリティカルだし、何かひとつ故障すると、すぐに命に直結するような場所なんです。対応策を何重に組んだとしても、その危険は地球とは比べものにならない。だから、宇宙船の中で人が長期にわたってどう生活し、生まれ、一生を過ごしていくのかは、非常に興味深いことだなと私は思いますね。</p>

<p>----それにしても、過去に前例のないフロンティアなプロジェクトには、一般的に言われているプロジェクトマネジメントではカバーできない何か違うエッセンスが必要となるはずだと思うんですね。そこでの共通の知というのは何なのか。リーダーシップとフォロワーシップなのか、好奇心なのか、山崎さんはいろいろな宇宙飛行士の方を見られていて、宇宙飛行士の共通の技能はどういうところにあると思いますか。</p>

<p>山崎　宇宙飛行士はそれぞれ結構個性はあって、性格という意味だと、ばらばらなんですね。でも、共通のエッセンスは私もあると思います。それは、おそらく判断力なのかな。<strong>優先度をつけて行動できること。何かが起こることは想定内、宇宙ではどんなことでも起こり得る。だから、ちょっとやそっとのことではたじろがないし、何か起こったときに、ここまでに押さえようという、そのセーフティーネットというか、ミニマムのラインを自分でしっかり考えている人が多い</strong>と思います。たとえば、何が起こってもとりあえず生きて帰ってくるぞとか、宇宙ステーションは存続させるぞ、とか。そのミニマムラインをしっかり押さえた上で、あるときは冷酷に、他のことは切り捨てたり、優先度をつけたり。そういう判断をできることですかね。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>フロンティアは未知に向かい、臨んでいくこと</strong>
</p>

<p>
----山崎さん自身のフロンティアというのはどういうところにあるのでしょう。

<p>山崎　単純に考えれば、より遠くに、というのがフロンティアなのかもしれないですけれど、物理的な距離とはまたちょっと違うような気もしているんです。私にとっては、少しでも未知なことに向かい、臨んでいくのがフロンティアなのかなと。<br />
　そういう意味では、これから<strong>私にとってのフロンティアは、一部のいわゆる宇宙族だけではなく、もっとたくさんの人が宇宙に行けるようになること。</strong>それによって活動領域が広がり、「人の可能性にはいろいろな切り口がある」ということに繋げていくことなのかなという気がします。<strong>何人かの特定の人が行くだけですと、それはフロンティアにはならないんです。行ったという冒険で終わってしまいます。</strong><br />
　そして、もっともっとたくさんの、それこそ地球全体を考える人たちが宇宙に目を向けるようになること。結局は宇宙でもどの分野でも、<strong>最終的には人の気持ちというのが大きくて、技術やシステムをつくっているのも人ですし、自分自身も含めて、人とのつながりを見つめ直しながら新しい可能性を広げていきたい。</strong>私自身もまだまだこれからなので。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="057-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/057-005.jpg" width="350" height="530" class="mt-image-none" style="" /></span>
</p>

<p>
<strong>山崎直子　略歴</strong><br />
1970年千葉県生まれ。96年東京大学宇宙工学専攻修士課程修了後、NASDA（現JAXA）に勤務し、JEMプロジェクトチームで「きぼう」日本実験棟の開発業務などに従事。2001年JAXAで宇宙飛行士として認定。2006年NASAよりMS（搭乗運用技術者）として認定。2010年スペースシャトル「ディスカバリー号」による国際宇宙ステーション（ISS）組立ミッションにMSとして参加した。現在、東京大学で航空宇宙工学に関する研究に従事。</p>
<br />

<div style="text-align: right;"><p><small>聞き手：神武直彦（慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科准教授）<br />
写真（ポートレイト）：吉澤健太<br />
編集：岡野 民（Think the Earthプロジェクト）<br />
</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>おいしいお米と生物多様性を両立させる「ふゆみずたんぼ」の底力</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2011/02/rpt-56.html" />
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    <published>2011-02-23T14:17:20Z</published>
    <updated>2012-02-06T01:37:29Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 ラムサール・トライアングル 岩渕さんが住む宮城県大崎市は都内から新...</summary>
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    <category term="生物多様性、ふゆみずたんぼ、ラムサール条約" label="生物多様性、ふゆみずたんぼ、ラムサール条約" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>ラムサール・トライアングル</strong>
</p>

<p>
岩渕さんが住む宮城県大崎市は都内から新幹線で1時間半ほど。仙台市から北東に50キロほどのところです。1月中旬、訪れた日の気温はほぼ0度。風がびゅうびゅうと横から吹き付け、雪が舞います。慣れない寒さに体がきゅっと緊張しました。東北の中央部を走る奥羽山脈と北上山系に東西を挟まれ、元来風が強い地域なのだそう。

<p>宮城県には、ラムサール条約（※）に登録された3つの湿地があります。蕪栗沼と周辺水田、化女沼（けじょぬま）、そして、北部の伊豆沼・内沼です。この3つの位置が三角形を描くことから地元では「ラムサール・トライアングル」と呼んでいます。</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-002.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
ラムサール・トライアングル
</p>

<p>10キロ以内に条約湿地3カ所が固まっているところは世界的にも珍しく、「定期的に2万羽以上の水鳥を支える湿地」「水鳥の一種（亜種）の地域個体群の１%以上を定期的に支えている湿地」などの国際的選定基準を満たしたこの土地が、いかに鳥たちに愛された地域かわかります。<br />
</p></p>

<p class="caption">
※ラムサール条約　正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年に条約が結ばれたイランの都市名からこう呼ばれる。日本は1980年に加入。現在159カ国にのぼる締約国の会議は3年ごとに開かれる。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-003.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
ラムサール条約湿地の化女沼。蛇の化身に愛された美しい娘の伝説が残されている
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>水鳥に愛される土地</strong>
</p>

<p>
岩渕さんに案内していただきながら、道中でたくさんの水鳥に遭遇しました。普段カラスやハト、ムクドリばかり見ている私の目にはどの鳥も新鮮に映ります。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-004.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
NPO法人田んぼ 理事長の岩渕成紀さん
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-005.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
初めて見る「ふゆみずたんぼ」。楽しみにしていましたが、最初に訪れた田尻北小塩の田んぼは寒さのピークで見事に凍っていました...
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-006.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-006.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
岩渕さんが撮影した同じ田んぼ。こちらにはハクチョウがたくさん写っています
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-007.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
田尻に向かう道中で出合ったマガン。精一杯近づいても50メートルはありそう。一斉にこちらを見ています。「雁（がん）首をそろえる」はこの鳥にちなむことを納得。「非常に警戒心の強い性格が全国で数が減っている理由のひとつ」と岩渕さん
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-008.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-008.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
次はハクチョウ、コハクチョウの大群に遭遇。この地域は本当に水鳥が多い！　コココココ...と鳴くのがコハクチョウ、トランペットのような声を出すのがオオハクチョウ。皆でぺちゃくちゃおしゃべりしています
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-009.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
（左上）木の看板が素敵なNPO法人田んぼのオフィス　（右上）夕日に映えて美しいふゆみずたんぼ。この田んぼはNPO法人田んぼが管理しています　（左下）ふゆみずたんぼのお話を伺う　（右下）真冬でも水の中にたくさん生きものがいます
</p>

<p>
日が傾きかけたころ、田尻大貫のNPO法人田んぼの事務所に着きました。事務所の東側に自前のふゆみずたんぼもありました。

<p>岩渕さんはNPOのメンバーと無施肥（※）のふゆみずたんぼを実践する一方、数々の市民団体の幹事や顧問を務めています。仙台市内での教員生活が長かった岩渕さんは、今でも田んぼの生きもの調査始め、子どもたち相手の楽しい環境教育も行っています。<br />
</p><br />
<p class="caption"><br />
※無施肥栽培　化学肥料はもちろんのこと、有機肥料も農薬も使わず、微生物の豊かな土づくりに力を入れ、有機物の生成なども自然本来の力にまかせる栽培方法<br />
</p></p>

<p>
例えば、「人間代（しろ）かき」と称して、田んぼの中を子どもたちに水着姿でバシャバシャ走り回らせたり、ヘビがカエルをのみ込むスリル満点の場面を見せたり、田んぼで獲れたマシジミのみそ汁をふるまったり、トウホクサンショウウオを触らせたり、イトミミズのふんでトロトロに仕上がった土の匂いや味を体験させたり―。どれも、子どもたちの五感を開かせる内容です。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-026.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-026.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
「人間代かき」、楽しそう！（春のふゆみずたんぼで　岩渕成紀撮影）
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>マガンの帰宅ラッシュ</strong>
</p>

<p>
さて、蕪栗沼といえば、よく知られているのがマガンです。シベリアで繁殖し、毎年9月中旬に飛来するマガンは、明治以降の狩猟や生息地の開発で数が激減、国の天然記念物に指定されています。現在、日本に渡ってくるガン類の約8割が宮城県北部に集中していると言われています。

<p>昔から、夕刻の落雁（らくがん）は広重の「近江八景（堅田の落雁）」の題材になる<br />
など、風情のある眺めとして人々に好まれていました。沼に帰ってくると空中で急速にスピードダウンして、ひらひらと「落ちる」のですが、この急降下のテクニックをひと目見たいと訪れる人も多いのです。私たちも、その様子をのぞかせてもらえることになりました。</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-011.jpg" width="500" height="166" class="mt-image-none" style="" /></span>岩渕さんおススメのビューポイント。右に蕪栗沼の湿原（写真右）、左に伸萠（しんぽう）地区のふゆみずたんぼ密集地（同左）が望めます
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-010.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-010.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
沼と呼ばれていますが、湿原のような蕪栗沼
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-012.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-012.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
宮沢賢治かと思ったら、マガンからのメッセージボード（笑）
</p>

<p>
朝、一斉に沼を飛び立ったマガンは、日中、田んぼの落ちもみや草などを食べています。そして、薄暮に四方の空から続々と戻ってくるのです。

<p>私たちは対岸の背の高いヨシの群落の間から、開水面をそっと観察したつもりでしたが、ヒトの気配を感じたマガンはすぐさま、数千羽の規模で飛び去ってしまいます。ゴォーーッという飛び立ちのうなりは、まるで観客総立ちのスタジアムのような地響き。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-013.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
取材日はほぼ満月
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-014.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-014.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>帰宅ラッシュ中。こんなにたくさんのマガンを見たのは初めて。きぃー、きぃーと家族を呼ぶ声が周囲に響き渡ります。これだけのマガンが一斉に鳴くと、まるでオーケストラの音合わせを聞いているよう。今日あったことを報告し合っているのかなぁ
</p>

<p><object width="500" height="315"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/LSRj_jXIHx4?fs=1&amp;hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/LSRj_jXIHx4?fs=1&amp;hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="500" height="315"></embed></object><p class="caption"><br />
左右に広がる傘型になったり、縦一線になったりしながら飛んでくるマガン。「隣りあう2羽が、家族の近くにいたいという気持ちが強いという関係性だけで、全体の形が決まり、ああいう飛び方になる」と岩渕さん</p><br />
<p><br />
素晴らしく気持ちを豊かにしてくれた鳥たちに感謝しながら、蕪栗沼を後にしました。7万羽にもおよぶマガンたちが毎日こうして戻ってきてくれるというシンプルな幸せを、地元の人たちは日々味わっている。<strong>この気持ちこそが、この湿地と周辺の田んぼを一緒に守りたいと願う人たちの原動力だったのでは、</strong>ふとそう思いました。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>あらためて、ふゆみずたんぼって？</strong>
</p>

<p>
さて、生きものにとっても、お米にとってもいいことがたくさんあるふゆみずたんぼについて、もう少し詳しく見てみましょう。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><a href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-016-big.jpg" target="_blank" border="0"><img alt="056-016.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-016.jpg" width="500" height="358" class="mt-image-none" style="" /></a></span>1年を通して生きものたちでにぎわうふゆみずたんぼ。社団法人農村環境整備センターの主任研究員・田中伸一さんによるイラスト（クリックで拡大）
</p>

<p>
上のイラストを見てください。冬になっても水鳥が水田を訪れて落ちもみなどを食べます。リン酸や窒素を含む鳥のふんが水の中で微生物の繁殖を促し、肥料分となります。また、イトミミズやユスリカなどのふんが作るトロトロ層がある程度の厚さで積もれば、春先の雑草を抑えてくれます。また、光合成を行う藻類は田んぼに酸素を供給し、メダカなど魚のえさになります。

<p>農家の水管理は大変ですが、<strong>生きもののサイクルとうまく作業を合わせていくことができれば、農薬の使用を減らし、生産コストも下げることができます。</strong>大きなトラクターなどで土を耕さなくても、生きものたちが冬の間から十分に土を耕してくれる、というわけです。</p>

<p>ふゆみずたんぼの歴史は古く、約340年前の江戸中期の会津農書では「田冬水」と紹介され、現在でも新潟県の十日町から東頸城（ひがしくびき）の地域では、伝統的な「ふゆみずたんぼ」の風景が見ることができます。</p>

<p><i>山里田共に惣而田へハ冬水掛けてよし。<br />
　　　何れの川も何れの江堀にも、川ごミ有もの也<br />
</i><font size="1">『日本農書全集第19巻　会津農書　会津農書附録』農山漁村文化協会　1982年　P54・55より抜粋</font><br />
</p></p>

<p>
「川ごミ（有機物）が発酵して良い」とあり、有機成分の多い水が菌類やイトミミズなどの発生を促し、活動を活発化させることを1684年当時から既に知っていたと推測できます。原著者の佐瀬与次右衛門は「当時のスーパーマン」と岩渕さん。有機物の比重を測る実験にも取り組んだり、生きもの図鑑の編さんも行うなど、そのマルチな才能と科学的視点の鋭さには岩渕さんも舌を巻くほどだとか。
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>水田は21世紀の地球の三大生態系システムのひとつだ！</strong>
</p>

<p>
岩渕さんは1月中旬、中国雲南省の哀牢山腹にある世界最大規模の棚田を訪れています。少数民族のハニ族が暮らす山岳地帯には、何と1300年前から続いていると言われるふゆみずたんぼがあります。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-027.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-027.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>雲南省の伝統的なふゆみずたんぼの棚田。国連食糧農業機関（FAO）の世界農業遺産にも登録されています  （岩渕成紀撮影）
</p>

<p>
岩渕さんは、この雲南省を生涯の地と定めた元FAO職員の故・ジョセフ・マーグラフさんを師と仰いでいました。<a href="http://www.tianzicenter.com/" target="_blank">TianZi生物多様性研究開発センター</a>を設立し、世界の棚田を研究していた人です。

<p>マーグラフさんは、人類が守らなければならない<strong>世界で最も大切な生態系システムとして「熱帯雨林」「サンゴ礁」、そして「水田」を挙げました。</strong></p>

<p>水に溶けた養分を蓄え、水を浄化し、有機成分を作り出す田んぼは、熱帯雨林やサンゴ礁と次元は違うけれども、非常に優れた吸収・浄化システムを備え、栄養分を保持し、生物多様性を豊かにする点で同じだというのです。岩渕さんはこの話を聞いたとき、「言いようのない衝撃を受けた」と振り返ります。</p>

<p>大きく見ても、細部を拡大していっても同じ形に見える図形や地形を幾何学で「フラクタル」と言いますが、そのように「熱帯雨林もサンゴ礁も水田もフラクタルという概念でつながっている」と、マーグラフさんが話したことが、岩渕さんの心の中に水田の他ならない価値を決定づけたのです。</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>3つの指標　その1：田んぼの生きもの、ぜんぶでいくつ？</strong>
</p>

<p>
さて、話を聞いていると、ふゆみずたんぼに一体どのくらいの生きものがいるのか気になってきます。子どもなら「ぜんぶでいくつ？」と聞くところですが、この質問に大人は答えることができるのでしょうか？

<p>実はこの途方もない大仕事に取り組んだ人たちがいます。「田んぼの生物多様性指標・企画委員会」（桐谷圭治委員長ほか）です。農薬偏重の農業からの脱却を目指したNPO法人農と自然の研究所（2010年に解散）が最後のプロジェクトとして取り組んだもので、鳥を担当した岩渕さんを含め、様々な生きものと向き合ってきた16人の委員に田んぼにかかわる100人近い研究者や農家、NPOなどが加わって幅広い議論を重ねました。</p>

<p>田んぼや畔、用水路、ため池、休耕田などに見られる生物をできるだけ広く取り上げ、2年がかりでまとめた「田んぼの生きもの全種リスト」には、5668種もの生きものが収録されています。2010年3月に改訂版が発売され、同10月、名古屋で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議（COP10）でも大きな反響を呼びました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-017.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-017.jpg" width="250" height="358" class="mt-image-none" style="" /></span>田んぼの生きもの全種リスト
</p>

<p>
植物・コケ類の2075種を筆頭に、昆虫1726種、原生生物・藍藻（らんそう）類597種、ウイルスや細菌、糸状菌205種など12の分類別に、それまで目に見えなかったもの、さりげなくいて気づかなかったものも含め、実に幅広い生きものが生息分布や生態情報の補足付きで紹介されています。

<p>NPO法人田んぼでは、この5668種をアピールするポスターを作りました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-018.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-018.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>名古屋COP10でも活躍したポスター。背景の模様をよくよく見ると、何と5668種の生きものたちの学名がびっしり。国際会議では、海外の学者がのぞき込んで「これは知っている、本国にもある」などと反応するそう
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-019.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-019.jpg" width="250" height="210" class="mt-image-none" style="" /></span>Tamboの文字上あたりのアップ
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>3つの指標　その2：米だけじゃない、田んぼの底力</strong>
</p>

<p>
農はそもそもヒトが食糧生産のために自然を利用して作り出したものですから、田んぼという環境にかかわり、依存する生きものたちをきちんと知り、共に生きる責任が私たちにはあるはず。しかし、現在の経済システムの中では効率的な経営や収量ばかりが評価のポイントになってしまい、<strong>稲作の営みが本来持っていた生物多様性の維持など、多面的機能を評価する視点はきちんと構築されてきませんでした。</strong>

<p>農文協発行の季刊誌「季刊地域」で当時農林水産大臣政務官だった舟山康江さんが、こんな発言をしていました。</p>

<p>―米は需給バランスで価格が決まる。しかし農家はその生産活動にともなって田んぼに水を張って洪水を防止し、緑を育む。集落をつくって伝統文化を守る。景色をつくる。そういう生産に付随する役割に対してはまったく価格がつかない（2010年8月号より抜粋）。</p>

<p>例えば、除草剤を使わずに畔の草を丁寧に手で刈りとる、この手間をかけることで田んぼの生物多様性は大きく変わってきます。<strong>無農薬・減農薬や有機栽培といった生産過程の認証制度はあっても、それによってどういう生きものが守られたのかまではわかりませんし、日々の地道な作業を評価する仕組みは、まだほとんどありません。</strong></p>

<p>そこで世界に例を見ない、生きた評価の仕組みを作りたい、ということが岩渕さんたちの活動の重要な目標になったのです。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-024.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-024.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>丁寧に手入れされた畔に咲いた野の花（春の低茎植物、オオジシバリやサギゴケ類）岩渕成紀撮影
</p>

<p>
まずは、<strong>野の花や草木、田んぼの生きものをせっせとお世話している農家の日常そのものを仕事の成果として評価できないだろうか。</strong>岩渕さんたちは考えました。NPO法人田んぼでは、田んぼや周辺水路、畔の管理はもちろん、近隣の湿地やため池、雑木林の手入れ、地元の子どもたちや地域との交流や食文化の継承まで、実に幅広い農仕事を「田んぼの底力」として160項目リストアップしたのです。
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>3つの指標　その3：足元に豊かな菌がいるじゃないか</strong>
</p>

<p>
さらに、これまで目に見えなかったお百姓さんの努力（土力）を数値化する試みも行っています。良い作物を育てる「良い土」の定義は漠然としていましたが、最近になって開発された画期的な新技術がこの数値化を可能にしました。農研機構中央農業総合研究センターの農学博士・横山和成さんらのチームが開発した新指標「土壌微生物多様性・活性値」を測ることで「土力」を化学的に証明できるようになったのです。

<p>測定はグリコーゲンなど95種の有機物が入った試験用プレートに、サンプル土壌を入れて行うだけの簡単なもの。もし、それぞれの有機物を食べる微生物がいれば、それが分解される時に呼吸が行われて二酸化炭素が発生します。その二酸化炭素に反応してプレートが赤紫色に変化する仕組みを使うのです。スプーン一杯（約1グラム）の田んぼの土には、およそ１兆個の菌がいると言われますが、色の変化具合や分解速度を調べることで、土壌微生物の生物多様性と活性値を48時間で測定できるのです。測定結果が目標値以上だった農家には「Soilマーク」が印刷されたシールが配布され、生物多様性豊かな土壌で作った農産物だということをアピールできます。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-020.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-020.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>土の組成と宇宙の組成は似ている？ 宇宙が生まれる様子をモチーフにしたSoilマーク付きのふゆみずたんぼ米
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-021.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-021.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>左のプレートで微生物がえさを食べて赤紫に変わったことがわかる
</p>

<p>
「効率を追求してスーパーマンのような菌を探し求める研究者が多いけれど、<strong>実際には様々な菌がいることによって総合力が安定し、生産も安定する</strong>」と岩渕さん。化学肥料や農薬を多用している土壌はやせてしまい、微生物が少なくなります。一方、良い土とは、たくさんの微生物が活発に活動できる土。Soilマークの技術も不足している成分を測定して補うという考えより、土壌の微生物の総合的な働きを見る方が大切だという発想の大転換から生まれたテスト方法でした。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-022.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-022.jpg" width="250" height="376" class="mt-image-none" style="" /></span>ミミズと菌類が1年に作る土の塊。事務所に「イトミミズ神社のご神体」（笑）として祀ってありました
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>前向き発想の新しい評価制度を！</strong>
</p>

<p>
農仕事をリストアップした田んぼの底力に土の新指標、そして、田んぼの生きものリスト。互いに関連深いこれら3つを組み合わせた新しい活動評価システムを構築しようと、NPO法人田んぼでは準備を進めています。目安は田んぼの底力50項目、田んぼの生きもの70種、土壌活性数値70。

<p> 田んぼの底力はリストにあるものでなくても、それぞれの農家の知恵をいかした活動であれば、カウント可だそう。<strong>「あれもこれもいいね、の前向き発想でやりたい。これは農薬の取り締まりでも格付け評価でもなく、活動評価。目標を立てて、そこに向かう姿勢が大事。続けながら生きたシステムとして多くの人が補い合っていけばいい」</strong>と岩渕さん。</p>

</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-023.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-023.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>「（規制や減点を行う）従来の格付け評価とは発想そのものが違うことを強調するためにも、あえて認証の言葉は使わなかった。もっと柔らかな表現、『田んぼの生きもの宣言と約束』として広めていきたい」
</p>

<p>
農家だけでなく、消費者や企業も巻き込んでいきたいというのがさらなる目標。NPO法人田んぼでは、身近なことに目を向けてもらおうと、「田んぼの生きもの育む7つの宣言」という新しい環境運動の構想を温めています。農家や一般家庭、企業などそれぞれの立場から自由に7つの宣言をしてもらい、身近な生きものに思いを馳せることができる人をどんどん増やしていこうというものです。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-025.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-025.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>「宣言は、内容にこだわらずに自由な発想で行ってほしい。壁や扉に貼って、今日はどんなふうに生きものを守れたとか、毎日考えてもらえたらうれしい」
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>「ふゆみずたんぼ」でつながる世界</strong>
</p>

<p>
蕪栗沼の周辺水田は広く世界にも影響を与えています。ラムサール条約登録を機に2008年11月、韓国の昌原（チャンウォン）市で開かれたラムサール条約第10回締約国会議（COP10）では、日本と韓国が一緒に提案した「水田決議」が採択されるという大きな成果につながりました。さらに2010年10月に名古屋で開催された生物多様性国際会議COP10でも、様々な生きものを育む場として水田の役割は高く評価され、日本のNGOの働きかけで農業の生物多様性条約決議の中で水田決議が再び採択されたのです。

<p>興味深い話もあります。日本でふゆみずたんぼが再び始まったのは1997年ごろですが、スペインのエブロデルタや米カリフォルニアのサクラメントバレーでも、大体同じ時期に水鳥と農業の共生手段として同じ試みが始まったというのです。<strong>「偶然ではなく、時代が今という時期を待っていた」</strong>と岩渕さんは意を強くしています。</p>

<p>5668種のリストは「田んぼにおける現代版のシンドラーのリスト（※）」、岩渕さんはそう言います。「1種たりとも失ってはならない」と。農業は生命活動。季節が巡り、翌年また新しい命が宿ることを知っているからこそ、私たちは農業を続けることができますが、もし新しい命が宿らないとしたら......。<strong>「みんな生物多様性を経済活動の付加価値のように言うけれど、実は生物多様性は付加価値でなく、農業の価値そのもの。農産物は命、生きものであることを忘れてはなりません」</strong>と岩渕さんは強調します。そのことに少しでも多くの人が気づけるかどうかがポイントだと、私も今回の取材で強く感じました。</p>

<p class="caption">
※シンドラーのリスト：第二次世界大戦下のポーランドで、アウシュヴィッツなどの強制収容所からひとりでも多くのユダヤ人を救おうとして、ドイツ人実業家オスカー・シンドラー氏が作った命の救済リスト</p>

<p>1880年代に10アール当たり約200キロだった米の収量は、1960年代には400キロとほぼ倍増。60年代に起こったことと言えば、農業の「工業化」の加速でした。同年代中、化学肥料や機械、インフラ整備などにかける投入エネルギーがついに米の産出エネルギーを上回り、<strong>農業は今や大量の石油消費がないと成り立たない産業となったのです。果たして60年代以降の道のりを「農の進化」と呼べるのか</strong>、岩渕さんは問いかけます。</p>

<p>ふゆみずたんぼも「急速に広がるのはむしろ危険。田んぼも多様性が大事」と、急いで環境を変えたがる人たちを戒めます。環境保全をうたう農業も、アイガモやカブトエビといった特定の生きものに着目するのではなく、「いろんな生きものがいて、雑草も多少あった方がうまい米になる」と、<strong>バランスの大切さ</strong>を繰り返し説明してくれました。地球上で最も長く続いてきた農業である水田について深く考察し、行動している姿に接し、私も一消費者として身近な田んぼへの「まなざし」を大きく揺さぶられた旅でした。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="056-015.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/056-015.jpg" width="500" height="751" class="mt-image-none" style="" /></span>
</p>

<p><br />
関連URL<br />
NPO法人田んぼ<br />
<a href="http://www.justmystage.com/home/npotambo/345.html" target="_here">http://www.justmystage.com/home/npotambo/345.html</a></p>

<p><br />
<p><br />
<strong>岩井光子　略歴</strong><br /><br />
地元の美術館・新聞社を経てフリーに。2002年、行政文化事業の記録本への参加を機に、地域に受け継がれる思いや暮らしに興味を持つ。農家の定点観測をテーマにした冊子「里見通信」を2004年に発刊。<a href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/news/">地球ニュース</a>編集スタッフ。高崎在住。</p><br />
<br /></p>

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆：岩井光子<br />
写真・編集：上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>テッラ・マードレ=母なる大地から始まる新しい世界の動き</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2010/11/rpt-55.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2010:/jp/thinkdaily/report//7.1784</id>

    <published>2010-11-29T03:28:33Z</published>
    <updated>2011-02-20T02:29:32Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 テッラ・マードレ開会! 2004年の第1回目から隔年で行われてきた...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    <category term="スローフード、食、イタリア、テッラ・マードレ" label="スローフード、食、イタリア、テッラ・マードレ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>テッラ・マードレ開会!</strong>
</p>

<p>
2004年の第1回目から隔年で行われてきたテッラ・マードレは今回で4回目。2010年10月21日から25日の5日間、フードフェア「サローネ・デル・グスト」に併設される形で開催されました。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-000.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-000.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
トリノ市内の広場で行なわれていたテッラ・マードレの写真展のパネル。ローカルな市場の何気ないワンカットに人類と地球の未来が写されている
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-002.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
開会式場のオリンピック・パレス「パライソザキ」に向かう参加者たち
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-003.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
巨大なオリンピックパレス内部に大勢の参加者が集まってくる
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-004.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
開会式前から各国の参加者同士の交流が始まっていた
</p>

<p>約7000人を収容するために用意された開会式会場は、2006年の冬季オリンピックの際に日本の建築家、磯崎新が設計したオリンピックパレス。まず、マケドニアの民族舞踊グループ、アクード・ミルチェ・アツィエヴの大地の鼓動のような力強いダンスで幕を開け、少年少女のオーケストラとコーラスの演奏に乗って、世界160ヶ国の代表の旗手たちが大陸ごとに分かれて入場するという、まるでオリンピックの開会式のような形式で始められました。この冒頭の若々しい音楽のエネルギーは、テッラ・マードレが如何に未来の世代に大きな期待を託しているかを象徴的に表現しつつ、言語や文化の障壁を越えて観衆を感動させる見事な演出でした。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-005.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
ありとあらゆる民族の旗手たちが舞台上で織りなす代表者席
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-006.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-006.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
（左上）日本代表団の旗手を務めた、雲仙こぶ高菜の生産者の馬場節枝さんの姿も　（左下）マケドニアの民族舞踊グループ、アクード・ミルチェ・アツィエヴ　（右）各大陸のテーマ曲が少年少女のコーラスとオーケストラによってエネルギッシュに演奏され、式を盛り上げた
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-004-2.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-004-2.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
開会式の後、会場外で記念写真を撮る参加者と、彼らのホームステイ先となる地元のファミリー。このイベントは多くのボランティアの力で支えられている
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>先住民族も主役</strong>
</p>

<p>
トリノ市長、ピエモンテ州知事代理らの挨拶があった後、エチオピアのガモ族、ブラジルのインディオスのグアラニ族、カムチャッカのイテルメニ族、北欧のサミ族、オーストラリアのアボリジニ族と、五大陸の先住民族の代表がそれぞれの言語で挨拶に立ちました。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-007.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
（左上）アフリカの先住民族を代表したエチオピアのガモ族のマレボ・マンチャ・マゼは、偉大なシャーマンのように母なる大地と全員を祝福してくれた　（右上）その容姿の美しさで、翌日のイタリア各紙の紙面を飾ったカムチャッカのイテルメニ族のアルビーナ・モリローヴァ（アジア代表）は、同民族の苦難の歴史とともに食物の精神的文化的価値を強調　（左下）ヨーロッパの先住民族を代表したサミ族のオル・ヨハン・シックは、伝統文化と環境の密接な関係を力説　（右下）オセアニアの先住民族の代表は、アボリジニの教育に携わるオンティ・ベリル・ヴァン・オプルー女史
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-008.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-008.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
南北アメリカ大陸の先住民代表としてスピーチに立ったのは、ブラジルのグアラニ族の代表アドルフォ・ティモティオ。背後には世界160ヶ国の代表たちが座る
</p>

<p>
<strong>近代化とグローバリゼーションの進む中で生命と文化の存続を厳しく脅かされながらも、大地と深く結びつき、環境と見事に適応した伝統文化の中で生き延びる彼らのメッセージは、他の何よりもテッラ・マードレ、そして現在のスローフード運動の主旨を的確に代弁する言葉でした。</strong>

<p>食とワインのジャーナリストとして70年代より左翼系の新聞雑誌で活躍していたカルロ・ペトリーニを中心に、80年代後半にイタリアで生まれたスローフード運動は、元々ファーストフードに対抗し食品の品質を守るためのものでした。今や会員10万人以上の世界的規模の運動に発展し、<strong>最近は完全にエコロジー思想を吸収して自らの運動を「エコガストロノミー」と定義しています。こうして食品とともに「生物多様性」を重視する同運動は、それと密着した「文化の多様性」にも着目し、</strong>前回の第3回テッラ・マードレでは民族音楽を取り上げました。<strong>今回は先住民族の土着言語の重要性、それと結びついた口承文化、記憶などもテーマに選ばれ、会期中いくつもの講演や討論会が行われました。</strong><br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-009.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
（左上）ナポリ東洋大学のフラヴィア・クトゥーリ教授によるメキシコのサン・マッテオに伝統的に伝わる食文化についての発表　（左下）北インドの先住民族出身のフラング・ロイ[向かって左]と国際スローフード協会のシェイナ・ベイリー[右]。両者とも「農業の多様性と食の主権のための先住民パートナーシップ」の運営委員会のメンバー　（右）日本の先住民族代表として参加されていた、アイヌの島崎直美さん
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>未来への航路を知る船頭たち</strong>
</p>

<p>
開会式の締めくくりには、まるで映画スターの登場を待ち構えるような数のフォトグラファーたちが押し寄せる中で、スローフード協会会長のカルロ・ペトリーニが演壇に立ちました。</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-010.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-010.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>
開会式の演壇に立つスローフード協会会長カルロ・ペエトリーニ。極めて明解に、しかも人の心を動かす熱い演説は名人芸
</p>

<p>
その彼がまず強調したのは、先住民族の代表者たちの言葉の中にあった教え、<strong>「伝統的な知を保護することこそが、我々が生きて行くために必要不可欠な手段を与えてくれる」</strong>ということでした。

<p>「伝統的な知の保持者としては、4つのカテゴリーがあります。それは、先住民、農民、女性、そしてお年寄りです。彼らに耳を貸すだけでなく、現代世界の危機を乗り切るためには、彼らにこそ第一線で活躍してもらう必要があります。しかし現状はほど遠く、政治はこれらのカテゴリーを考慮の対象にさえしません。メディアも関心を向けません。熱狂し、利潤にばかり気を取られた人類は、金融、社会、環境、全ての領域で舵を失い、ひたすら漂流するばかりです。(中略) しかし、<strong>人類は文明崩壊の深淵の際まで辿り着いたら、後退を余儀なくされるでしょう。後退することになったら、最後方にいる先住民、女性、農民、お年寄りたちが先頭に立って我々に正しい道を教えてくれることに気づくでしょう」。<br />
我々を未来に導く船頭になるのは彼らなのです。</strong><br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-011.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>アマゾンの原住民で、大学教授のイトマ氏
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-012.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-012.jpg" width="500" height="167" class="mt-image-none" style="" /></span>（左）「伝統の知識」についての講演会で発言に立った南イタリアのカラブリアの女性グループ「歩む女性たち」の代表者　（右）「女性の権利」についての討論会で発言するマラウィの女性。この会では世界中からの女性の権利獲得運動の事例が報告された
</p>

<p>
女性の問題に関しては、世界的な環境と食糧の問題に理論、 実践、両面で取り組むインドの環境運動家、ヴァンダナ・シヴァにお話を伺いました。農村における女性の役割についても数多く発言をしているシヴァ女史は、筆者の質問に答えて、女性原理とエコシステムの働きが非常に近いことなどをあげ、サステイナブルな社会作りにおける女性の役割の重要さを強調していました（詳細はインタビュービデオをご覧ください）。
</p>

<p><object width="500" height="315"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/0AUCcpGAoXc?fs=1&amp;hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/0AUCcpGAoXc?fs=1&amp;hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="500" height="315"></embed></object></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>科学と伝統の知の和解と協調</strong>
</p>

<p>
これまでヴァンダナ・シヴァらと非常に近い視点で「近代的な工業化された農業」と「グローバルなアグリビジネス」を批判することに焦点を当て、特に「伝統的な農耕の知や文化の重要さ」を強調して来たスローフード運動ですが、今回のペトリーニの論調は少し違いました。<strong>伝統文化と近代科学のどちらも単独で完璧な真理を握っている訳ではないこと、その両者の和解と協調が未来を切り開くためには必須であることを繰り返し強調した</strong>のです。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-013.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>各国記者団による質問会で応えるカルロ・ペトリーニ
</p>

<p>
3日目の質問会でのこと。ペトリーニはこう言いました。
<strong>「西欧近代文明を支えてきた科学だけでなく、現代のテクノロジーやインターネットとお年寄りや先住民、女性たちの伝統的な知を対話させることで、強い爆発力のある混合物が生まれるのです。これこそ真の変革の力となるものです」。</strong>
そこで筆者は「この2つの『知』の間の対話、つまり和解と協調を具体的にはどういう形で実践するつもりか」と質問。その答えとして、彼はひとつの例を挙げました。
「テッラ・マードレには世界中の大学約400校から教授たちが来ていますが、彼らにはひとつ責任があります。自国に戻った時に農民と仕事をするという責任です。こうして既に農民が大学へ行って、教師として教えるようになったという素晴らしい事例も出ています」。
<strong>これまでの社会ではかけ離れていた大学と農民の組み合わせに新しい知の誕生が託されているのです。</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-014.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-014.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>食の知識を子供たちがゲームを通して身につけるコーナー。五感と頭を使って食物についての正しい知識と興味を持つことの重要さを教えます。会期中のべ1000人以上の子供たちが参加。変革の土壌はまず子供の教育から
</p>

<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>若い世代への期待</strong>
</p>

<p>
もうひとつ、開会式でペトリーニが強調したポイントは、 若者こそがその和解の実現者だということでした。
「<strong>若い皆さんには、大きなチャンスが与えられているんです。皆さんは、科学及び現代のテクノロジーと伝統的な知を協調させるという義務を担った世代です。皆さんは実に面白い時代を生きることになるのです。自信を持って下さい。</strong>素晴らしい挑戦的課題が待っています。（中略）科学及び現代のテクノロジーと伝統的な知をひとつにしようとすることは、これから皆さんが立ち向かうべき最も素晴らしい課題です。若い皆さん、この宿命をしっかりと自分のものにして下さい」。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-015.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-015.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>（左）開会式で真剣にペトリーニの話を聞く若いアフリカからの参加者。（右）ウガンダの農民の女性は、食科学大学の学生たちに自らの土地の作物、農耕技術などを説明。アフリカの農耕は決して貧しいものではなく、多様な作物とサステイナブルな知恵にも溢れている。彼ら自身のこの意識革命がアフリカを救う鍵
</p>

<p>
世界的に未来の見えない不安に包まれた現代の若い世代に対して、これほど力強い期待を持って未来を託してくれる彼の言葉は、会場の若者たちの心を打ちました。ペトリーニはさらに、フランスの哲学者エドガー・モランの言葉、<strong>「全てやり直さなくてはならないけれど、すべてのやり直しは、もう始まっているのです」</strong>を引用しながら、極めて困難な時代ながら、もう正しい道は見えていると示唆しました。
<strong>「君たちこそが、この変化の主役なんです。君たちが、社会を変身させるんです。醜い芋虫がさなぎになり、蝶になるように。これが君たちの使命なのです」。</strong>
こう言われて心躍らない若者はいなかったでしょう。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-016.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-016.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>スローフードが創設した食科学大学のブース。食に関する知識と実践を積む学生たちこそ、伝統と科学を結びつける未来の立役者
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>ジェネレーションT</strong>
</p>

<p>
イタリアでは35歳以下で農業を選んでいる若者が約10万人います。国内の農民の総人口から見るとまだわずか7%ですが、コンピューターとインターネットを駆使して消費者と直接つながり、技術革新をしながら、環境を大事に安全で美味しい食品を作る彼らは、その地位をますます重要なものにしつつあります。売り上げでも+75%と平均を大きく上回っています。また最近、ペトリーニがアメリカの一流大学数校で「将来自分の人生の目的として農業に従事しようと思っている人はいますか ?」という質問をしたら、300-400 人の参加者の中で、手を挙げる学生が毎回25-30人はいたそうです。世界のパラダイムが確かに変わりつつあるのが実感される数字です。

<p><strong>スローフードでは、農業に従事する若い世代を「ジェネレーションT」(Tは大地[Terra]の頭文字)と呼びます。その彼らの活躍を通して、「お百姓さん」が「時代遅れの貧しい職業」ではなく、貴重な伝統の知恵と新しい科学技術やパラダイムをミックスして世界を変革できる、未来にとって最も重要な職能のひとつだということを訴えています。</strong></p>

<p>今回のイベント中にもペトリーニと世界の若い農民が出会う場として「ジェネレーションT」と題された討論会が催されました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-017.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-017.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>「ジェネレーションT」についての討論会
</p>

<p>
参加者のひとり、ブラジルのジャンダイーラで養蜂を営むフランシスコ・カベコは2008 年のテッラ・マードレで大いに勇気づけられ、帰国後6ヶ月を費やして地元の若者たちと討論。ジャンダイーラ蜂のサステイナブルな飼い方を皆に伝え、化学製品に頼っていた親の世代に有害な農法を改めさせていると言います。また、<strong>一般生活者が「消費者」としてではなく、多様な形でより積極的に食品の生産に参加する「共同生産者」である、</strong>という概念を地元にも広めたところ、人々の食品生産への意識が高まったそうです。<strong>ただ自分が生きて行くために食品を作るのではなく、農業、及び食品生産、消費について人々の意識を変革していくのも、一層複合的な役割を担う「ジェネレーションT」に与えられた重要な課題のひとつだということ</strong>を教えてくれる話でした。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-018.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-018.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>ブラジルの若い養蜂家フランシスコ・カベコ
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>先端の知の集結</strong>
</p>

<p>
世界中の若者たちが会場に溢れているのもテッラ・マードレの特徴ですが、カルロ・ペトリーニやヴァンダナ・シヴァはもちろん、環境問題に敏感な経済学者のジェレミー・リフキン(米)、「脱成長」の理論家セルジュ・ラトゥーシュ(仏)、 食糧問題に精通した経済学者ライ・パテル(英)など、<strong>先進国の作り上げた市場経済と文明が完全に破綻していることを正確に把握し、新たなパラダイムを提示してくれる世界一流の識者たちが多数集結していた</strong>のも印象的でした。若者の中に生まれつつある自発的な新しいエネルギーとともに、彼らの言葉を通して、参加者たちは、新しい世界が動き出していることを強く実感したはずです。 

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-019.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-019.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>生産形式の歴史的変容を語った講演会のパネラーたち（右がセルジュ・ラトゥーシュ、左がライ・パテル）
</p>

<p>同時多発的に開催される講演 / 討論会のうち特に興味を惹かれたのは「スモール・イズ・ビューティフル 1973-2010  - 現在の危機的状況を読むためのエルンスト・F・シューマッハーの理論」でした。パネラーはイタリアで最近注目の経済学者ロレッタ・ナポレオーニと「スロー・マネー」の発案者ウッディー・タッシュ(米)で、二人とも<strong>シューマッハーの著作が今なお、いや今になってますます強いインパクトを持って読まれるべき本であること</strong>を訴えていました。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-020.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-020.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>「スモール・イズ・ビューティフル」についての討論会。右がロレッタ・ナポレオーニ、左がウッディ・タッシュ
</p>

<p>
<strong>「60年代に地球を宇宙から撮った写真を観て、地球が(宇宙からしてみれば)小さな限りある球体に過ぎないと分かった時に、なぜ人々はやり方を変えなかったのだろうか ?」</strong>とタッシュは自問します。<strong>「成長に限界がある」</strong>ことに気づいていながら、なぜ方向転換しなかったのか。その後の経済成長は、先進国の人々をより裕福にはしましたが、余暇は少しも増えず、<strong>消費が増すことは幸せの増長に繋がりませんでした。にも拘らず、シューマッハーの危惧した通り、経済は巨大化と倫理の廃棄を押し進め、現在に至っています。  </strong>

<p>さらに、同講演では、『スモール・イズ・ビューティフル』 とスローフードに刺激され、<strong>ウッディー・タッシュが創始したスロー・マネー</strong>についても議論されました。スロー・マネーとは、投資家が自分の住んでいる場所から比較的近くにある小規模の食品生産者(農業、畜産業、漁業、加工業など) に投資するもので、お金と大地をつないで投資される資金が目に見える形で利用され、成果を生むシステムです。<strong>これは、我々の預金が世界の全く知らない場所で、全く知りようもない目的、もしかしたら戦争に運用されている現在の金融業のあり方の対極を実現するもの。資金運用の倫理性はもちろん、 投資家にとっての安全度、地域への利益の還元度から言っても理想的です。そして何より、地域の経済に住民が直接参加し、地域レベルで新しい経済のあり方を作る方法として、とても期待できる</strong>ものです。先の「ジェネレーションT」の講演会でペトリーニも、「私のわずかな預金も農民にあげるつもりです。銀行なんかよりずっと彼らの方があてになります」と語り、スロー・マネーの重要さを訴えていました。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>テッラ・マードレの未来像</strong>
</p>

<p>
農作業と深く結びついた民族音楽、原住民の言語など、食に結びついた文化の多様な側面も扱うようになったテッラ・マードレですが、今後はどうなっていくのでしょうか。  

<p>ヴァンダナ・シヴァは「イベントが多様性を持ってきたが、 やはりバックボーンは食の生産者のコミュニティだから、その意義をさらに強化する必要がある」と主張します。ペトリーニ自身は、これを<strong>トリノのイベントとしてだけ考えないことの重要さを強調しました。「世界中でテッラ・マードレを行うこと。そのことで、農民ばかりだけでなく、大学等も含めてホリスティックな形で世界中にネットワークが広まり、 根付いていくことが何より重要である」と。</strong><br />
 <br />
このネットワークの将来のあり方については、スローフード運動の実働部隊と言える「生物多様性のためのスローフード基金」会長、ピエロ・サルドがさらに詳しく語ってくれました。彼は、イベントとしてのテッラ・マードレは4、5年に1回、オリンピックのようにあればいいと言います。<br />
「<strong>より重要なことは、テッラ・マードレが多くのプロジェクトに分かれ、各地の食のコミュニティがより自発的、自律的に活動することです。その一つひとつにおいて、より裕福な北側の食のコミュニティが数年間責任もって、苦難にある南側の食のコミュニティを支援しながら、互いに学び合い、ともに共同作業するのが望ましいでしょう。</strong>テッラ・マードレの将来の姿はこうあるべきだと思います。資金提供だけではなく、北側が自分たちの経験と技術にネットワーク内の大学、技術者、若者、ボランティアたちを加えれば、もう、すごいパワーになりますよ」。</p>

<p><strong>毎年12月10日は世界中でテッラ・マードレを祝うテッラ・マードレ・デイ。</strong>現在食の生産に直接関わっていない人もその日には、なるべく地元産の食品を食べ、「母なる大地」に感謝の意を捧げることで、この大きな運動に参加してみてはいかがでしょう。大きなネットワークにつながれた今、<strong>一人ひとりがより自律性をもって自らの食生活を変革していくこと、それが何よりも重要になってきているのです。</strong><br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="055-021.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/055-021.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>トリノ市内の広場でテッラ・マードレの写真展を眺める市民。テッラ・マードレは全ての人に関わっている
</p>

<p><br />
関連URL<br />
テッラ・マードレ　<a href="http://www.terramadre.info" target="_here">http://www.terramadre.info/</a><br />
スローフードジャパン　<a href="http://www.slowfoodjapan.net/" target="_here">http://www.slowfoodjapan.net/</a></p>

<p>
<strong>多木陽介　略歴</strong><br />
演出家、アーティスト、批評家。1988年に渡伊、現在ローマ在住。演劇活動や写真を中心にした展覧会を各地で展開。現在は多様な次元の環境(自然環境、社会環境、個人の精神環境)におけるエコロジーを進める人々を扱った研究を行ないながら、芸術、批評双方で生命を全ての中心においた人間の活動の哲学を探究している。</p>
<br />

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆・写真：多木陽介<br />
編集：岡野 民、上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>銀座のミツバチが紡ぐ都会の里山物語</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2010/10/rpt-54.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2010:/jp/thinkdaily/report//7.1719</id>

    <published>2010-10-01T13:57:34Z</published>
    <updated>2010-10-31T08:01:43Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 ミツバチとの対面 銀座3丁目にある銀座紙パルプ会館を訪ねたのは、9...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
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        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>ミツバチとの対面</strong>
</p>

<p>
銀座3丁目にある銀座紙パルプ会館を訪ねたのは、9月上旬の暑い日。11階建てのこのビルの屋上に、銀座のミツバチたちが住んでいるのです。<strong>ここには西洋ミツバチと日本ミツバチの巣箱が設置されていて、毎日数十万のミツバチが飛び立ち、銀座周辺の木々や植物から蜜を集めてきます。</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-002.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
ここがミツバチの住まい。西洋ミツバチの巣箱が4つ。日本ミツバチは別の場所にいる
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-003.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
この日はミツバチのための庭園作りの講座が開催されていた。囲いの向こうに巣箱が置いてある。中央は銀座ミツバチプロジェクトの田中さん
</p>

<p>この日は、秋から冬を迎えるための準備と採蜜が行われました。全身を白い防護服で覆い、頭にネットをかぶり、準備は完了。飛び交うミツバチに最初は近寄るのをためらいましたが、一度近寄ってみると、怯える必要などないことがわかります。同じ空間を共有している、そんな感覚でしょうか。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-004.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>燻煙器で新聞紙を燃やして煙を出す。煙がミツバチを落ち着かせるという
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-005.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>ミツバチの様子を確認する。作業は素手が基本だ
</p>

<p>
作業をするときは、素手が基本。手袋を使うと扱いがぞんざいになり、ミツバチの性格が荒くなるからだそうです。多くの人が行き交う都会の養蜂ならではの配慮は欠かせません。燻煙器によって煙を出すのも、ミツバチを落ち着かせる方法のひとつ。慣れてくれば手の平に乗せても平気になります。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-006.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-006.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>囲いの中に入り、いよいよ作業が始まる</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-007.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>慣れてくれば手の平に乗せるのも平気に。ミツバチは34度前後の体温を維持しているため触ると温かい</p>

<p>採蜜の手順はこうです。ハチを巣枠から移動させ、巣枠についた蜜蝋をそぎ落とします（蜜蝋はろうそくなどになります）。これを遠心分離機に取りつけ、回転させながらハチミツを絞り、濾過させるとハチミツのできあがり。採蜜のピークシーズンは過ぎていますが、この日だけで約10キロのハチミツが採れました。銀座は夏でも蜜枯れしないため、9月になっても一部でハチミツが採れるのだとか。遠心分離機にかける前の蜜をなめてみると、ほんのりと優しい味がしました。</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-010.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-010.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>ハチを移動させた後の巣板</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-008.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-008.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>蜜の詰まった巣板を遠心分離機にかけてハチミツを抽出する</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-009.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>フレッシュなハチミツのできあがり</p>

<p><br />
<hr /><br />
<p class="section-title"><br />
<a href="#wrapper">目次へ移動</a><br />
<strong>大人の遊び心から始まった</strong><br />
</p></p>

<p>
銀座にミツバチプロジェクトが誕生したのは2006年。ひとりの養蜂家との出会いがきっかけでした。発起人となったのは、貸し会議室を営む紙パルプ会館常務の田中淳夫さんと、有機農産物の流通を手掛けるアグリクリエイトの高安和夫さん。岩手県の養蜂家、藤原誠太さんが銀座で養蜂ができる場所を探していることを知った田中さんは、紙パルプ会館の屋上を貸してもいい、と申し出ました。ところが、藤原さんは「面積が小さすぎて養蜂業としては無理。教えてあげるから、あなたたちでやってください」と言ったのです。
</p>

<p>
田中さんも高安さんも最初は驚きますが、「銀座にミツバチがいたら面白いじゃないか」と、この話に乗ることにしました。藤原さんは既に永田町の社民党ビル屋上でミツバチを飼っており、都会のビル屋上での養蜂に実績がありました。<strong>「皇居周辺にユリノキがあるのを発見し、この周辺で採れたハチミツは最高のものになると確信していた」と、藤原さんは言います。</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-011.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
銀座は夏でも木々や植物が豊富にあり、蜜枯れしないという
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-012.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-012.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>NPO法人　銀座ミツバチプロジェクト副理事長の田中淳夫さん
</p>

<p>
「銀座でミツバチを飼おうなんて、アバンギャルドな存在だと思われたでしょうね」と田中さんは笑います。でも、銀座の懐の深さがそれを許容してくれたと考えています。もちろん始める前には各方面に相談に行き、ビルの全テナントにも了解を得るなど入念に準備しましが、ハチが人を刺すのではないかと心配する声もあったそうです。それでも「大人の遊び」に賛同してくれる人がたくさん現れたのですから。

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>ミツバチの目線に立った街づくり</strong>
</p>

<p>こうして始まった「銀ぱち」のハチミツの収穫量は初年度が150キロ、07年が290キロ、08年には440キロ、今年2010年は7月末現在で昨年同様の800キロを超えました。現在の賛助会員は135名に上ります。</p>

<p>もっとも世界を見渡せば、都市での養蜂は特別なことではありません。<strong>パリでは既に何年も前から養蜂が盛んに行われています。オペラ座や、1900年に開催された万博の会場となったグラン・パレの屋上で採取されるハチミツは、パリ名物のひとつにさえなっています。</strong>通りにはアカシアやライムなどの木々が並び、アパルトマンのバルコニーにはさまざまな花の鉢植え、近くにはチュイルリー庭園があるなど、パリはミツバチにとっては最高の環境なのです。花の種類が多いため、多様な味が楽しめるそうです。</p>

<p>ニューヨークでも今年3月、禁止されていた市内での養蜂が解禁になりました。ロンドンでも市民のための養蜂講座が人気を呼んでいます。<strong>都会とミツバチの関係は相性がいいのです。近くに皇居や日比谷公園、浜離宮など豊富な蜜源がある銀座も、ミツバチにとっては住みやすい環境だったのでしょう。</strong></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-019.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-019.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>ミツバチにとっては、田舎よりも都会の方が住みやすい？？
</p>

<p><strong>国際養蜂協会連合の顧問で、東京・世田谷の自宅で30年前から養蜂を行ってきた渡辺英男さんは、「ミツバチが都市を救う」と言います。</strong>ミツバチは緑がないと生きていけない動物であり、農薬にとても弱い生き物です。とりわけネオニコチノイド系の農薬には弱いとされ、大量死の一因ではないかとも指摘されています。<strong>地方では効率的な農業のために農薬が大量に散布されたり、スギやヒノキなど花をつけない木々の植林が盛んに行なわれたために蜜源が現象したりと、ミツバチが生きるには過酷な環境となってしまいました。地球環境の将来を考えるときには、ミツバチが住める環境を整えることが大切だというわけです。</strong></p>

<p>渡辺さんは、ミツバチには4つの役割があると考えています。</p>

<p>1つめは「健康と暮らし」。体にいいハチミツやプロポリス、ロイヤルゼリーなどをもたらす役割。<br />
2つめは「花粉交配（ポリネーション）」。花から花へ花粉を運び受粉を助ける。植物が豊かな実をつけるのに貢献する大切な役割です。<br />
3つめは「環境改善」。ミツバチが生きるためにはいい空気やいい水が必要。ミツバチが住みやすい環境はすなわち人間にとってもいい環境になるのです。<br />
4つめが「人間社会の改善」です。ポリネーターとして人と人を結びつけ、自然と共生することの大切さ、人々が１つになることの大切さをミツバチが教えてくれると言います。</p>

<p><strong>銀ぱちの田中さんも、ミツバチを飼い始めてから、街を見る「視点」が変わったそうです。</strong>近隣の樹木が受粉し、実をつけて、その実を鳥が食べる――そんな自然の営みに感動し、小さな生き物にやさしい街づくりへ動き出します。自分たちがポリネーターとなって、人と人を結びつけようと、2つの活動（「ビーガーデン・プロジェクト」と「ファームエイド」）を始めました。<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>ビーガーデンの広まり</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-013.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>いち早く屋上緑化に取り組んだ松屋銀座のビーガーデン。今年の酷暑でしおれてしまっているのが残念。世話を続けるのは大変な作業なのだ
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-014.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-014.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>松屋の屋上ではトマトやゴーヤ、ピーマンなどの野菜を育てている。今年は新潟の黒崎茶豆も収穫
</p>

<p>
「ビーガーデン・プロジェクト」は、ミツバチが快適に暮らせるよう、東京に緑を増やそうと呼びかけるもの。呼びかけに応じ、これまで松屋銀座、銀座ブロッサム、マロニエゲートなどのビルの屋上に計1000平方メートルを超える農園や花壇が誕生しました。先頃新装オープンした三越にも芝生を敷き詰めたテラスや農園が生まれています。

<p>屋上庭園のなかでも異彩を放つのが白鶴会館です。ここでは日本酒の原料になる酒米を育てています。屋上のドアを開けると広がる「水田」は圧巻。黄金に輝く稲穂が風に揺れている様を眺めていると、都会にいることを忘れてしまいそうなほどです。もちろん本物の水田には及ばないでしょうが、スズメやトンボも飛んでくるし、いろいろな虫も現れます。桜の木も植えられているため、紙パルプ会館の屋上からミツバチも飛んできます。緑があればそこに動物がやってくる――まさにそれが実感できる空間です。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-015.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-015.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>白鶴会館の屋上のドアを開けると水田が広がっている。ここでは独自開発した酒米を育てる（写真：小泉淳子）
</p>

<p>
兵庫県神戸市に本社を置く白鶴酒造が銀座で酒米作りを始めたのは07年。08年には70平方メートルで15キロ弱、昨年は45キロの酒米を収穫しました。収穫したお米を使った日本酒は同ビル内で行われるセミナーで試飲ができるそうです。今は一部で地元の小学生が植えたコシヒカリも育てており、10月には収穫を行う予定です。本物の農家を訪ねる農業体験ツアーが人気ですが、それを身近で体験できるのですからなんとも贅沢な話です。

<p><strong>日本酒の消費量が落ちるなか、「銀座」というブランドの力でお酒を作ってPRをしたいというのが最初の発想でした。ところが、予想を超えた結びつきが生まれました。</strong>収穫のときには、銀ぱちのスタッフはもちろん、クラブのママやバーデンダーなど、さまざまな人が集まるそうです。これもまた、ミツバチが人と人を結ぶポリネーターとしての役割を果たした結果といえそうです。銀座の田んぼが気に入ったママさんたちの間には「緑化部」も生まれたのだとか。畑でハーブを育てて自分たちの店で出したい、などママさんたちの夢は膨らんでいます。</p>

<p>田んぼの責任者である白鶴酒造の小田朝水（あさみ）次長は、米の収穫が終わったら小麦を栽培して二毛作を実現したいと考えています（昨年は7キロの小麦を収穫）。「銀座産の小麦とハチミツでコラボレートできたら面白い。屋上を通じて何かできないかと常に考えている」と言います。「田んぼができたことで出会いが増え、人生の財産になった」という気持ちがそれを後押しします。</p>

<p>とはいえミツバチの世話も、米の栽培も、一朝一夕ではできません。週末だからといって世話を休むわけにはいきませんし、相応の手間と忍耐と覚悟が必要です。日本全国の都市でミツバチを飼う動きが広がっていますが、大事なのは継続することだと銀ぱちの田中さんは言います。始めたのはいいけれど続かない例も聞くそうです。</p>

<p>銀座の取り組みが成功したのは、街全体を巻き込む強い意志があったからこそ。田中さんや高安さんがプロジェクトを始める以前から銀座はどうあるべきかといった議論に参加し、人と人のつながりを大事にしていたから大きなうねりが生まれたのだと、今回の取材を通じてよく分かりました。「ハチミツを目的にしてしまうと、継続するのは難しい。蜜が採れるときも採れないときもあります。蜜源がなければ花を植えるよう、みんなで努力をしなければいけない。ミツバチを地域のなかでどう受け止め、小さな命をどう広げて行くかを考えないと、根づかない」（田中さん）<br />
</p></p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>生産者と都市を結ぶ試み</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-016.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-016.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>ファームエイドが行われる日は、紙パルプ会館の周りに市が立ち並ぶ
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-017.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-017.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>2010年9月に行われたファームエイドでは新潟の蔵元の稲架（はさ）掛けも登場。手前は杜氏の田澤勝さん
</p>

<p>
2つめの活動が、08年より行っている「ファームエイド銀座」です。「森、里、街、そして海をつなぐサスティナブルネットワークフェスタ」を掲げ、地方の生産者と都会を結びつけるイベントを定期的に開催しています。9月に行われたファームエイドでは、新潟の酒米の稲架（はさ）掛け（刈った稲を天日のもとでゆっくり乾燥させる方法）の稲架も登場しました。思いもかけない話が次から次へと舞い込むんですよ、と田中さんは言いながら、その表情はとても楽しそうです。

<p><strong>銀座産のハチミツは、これまでさまざまな形で商品化されてきましたが、こだわったのは「地産地消」。</strong>銀座の職人の技で作って銀座で売りたい。その願いが実って、ホテル西洋銀座でマカロンになり、文明堂でハニーカステラになり、三笠会館のbar 5517ではカクテルになりました。社会福祉事業を営むスワンは、知的障害者が働くベーカリーでラスクなどを販売しています。バーやクラブの連合会「銀座社交料飲協会」は85周年を記念して、オリジナルカクテル「ハニーハイボール」を考案。1杯飲むごとに小額ですが銀座の緑化運動に寄付される仕組みです。</p>

</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="054-018.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/054-018.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>ファームエイドではクラブのバーデンダーやママたちが「ハニーハイボール」のブースを出していた。立ち寄る人が多い
</p>

<p>
ミツバチの訪れとともに、この街にはさまざまな物語が生まれましたが、すべてを紹介することはとてもできそうにありません。<strong>ただひとつ確かなのは、小さな生き物へのやさしい眼差しが、都会に里山を作るのが夢ではないことを教えてくれたことです。</strong>建て替え中の歌舞伎座の屋上でも、養蜂が行われるようになるかもしれません。パリのオペラ座に対抗して歌舞伎座ハニーを売り出せば、話題になるでしょう。ビルが農場になり、壁面にびっしり野菜が実る日もいつか来るかもしれません。

<p>銀ぱちは2010年3月、農業生産法人「株式会社銀座ミツバチ」を設立しました。これまでボランティアに頼っていたミツバチの世話人の生活基盤を作り、生産を拡大するためです。福島県の遊休農地を借りてジャガイモなどの栽培も始めました。「銀座のミツバチはもしかすると人々を奥山へつなくゲートウェイなのかもしれない」と、社長に就任した田中さんは言います。銀ぱちがこれからどこへ向かうのか、ますます目が離せそうにありません。<br />
</p></p>

<p>関連URL<br />
銀座ミツバチプロジェクト　<a href="http://www.gin-pachi.jp/" target="_here">http://www.gin-pachi.jp/</a></p>

<p>
<strong>小泉淳子　略歴</strong><br />
編集者・記者。国際ニュース週刊誌で長年カルチャーやIT、教育などの取材を行う。現在は書籍の編集に携わる。地球をとりまく問題を多面的に発信していきたいと考えている。</p>
<br />
<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆：小泉淳子<br />
編集・写真：上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>「R水素」は未来の話じゃない！　〜ロラン島から学ぶ再生可能エネルギーとまちづくり</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2010/07/rpt-53.html" />
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    <published>2010-07-30T10:25:12Z</published>
    <updated>2010-09-01T14:21:31Z</updated>

    <summary>     目次へ移動     森と風の島、ロラン     目次へ移動     世...</summary>
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        <![CDATA[<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>森と風の島、ロラン</strong>
</p>

<p class="section-title-middle" id="One01">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>世界最先端の"片田舎"</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-2.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-2.jpg" width="500" height="354" class="mt-image-none" style="" /></span>
ロラン島の周辺には風車が約500基あり、電気のほとんどを再生可能エネルギーで自給している</p>

<p>デンマークのロラン島はコペンハーゲンから南へ175km、人口約7万人の一見どこにでもある田舎です。のどかな風景のなかに目立つのがあちこちでグルグル回る風車たち。一番高い丘で海抜25mという平坦な土地にはひっきりなしに強い風が吹きつけます。ロラン島ではその恩恵を生かして、<strong>電気のほとんどを陸上・洋上合わせた約500基の風車で自給するなど、自然エネルギー（枯渇する化石燃料を使わない無尽蔵の資源という意味で、「Renewable」＝再生可能エネルギーとも呼ばれます）の分野ではトップランナーの"片田舎"</strong>なのです。</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-3.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-3.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>泥んこになって遊びながら、自然から学ぶ「森の幼稚園」</p>

<p>風車の他にも、ロラン島は「森の幼稚園」が有名です。自然環境を利用した幼児教育として注目されている「森の幼稚園」は、1950年代のデンマークが発祥。夏でも冬でも一日中、外で子どもたちが泥んこになって、図画工作、料理、音楽など、森の中のあらゆるものをおもちゃに見立てて、自由な時間を過ごします。このような子どものころからの<strong>「自然の中で生きる力」の教育が、「風力でいこう！」という自然を生かしたエネルギー政策の決定にも、脈々と受け継がれている</strong>のかもしれません。</p>

<p class="section-title-middle" id="One02">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>失業率20%から4%ヘ！ 〜 風を生かしたまちづくり</strong>
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-4.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-4.jpg" width="500" height="356" class="mt-image-none" style="" /></span>数十基が立ち並ぶ陸上風力発電パーク</p>

<p>今は豊かに見えるロラン島も、80年代は失業率が20%を超えていたそうです。そこでロラン市が目を付けたのが再生可能エネルギー産業。かつて造船業で栄えた港をリノベーションし、自然環境や海運といった地域の宝を生かして、今や時価総額では東芝を超える世界最大手の風車メーカーVESTAS社の誘致に成功。90年代にEUが脱化石燃料の切り札として再生可能エネルギーへのシフトを加速させると、やがて失業率は4%にまで減らすことができました。</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-5.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-5.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>世界初の洋上風力発電所オンセヴィ気候パーク</p>

<p><strong>再生可能エネルギーを生かしたまちづくりの成功モデルとして、ロラン島には世界中の企業や政府などさまざまな視察団が見学に集まる</strong>ようになり、エコツーリズムのビジネスも花開きつつあります。たとえば、北西部のオンセヴィ気候パーク（Onsevig Climate Park）は、今から約20年も前の1991年に完成した世界初の洋上風力発電所。沖合では波力発電の実験や魚介類の養殖など一石二鳥の発電所を目指して研究中です。実はここ、1970年代に原発の建設計画が持ち上がった場所。市民が<strong>原発に反対して勝ち取った思い出の場所が、エネルギーシフトは可能だ！ というストーリーを実感できる絶好の見学スポットになっている</strong>のです。</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-6.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-6.jpg" width="500" height="356" class="mt-image-none" style="" /></span>ナクスコウの港に停泊する風力発電＋波力発電の実験機POSEIDON</p>

<p>VESTAS社の拠点となっているのが、西側のナクスコウ（Nakskov）。港には世界に輸出される風車の羽が、そこかしこにスタンバイしていました。近くには実験施設もあり、地上100mというとにかく巨大な洋上風車の圧巻の姿を見学することもできます。</p>

<p>アメリカもいよいよ本腰になり、日本でも銚子沖での調査が始まるなど、世界的にトレンドとなっている洋上風力発電も、20年前は周辺に生息する動物や漁業への影響など、さまざまな不安が叫ばれていました。そこでデンマーク政府は100を超える調査を経て安全性を立証して、今ではあざらしが休みにくるほどに。</p>

<p>「これは前向きな保全なんです」とオンセヴィ気候パークの担当者の方は強調していましたが、<strong>世界で例がないからこそ自分たちでやる！ そして、そのノウハウをオープンかつグローバルにシェアして変化を加速させる！</strong> それらの意識がロラン島では徹底していました。数年後には島と対岸のドイツを結ぶ橋も完成するロラン島では、未来を見据えて再生可能エネルギーに特化した大学や研究所を増やす予定とのこと。<a href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2008/12/rpt-43.html">前回の僕の地球リポートで紹介したハワイ</a>もそうでしたが、制約が多そうな島からこそ、最先端のイノベーションは始まっているのです。
</p>

<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>世界初の「R水素コミュニティ」</strong>
</p>

<p class="section-title-middle" id="Two01">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>■ R水素解体新書</strong>
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-7.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/053-7.jpg" width="500" height="327" class="mt-image-none" style="" /></span>
参考：R水素社会を分解した図<br /><a href="http://www.flickr.com/photos/rh2/4828050979/sizes/o/" target="_here">http://www.flickr.com/photos/rh2/4828050979/sizes/o/</a></p>

<p>さて、エネルギーの自給自足を達成しているロラン島が次に注目しているのが、このリポートの本題の「R水素」です。<strong>R水素のRはRenewableの「R」で、再生可能エネルギーで水を電気分解してつくった水素のこと。</strong>R水素はつくるときも使うときも有害なガスをほとんど出さず、水や空気を汚しません。そして、比較的安定した地熱や小水力だけでなく、気候に依存する太陽光や風力など不安定な再生可能エネルギーをもっと上手に使いこなすために、このR水素が脚光を浴びているのです。</p>

<p>R水素社会のテクノロジーを分解すると、大きく「再生可能エネルギー」「余剰電力で水の電気分解」「水素の貯蔵・運搬」「水素の使い道」の4つに分けることができます（詳細はこちら→<a href="http://rh2.org/chapter02_02/" target="_here">http://rh2.org/chapter02_02/</a> 　解説ビデオもあります）。</p>

<p>まず「再生可能エネルギー発電」これはロラン島の場合、風力ですね。ハワイやアイスランドでは地熱、カナダの渓谷では小水力、オーストラリアでは太陽光など、その選択肢は地域によってさまざまです。</p>

<p>続いて「余剰電力で水の電気分解」をします。必要な電力は再生可能エネルギーでまかない、ロラン島のように需要以上につくって捨てていたありあまる電気を水素の製造に使います。</p>

<p>「水素の貯蔵・運搬」の方法はコミュニティのインフラによって異なります。</p>

<p>そして最後に「水素の使い道」として、電気が足りないときに、水素と酸素を反応させる燃料電池による発電や、水素自動車の燃料、あるいはアンモニアにして肥料にするなど、<strong>石油やガソリンといった化石燃料の独壇場だった用途を、ほとんどR水素が代替することができる</strong>のです。
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-8.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-8.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>コペンハーゲンにある水素ステーション。水素は車の燃料として使っても排出物は水だけ。</p>

<p>と、どうしてもエネルギーの話は抽象的に聞こえますし、「水素は未来の話でしょ」ともよく言われてしまいます。そこで僕たちも実物を見なきゃ始まらない！ ということで、ロラン島のR水素コミュニティを訪ねました。</p>

<p class="section-title-middle" id="Two02">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>市民と行政と企業、みんなで進める"R水素特区"</strong>
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-9.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-9.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>北欧らしい煉瓦造りのR水素ハウス</p>	

<p>ロラン島の西側、ヴェステンスコウ(Vestenskov)という街に、世界初の「R水素コミュニティ」があります。面積は1平方キロメートルくらいで家の数は40軒ほど。ご近所の一角に水素発生装置と水素タンクがあり、数百メートルのパイプラインで水素を各家庭に運び、燃料電池で熱と電気をまかなっています。2007年から始まった実証実験は今のところ5軒。2012年までに街のほとんどの家庭に燃料電池が導入される計画です。</p>

<p>ここは言わば<strong>「R水素特区」</strong>。ロラン市公式のCommunity Testing Facilitiesというプログラムによって、行政が早い段階からプロジェクトに関わり、場所選びや関連する法令の整備など、実現までのリードタイムを大幅に短縮することができます。市にとってはインフラの質の向上や自治体の競争力向上などのメリットがあり、企業にとっては一定数の需要を見込んで商業化を早めることができ、また研究機関も具体的なプロジェクトからデータを仕入れることができるので、各ステークホルダーにとって参入メリットがあるというわけ。日本からもパナソニックなどの大企業がプログラムに参加して共同実験を始めるなど、ビジネスの輪は広がりつつあります。
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-10.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-10.jpg" width="500" height="375" class="mt-image-none" style="" /></span>風力の電気で水を電気分解して水素をつくる「水素発生装置」と水素を貯蔵する「水素タンク」</p>	

<p>ただ、そこは世界初の試み、自分たちで切り開こうとするデンマークといえども、実現までにはいくつかのハードルがありました。最大のネックは「水素の安全性」に対する誤解です。</p>

<p>「水素は危険でしょ？」とよく言われますが、家庭用燃料電池ENE-FARM（これは天然ガスからつくった水素なので、R水素ではありません）が少しずつ普及し、自宅で水素を使って生活している人が増えているという意味でも、安全性が認められているといっていいでしょう。このような事例がありながら、水素はまだまだ、爆発性の危険物だと思われていますが、なぜなのでしょうか？</p>

<p>着火すれば爆発するリスクを抱えているという点では、車に搭載しているガソリンや、家庭で使われている都市ガス・プロパンガス・灯油なども水素とかわりはありません。有名な実験では、米国エネルギー省DOE（Department Of Energy）の水素燃料自動車とガソリン燃料自動車の燃料に点火する実験があります。詳しくはR水素のサイトにありますが（http://rh2.org/faq_02/）、水素は燃焼しながら速やかに拡散し、対するガソリンは、長時間燃焼を続け、やがてクルマごと爆発しています。確かに引火はするものの、元素の中で最も軽いため直ちに上昇するという、安全性に優れた側面もあるのです。</p>

<p><strong>水素は馴染みが薄いために、安全性への不安をあおるような情報が広まりがちですが、正しい知識を持って使えば、ガスやガソリンに比べて特別に危険、ということはありません。</strong>また、水素＝爆発というイメージが広がった一例として1937年に起きた水素飛行船ヒンデンブルグ号の爆発・炎上事故がありますが、水素ガスではなく外皮の塗料が燃えたことが爆発の原因だったことが専門家の間での常識となっています。</p>　
　
<p>このような対話を数年かけて、住民全員に対し粘り強く重ねたことで、最後は住民は水素のことを受け入れむしろ誇りに思うまでになったのです。
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-11.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-11.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>（左）エベさんと燃料電池　（右）H2インタラクションで訪問者に教えてくれる子どもたち</p>	

<p>私たちが見学したのは、ご高齢エベ・ぺーダーセン（Ebbe  Pedersen）さんのお宅でした。R水素ハウスといえども、外観は普通の一軒家。唯一の違いが、家の奥に置かれていた冷蔵庫サイズの燃料電池です。側面には「POWERING TODAY AND TOMORROW」の文字。高齢のエベおじいさんも「自分は先はそんな長くないけど、次の世代のために今から取り組まないとね。十分な説明もあったから水素が危険じゃないって知っていたし、使っていて気持ちいいよ」と胸を張っていました。</p>

<p>また、町内にある「H2インタラクション」は、水の電気分解や余剰電力と燃料電池の組み合わせなど、先述の複雑そうな話をゲーム仕立てで学べる学習施設。そこでは「いつもは風がたくさん吹くからいっぱい電気をつくって、あまったら水素をつくっておくんだ。でも、ときどき風が吹かなくなることもある。そのときに、貯めておいた水素を使って電気をつくればOK。よくできてるでしょ？」と、<strong>将来を担う子どもたちが身振り手振り、「R水素コミュニティ」を自分事として語っていました。</strong>
</p>

<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>R水素コミュニティのキーパーソン</strong>
</p>

<p class="section-title-middle" id="Three01">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>ロラン市議 レオ・クリステンセンさん「ボトムアップで中央政府を動かす」</strong>
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-12.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-12.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>ロラン市議のレオ・クリステンセンさん</p>

<p>では、なぜデンマークで世界初の「R水素コミュニティ」は可能だったのでしょうか。その背景には、1985年の脱原発宣言に代表される強靱な民意と、代替案としての新しいテクノロジーに対する政府と市民の積極的なマインドがありました。</p>

<p>たとえば現在500基といわれる風車のうち、約半数を島の住民が所有しています。きっかけは、<strong>電力の買い取り制度という再生可能エネルギーへの政府の後押し</strong>でした。地域の銀行から融資を受けた市民が、所有する遊休地に風車を建てるようになり、その実績がさらなる投資を呼び込んで「R水素特区」につながっていったのです。この一連のプロジェクトをずっと進めてきたのが、2009年からロラン市議となったレオ・クリステンセン（Leo Christensen）さん。</p>

<p>「地方政府が企業の技術開発を応援し、得られたベスト・プラクティスをボトムアップで中央政府に提示します。結果として、よりよい技術を社会全体に浸透させ、国家の持続可能性と競争力を向上させる政策をとることができるのです。<strong>今の時代は地方の方が魅力があり、生き残る力があります。大都市のコペンハーゲンだって、うかうかしていられないはずですよ（笑）</strong>」とレオさん。</p>

<p>ロラン島の電力はコペンハーゲンにも運ばれています。外部にエネルギーを依存する脆弱な都市に比べ、足もとに魅力的な条件がそろっていて、それが新しい価値になる。レオさんの力強いメッセージは、日本のどの地方自治体にとっても参考になるでしょう。
</p>

<p class="section-title-middle" id="Three02">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>BASS社 ヤン・ヨハンソンさん「エネルギーをもっとオープンソースに」</strong>
</p>

<p class="caption"><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="053-13.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/053-13.jpg" width="500" height="334" class="mt-image-none" style="" /></span>バルティックシーソリューションズ社のヤンさん</p>

<p> 続いて話を聞いたのが、実際に「R水素特区」を指揮するバルティックシーソリューションズ(Baltic Sea Solutions=BASS)社のヤン・ヨハンソン（Jan Johansson）さん。BASS社は10人くらいの非営利企業で、エンジニアリング、資金調達、社会学的分析などの専門家集団です。</p>

<p>「ありあまる風力の売電は、ロラン島にとってビジネスチャンスなんだよ。ただ2009年に電気系統の安定のため、低需要時に送電すると課金される法律が施行されたんだ。そこで電気を捨てるのではなく需給をコントロールし、<strong>エネルギーの一時的なストレージ(貯蔵)ができる技術として水素に注目したんだ。水素は自分たちのコミュニティで使うこともできるし、売電でビジネスができるからね。</strong>」</p>

<p>次のフェーズは2つの可能性を探っているといいます。1つめは1万軒という桁違いのR水素ハウス化という需要を起こし、燃料電池の量産体制を固めること。2つめは、特にインフラが整っていない田舎での電気系統から独立したR水素コミュニティモデルをつくること。BASS社が視野に入れているのはデンマークにとどまりません。土地柄に合わせた多様なケーススタディを実践して、すべてのノウハウをオープンに公開するつもりなのです。</p>

<p>「同じ水素でも、化石燃料を使って水素をつくるなんてまったくナンセンスだ。何の解決にもならないからね。R水素がフィージブル（現実的）かどうかと聞かれたら、まだそうとは言えないけど、<strong>結局重要なのはフィージブルにする！ と言う意志なんだよ。魅力的なビジョンによってお金や技術が集まれば自ずと近付いていく。</strong>それが今ロラン島で起こっていることなんだ。」</p>

<p>ヤンさんから学んだことは、ビジネスとしてだけでなく、「なぜやるのか」という大きな理想を語ることが大切だということ。デンマークでは当たり前のように、住民たちが自分のこととして未来を考えている。果たして日本はどうだろうか、どこか他人任せにしていないだろうか。ずっとそんなことを思いながら、日本への帰路につきました。
</p>

<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>R水素社会を実現させるために必要なたったひとつのこと</strong>
</p>

<p>　僕たちがデンマークを訪れた最大の理由は、「水素は未来の話じゃない！」ということを確かめるため。そして、<strong>既にテクノロジーは揃っていて、やろう！と思えばいつでもできる</strong>、と実感できました。それと同時に、「やるか」「やらないか」、意識と実行力の差も思い知らされました（いや、むしろ「やらなきゃ！」と火が付きました）。</p>

<p>その話をコーディネータの方にしたとき、こんな話を教えてくれました。「<strong>デンマークでは、『国は国民に対しておいしくて新鮮な水と空気、食料とエネルギーを約束しなければならない』という軸が、どんな政治家でもぶれない</strong>んです。」だからコストや効率は乗り越えるべき課題であっても、やらない理由にはならないのですね。僕が理事を務めるR水素ネットワークの代表理事・江原春義さんはよく<strong>「R水素社会を実現させるために必要なたったひとつのことは、今、政界や財界で化石燃料を管理している人々の意識に革命を起こすこと」</strong>と言いますが、それはまさにデンマークで実際に起こっている話だったのです。
</p>

<p class="section-title-middle" id="Four01">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>そして「エネルギー・コモンズ」の実現へ</strong>
</p>

<p>この旅のもうひとつのヒント、それはエネルギーのノウハウは共有すべきモノ＝コモンズの領域なのではないか？ということです。個人の著作物をオープンにシェアすることで新しい創造を生み出す「クリエイティブ・コモンズ」や、科学版「サイエンス・コモンズ」、教育版「ccLearn」といった世界的な枠組みが既にあるように、<strong>人間が生きるための根源的なインフラであるエネルギーの領域でアイデアをオープンに共有し、化石燃料社会からの脱却を加速させること。</strong>それは遠い目標に聞こえるかもしれませんが、「待っていても絶対に来ない。自分たちで取りに行く！」という明確な意志の元、ムーヴメントにしていくことが絶対に必要です。</p>

<p>ロラン島だけでなく、ハワイにもカナダにも、R水素の専門家はたくさんいます。興味を持ってくれているジャーナリスト、クリエーター、科学者、ビジネスパーソンも増えています。水素だけでなく、太陽光、風力、地熱あらゆる再生可能エネルギーのプロフェッショナルを巻き込んだ「エネルギー・コモンズ」の実現へ。遙かにワクワクする新しいミッションに出会えた、実りある旅となりました。
</p>

<p>参考サイト：R水素ネットワーク（<a href="http://rh2.org" target="_here">http://rh2.org</a>）

<br /><br />

<p><strong>兼松佳宏 プロフィール</strong><br />
1979年秋田生まれ。2020年までにクリエイティブで持続可能な世界をみんなで実現するために、さまざまなプロジェクトでウェブディレクションやイベントプランニング、執筆活動などを行っている。最近では特に「エネルギー×デザインシンキング」にフォーカスし、再生可能エネルギーとそれによってつくった「R水素」の啓発アクションをあれこれ仕掛中。<br />
<a href="http://greenz.jp/" target="_blank">greenz.jp</a><br />


<br /><br />
<div style="text-align: right;"><p><small>
取材・執筆：兼松佳宏<br />
写真：兼松佳宏、R水素ネットワーク<br />
協力：ニールセン北村朋子、浅倉彩、井口奈保<br />
編集：上田壮一（Think the Earthプロジェクト）
 </small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>絵本が開くエコロジーの可能性　〜ボローニャ国際児童図書展から</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2010/05/rpt-52.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2010:/jp/thinkdaily/report//7.1346</id>

    <published>2010-05-12T03:11:58Z</published>
    <updated>2010-08-05T08:11:32Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア（ボローニャ国際児童図書展）...</summary>
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        <![CDATA[<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア（ボローニャ国際児童図書展）</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-003.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
会場入口。世界各国の国旗が来場者を出迎える。入場券購入時には名刺の提出が求められ、同展に来た目的を聞かれる
</p>

<p>
<strong><a href="http://www.bookfair.bolognafiere.it/" target="_here">「ボローニャ国際児童図書展」</a>は、イタリアのボローニャで毎春開催される、世界最大の子どもの本専門の見本市です。</strong>児童書出版とマルチメディア産業に関わる世界各国の作家、イラストレーター、出版社、配給関係者、著作権・特許権関係者、マスコミ、司書などで例年賑わっています。1964年に始まった同展は、今年47回目を迎え、67カ国から1,200社以上が出展し来場者数は4,760名を超えました。（2010年3月23〜26日開催）。</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-005.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
来場者で賑わうイタリア<a href="http://www.corraini.com/" target="_here">CORRAINI社</a>のブース。ブルーノ・ムナーリの絵本を多く手がけることで知られている。展示作品の数はブース最大級
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<p>同展は、出版社が作品を展示し版権を売買する場であると同時に、各国の出版状況や傾向について情報交換する場でもあります。出版に関わる専門家がコラボレーションし、新しいビジネスを生むチャンスにもなっています。さらに、世界中から児童書に関する最新情報が集まるため、ビジネス戦略を立てる機会にしている出版社もあります。日本からは、福音館書店や偕成社などの児童書出版社が出展しました。
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-007.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
「ボローニャ・ラガッツイ賞」ノンフィクション部門に入賞した『L'HERBIER』を出版するフランス<a href="http://www.editionsmemo.fr/" target=_here">EDITIONS MEMO社</a>のブース。作品を手に版権の交渉が行われている
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<p>
出版社にとっては才能ある新しい絵本作家を発掘する機会であり、作家にとっては作品を売り込む大きなチャンスです。同展で才能を見出され出版につながるケースもあるため、みな真剣。絵本作家やその卵たちが自身の作品を抱きかかえ、出版社ブースの前に行列を作って並んでいる姿も見られました。
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-009.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
絵本作家やその卵たちが、自身の作品を売り込める掲示板が用意されている。作家の連絡先を持ち帰れるような配布形式のチラシが目立つ
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-011.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
各国のイラストレーターの原画を展示するエリアも設けられている。貴重なイラストに見入る来場者</p>

<hr />
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<strong>「ボローニャ・ラガッツイ賞」に異変あり？</strong>
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<strong>同展が絵本作品を対象に設ける唯一の賞<a href="http://www.bookfair.bolognafiere.it/en/boragazziaward/" target="_here">「ボローニャ・ラガッツイ賞」</a>。芸術・技術の観点と、テキストとイメージのバランスという視点から、最も優れた作品に贈られます。</strong>受賞作品は広くメディアで紹介され注目を集めるので、大変重要かつ名誉な賞とされています。今年は34カ国から1,160作品以上の応募があり、フィクション、ノンフィクション、新領域（New Horizons）、新人（Opera Prima）の4部門において、全15作品が受賞しました。
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-013.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
「ボローニャ・ラガッツイ賞」受賞作品のポスターが会場入口に大きく掲示されている。場内にもいたるところに掲示されており、同賞に対する注目の高さがうかがえる
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-015.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-015.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
「ボローニャ・ラガッツイ賞」授賞式。受賞作家に盾が贈られた（ボローニャ・マッジョーレ広場に面したサラ・ボルサ図書館にて）</p>

<p>
応募される絵本のテーマは毎年様々。日々の生活を描いたもの、子どもの世界観を表現したもの、笑いを追求したものなど多岐に渡ります。そんな中、<strong>今年は特に自然をテーマにした作品が多く見られました。</strong>受賞した15作品のうち約半分の7作品が、自然やエコロジーを取り上げています。生きものの共生を描いた作品、樹の一生をハイライトした作品、チャールズ・ダーウィンの研究を物語にした作品、季節の変化を祝うダンスをテーマにした作品、植物標本をイラストで表現した作品、インド先住民族の暮らしを伝える作品、自然素材をイメージに使った作品です。
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-017.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-017.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
「ボローニャ・ラガッツイ賞」審査委員長アントーニオ・ファエーティさん。1939年ボローニャ生まれ。小学校教諭を経た後、ボローニャ大学教育科学部で児童文学の歴史を研究。現在ボローニャで読書を通じた教授法について教えている（ボローニャ・マッジョーレ広場に面したサラ・ボルサ図書館にて）
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<p>
審査委員長のアントーニオ・ファエーティさんは、<strong>「自然をテーマにした作品が多かったことは、今年初めての傾向で驚いているんです。昨年がダーウィン生誕200周年だったことが影響していると思いますが、作家がこうした問題に敏感になっているのでしょうね」</strong>と話します。

<p>昨今、地球温暖化や森林破壊などが、メディアでも大きく取り上げられるようになりました。出版業界もこうした問題を取り上げ、自然や環境の大切さを描く作品が増えてきています。何世代にも渡って取り組まなければならない問題だからこそ、未来を生きる子どもたちに絵本でも伝えてほしいテーマです。</p>

<p>それでは今年、どんな作品が受賞したのでしょうか？<br />
フィクション部門と新領域部門を受賞した、オランダ・日本・インド発の３作品をご紹介します。<br />
</p></p>

<hr />
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<strong>自分で言葉を補い物語をつくる：『De boomhut』（フィクション部門受賞・オランダ）</strong>
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-019jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-019jpg" width="275" height="368" class="mt-image-none" style="" /></span>
『De boomhut』【ロナルド・トルマン（エッチング）、マライヤ・トルマン（イラスト）／LEMNISCAAT／2009】<a href="http://www.lemniscaat.nl/" target="_here">http://www.lemniscaat.nl/</a>
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-021.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-021.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
『De boomhut』の英語版は『The Tree House』というタイトルで、2010年LEMNISCAATから出版された
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絵本は、絵と文がセットになっているかたちが一般的ですが、絵のない絵本、言葉のない絵本というかたちもあります。フィクション部門を受賞した『De boomhut』は、<strong>見開き2ページに一枚の絵が描かれた本。言葉は一言もありません。</strong>クジラ、クマ、サイ、フラミンゴ、パンダ、クジャク...といった動物たちが、ゆっくりとお互いを誘い合うように、まるで音楽を奏でるように一本の樹に集まる姿が描かれています。（"De boomhut"は「木の上の家」という意味です）
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-023.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-023.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
『De boomhut』の出版社LEMNISCAATのブース。数カ国の出版社が同時に商談中
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-025.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-025.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
『De boomhut』の絵が出版社LEMNISCAATの展示スペースの約半分を飾り、プロモーションに力を入れていることがうかがえる
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<p>
作者は、エッチングを担当したロナルド・トルマンさんと、イラストを担当したマライヤ・トルマンさん。父と娘の親子による作品です。
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-027.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-027.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
ロナルド・トルマンさん。『De boomhut』でエッチングを担当。彫刻・絵画などの制作も行う（出版社LEMNISCAATのブースにて）
<a href="http://www.ronaldtolman.nl/" target="_here">http://www.ronaldtolman.nl/</a>
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-029.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-029.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
マライヤ・トルマンさん。『De boomhut』でイラストを担当。動物をキャラクターにしたイラストがユニーク（出版社LEMNISCAATのブースにて）
<a href="http://www.marijetolman.nl/" target="_here">http://www.marijetolman.nl/</a>
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<p>
審査員はこの本を「私たち人間も自然の一部だということを、エコロジカルな視点から訴えた本」と称しました。様々な生きものが集まり一本の樹を住みかとする、という絵から、多様な生きものが共生する地球、という意味を読み取ったのでしょう。

<p>しかし、トルマンさん親子は、本に言葉を入れないことで、作者が特定の物語を作らないことを目指したと言います。</p>

<p><strong>「物語そのものが私たちに語りかけられるような余白と臨場感と自由を探求しました。読み手が自分自身の物語を作れるように。人々にこう考えなさいというような強制はしたくなかったんです」</strong>（マライヤ・トルマンさん）</p>

<p>「本から自然環境の大切さを読み取れるでしょうが、<strong>こうしなさいこう考えなさいと言わずに、みんながこの本について話して想像して言葉を与え、物語をつくることができるその自由こそを大切にしたいのです」</strong>（ロナルド・トルマンさん）</p>

<p>一人ひとりが絵から何かを感じ、意味付けするプロセスを大事にしてほしいという願い。自分自身で得た気づきは、その人の心にいつまでも灯る明かりになります。<strong>そして、他者との共生や自然の大切さに思いをはせることができる『De boomhut』は、私たちが生きる社会や環境について考えるきっかけを与えてくれます。</strong><br />
</p></p>

<hr />
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<strong>余白に込められた想い：『Little tree』（フィクション部門入賞・日本）</strong>
</p>

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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-031.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-031.jpg" width="337" height="270" class="mt-image-none" style="" /></span>
『Little tree』【駒形克己（作）／ONE STROKE／2009】
<a href="http://www.one-stroke.co.jp/" target="_here">http://www.one-stroke.co.jp/</a>
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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-033.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-033.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
『Little tree』の紹介を受けながらゆっくりページをめくる来場者
</p>

<p>
小さな木の芽が成長しながら四季折々の表情を見せ、次第に年老いてゆく樹の一生を描いたポップアップ絵本。見開きページの中央に、様々なステージの樹が立ち上がります。言葉はほんの少し。余白が大胆にとられているのが印象的です。

<p><strong>「モノであふれる現代社会に静かな美しさを創り出した本」</strong>と評され、フィクション部門に入賞しました。大量生産大量消費が主流の現代において、月に50冊しか生産できない手作りの絵本です。</p>

<p>ページをめくるだけでも美しい本ですが、作者の駒形克己さんは、<strong>樹の一生と自分の人生を重ねて、余白に読者の思いを書き込む楽しみ方を提案しています。</strong>この本が、その人が生きている証になり、大事な人に遺す本にもなる、という可能性を見出して。</p>

<p>というのも、この本には駒形さんのこんな想いが込められているのです。<br />
</p></p>

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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-035.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-035.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
駒形克己さん。デザイン、出版、製品開発、展示、ワークショップなど、東京とパリを拠点に活動中（出版社ONE STROKEのブースにて）
</p>

<p>
「私の叔父が長い間意識不明のまま入院し、最後に亡くなってしまったときに、大切な人を失うことが周囲に与える影響を改めて感じたんです。生きている間にも、その人の存在を認めたり理解できたりしたら、人と接することや暮らすことがもっと大事にされるんじゃないかな。」（駒形さん）

<p><strong>「本は、その人の使い方によって変わっていいもの。自由に変えられるという解釈を含めて、ある意味『不完全なもの』であってもいいと思っています」</strong>（駒形さん）</p>

<p><strong>個人の思いや経験が書き加えられた絵本。それは、人の一生が尊くかけがえのないものであることを私たちに気づかせてくれます。</strong>そして、自分が手を加えた絵本は、その人の人生に寄り添う宝物になるに違いありません。<br />
</p></p>

<hr />
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<strong>出版を超える総合的なプロジェクト：『Do!』（新領域部門受賞・インド）</strong>
</p>

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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-037.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-037.jpg" width="275" height="354" class="mt-image-none" style="" /></span>
『Do!』【ギータ・ウォルフ（文）、ラメシュ・ヘンガディ（イラスト）、シャンタラーム・ダッペ（イラスト）／Tara Books／2009】
<a href="http://www.tarabooks.com/" target="_here">http://www.tarabooks.com/</a>
</p>

<p>
新領域部門を受賞した『Do!』は、西インド・マハラシュトラ州のワルリ族の暮らしを描いた作品です。この絵はもともと結婚式などの特別なイベントの際にワルリ族の家の土壁に書かれるもの。それをTara Booksのディレクター、ギータ・ウォルフさんと、ワルリ族のアーティスト、ラメシュ・ヘンガディさん、ラシカ・ヘンガディさん、シャンタラーム・ダッペさん、クスム・ダッペさんが絵本で再現しました。

<p><strong>ワルリ族は自然に神を見出し、畏怖と感謝の念をもって暮らしている少数先住民族。</strong>田んぼでお米を作り、川で魚をとり、土壁の家で牛や鶏と共に暮らしています。自然と共生しながら人々が助け合って生きている姿が、「Farm」「Grow」「Dance」といったシンプルな単語と共に、ダイナミックに描かれています。<br />
</p></p>

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<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-039.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-039.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
『Do!』土を耕し稲を育てるワルリ族の暮らしを描く。流れる線と単純な円や三角形から構成された絵は、清らかな呪文か象形文字のよう
</p>

<p>
出版社のTara Booksは、本の内容はもちろん、その製造過程まで大事にしています。<strong>『Do!』はシルクスクリーンで印刷され、手作業で製本されています。この他の本も、多くは印刷から製本まで全て手作りです。</strong>その仕上がりは、機械で作られた本には到底かなわない端正さ。<strong>紙は現地で作られた再生紙を使用しています。</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-041.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-041.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
『Do!』の帯には本作りの工程が描かれている。印刷、タイピング、縫製、製本まで全て手作り
</p>

<p>
<strong>制作は、普段壁塗りなどをしている低所得の人々が、絵本制作という違った分野で、その技術を活かせる機会でもあるのです。現地に新たな雇用を生み出すと同時に、制作に関わる人が共に生活し働く場ができているそうです。</strong>

<p>※『Do!』の制作過程はYoutubeでご覧いただけます。<br />
<object width="500" height="400"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/sP60hTjmZxI&hl=ja_JP&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/sP60hTjmZxI&hl=ja_JP&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="500" height="400"></embed></object></p>

<p>Tara Booksの本は、イギリスやアメリカなど海外に輸出され、ポルトガル語、イタリア語、スペイン語にも翻訳されて、世界中で読まれています。プロジェクト・コーディネーターのアルン・ウォルフさんは、<strong>「制作に携わる人々は、賃金を得るだけでなく、本作りを通して大きな自信と満足感を得ているのです」</strong>と話します。<br />
</p></p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="052-043.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/052-043.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
Tara Booksプロジェクト・コーディネーターのアルン・ウォルフさん（出版社Tara Booksのブースにて）
</p>

<p>
Tara Booksの仕事は単なる出版ではありません。<strong>人と自然が共に生きる民族の暮らしを伝え、製造過程では環境に配慮し、現地に雇用を生み出すという「総合的なプロジェクト」</strong>なのです。こうした好循環を生み出す多機能的なプロジェクトが、今後更に増えてくることに期待したいと思います。
</p>

<hr />
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<strong>本作りのプロセスもエコロジーに</strong>
</p>

<p>
これまでも、自然やエコロジーをテーマにした優れた絵本がたくさん描かれてきました。『木を植える男』（ジャン・ジオノ原作、フレデリック・バック絵／あすなろ書房）や『せいめいのれきし』（バージニア・リー・バートン作／岩波書店）などを読まれた方は多いでしょう。これらの絵本は、「内容」からエコロジーの大切さを伝えていますが、<strong>今回ご紹介した絵本は「内容」に加え「手法」からもエコロジーに取り組んでいます。『Little tree』も『Do!』も少部数を手作りし、大量製品にはない価値を作り出した作品です。本作りのプロセス自体がエコロジーにつながっているのです。</strong>

<p>さらに、『Little tree』作者の駒形さんは、本作りについて「モノ化する本」という考え方を提案しています。</p>

<p><strong>「例えば、本がいろいろな角度や視点から眺めたり楽しめたりできるものになれば、本は情報をのせる媒体ではなく『モノ』として機能します。DMなどのすぐ捨てられてしまうものに紙を使うのではなく、世の中に紙が残されるかたちの本、オブジェのような本を作れば、紙にしかないぬくもりや質感を大事にしつつ紙の使用量を削減できるでしょう」</strong>（駒形さん）</p>

<p>本のかたちを再考することや、『Do!』のように製造過程をトータル的にプロデュースすることは、今後出版業界が取り組んでいくべきテーマです。<br />
</p></p>

<hr />
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<strong>経験から得られる深い気づき</strong>
</p>

<p>
技術の発達に伴い、情報がますますデジタルメディアで発信されるようになりました。しかしその時代においても、本にしか担えない役割があります。それは、<strong>「経験」がもたらす「深い気づき」</strong>です。

<p>人の考え方や行動の根本を揺るがす気づきは、知識ではなく経験から得られるもの。自分で言葉とストーリーを補う『De boomhut』も、自分の生涯を木の一生に重ねる『Little tree』も、物語を自身に引き寄せて読む経験ができる絵本です。</p>

<p>私たちが直面している持続可能性に関する問題は、長期的に取り組まなければ成果が出ず、複雑で一筋縄ではいかないからこそ、経験を通した深いレベルでの気づきが重要になってきます。</p>

<p>親が子どもに絵本を読み聞かせるならば、<strong>お互いの声や体温、時間を共有する豊かな体験</strong>になります。そして、紙のぬくもりや手触り、時間の経過と共に色あせる紙の自然な感覚、紙に書かれた手書きのあたたかさは、<strong>デジタル媒体では決して経験できない特別なもの。</strong>さらに、<strong>自然界の木から作られた紙は、自然と人を結びつけてくれる媒体でもあります。</strong><br />
</p></p>

<hr />
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<strong>想像する力と今ここにない世界を描く力</strong>
</p>

<p>
多様な生きものと多様な環境が相互に関わり合い、たった一つの地球で生きているという事実。人の暮らしも社会の営みも、そしてそれを支える地球環境も、幾重にも編まれた関係性の網目でつながっています。

<p>しかし、現代の暮らしからは、手にとる製品がどんなふうにつくられたのか、使い終わったらどこへ行くのかという「モノの来し方行く末」を辿ることが難しい。さらに、離れた場所で起きている自然破壊や貧困などの問題が自分と関係している、という感覚をもつことは容易ではありません。そうした状況の中では、<strong>「想像する力」</strong>が大切になってきます。</p>

<p>絵本が育む想像力は、これからの時代を生きる私たちにますます必要になってきます。<strong>絵本の余白とイメージがもつ曖昧さには、解釈の多様性と無限の想像性があります。絵本で培った豊かな感受性は、現代社会で感じにくくなっている関係性を見いだす力につながるはずです。</strong></p>

<p>資本主義経済の限界が見え、幸せや豊かさの価値観が問い直される時代に、私たちはどこへ向かい、どんな社会をつくって行くのでしょうか？　<strong>大きな変化を伴う時代においては、現状から未来を「予測」するのではなく、つくり出したい世界を「描く」ことが大切です。そしてその世界に向かって、様々な状況が相互に関係していることを理解したうえで、行動していくこと。</p>

<p>想像力は、「今ここにはない世界を描く力」です。それは、この変化の時代に大人にこそ必要な力。</strong>絵本がもつ想像と経験の可能性は、子どもだけでなく大人にも開かれています。小さい頃に読んだあの本を、もう一度手にとってみませんか？<br />
</p></p>

<p></p>

<p>
<strong>星野敬子　略歴</strong><br />
シューマッハーカレッジ・ホリスティックサイエンス修士課程修了。(有)イーズ／チェンジ・エージェントで環境・持続可能性に関するコミュニケーション業務を経、2010年独立。『つながりを取りもどす時代へ』企画編集。現在、絵本・教材、つながりのデザインについて研究活動中。</p>
<br />
<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆・写真：星野敬子<br />
編集：上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
協力：多木陽介、小塚泰彦<br /></small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>美しい星空は誰のもの？　〜&quot;星空の世界遺産&quot;の試みが問いかけること</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2010/03/rpt-51.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2010:/jp/thinkdaily/report//7.1262</id>

    <published>2010-03-31T05:34:00Z</published>
    <updated>2010-08-05T08:15:33Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 星の降る村、テカポ ニュージーランド南島の玄関口、クライストチャー...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>星の降る村、テカポ</strong>
</p>

<p>
ニュージーランド南島の玄関口、クライストチャーチから車で３時間走ると、ミルキーブルーの氷河湖を前に、石造りの小さな教会がたたずむ村があります。テカポと呼ばれる、人口300人ほどの小さな村です。美しい山並みが湖をふちどり、湖に面した教会の大きな窓から臨む風景は、見る者の心をしんと澄ませる魅力をたたえ、世界中から観光客を引き寄せています。<br />
<br />
湖と教会の景観で知られるテカポに、「星空の美しい村」という評判を新たに生み出した人がいます。この村で15年ほど前に星空ガイドを始めた日本人、小澤英之さんです。
</p>

<p class="caption">
<img alt="051-002.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-002.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" />
＜上左＞先住民マオリの言葉で「夜の寝床」という意味をもつテカポ湖。氷河が削りとった岩の細かい粒子が湖水に含まれ、陽を受けると乳白色に輝く
＜上右＞ヨーロッパからの開拓民が1935年に建てた「善き羊飼いの教会」。石造りの素朴な味わいがこの地の自然によくなじむ
＜下左＞スターウォッチング・ツアーを提供するEarth&Sky社のオフィスは、テカポの村のインフォメーションセンターに隣接している
＜下右＞テカポでスターウォッチング・ツアーを始めた小澤英之さん。最初は奥さんと２人きりで始めたが、いまでは15人のスタッフを抱えるまでに
</p>


<p><strong>
テカポは、ニュージーランドでも指折りの星空観察に適した土地です。湖を見下ろす小高い山、マウント・ジョンの頂上には、1965年に天文台が置かれました。このマウント・ジョン天文台は世界最南端の天文台です。</strong><br />
<br />
北半球で暮らす私たちには見られない星も多く、その代表が南十字星。季節によっては天の川が頭の真上を横切り、天文ファンならずとも夢中で夜空を見上げてしまいます。そのうえ<strong>晴天率も高く、乾燥していて空気が澄み、大きな都市が近くにないために街明かりも少ない。それでいて、何千メートルもの高地に登ったりすることなく、誰でも簡単に満天の星を眺めることができる場所なのです。</strong><br />
<br />
実は日本の天文学者も、この地に拠点を持っています。マウント・ジョンには5基の天体望遠鏡があり、MOA-II望遠鏡と呼ばれるニュージーランド国内最大の望遠鏡は、名古屋大学が運用しています。ここでは、北半球では見られない「銀河の中心」とマゼラン星雲をターゲットにして、太陽系の外にある惑星や暗黒物質を探しています。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-003.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-003.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
天体望遠鏡のドームが立ち並ぶ、日中のマウント・ジョン頂上（標高1030ｍ）。テカポ市街地は標高710mなので、ほんの数百メートル登れば頂上に着ける
</p>


<p>
小澤さんのツアーでは、日が暮れるとバスで山の頂上へ向かいます。夜のとばりが降りた山腹から、バスはヘッドライトを消して進みます。ライトが星空観察の邪魔になるからです。バスを降りたところでまず目を閉じ、そのまま顔を天に向けて数秒。パッと目を開けると、そこには息を呑むような星空が広がります。星空を見上げているというより、星のなかに放り込まれたような気分です。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-004.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-004.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
夜のマウント・ジョン頂上。天の川をバックに南十字星が輝く。建物の床に寝転がって星を眺めることもできる
<p>
いっしょに夜空を眺めながら、小澤さんは言います。<br />
<br />
「星を見ていると、森林浴をしているみたいに、アルファ波が出てくるような気がするんです」<br />
<br />
森林浴ならぬ、星光浴。降るような星の明かりに身を浸すことができるテカポならではの体験です。<br />
<br />
星がよく見えると有名な場所でも、大都市から遠く離れた山奥にもかかわらず、大都市の方向の地平線近くがぼんやり明るくなってしまうところは多いものです。<strong>しかしテカポでは地平線のすぐ近くに星が明るく瞬きます。山の頂上に立って星を見ると、自分の目線の下にまで星があるような錯覚すら起こります。</strong><br />
<br />
けれど、地元の人たちにとっては、この星空は当然のもの。私たちが身の回りに空気がふんだんにあることを当然と思うように、星がこれほどたくさん見られる空が珍しいものという感覚はなかったそうです。<br />
<br />
「星空を見せてそれがビジネスになるなんて......」。地元の新聞は、星空ツアーを始めた小澤さんを紙面で揶揄したほど。けれど、<strong>徐々にその評判は国内外に広がり、いまではむしろ、ニュージーランド国内の人が星空ツアーを体験しにやってくることが増えています。</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-005.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-005.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
マウント・ジョン頂上の「アストロ・カフェ」。「テカポの星空を見たい」と国内外からたくさんの人が訪れる
</p>

<hr />
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<strong>ところが、開発の波がテカポにも</strong>
</p>

<p>
<strong>2000年ごろ、ニュージーランドには開発バブルが起こりました。その波はここテカポへも押し寄せ、ひそやかに十数軒が立ち並ぶだけだった商業地はこれまでの何倍もの大きさになり、住宅地もはるかに大きく広がるという計画が打ち出されました。</strong>これではテカポの暗い夜空は失われてしまう。日本で育った小澤さんにはあまりにもはっきりと見える未来でした。<br />
<br />
日本で、世界の各地で、多くの街が開発とともに、本来持っていた美しい自然やその土地固有の景観を失っていく。それと同じ轍をテカポも踏もうとしている。小澤さんはそんな恐れを抱きました。<br />
<br />
とはいえ、ここは昔から天文台があった土地ですから、街明かりによって星空が見えなくなる"光害"に無頓着だったわけではありません。<strong>自治体は何十年も前から照明のコントロールを始めていました。いまでは、街灯には上に光が洩れないように傘がかけられ、星空観察に影響の少ないナトリウム灯が使われています。</strong>ただし、商業施設の照明規制はないので、このまま商業地が広がれば、間違いなく夜空は白くぼんやりと明るくなってしまうでしょう。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-006.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-006.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
村の街灯には光害の少ないナトリウム灯が用いられ、さらに傘をかぶせて、できるだけ空に光がもれないようにしている
</p>


<p>
<strong>また、車のライトは以前から大きな問題でした。10kmも離れたところを走る車のライトがマウント・ジョンの頂上に届くのです。山のふもとをハイビームで走る車が頂上のほうをちらりと向くと、天文台のドームの壁に人の影がくっきり映ります。</strong>そうした明かりが目に入ると、いくら頭上に星が光っていてもよく見えなくなってしまいます。<br />
<br />
バブルの勢いのままに開発が行われ、商業地や住宅地が広がって、車の行き来が増えれば、星に満ちた夜空は失われてしまう。なんとかそれを阻止できないか。ある日、小澤さんは、こう思いつきました。<br />
<br /><strong>
「テカポの星空を世界遺産にしてはどうだろう？」</strong><br />
<br />
ユネスコの世界遺産として「星空」が採択されたことはありません。そのときにはあまりにも途方もない思いつきでした。<br />
<br />
しかし、星空ツアーを提供する会社の共同経営者であるグラエム・マレーさんは、小澤さんの「この空を守らなければ」という訴えに心動かされます。<br />
<br />
「<strong>この星空のもとで育った僕たちには、夜空が暗くて星がたくさん見えるのは当然のことだった。失われるかもしれないはかないものだとは思ってなかったんだ。ヒデに言われて初めて、この星空がどれほど貴重であるか気づいた。次の世代に残していくべき大事な遺産だ、とね。</strong>それに、世界遺産化は、僕たちのやっている、天文という科学の分野と旅という娯楽の分野が融合した『アストロ・ツーリズム』を強く後押ししてくれるだろう」
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-007.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-007.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
Earth&Skyの共同経営者グラエム・マレーさん
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>強力なリーダーの出現</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-008.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-008.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
ニュージーランド政府で閣僚を歴任したマーガレット・オースティンさん
</p>

<p>
グラエムさんはその後、ユネスコの本部に強いパイプを持つマーガレット・オースティンさんにこのことを訴え、協力を仰ぎました。<br />
<br />
マーガレットさんは、かつてニュージーランド科学技術省の大臣を務めた人物です。テカポが世界初の「スターライト・リザーブ（星空保護区）」として指定されることで、ニュージーランドに限らず世界の人々、とりわけ子どもたちの星空への科学的な関心、さらには、科学全般への関心が高まることが期待できる。その思いが、マーガレットさんをこの活動の推進役へと向かわせる原動力となりました。<br />
<br />
「それに、ニュージーランドは、ポリネシアから船でやってきたマオリの人々が発見した土地。<strong>マオリにとって星は、航海の際には船の行き先を示し、陸では暦となって農耕の時期を教えてくれる、きわめて重要な存在です。白人で最初にここへ到達したクック船長も星に導かれてやってきました。</strong>この国を作った星は、まさに私たちニュージーランド人の遺産です」<br />
<br />
実は、マーガレットさんがその話を耳にした2005年ごろ、ユネスコが本部を置くパリでも「世界遺産として"天文"のジャンルを作るべきではないか」という議論が行われるようになっていました。<br />
<br />
世界遺産条約では、「歴史」や「芸術」や「自然保護」の観点からだけでなく、「科学」の観点からも世界遺産に値するかどうかを検討すると謳っているのに、科学を軸にした世界遺産はこれまでにないのです。<br />
<br />
天文学は人間がもっとも古くからなじんできた科学の一分野です。天文にまつわる建造物や自然景観を遺産として考えようという議論が起きたのは、自然な流れでもあったのでしょう。<br />
<br />
さまざまな論議のすえ、<strong>星空を世界遺産に含めるかどうかを検討するためのテストケースとして、テカポのほか、ハワイのマウナ・ケア山など、世界中から５カ所の候補が挙げられましたが、最終的に、テカポおよび近接するアオラキ山（マウント・クック）が選ばれ、テカポはいま、世界遺産にきわめて近い位置にいます。</strong>
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>取り残された地元の人</strong>
</p>

<p>
ユネスコおよび国内の重要人物であるマーガレットさんがリーダーとして参画したことで、テカポの世界遺産化はぐっと現実味を帯びてきました。その一方で、テカポで暮らしている人々の間には、ある不安がわき起こっていました。<br />
<br />
テカポ周辺に広大な土地を所有し、牧羊業を営むアンドリュー・シンプソンさんはこう言います。<br />
<br />
「テカポの世界遺産化という大きな動きが国際的なレベルで進んでいながら、これまで、住民は何も知らされていませんでした。このままでは誰ともわからない人がやってきて厳しい規制をかけるのではないか、自分で自分の運命を決められなくなるのではないか、という不安を持つ人は多いはずです。たとえば、開発禁止という規制が作られるとしたら、それは私たちにとって重大な問題です」<br />
<br />
開発とは、経済的な成長を目的とした開発のことですか、と問うと、<br />
<br />
「経済成長、社会的な機能の整備、環境保護の仕組み、すべてにおいての成長です。<strong>たしかにここの星空はすばらしい。でも『星空だけが最優先、ほかのことはすべて我慢しなさい』ということであれば、住民としては見過ごせない事態です</strong>」
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-009.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-009.jpg" width="500" height="166" class="mt-image-none" style="" /></span>
＜左＞9700ヘクタールの農場（牧羊地）のほかにも広い土地を所有するアンドリュー・シンプソンさん<br />
＜右＞地元のビジネスマンであるカール・バーチャーさん
</p>

<p>
クアハウスやスケート場などのレクリエーション施設を運営しているカール・バーチャーさんも、<br />
<br />
「私はレクリエーションビジネスをしているので、世界遺産になるメリットを期待していないわけではありません。けれど、地元住民の生活やビジネスのほうが、より心配です。たとえば、スケート場の夜間照明を暗くしろと言われたら、ビジネスには大きなダメージです。私のビジネスに限らず、ユネスコの定める規制次第では、テカポは手足を縛られてしまい、やっていけなくなるでしょう」と懸念を表しています。<br />
<br />
地元の自治体はどう考えているのでしょうか。テカポを含むマッケンジー市の市長ジョン・オニールさんは、このように話してくれました。<br />
<br />
「市としては、照明規制などでテカポの夜空を守ることにも配慮してきましたが、同時に、開発を進める権利も含めて住民の生活の向上を図ることも大事な役割だと考えています」<br />
<br />
<strong>市長さんは先ごろ、これまで世界遺産化を推進する目的で開催されていた星空保護区委員会に、地元住民を代表できる人を入れるべきと考え、前出のアンドリューさんを委員会のメンバーとして招聘しました。地元住民と委員会とのコミュニケーションは、やっと始まったばかりのところです。</strong>
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-010.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-010.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
マッケンジー市の市長ジョン・オニールさん
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>開発と暗い夜空の保護は両立できるか？</strong>
</p>

<p>
天文台がこの地に置かれたのは、天文学者であるアラン・ギルモアさんが米国ペンシルバニア大学の依頼でニュージーランドの各地を検分してまわり、テカポが最適だと判断したことによります。1965年、ここに天文台ができた当初からテカポの村と夜空を見つめ続けてきたアランさんは、こう言います。<br />
<br />
「テカポの村は私が来てから３倍の大きさになりました。でも星が３倍見えなくなったかといえばそうではない。テカポが世界遺産となり、さらに市街地が大きくなっていっても、よりよい照明法とテクノロジーの進歩によって、光害は防げると思います」<br />
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-011.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-011.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
マウント・ジョン天文台の管理責任者、アラン・ギルモアさん
</p>

<p>
世界の大都市には、いたずらにあたりを照らすだけで、明るくしようとした場所（たとえば道路）を照らす役に立っていない街灯があふれている、ともアランさんは指摘します。<br />
<br />
「こうした照明は、単なるエネルギーの浪費です。その上、星空をも見えにくくしてしまう。いまでは、電球に上から傘をかぶせるだけでなく、ナトリウム灯などの新しい照明も開発されています。こうしたテクノロジーもこの先、さらに発達するでしょう」<br />
<br />
<strong>マーガレットさんも、グラエムさんも、世界遺産の実現を機に開発を全面的に禁止し、テカポの今の暮らしを規則で縛る必要はないと言います。これまでテカポは照明をコントロールしてきた歴史と実績があり、野放図な開発は規制するにせよ、いくぶんかの開発が行われたとしても、夜空に配慮した街のデザインは可能だという考えです。</strong><br />
<br />
「世界遺産化によって、より暗い夜空が実現できるのでは？」と話してくれたのは、マウント・ジョンで観測を続けている名古屋大学の研究者、住貴宏さんでした。
</p>

<p>
「僕がテカポに通い始めた10年前から比べると夜空は明るくなりつつあり、観測に影響が出てきているのは事実です。星空が世界遺産になるということはそこが暗い夜空であることが前提になるでしょうから、いま、街灯だけにかかっている照明規制が商業施設にも適用されるなど、暗い夜空が守られるような開発が行われることを期待しています」</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-012.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-012.jpg" width="500" height="166" class="mt-image-none" style="" /></span>
＜左＞名古屋大学太陽地球環境研究所の住貴宏さん<br />
＜右＞ニュージーランド最大、直径1.8ｍの望遠鏡。大型CCDカメラを取り付けて夜空を撮影する
</p>

<p>
一方、小澤さんは開発に大きな危惧を抱いています。<br />
<br />
「僕はテカポが世界遺産に指定されることでビジネス上の恩恵を受ける立場。でも<strong>世界遺産をきっかけに、この地域が大きく開発され、夜空は明るくなり、自然が破壊されるのではないかということを非常に心配しています。世界遺産化の活動は、状況によっては引き返したほうがいいように思う</strong>」<br />
<br />
とまで言っています。開発を止めようとして考えたことが、逆に次の開発の引き金を引くかもしれない。発案者としての責任を強く感じているのでしょう。
</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>「星空の世界遺産」の切符は、そこに暮らす人が持っている</strong>
</p>

<p>
小澤さんはいま、「ここで静かに暮らしている人にとって、世界遺産化にどんなメリットがあるのか」を常に自問しています。<br />
<br />
「スキー場の照明はダメ、スケート場の照明もダメ、とよそから来た人間が言うのは簡単なことですが、スケート場は昔からこの村の生活の一部です。夜間の暗い道をセキュリティライトで照らすのも、人々の安全がかかっている。そうした、いわば村の文化を否定したり、生活を犠牲にしたりして星空を守れ、と一方的に言っていいものではない、と僕は思うのです。村の人、一人ひとりと話をして、世界遺産になることを望むかどうか、その意思を聞いてみたいと考えています」<br />
<br />
テカポの自然に魅かれて6年前に移り住み、オーガニックコーヒーを出すカフェを営むデブラ・ハンターさんは、私たちにこう言いました。<br />
<br />
「私は世界遺産化に賛成よ。でも、<strong>夜空を守ることと自分たちの生活をどう折り合わせるかについては、自分たちで答えを見出すのがいいと思う。誰かに"あなた方はこうしなさい"と命令されるのでなく、"自分はこの星空を守ることに貢献してるんだ"と誇りに思えたら、それが一番よね</strong>」
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-013.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-013.jpg" width="500" height="332" class="mt-image-none" style="" /></span>
カフェを営むデブラ・ハンターさんに意見を聞く小澤さん。小澤さんは地道に住民を訪ねてまわり、会話のなかから解決のヒントを探ろうとしている
</p>

<p>
<strong>世界遺産というのは、守るべき風景、自然、街並を切り取って写真のように固定し、保存するだけではなく、そこに住む人を包含したものであってほしい</strong>と私も思います。人間を排除した遺産は、いったい誰のための遺産でしょう。<br />
<br />
世界遺産が実現することで、ユネスコが要請する規制が暗い夜空を守る大きな傘となり、照明や環境の保護を前提とした、これまでの常識を覆すような新しい考えで開発が行われることも期待できます。逆に、小澤さんが心配するように、世界遺産を当て込んだ開発が始まり、下手をすれば、世界遺産どころか、暗い夜空が失われることもありえるでしょう。<br />
<br />
<strong>テカポはどのような道を選ぶのでしょう？</strong>　私たちが取材の過程で出会った人々は、形の違いこそあれ、みな、テカポの自然の美しさやコミュニティをとても大切に思っていると熱をこめて話してくれました。その方々の決断を、日本から見守り続けたいと思います。願わくは、いわば「お上」が決める世界遺産ではなく、そこに暮らす人たち自身が、世界に二つとないテカポの美しい夜空を大事に思い、守り続けてくれることを。
</p>

<p class="caption">
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="051-014.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/051-014.jpg" width="500" height="650" class="mt-image-none" style="" /></span>
テカポ湖畔の「善き羊飼いの教会」に沈む天の川と南十字星
</p>
<br />
<p>
<strong>江口絵理　略歴</strong><br />
1973年生まれ。阪急コミュニケーションズ(元、TBSブリタニカ)勤務を経て、イ
ギリスの出版社ブルームズベリーにインターン勤務の後、フリーランスの編集
者・ライターに。著書に『ボノボ ― 地球上で、一番ヒトに近いサル』『ミーアキャットの家族』（そうえん社）。</p>
<br />
<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆：江口絵理<br />
写真：上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
協力：小澤英之（Earth & Sky）<br /></small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>ダムを壊すという初めての選択～赤谷プロジェクト</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2010/01/rpt-50.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2010:/jp/thinkdaily/report//7.1099</id>

    <published>2010-01-29T01:25:37Z</published>
    <updated>2010-02-10T07:57:29Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 温泉地の近くで 撮影 茅野恒秀 今回訪れた国有林「赤谷の森」は、新...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="section-title">
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<strong>温泉地の近くで</strong>
</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_003.jpg" alt="" />撮影 茅野恒秀</p>

<p>今回訪れた国有林「赤谷の森」は、新潟県との県境に近い群馬県みなかみ町にあります。最寄りの上毛高原駅までは、東京駅から新幹線で1時間半弱。車でも関越道経由でほぼ同じくらい、と都内から比較的交通アクセスの良い場所です。道中には湯宿温泉に猿ヶ京温泉、川古温泉、法師温泉など雰囲気の良い温泉地がいくつもあるので、温泉好きの人は、もしかしたら足を運んだことがある場所かもしれません。</p>

<p>そんな観光地の近くで、生物多様性復元を目指したとても先進的な活動が行われているのです。皆さんはご存じでしたか？</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_004.jpg" alt="" />一般的には30-40年ほど前に降った雨・雪が地中で温められ、湧き出したものが温泉。豊かな森林がもたらしてくれます（法師温泉・長寿館） 撮影 茅野恒秀</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_002.gif" alt="" />赤谷プロジェクトマップ<br />
様々な表情を持つ赤谷の森はおおまかに6つのサブエリアにわけられています。管理のテーマもそれぞれの特性に合わせて考えられたものです。</p>

<ol>
<li>赤谷源流エリア　巨木の自然林の復元、イヌワシの営巣環境を守る</li>
<li>小出俣（おいずまた）エリア　植生を守る。環境教育の研究やテキスト開発、実践　</li>
<li>法師沢・ムタコ沢エリア　水源の森を育てる。クマタカの営巣環境を守る</li>
<li>旧三国街道エリア　旧街道を理想的な自然観察路にするための森づくり、<strong>渓流環境を取り戻す</strong></li>
<li>仏岩エリア　炭焼きや道具づくりなど、伝統文化や生活にかかわる森林利用の研究、技術を伝える</li>
<li>合瀬（かっせ）谷エリア　実験的な、新しい時代の人工林管理の研究と実践</li>
</ol>


<p>今回私が取材したダム撤去プロジェクトが進む茂倉沢は、エリア4に属します。赤谷プロジェクトの中では、渓流環境復元ワーキンググループが担当しています。
</p>


<hr />
<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>現場を見る・感じる</strong>
</p>

<p>昨年11月10日、ダムが撤去された現場での合同見学会に参加しました。これまで防災目的で、自然の中にコンクリート製のダムを建設することは数えられないほど繰り返されてきましたが、それが<strong>公共事業によって日本で初めて「なくされる」歴史的な現場をじかに見たい</strong>と思ったことがきっかけでした。
</p>
<p>今回撤去対象となったのは、利根川水系の赤谷川の支流、茂倉沢の2号ダム。下流側から数えて2番目にあるダムです。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_005.jpg" alt="" />工事前の2号ダム</p>
 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_001.jpg" alt="" />昨年10月26日に工事が始まり、幅28メートル、高さ9メートルのダムの中央部、幅約8.6メートルが取り除かれました　撮影 茅野恒秀</p>

<p>昭和20年から30年代に茂倉沢本流と支流には、合わせて17の治山ダムがつくられました。直接的なきっかけとなったのは、1947（昭和22）年に発生したカスリーン台風です。カスリーン台風は全国で1,000人以上の死者を出しましたが、群馬県では最大の592人が死亡。激しい土石流がもたらした痛ましい悲劇は、60年以上経った今でも語り継がれるほどです。当時は戦中戦後の資源不足の影響で山に木がほとんどなく、そのことが被害に拍車をかけ、茂倉沢上流部辺りでも大きな崩落が起こりました。あの八ッ場ダムも、計画のきっかけはこのカスリーン台風の襲来でした。</p>

<p class="section-title-middle" id="Two01">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>治山ダムってどんなダム？？</strong>
</p>

<p><strong>「ダム」とひとくちに言っても、実はいろいろな種類があります。</strong>洪水調節などを目的につくられる「治水ダム」、水の確保や発電などに利用される「利水ダム」、それらの目的をあわせ持った「多目的ダム」、土砂災害を防ぐためにつくられる「砂防ダム」などが主なものとしてあげられます。</p>

<p>今回撤去されたダムは、「治山ダム」と呼ばれます。一般の人はあまり聞き慣れませんが、森林を管理する「森林法」に基づき、大雨が降ったときに山肌が崩壊しそうな渓流につくられます。
期待される防災効果は</p>
<ol>
<li>土砂を止める</li>
<li>土石流が発生した場合、傾斜を緩やかにし、土砂のスピードを弱める</li>
<li>山の足元（専門用語では山脚＜さんきゃく＞）を固定する</li>
の3つ。
</ol>


<p>治山ダムの建設目的は、簡潔に言えば、「山を治すこと」なので、森林が回復すればその使命はだいぶ果たしたことになります。全国の治山ダムに損傷や劣化も目立っていますが、<strong>これまでに撤去が意図的に行われたことはなく、逆に現在でも建設半ばの治山ダムが全国各地にあるのだそうです。</strong></p>

<p>治山ダムは山深い渓流につくるため、多くの場合、移動してもらう人家などへの補償を伴いません。災害時の大きな土嚢（どのう）のような役割を果たすものなので、規模も小さめ。<strong>防災手段としてはつくりやすく、そのために全国の渓流を必要以上に固めてきてしまった</strong>と言います。渓流環境はダム設置で大きなダメージを受けますが、そのデメリットが表立って議論される機会はあまりありませんでした。</p> 

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_006.jpg" alt="" />川は例えれば、人の血液。よどみなく流れることで渓流環境の「新陳代謝」を促します　撮影 茅野恒秀</p>

<p class="section-title-middle" id="Two02">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>ターニングポイントにある治山事業</strong>
</p>

<p>赤谷プロジェクトの構成団体である日本自然保護協会（以降、NACS-J）が発行する会報『自然保護』の特集記事「渓流環境の修復を考える」（2008年3・4月号）の中で、富山県立大短大環境システム工学科准教授の高橋剛一郎さんは、次のように書いています。</p>

<blockquote>防災対象がなくなったり変化したところでは、安易にコンクリート製のダム設置を計画することを考え直すのはもちろん、見直し（補修や改修）などの際に、治山ダムの小型化や撤去などを検討することも十分可能であると思います。しかし、実際にはそれらが行われたことはほとんどありません（抜粋）。</blockquote>

<p>高橋准教授は、時代とともに社会の考え方も、法<strong>（※）</strong>も変わってきていることから、従来の治山ダムを主体にした「治山」が時代のターニングポイントにあることを鋭く指摘しています。</p>

<p class="cond"><span class="highlight">※　</span>関連する法律には、第三次生物多様性国家戦略（2007年策定）や、失われた自然環境を取り戻すことを目指す自然再生推進法（2003年施行）などがある。また、山地から海まで土砂が運ばれないことで起こる河道や海岸の浸食を防ぐため、「流砂系」という新しいことばで土砂管理の方針転換を示した「流砂系の総合的な土砂管理」なども、従来のダムによる土砂遮断から、土砂を流すことに意識を向けていくことを示している</p>

<p class="section-title-middle" id="Two03">
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    <strong>沢を歩き、石ごろごろの道を行く</strong>
</p>

<p>スパイクのついた長靴をお借りし、落ち葉をザクザク言わせながら道のりを急ぎます。途中、沢の中を歩くので、スニーカーなどでは濡れてしまいます。
</p> 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_007.jpg" alt="" />一歩一歩、足を「よいしょ」と持ち上げる感じで歩きます
</p>
<p>参加した関係者の皆が口をそろえて、「50年前とはだいぶ森林の様子も変わってきている」と言います。長い年月をかけ、山は豊かな森をようやく取り戻しつつあるのです。
</p> 

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_008.jpg" alt="" />撮影 茅野恒秀</p>

<p>撤去された2号ダムより先に下流の1号ダムに着きました。コンクリートを覆う緑色のコケが設置からの年月を物語ります。沢の水がゆるやかに流れ落ちていました。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_009.jpg" alt="" />撤去されたダムとほぼ同時期、同サイズでつくられた1号ダム
</p>
<p>撤去された2号ダムは、8年前の洪水で底抜けを起こし、土砂が流出。そのため、2号ダムまでの道のりに川の水はあまりなく、ごろごろとした石の道（専門用語では、堆砂敷＜たいさじき＞）が数百メートル続きます。
</p> 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_010.jpg" alt="" />長い堆砂敷。川は端の方を流れています</p>

<p>いよいよ撤去された2号ダムの現場に着きました。</p>
 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_011.jpg" alt="" />ブレーカーで崩された跡がそのままになっていました</p>

<p>見学会の時点では、底にまだ数メートルの土砂が溜まっていて、水は撤去された中央部でなく、パイプを使って底抜けを起こした右壁下側にう回させてありました（仕上げ工事は11月末に完了）。
</p>
<p>通常は作業道をつくって重機を入れるそうですが、今回は小さなモノレール道を設置して資材の運搬をしました。工事はクマタカの営巣が確認されたことで当初の予定を遅らせましたが、モノレールも周りの環境に影響を与えない配慮とのこと。</p> 

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_012.jpg" alt="" />資材を運ぶミニモノレール</p>

<p>見学者からは、ダムの両袖が残されていることに質問が集中しました。「これでは、一般の人はダムを撤去したと思えないのでは...」と厳しい見方も。実際には、両袖まで撤去するのが理想なのですが、土砂の過剰な流出や山腹の崩壊リスクを考慮し、第1段階としては中央部撤去としたそうです。</p>
 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_013.jpg" alt="" />撤去ダム前に集まる参加者</p>

<p>例えば、サケが産卵時に川を上がるためなど、動物や魚の行動範囲を邪魔しないよう櫛（くし）状のスリットを入れる「スリットダム」や魚道などは、全国に先例がありますが、<strong>基礎部分までとってしまう大胆な試みは全国初</strong>。NACS-J職員で、プロジェクトを長く担当している茅野恒秀さんは、「底の部分が横断するかどうかが、ダムであるかどうかの判断基準。今回は基礎部分もすべてコンクリートをとってしまったから、ダムではない」と回答していました。基礎が残ると、水面のわずか上を飛ぶ昆虫などには、生息環境に影響が出ます。</p>

<p><strong>「川は川につくらせる」</strong>、印象に残った茅野さんのことばです。ダムを撤去すると、水も土砂も自由に流れるようになり、<strong>川そのものが川の流れをつくる</strong>というパワーを持つようになります。<strong>撤去の一番のねらいもそこにあります。</strong></p>

<p class="section-title-middle" id="Two04">
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    <strong>難しい防災との両立</strong>
</p>

<p>2号ダムを見学した後、再び1号ダムとの中間くらいの地点に戻ります。ここには、洪水が起きた場合の水や土砂の流れをコントロールする措置として、新たに「保全工」がつくられました
。</p>

 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_014.jpg" alt="" />両サイドに見えるコンクリートの壁が保全工。2号ダムと1号ダムのちょうど中間くらいにあります</p>

<p>中央部分を11メートル空け、左右に低めのコンクリートの壁をゲートのようにつくってあります。大雨が降って、土石流が発生した場合の激しいがけ崩れを想定しています。今後モニタリングを続け、なくても安全に山を保てることがわかれば、「撤去していく」とのこと。</p>

<p>赤谷プロジェクト内に渓流環境復元を担当するワーキンググループが発足したのは2005年でした。その際、専門家の先生による組織「新治地区茂倉沢治山事業全体計画に関する検討委員会（委員長：太田猛彦・東京大学名誉教授）」との連携体制がつくられました。防災面の検証には、専門的な調査や知識が欠かせませんから、こうしたバックアップもダム撤去の根拠を裏付けています。</p>

<p>現在では森がだいぶ回復したこと。万が一、土石流が流れ出しても周囲に民家がないこと。下流に被害を食い止める1号ダムがあり、その上流でダム撤去の技術開発に取り組めること。これらの条件がそろい、ようやくGOとなった今回のプロジェクト。目的は渓流環境を元に戻し、生物多様性を回復させることなのですが、防災と両立させることは、なかなか難しい判断であることをうかがわせます。</p>

<hr />
<p class="section-title">
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<strong>意思決定の新しい形</strong>
</p>

<p>治山ダムの一部撤去を「ささやかな試み」と感じる人もいるかもしれません。<strong>でも、これまで自然の中につくられるばかりだったコンクリートの建造物を国もかかわって、意図的に壊すということ。</strong>つまり、国税でその作業を行うということですが、<strong>その意思決定が地域の人々も交えた議論とコンセンサスの上になされたことは、とてつもなく大きな一歩</strong>だと思いました。
</p>
<p>では、この意思決定の場はどのように形成されたのでしょうか？</p>

<p class="section-title-middle" id="Three01">
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    <strong>スタートは必然的に</strong>
</p>

<p>赤谷プロジェクトの正式名称は、「三国山地／赤谷川・生物多様性復元計画」と言います。長い正式名を持ったこのプロジェクトは、林野庁関東森林管理局とNACS-J、赤谷プロジェクト地域協議会の間で2004年3月30日に結ばれた協定に基づいて行われています。</p>

<p>地元には、バブル期に浮上したスキー場やダム計画への住民の反対運動が下地としてありました。NACS-Jとの縁もそのときからだと聞きます。森はとびっきりおいしい水や豊かな温泉を恵んでくれるばかりでなく、絶滅危惧種であるイヌワシやクマタカ、ツキノワグマ、ニホンカモシカなどのすみかであることも運動を展開する中で明らかになっていきました。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_015.jpg" alt="" />
（左上）ツキノワグマ、（右上)クマタカ、（左下）カモシカ、（右下）イヌワシの親子<br />
イラストは2005-2007年まで赤谷の森を担当していた林野庁の森林官・平田美紗子さん</p>

<p>2000年、バブル崩壊の流れにも後押しされ、スキー場もダムも開発中止になります。しかし、住民の皆さんは、そこで「終わり」ではなく、守られた自然をもっとよくする仕組みをつくってみたいと感じるようになっていました。NACS-J側も、評価方法がとても難しい生物多様性を取り戻していく過程を世の中に見せたいという思いから、そのモデルケースにふさわしい場所を探していました。両者の思いがうまく重なり合い、赤谷の森一帯の国有林の共同管理を林野庁に持ちかけてみようということになったのです。</p>

<p>担当局・関東森林管理局の反応は思いのほかよく、準備会議の開催がスムーズに決まりました。それまで国有林の管理は国がリードして行ってきましたが、赤谷の森の決めごとには地域協議会とNACS-Jのメンバーを交えて開く「企画運営会議」での了承が必要になりました。法律上の管理者は現・関東森林管理局ですが、<strong>局は計画に赤谷プロジェクトで話し合った事柄を反映させると協定で約束した</strong>のです。</p>

<p>重い腰を上げた林野庁の思い切りのウラには、国有林を巡る時代の変化があります。戦後から生産してきた木材の価格が70年代に暴落。人工林の育成に力を入れてきた従来の方針に行き詰まりが見え、2001年に森林・林業基本法が見直されました。そこでは、森林がもともと持っていた能力の数々、例えば、水や土壌を守ったり、人と共生したり、資源として循環していくといった役割により力を入れていくことが決められました。</p>

<p>それまで林野庁とNACS-Jは国有林伐採で意見がぶつかり合うこともあり、新聞記事などでは、両者の「歴史的な和解」と書かれたりもしました。関東森林管理局・赤谷森林環境保全ふれあいセンター所長の田中直哉さんは、「川古ダム（国交省が計画）に反対する一連の住民運動も見ていたし、<strong>未来の森づくりは皆でやっていかなければといった機運が高まっていた</strong>のだと思います」と当時を振り返ります。</p>

<p class="section-title-middle" id="Three02">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>森を取り巻く多様な声</strong>
</p>

<p>赤谷プロジェクトにはコア団体の構成メンバーの他に、おそろいの帽子が目印のボランティアサポーターが関東一円に50、60人ほどいます。赤谷の森には、かつて人工林の苗床を育てていた作業小屋の建物を再利用した拠点「いきもの村」があります。月始めの週末に開かれる<a href="http://www.nacsj.or.jp/akaya/iv_akayadayreport.html" target="_blank">「赤谷の日」</a>には、有志がここに集まって森の生物を調査したり、地域と接点を持ったり、昔ながらの炭焼きに挑戦したりしています。森を取り巻く多様な声が、プロジェクトをより豊かなものにしています。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_020.jpg" alt="" />地元・猿ヶ京小の子どもたちが「いきもの村」周辺で遊びながら学ぶ様子を平田さんがイラストでまとめたもの</p>

<p>「ものを考える仕組みとか、かかわる姿勢とか、どうやって合意をとるのかとか、何かが起きたときに何を考えればそれをきちんと考えることになるかとか、そういうプロセス自体、モデルだと思っています」、茅野さんはそう言います。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_018.jpg" alt="" />NACS-Jの茅野さん</p>

<p>治山ダム撤去については前例がないことから、評価技術もありません。生物多様性についても判定基準はないので、これから、絶滅危惧種の生物はもちろん、渓流沿いの森林や土砂の流出状況、昆虫や魚などについても丁寧にモニタリングを続け、データを収集していきます。5年後、10年後に「あれは大きな一歩だったと言われるようにしたい」というのが、かかわっている皆さん共通の願い。<strong>全国各地で老朽化が進み、改修時期を迎える治山・砂防ダム管理のモデルケースとなることを目指している</strong>のです。</p>

<p class="section-title-middle" id="Three03">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>人と森とのかかわりをヒントに</strong>
</p>

<p>猿ヶ京ホテルの大女将で旧新治村（現みなかみ町）の民話研究第一人者である持谷靖子さんは、明治生まれの地元のおばあちゃんからこんな話を聞いたと言います。</p>
 
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_016.jpg" alt="" />森の上空を飛ぶイヌワシ　撮影 <a href="http://birdimages.jp/""target="_blank">高野丈</a></p>

<blockquote>ある家の嫁が5月の田植えの時期に弁当をこしらえて田んぼに入った。赤子を置いて作業を始め、田植えしちゃ子どもの様子を見ていたが、つい夢中になって目を離したすきに、大きなワシが連れ去ってしまった。<br />
「オラ（私）ガ（の）アカッコー（赤ちゃん）」「オラガアカッコー」と、嫁は泥だらけの足で後を追いかけたが、子どもは見つからない。「オラガアカッコー」と泣くうちにその嫁はついにカッコーになってしまった。</blockquote>

<p>「ほんとに今でも5月になると田んぼに探しに来るのよ、すごく低空飛行でね」、持谷さんは言います。霜降り模様をした足を持つカッコーを、泥だらけの足で子どもを探す母の姿に重ねているのです。赤子を連れ去ったワシがイヌワシかどうかは、詳しく語られていませんが、大型のワシが日々の暮らしの中でどのようにとらえられていたか、その情景まで浮かんでくる話です。</p>

<p>茅野さんは、例えば<strong>「イヌワシがこの地域の人々にとってどういう存在だったのかを考えることが、この地域をどう守っていこうかという力につながる」</strong>と言います。地元の人と森とのかかわりを丁寧にひもとき、尊重している姿が印象的でした。
</p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
<p>今後の課題は「昔の森に戻したい」という地元の願いをかなえていくこと。地域協議会は、まだ
町も積極的に参加していないため、「地域の代表と言っても、ほんの一部」と考えています。まだまだこれから、なのです。</p>

<p class="section-title-middle" id="Three04">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>まとめにかえて～防災の時間軸
</strong>
</p>
	
<p>さて、今回の見学会に参加し、ダム撤去を「伝えること」の難しさを肌で感じました。生物多様性を取り戻すと言っても、その効果はすぐには目に見えて現れませんし、その「効果」とは、人間にとってのわかりやすいメリットではないからです。例えば、「明日の紙面に載せる」といったスピードで事業の概要を正確に伝えることはとても難しい、そう感じました。</p>

<p><strong>森がなくなった場所にダムがつくられた<br />
→その後、長い時間をかけて再び森がつくられた<br />
→ダムがなくても大丈夫ではないかという状態になった</strong></p>

<p>今回のダム撤去はそうした長い時間軸をたどって決断されたものですが、<strong>大事な流れ</strong>だと感じました。<strong>私たちは普段、なかなかそうした余裕幅を持って「防災」をとらえることをしていないように思い、はっとしたのです。つまり、私たちと森とのかかわりを大切に考えた上での持続可能な「防災」のあり方を、です。</strong></p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_017.jpg" alt="" />工事完了後の2号ダム　撮影 茅野恒秀</p>

<p>「赤谷プロジェクトのゴールは設けられない」と話していた茅野さん。かかわっている誰もが、森の再生、そして、生物多様性の復元には、自分の人生を超えた時間を想定していました。まずは、その時間軸を共有すること。それが第一歩なのだと思いました。自然の声に繰り返し耳を傾けては、細かな合意形成を重ねていく―。ときにはもどかしいほどの地道なプロセスこそが、赤谷プロジェクトのパイロット・プログラムとして使命なのだと私も感じ始めていました。</p> 

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/imgs/reports/050_019.jpg" alt="" />撮影 出島誠一</p>

<br />
<p>関連リンク<br />
<a href="http://www.rinya.maff.go.jp/kanto/" target="_blank">林野庁関東森林管理局</a><br />
<a href="http://www.nacsj.or.jp/" target="_blank">日本自然保護協会（NACS-J）</a><br />
<a href="http://www.nacsj.or.jp/akaya/" target="_blank">赤谷プロジェクト</a><br />
</p><br /><p><strong>岩井光子　略歴</strong><br />
地元の美術館・新聞社を経てフリーに。2002年、行政文化事業の記録本への参加を機に、地域に受け継がれる思いや暮らしに興味を持つ。農家の定点観測をテーマにした冊子「里見通信」を2004年に発刊。<a href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/news/">地球ニュース</a>編集スタッフ。高崎在住。</p>

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・執筆：岩井光子<br />
写真：佐々木拓史（Think the Earthプロジェクト）<br />
写真提供・協力：日本自然保護協会（NACS-J）</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>くらしの時間を取り戻そう。広がれ、弁当の日！</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2009/12/rpt-49.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2005:/jp/thinkdaily/report//7.1016</id>

    <published>2009-12-18T00:46:25Z</published>
    <updated>2010-03-03T06:23:07Z</updated>

    <summary> 目次へ移動 子どもが作る「弁当の日」とは？ 今、全国各地の小中学校に「弁当の日...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[
<p class="section-title">
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<strong>子どもが作る「弁当の日」とは？</strong>
</p>

<p>今、全国各地の小中学校に「弁当の日」という取り組みが広がっています。これまでにも「弁当の日」を設ける学校はありましたが、それは通常、作るのが親。<strong>今回紹介するのは、子どもが作る「弁当の日」です。献立作りから買い出し、調理、片づけ、箱詰めまで、全部子ども自身がやるのです。</strong><br />
この取り組みは2001年、香川県綾川（あやがわ）町にある町立滝宮（たきのみや）小学校が独自に始めました。初年度は、家庭科で調理の基本を学んだ5、6年生計126人が年5回の弁当作りに挑戦。1つとして同じものはないオリジナル弁当を食べました。<br />
子どもが家庭の台所に立ち、朝から弁当を作る－。簡単なようでも、現代家族にとっては"大変"なことです。「弁当の日」を発案した当時の校長・竹下和男さんに、PTA役員は「無理です」と即答したといいます。理由は、「危ないからガス栓や包丁を触らせたことがない」「早起きできるはずがない」。慌ただしい時間帯に台所を占領されるなんてとんでもないという事情もあったようです。<br />
　<strong>ところが、滝宮小学校の挑戦から9年目の今年、「弁当の日」は全国各地に広がってきています。2009年11月末現在の実践校数は、大学まで含めて37都道府県557校。宇都宮市では昨年度から、管轄する全小中学校93校、約4万人の児童・生徒と年数回のペースで実施しています。</strong></p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_002.jpg" alt="" />「弁当の日」を提唱した竹下和男さん</p>


<p class="section-title">
<a href="#wrapper">目次へ移動</a>
<strong>広がる背景にある数々の物語</strong>
</p>

<p>"大変"だったはずの「弁当の日」なのに、これほど実践校が増えているのはなぜでしょうか。その理由を詳しく知る機会が10月下旬、香川県でありました。竹下さんが企画し、賛同する人たちが集った「第1回全国交流会in香川」です。参加者は、実践を支えた教諭や町長、PTA、実践校の卒業生、婦人会ら地元の61人と、全国各地の教育、行政関係者、助産師、農業関係者ら79人の計140人。筆者も参加しました。</p>

<p>交流会の冒頭、竹下さんはこんなエピソードを紹介しました。佐賀県内の学校が実施した初めての「弁当の日」。テーマは「感謝弁当」でした。6年生の女の子は朝5時に起きて、3つも弁当を用意。1つ目は、単身赴任先の大阪に戻るお父さんのための弁当。2つ目は、病院にいるおばあちゃんのための弁当。3つ目は、自分が学校で食べる弁当。「親は手伝わないで」と言われていた両親は、食卓のイスに座って、1人で台所に立つ娘の後ろ姿をずっと見ていました。"愛娘弁当"を新幹線の中で食べたお父さんは、会社の昼休みにお母さんへ電話。「娘にありがとうと伝えてくれ。おいしくて、うれしくて、泣きながら食べたよ」。おばあちゃんは、お母さんから弁当を受け取ると、涙声でこう言いました。「私はこれまでたくさんの弁当を作ってきたけど、作ってもらったのはこれが初めて。おいしいよ、おいしいよ」。<br />
　この女の子は、今中学2年の本多美智子さん。当日会場に来ており、<strong>「お弁当を家族が喜んでくれたから、台所に立つことがとても楽しくなりました」</strong>と笑顔でした。母親の恵美子さんは、<strong>「子どもたちはとてもやりたがっているし、やらせればできる。それを大人がわかっていなかったんだと気づかされました」</strong>と、子どもの力を信じて見守る大切さを振り返りました。<br />
　こうした「弁当の日」の物語は、実践した学校、家庭で次々と生まれています。<strong>台所で子どもたちの「成長力」に触れた大人たちが、「弁当の日」の取り組みを応援する側に回ったことが、この広がりの背景にあるのです。</strong></p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_003.jpg" alt="" />「弁当の日」のエピソードは、こちらの本が参考になります。左から
竹下和男著『"弁当の日"がやってきた』『台所に立つ子どもたち』『始めませんか子どもがつくる「弁当の日」』（自然食通信社）、佐藤剛史著『すごい弁当力！』（五月書房）</p>

<hr /><p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>家庭のくらしの時間が変わる</strong>
</p>

<p><strong>「弁当の日」を実践すると、家庭のくらしの時間が変わります。</strong>子どもが作った卵焼きや唐揚げの余りが家族の朝食になる。「これどうやって作ったの？」と食卓での会話が増える。「ご飯できたよ」と呼ぶ前から子どもが台所に来るようになる。親が忙しいときや病気のとき、子どもが食事を用意するようになる...。<br />
3年前にそれを知り、「ぜひ、全国の子どもたちに取り組んでほしい」と応援し続けている福岡県の助産師・内田美智子さんは、「弁当の日」の意義をこう説明しました。「性感染症や10代の妊娠、中絶など性のトラブルを繰り返す若者に共通するのは、家族の会話が乏しいこと。家庭に居場所がないから、体目当ての男性でも求めてしまう。『弁当の日』には、その現状を根本から変える力があると思います」。内田さんは全国各地で、性教育ならぬ「生教育」の講演をしており、その中で必ず、家庭のくらしの時間の大切さと「弁当の日」の取り組みを紹介しています。<br />
　<strong>家族の団らんが子どもの育ちに大切であることは言い尽くされていますが、実際には、どうやってその"団らん"を取り戻すかが社会の課題。「弁当の日」は、それを実現するための具体的な提案なのです。</strong></p>


<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>発案のきっかけは「給食への感謝」</strong>
</p>

<p>「弁当の日」には、「給食を否定しているのですか？」という質問も出ます。しかし、真意は逆。<strong>竹下さんが、子どもに弁当を作らせようと思いついたきっかけは、給食に感謝する気持ちをはぐくみたいと思ったことでした。</strong><br />
校長として学校給食会の会議に出席した際、多くの関係者が食材の管理や搬送、献立や調理などの段階で工夫や努力を続けていることが分かりました。しかし、一方の子どもたちには、給食を感謝して食べる様子が見られなかった。「ならば、食材を選ぶことから調理まで、子ども自身に全部やらせよう」と、"気付かせる仕掛け"を発想したわけです。<br />
　<strong>「弁当の日」を経験した子どもたちは、「毎日食事を作るのはすごいことだったんだ」と気づきました。「嫌いなものでも、残さないで食べたい」という行動がみられるようになり、滝宮小学校の給食残食はほとんどなくなりました。</strong>竹下さんが異動した高松市立国分寺中学校、現在校長を務める綾川町立綾上（あやがみ）中学校でも「弁当の日」に取り組み、学校給食の残食は「ほぼゼロ」が続いています。</p>

<hr /><p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>いろいろな応用編も登場</strong>
</p>

<p>滝宮小学校では、校長によるトップダウンで始まった「弁当の日」。しかし、交流会に参加した実践者たちは、それぞれ現場にあった応用編を生み出していました。<br />
福岡市の小学校教諭・稲益義宏さんは、「弁当の日」を知った当初、「自分は校長じゃないから無理だ。給食を止められない」と二の足を踏んだそうです。しかし、できる方法を考えるうち、「もともと給食がない遠足や社会科見学の日を活用しよう」とひらめきました。<br />
家庭科がない3年生の担任だったので、「コース別弁当の日」を提案。完ぺきコース（子どもだけで作る）・おすすめコース（親と作る）・ベーシックコース（おにぎり作りと詰める手伝い）・エンターテインメントコース（思い切り感謝を伝える）の4コースから、子ども自身が選ぶ方法にしました（イナマス方式と命名）。<br />
　初めての遠足当日、実にクラスの95％が完ぺきコースか、おすすめコースに挑戦。回を重ねるごとに、子どもの手づくり弁当は増加し、運動会に自作弁当を持って来る子どもを見つけたときは感激したそうです。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_004.jpg" alt="" />＜左上＞全国から集まった交流会　＜右上＞本多さん親子
＜左下＞助産師の内田美智子さん　＜右下＞イナマス方式の稲益義宏先生</p>


<p>また、小学校1年生から中学3年生までを対象にした宇都宮市では、全体の目標を「中学を卒業するまでには自分1人で弁当を作れるようになる」と設定。いわば、小中連携で「9年計画」の取り組みにしたのです。<br />
　大学生に広がっている「弁当の日」は、九州大学（福岡市）から始まった「1品持ち寄り方式」。「名前の頭文字から始まる食材を使ったおかず」「100円以内の食費で作るおかず」など、毎回テーマを決め、キャンパスでお互いの弁当を食べ合います。学生たちの「弁当の日」をサポートする同大助教・佐藤剛史さんは、こう言います。「みんなのために作るとなると、値段の安さより、食材そのものに目が向き始めます。できるだけ地元の食材、安全な食材を選びたくなる。自給率は上げるものではなくて、"上がるもの"なのです」。<br />
　有意義に続く取り組み方は、それぞれの状況によって変わるということ。<strong>「どうすれば『弁当の日』を実践できるかと、よく助言を求められますが、答えは現場の人にしか出せません。しかも、困難を乗り越える方法を考えることこそ醍醐味。それを人任せにするなんてもったいないですよ」と竹下さんは言います。</strong></p>


<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>「かわいそうな状況」を放っておかない</strong>
</p>

<p>「親が料理を作らない家庭もある。『弁当の日』をやるとかわいそうではないでしょうか」。こうした不安が、実践の壁になることもあります。これに対して、竹下先生はこう意見します。<strong>「かわいそうな状況があるなら、それをそのまま放っておく方がかわいそうだ。親ができないなら子ども自身ができるようにしてやればいい。それは一生の財産になるし、助かるのは親の方でしょう」。</strong><br />
　交流会では、その"未来予想図"といえる体験談も聞けました。綾上中学校の事務員・水澤加代子さんは子ども時代、母親から家事を厳しくしつけられたそうです。子ども3人で毎朝家事を分担、さぼればご飯を食べられない日々。高校入試の前日、「今日ぐらいはいいでしょ？」と尋ねたら、「当然のように生きておきながら、生きるために必要なことをしなくていいとはどういうことか」と叱られたことが忘れられないといいます。母親は、彼女が高校3年のときに他界。その後、子どもだけで日々のくらしを難なく切り盛りできたことで、ありがたさに気づいたそうです。「私は料理が作れることをとても幸せなことだと思っています。母に感謝し、今は自分が母親として、子どもに同じことをしています」。<br />
交流会で参加者たちは、子どもを守るため、大人が本当にすべきことは何なのか、熱心に語り合いました。</p>

<hr /><p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>「頑張ることはかっこいい」という価値観</strong>
</p>

<p>交流会翌日は、竹下さんが校長を務める綾上中学校（生徒数135人）で、「弁当の日」を視察しました。この日は、教諭も弁当持参です。担任が1人ひとりの弁当を写真に収めるクラス、全員分の弁当を一カ所に集めて記念撮影をするクラスなど、楽しげな声が校舎に響いていました。<strong>生徒たちの表情を見ても、ふたを開く前に中身をこっそり確認していたり、友だちから「おかず交換して」と言われ照れ笑いしたり、通常の給食時間とは明らかに違う「どきどき感」「わくわく感」が伝わりました。</strong><br />
「本当に自分で作ったか」は、どの先生も確認しません。子どもが作りたがっていても、親が手を出すこともあるのですが、「それを調べる必要はない」と学校側は言います。<strong>級友同士なら、本当に自分でご飯を炊いたか、煮物を作ったかは、会話や態度を通して分かるもの。自分で作った級友を立派に感じ、自分で作らなかったことを悔しく思った生徒は、「次回は自分で作ろう」と自ら秘かに決心するというのです。頑張ることはかっこいい。自立することはかっこいい。そうした価値観がうまくはぐくまれていると感じました。</strong></p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_005.jpg" alt="" />弁当箱を開ける瞬間は、どきどきわくわく（綾上中）</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_006.jpg" alt="" />この日は先生も手作り弁当を作ってきます。先生も生徒も笑顔！（綾上中）</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_007.jpg" alt="" />この日のテーマは「いろどり弁当」。個性ある、色とりどりの弁当が揃いました（綾上中）</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_008.jpg" alt="" /></p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_009.jpg" alt="" /></p>


<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>先輩の背中に刺激される「成長力」</strong>
</p>


<p>視察は楽しいものでした。ただ、"一見さん"の筆者には、弁当を食べる様子だけでは、生徒たちがどう成長したのかまで分かりません。それを垣間見ることができたのが、実は、弁当の時間の後に体育館であった合唱コンクールでした。<br />
　この日は、年に一度の文化祭。保護者や地域の人が、生徒の発表を楽しみに集まる日です。まず驚いたのは、体育館に全員集合した生徒たちが私語をしないことでした。全員がきちんと背を伸ばし、前を向いて着座。注意して回る先生もいません。当然のことではありますが、近年の小中学校ではなかなか見られない光景ではないでしょうか。<br />
合唱の様子にも目を見張りました。1年生より2年生、2年生より3年生が見事な歌声を披露したのですが、全員が顔を上げてひな壇に立ち、恥ずかしそうにふざけ合う姿は一切ありません。先輩の舞台は後輩が拍手や声援で盛り上げ、人の話が始まればさっと席に戻って静かに聞くという具合。一部の生徒は入学当時、座って人の話を聞けない状態だったと後で知り、さらに驚きました。<br />
　閉会時の竹下校長のあいさつに、"秘訣"の一端をみた気がします。「3年生の合唱に感動しました。それを見ている1、2年生の瞳はとってもきれいでした。『3年生までにあそこまで成長しなくては』と感じたのだと思います」。翌年度は学校活動の中心となる1、2年生。彼らが「自分もかっこいい先輩になりたい」と感じるような"先輩像"の見せ方をして、本能的な「成長力」を刺激したのだと思います。
</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_010.jpg" alt="" />合唱コンクールで見事な歌声を披露する綾上中の生徒たち</p>


<hr /><p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>通過儀礼としての「弁当の日」</strong>
</p>

<p>実は、滝宮小学校でも、子どもの「成長力」を刺激するため、同じような"仕掛け"が行われてきました。竹下さんの異動後、後任の校長になった末澤敬子さんが始めた「見せる『弁当の日』」です。弁当を作らない低学年を並ばせて、先輩の弁当を見て回らせるのです。しかも、給食前のぐうぐうお腹が空いている状態で。<br />
これには、大きな効果がありました。「おいしい弁当を作れるかっこいい5年生になりたい」とやる気になった子どもたちが、親にくっついて料理を覚えようという行動に出始めたそうです。<strong>実践が9年目に入り、「弁当の日」が大人になるための"通過儀礼"として定着した滝宮小学校では、子どもたちの弁当のレベルが年々向上しています。</strong></p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_011.jpg" alt="" />現在の滝宮小学校では、児童たちが自分の弁当を大写しにして発表していました</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_012.jpg" alt="" />友達の弁当にコメントする。授業のスタイルはクラスによって違います（滝宮小）</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/049_013.jpg" alt="" />弁当を食べる子どもたちに声をかける竹下さん（滝宮小）</p>

<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>「弁当の日」に込めた6つの夢</strong>
</p>

<p><strong>「大人が子どもたちに『一家団らんの楽しい食事』という『DNA』を伝えれば、それは100年後の子どもたちにまで届くと思っています」。そういう竹下さんの願いは、「弁当の日」を通して、日本の子どもたちが育つ環境を変えること。</strong>竹下さんが100年後に伝えたい「DNA」を連ねた「『弁当の日』に込めた6つの夢」を最後に紹介します。</p>

<p><strong><ol>
<li>「一家団らんの食事」が当たり前になる夢</li>
<li>食べ物の「命」をイメージできるようになる夢</li>
<li>子どもたちの感性が磨かれる夢</li>
<li>人に喜ばれることを快く思うようになる夢</li>
<li>感謝の気持ちで物事を受けとめられるようになる夢</li>
<li>世界をたしかな目で見つめるようになる夢</li>
</ol></strong></p>


<p>今の社会に生き難さや危うさを認めるなら、同じことを経験させないよう次世代をはぐくむのが大人の務め。子どもを台所に立たせることから日本の未来をひらこうという提案に、目の前の子どもたちを"仲間入り"させる人の輪を広げたい。そうすれば、"DNA"のリレーが面的に広がり、ひいては地球の未来をもひらく力になり得るだろうと感じました。</p>

<br /><br />

<p class="cond"><span class="highlight">※参考</span><br />
「弁当の日」のホームページ<a href="http://www.bentounohi.com/" target="_blank">http://www.bentounohi.com/</a><br />
「弁当の日」最新情報の掲示板<a href="http://e-kyudai.com/imgbbs/index.php" target="_blank">http://e-kyudai.com/imgbbs/index.php</a></p> 

<br /><br />

<p><strong>著者プロフィール</strong><br />
渡邊美穂（わたなべ・みほ）<br />
1997年西日本新聞社に入社。2003年から長期企画「食卓の向こう側」の取材班。自ら食生活を見直し、体調も改善した。06年6月、転勤族である夫と同居するために退社。現在は東京在住で、同新聞の契約記者兼フリーライターとして執筆活動を続ける。</p>
<br /><br />

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・写真：渡邊美穂<br />
協力：竹下和男<br />
写真協力：上田壮一(Think the Earthプロジェクト)</small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>緑の絆は結べるか　〜ボルネオの熱帯雨林で起きていること</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2009/12/rpt-48.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2009:/jp/thinkdaily-renewal/report//7.996</id>

    <published>2009-12-09T09:22:02Z</published>
    <updated>2009-12-09T14:54:48Z</updated>

    <summary>     目次へ移動     熱帯雨林の島、ボルネオへ 今回のリポートは、『いき...</summary>
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        <![CDATA[<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>熱帯雨林の島、ボルネオへ</strong>
</p>

<p>今回のリポートは、『いきものがたり』で監修協力をお願いした中静透教授がリーダーを務める<a href="http://gema.biology.tohoku.ac.jp/" target="_blank">東北大学 生態適応GCOEプログラム</a>のコンソーシアムに筆者が参加したことが縁で実現しました。大学院教育の一環で、博士課程の学生たちが森林生態研究の現場を視察するというのが大きな目的。行き先は世界で３番目に大きな島、ボルネオ。東南アジアではまだ少ないFSC認証林の視察や、サバ州、サラワク州の森林政策についての講義など、盛りだくさんの内容でしたが、このリポートでは、主にボルネオ島の北東部、サバ州のキナバタンガン川下流域で起きていることを中心にお伝えします。『いきものがたり』でも、この地域の保全活動の紹介をしていますが、筆者にとっては初めての訪問。実際に現地を見て度肝を抜かれることになりました。</p>


<p><img alt="地図" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_map.gif" width="500" class="mt-image-none" style="" /></p>


<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>地平線まで埋め尽くすオイルパーム</strong>
</p>


<p>マレーシアに着いて、<strong>とにかく驚かされたのは、見渡す限り地平線まで続くオイルパームのプランテーション</strong>です。飛行機の窓からは、一見すると緑豊かな大地に見えますが、実は<strong>たった１種類の植物が大地を埋め尽くしている光景。</strong>プランテーションに近づいてみると、林立するオイルパームのそばに、虫や鳥の姿はほとんど見られません。オイルパームの実を狙うネズミと、それを補食するコブラがいるそうですが、なんとも殺伐とした生きものの連鎖です。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_oilpalm-horizon.jpg" alt="オイルパームのプランテーション" />地平線まで続く広大なオイルパームのプランテーション</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_plantation.jpg" alt="プランテーションは一見すると緑の世界" />プランテーションは一見すると緑の世界だが・・・</p>

<p>パームオイル産業はなぜ拡大したのでしょうか。単位面積あたりの収量が他の植物性油脂に比べて圧倒的に多く、年間を通じて収穫が可能、価格が安い、石油と違って再生産が可能で枯渇しない、など資源として優れていることがその理由です。熱帯雨林を伐採しプランテーションに変えたとしても、植物を植えているので、二酸化炭素は吸収してくれるため「地球にやさしい」と宣伝されたことさえあります。いまでは植物油の生産量では、大豆油を抜いて世界一に。その結果、マレーシアでは、1980年代に100万ヘクタールだったプランテーションの面積は2008年には480万ヘクタール(MPOA統計)まで増えました。東京都の面積の20倍以上です。年間輸出量は1540万トン、そのうち日本は55万トンを輸入。<strong>世界全体の生産量は3800万トン。いまや世界経済に組み込まれた大きな産業になっています。</strong></p>

	
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_oilpalm_truth.jpg" alt="オイルパームの果房" />オイルパームの果房</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_oilpalm.jpg" alt="オイルパームの実と断面" />オイルパームの実と断面</p>


<p>オイルパームは20メートルほどの高さに生長し、10〜12ほどの果房がつきます。重さ30kg以上にもなる一房の果房からは数百個の実が採取できます。果実にも、種子にも油分がたっぷりと含まれています。<br />
<strong>オイルパームの実は収穫後すぐに品質が劣化していくため、24時間以内に搾らなければならず、プランテーションのすぐ近くに搾油工場が必要です。</strong>ひとつの工場を経営するためには、最低でも4000ヘクタールの土地がないと採算がとれないのだそうです。こうして広大な土地が次々にプランテーションに変わっていきました。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_truck.jpg" alt="サラワク州のパームオイル工場。" />サラワク州のパームオイル工場。次々にトラックで運び込まれるオイルパームの房</p>


	
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_tank.jpg" alt="巨大なタンクが並ぶ" />巨大なタンクが並ぶ</p>


<p>パームオイルは私たちの暮らしにすっかり浸透しています。<strong>スナック菓子、チョコレート、アイスクリーム、冷凍食品、インスタントラーメン、マーガリンなどの食品が８割以上。食品以外では、石けんや洗剤、化粧品、ろうそくなど。おそらくパームオイルに触れたり食べたりしない日は一日もないほどです。</strong>日本人の消費量は欧米諸国に比べれば少ないのですが、それでもひとりあたり年間平均37リットルのパームオイルを使っているといわれています。</p>


<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>オランウータンが危ない　野生動物たちの悲しい聖域</strong>
</p>


<p><strong>そんなパームオイル産業の拡大が、熱帯雨林の野生動物たちを絶滅に追いやろうとしています。</strong>今回訪ねたボルネオ島の北東部、サバ州のキナバタンガン川下流域でも、オランウータンをはじめとする野生生物が絶滅の危機に瀕しています。この地域は、<strong>もともとは豊かな熱帯雨林が拡がっていましたが、プランテーションが熱帯雨林を浸食していったことによって、森が細かく分断（断片化）されてしまいました。</strong>そのため、野生の生きものたちが狭いエリアに閉じ込められることになってしまったのです。<strong>動物たちが生きていくためには、ある程度の広さの土地が必要です。狭い森で十分な餌を採り、パートナーを見つけて繁殖していくことはなかなか難しいのです。</strong><br />
絶滅に瀕している代表的な動物がオランウータン。<strong>野生のオランウータンが生きていくには7万ヘクタール以上の広さの森が必要ともいわれています。</strong>現在保護区になっているこの2万7000ヘクタールのエリアに、2003年の推定で1125頭が暮らしていることがわかっていますが、イギリスのカーディフ大学の調査研究によれば、このまま分断された森の状態が続くと、50年後には95%が絶滅すると推測されています。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_kinabatangan.jpg" alt="キナバタンガン川" />キナバタンガン川</p>


<p>ボートに乗って川沿いに棲む野生生物を観察しに行きました。出会ったのは、本来の森の住民たち。ラッキーなことに、オランウータン、カニクイザル、岩ツバメ、カワセミ、レッドリーフモンキー、ワニ、ボルネオゾウ、テナガザル、テングザルなど多くの動物たちに出会うことができました。「今回は特別ラッキー」と言われましたが、観察できる野生動物が比較的多いために、エコツアーも盛んで、川沿いには居心地の良さそうなロッジやキャンプなども多く作られています。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_animals.jpg" alt="出会った動物たち" />出会った動物たち　オランウータンの雄（左上）、テングザル（右上）、カワセミ（左下）、サイチョウ（右下）</p>


<p><strong>なぜこれほどまでに多様な生きものたちと出会えるのでしょうか。それにはちょっと悲しい理由があります。実はよく見ると、川沿いに森は残っているものの、そのすぐ奥にプランテーションが迫ってきていることがわかります。たくさんの動物に出会えるのは、わずかに残された狭いエリアに、動物たちが逃げ込んできて暮らしているからだったのです。</strong>保護区の中に違法に植えられたオイルパームもあります。何も知らずに訪れると、豊かな水辺と森に囲まれた動物たちの聖域のように思えますが、実は人間によって追い込まれた悲しい聖域だったのです。写真に写っているオランウータンも、このエリアに残った最後の一頭の雄です。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_oilpalm_behind.jpg" alt="川のそばまで迫るプランテーション" />川のそばまで迫るプランテーション</p>

	
<p class="caption"><iframe width="500" height="352" frameborder="0" scrolling="no" marginheight="0" marginwidth="0" src="http://www.google.co.jp/maps?ie=UTF8&amp;t=k&amp;source=embed&amp;hq=&amp;hnear=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E4%B8%96%E7%94%B0%E8%B0%B7%E5%8C%BA%E8%B5%A4%E5%A0%A4%EF%BC%92%E4%B8%81%E7%9B%AE%EF%BC%93%EF%BC%94%E2%88%92%EF%BC%91%EF%BC%92&amp;ll=5.174507,118.382621&amp;spn=0.015045,0.021458&amp;z=15&amp;output=embed"></iframe><br /><small><a href="http://www.google.co.jp/maps?ie=UTF8&amp;t=k&amp;source=embed&amp;hq=&amp;hnear=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E4%B8%96%E7%94%B0%E8%B0%B7%E5%8C%BA%E8%B5%A4%E5%A0%A4%EF%BC%92%E4%B8%81%E7%9B%AE%EF%BC%93%EF%BC%94%E2%88%92%EF%BC%91%EF%BC%92&amp;ll=5.174507,118.382621&amp;spn=0.015045,0.021458&amp;z=15" style="color:#0000FF;text-align:left">大きな地図で見る</a></small><br />キナバタンガン川の南側、同じく野生生物の絶滅が心配されるセガマ川流域の衛星画像。森が川沿いの小さなエリアに追い込められていることや、プランテーションの海の中に、分断された森が小島のように浮かんでいる様子が良くわかる</p>





<p class="caption"><object width="500" height="315"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/3TJ4fVjr2rs&hl=ja_JP&fs=1&border=1"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/3TJ4fVjr2rs&hl=ja_JP&fs=1&border=1" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="500" height="315"></embed></object>森が分断されたため、直接会うことのできない対岸の雌ザルに、せつない鳴き声で呼びかける雄のテナガザル。霊長類の一種であるテナガザルはオランウータンと同じように泳げないので、プランテーションからの排水路や川が自然のバリヤーとなってしまう。パートナーが見つからなければ絶滅に直結する</p>


<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>緑の絆を取り戻そう　ボルネオ保全トラストの活動</strong>
</p>


<p>このキナバタンガン川下流域の野生動物を守る活動をしているのが<a href="http://www.borneoconservationtrust.org.my/" title="ボルネオ保全トラスト(BCT)" target="_blank">ボルネオ保全トラスト(BCT)</a>というNGOです。<a href="http://www.bctj.jp/" title="日本事務所（BCTJ）" target="_blank">日本事務所（BCTJ）</a>代表で、星槎大学准教授の坪内俊憲さんは言います。<br />
　「（先進国の）私たちが便利だと信じて毎日の暮らしで使っているものが原因で、森が分断され、動物たちが隔離されてしまっています。その現実を知って欲しい。知らないということは、それだけで一種の罪だと思います」</p>


	
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_tsubouchi.jpg" alt="ボルネオ保全トラストジャパン理事長の坪内俊憲さん" />ボルネオ保全トラストジャパン理事長の坪内俊憲さん</p>


<p>BCTの活動にはいろいろあります。もともと獣医だった坪内さんは、<strong>野生動物救出センターを作りたい</strong>と考えています。狭い森で食べものがなくなったボルネオゾウなどが、餌を求めてプランテーションに入り、安い賃金で働く労働者が野生動物の肉を得るために仕掛けたワナにかかって死んでしまうケースなどもあります。そうした動物を見殺しにせず、救いたいという想いからです。</p>

<p>また、<strong>分断された森をつなぎ、野生生物の絶滅を防ぐために「緑の回廊」を作ろうと呼びかけています。</strong>プランテーションを買い取って元の森に戻し、分断された森と森をつなぎ、動物たちの通り道にしようという計画です。キナバタンガン河と南のセガマ川流域で2万ヘクタール分の土地を購入して回廊を作ることで絶滅が避けられるといいます。<strong>カーディフ大学の調査では、緑の回廊が完成すれば、50年後にオランウータンが絶滅する確率は5%にまで下げられるとのこと。</strong>1ヘクタールの土地の代金は約120万円（2009年9月時点）。2万ヘクタールまでの道のりは長いですが、坪内さんたちの呼びかけによって、賛同者も増え、少しずつ買い進めています（現在は3号地、4号地の寄付を募集中）。</p>

<p>さらに、土地の買取りだけでなく、分断された森をつなぐアイディアとして、日本の動物園や橋の設計者たちの協力によって、<strong>川幅の狭い場所にオランウータンが渡れる吊り橋をつくる活動「命の架け橋プロジェクト」も行なっています。</strong></p>


	
<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/048_bridge.jpg" alt="吊り橋" />2008年4月にかけられた吊り橋。消防ホースを使って作られている。残念ながらオランウータンが渡ったという報告はまだない</p>

<p class="caption">

<object width="500" height="315"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/C76oUVeHEVg&hl=ja_JP&fs=1&border=1"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/C76oUVeHEVg&hl=ja_JP&fs=1&border=1" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="500" height="315"></embed></object>

今回の視察中にテングザルが渡っているところを目撃。森と森をつなぐ役割はちゃんと果たせている。あとはオランウータンが渡ってくれれば！</p>


<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>持続可能なパームオイル産業をめざして</strong>
</p>


<p><strong>パームオイルが引き起こす環境問題に気づき、活動を始めている企業もあります。</strong>石けんや洗剤メーカーの<a href="http://yashinomi.co.jp/" title="サラヤ" target="_blank">サラヤ</a>は、BCTの設立に参加し、その活動をサポートしています。同社の代表的な植物性洗剤「ヤシノミ洗剤」の<strong>売上の1%をBCT「緑の回廊」プロジェクトに送金することを消費者と約束し、オランウータンの「命の吊橋」プロジェクトや、傷ついたボルネオゾウの救出活動などを行なっています。また、消費者の代表が現地視察してリポートする「ボルネオ調査隊」を実施してホームページで情報公開する</strong>など、本気で取組んでいることが伝わってきます。今回、坪内さんと共に現地を案内いただいたBCTJ理事／サラヤ広告宣伝部の代島裕世さんによれば、こうした活動を通じて、パームオイルを使った事業のあり方を見直し、企業として<strong>事業と生物多様性保全との両立をめざそうとしている</strong>とのことです。</p>

<p>さらに国際的な取り組みとして、2004年にはWWFの呼びかけで<a href="http://www.rspo.org/" title="RSPO（Roundtable on Sustainable Palm Oil）" target="_blank">RSPO（Roundtable on Sustainable Palm Oil）</a>という団体もできました。パームオイルに関わる企業やNGO、政府などが参加して、人も野生動物も持続可能なパームオイル産業のありかたを考えようという取り組みです。話し合いはまだ始まったばかりですが、認証制度の整備などが進めば、消費者が環境保全に配慮して作られた油を使った商品を選べるようになるかもしれません。2009年時点で、日本の企業もサラヤをはじめ6社が加盟しています。</p>

<p>オイルパームの生産を今すぐ止めましょうというのは非現実的な話です。世界人口が増え、暮らしが豊かになり、拡大していく消費。世界経済のニーズを満たしながら、絶対に失ってはならない生物多様性の保全をどう両立させていくか。さらに地元の人たちの暮らしを支えるローカルな経済も視野に入れる必要があります。<strong>現場は頭で考えて動く世界ではない、と坪内さんは強調します。森林保全活動をしている人を暴力によって阻止しようとする人たちもいて、重傷を負わされたり殺されたりするケースもあるそうです。</strong>実際に現場に立ってみると、問題の複雑さを前に、ただ立ち尽くすばかりです。そんな中で諦めずに活動を続ける坪内さんたちの熱意には本当に頭が下がりました。</p>

<p>目先の利益のために野生動物の絶滅を座視すれば、次に絶滅するのは私たちの番です。<strong>豊かな自然の恩恵なしに人間は生きていくことはできません。</strong>オイルパームの問題はコーンや大豆によるバイオエタノール生産が抱える問題も連想させます。急<strong>速かつ過剰な生産拡大は、回復不可能なまでに自然を壊すことになるのは全く同じ構造です。</strong>2010 年には名古屋で生物多様性国際会議（COP10）も開かれます。こうした問題と向き合い、経済と生態系保全の両立を実現する知恵を、早急に生み出していく必要があります。「必要なのは人間と生態系とを結ぶ緑の絆」。坪内さんの言葉が胸に残ります。このリポートが、まずは現実を知ることの一助になれば嬉しいです。</p>


<p class="caption">

<object width="500" height="315"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/ZgMtqdXZmWk&hl=ja_JP&fs=1&border=1"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/ZgMtqdXZmWk&hl=ja_JP&fs=1&border=1" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="500" height="315"></embed></object>

ゴマントン洞窟のそばで出会ったオランウータン。このオランウータンの未来と人間の未来は重なっている。</p>


<br /><br />

<div style="text-align: right;"><p><small>取材・撮影：上田壮一（Think the Earthプロジェクト）<br />
Special Thanks：<a href="http://gema.biology.tohoku.ac.jp/" title="東北大学 生態適応GCOE" target="_blank">東北大学 生態適応GCOE</a>、<a href="http://www.bctj.jp/" title="ボルネオ保全トラスト" target="_blank">ボルネオ保全トラスト</a>、<a href="http://yashinomi.co.jp/" title="サラヤ株式会社" target="_blank">サラヤ株式会社</a><br />
関連プロジェクト：<a href="http://www.thinktheearth.net/jp/ikimonogatari/" title="『いきものがたり　〜生物多様性11の話』" target="_blank">『いきものがたり　〜生物多様性11の話』</a> </small></p></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>コミュニケーションもグリーンに。ロンドンのグリーンエージェンシーを訪れました</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2009/07/rpt-47.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2009:/jp/thinkdaily-renewal/report//7.998</id>

    <published>2009-07-31T13:41:32Z</published>
    <updated>2010-10-28T08:46:57Z</updated>

    <summary>     目次へ移動     DEMOS　（デモス） www.demos.co....</summary>
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        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>DEMOS　（デモス）</strong>
</p>

<p><a href="http://www.demos.co.uk/" target="_blank">www.demos.co.uk</a></p>

<p>DEMOSのスローガンは「ビルディング・エブリデイ・デモクラシー（building everyday democracy）」。<strong>自由でパワフルな市民社会の実現のために、政策や政治分野に焦点をあてたシンクタンクです。人々をエンパワーし、市民自らがよりよい社会を築くために、</strong>活動を行っています。<br />
私たちにDEMOSについて説明してくれたのは、リサーチャーのジョナサン・バードウェルさんとリサーチ・ディレクターのジュリア・マーゴさんです。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_demos01.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>DEMOSのロンドンオフィスで働いているのは約20名のメンバーと、8〜9名のインターン。メンバーのバックグラウンドは、コンサルタント、アカデミックなリサーチャー、広告のクリエーティブなど。<strong>業務範囲はメディア、PR、プロジェクトの企画、コンサルタント・・・と多岐にわたります。</strong>DEMOSのメンバーは、得意分野はもちろんありますが、全員がリサーチや分析、メディアなど必要な専門知識を持っており、全てに対応可能。そのためのトレーニングメニューも自分たちでつくっているそうです。</p>

<p>DEMOSのプロジェクトにはいくつかの種類がありますが、全て企業／行政とのパートナーシップによって成り立っています。</p>

<p>まずひとつ目は、シンクタンク業務。クライアント（企業／行政）に対して、意思決定・政策立案のリサーチと分析を行います。ただし、<strong>DEMOSには「よりよい社会のために」という理念があるので、特定のクライアントの利益追求ために働くということではなく、パートナーシップに基づいて社会のため、人々のためにリサーチを行います。</strong>クライアントはその結果を、意思決定や政策の立案・改善の参考にしたり、パブリシティや、ネットワークの強化のために使用します。全体におけるこの業務の占める割合は低いとのことでした。</p>

<p>ふたつ目のパートナーシップのあり方として、「パートナーシップ・プログラム」というのがあります。<strong>プログラムありきでパートナーシップを結んだ企業・団体がいくつか集まる、というやり方</strong>です。例えば、「市民権について考えるプログラム」では、問題に関して市民パネリストも含め意見を交換しあいました。こうしたプログラムに参加することによって、参加企業／団体は知見を深め、意思決定や政策立案に役立てることができます。</p>

<p>そして3つ目が、<strong>自ら方向性をもってプロジェクトを立ち上げ、それをサポートしてくれる企業を募る、というやり方</strong>です。DEMOSは「社会を変える」というミッションをもったシンクタンクなので、この分野に最も力を入れています。プロジェクトの期間は8〜12ヶ月ほどで、投資銀行や、大手流通などなどが協賛しています。参加企業／団体にとって直接的な効果が分かりにくいため、プロジェクトをサポートし続けてもらうことが難しいこともありますが、目指す社会の実現のために、プロジェクトのパブリシティを行ったり、世の中に広く認知してもらえるようにしたりしているそうです。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_demos02.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_demos02.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>DEMOSのすべてのプログラムは、健全な社会形成を目指して、以下の4つのテーマによって特徴づけられています。</p>

<ol>
<li><strong>independence</strong><br />
個人と行政の関係を調査し、人々の自立を推進する。</li>
<li><strong>security</strong><br />
個人の社会における役割を調査し、国内および国際的な安全確保を推進する。</li>
<li><strong>capabilities</strong><br />
個人の人的及び物質的能力の向上のために、社会・環境の改善を推進する。</li>
<li><strong>citizenship</strong><br />
社会を形成する意思決定の一員として、個人の積極的な社会参加を推進する。</li>
</ol>

<p>「セキュリティ」をテーマとした一例として、昨年政府に対して行った、テロや災害などあらゆる事態を想定した安全確保を考察するプログラムがあります。既存のセキュリティシステムの、全てのプロセスについてヒアリング、リサーチ、レビューを行い、危機別のシナリオや、テロなどの緊急事態にも早急に対応できうる新しいセキュリティシステムをプランニングしました。セミナーやカンファレンスにおいて、行政に報告し、改善を提言しました。</p>

<p>そのほか、<strong>企業の社会的取り組みをリサーチしてフィードバックしたり、イギリス国内における社会的諸問題</strong>（例：犯罪やアルコール依存症の問題など）<strong>を調査し、それらに対して各企業がどのような行動を起こせるか、社会的責任を果たしていくべきか、ということも考え提案しています。</strong>様々な企業／団体とパートナーシップを築きながら、社会を改善していく方法を模索しています。</p>

<p>こうしたプロジェクトを実施できるのは、約20年にわたるDEMOSの歴史のなかでたくさんの企業や財団などとの強くて長い関係をつくってきたから、とのことでした。</p>

<hr />
<p class="section-title">
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    <strong>Clownfish（クラウンフィッシュ）</strong>
</p>

<p><a href="http://www.clownfishmarketing.com/" target="_blank">www.clownfishmarketing.com</a></p>

<p>私たちがオフィスを訪問してまず目にとまったのが、日本でも人気のインテリア・雑貨ブランドCath Kidston（キャス・キッドソン）とTESCO（テスコ、英国の大きなスーパーマーケットチェーン）とのコラボレーションによるショッピングバッグです。昨年日本だけでなく世界中のプレスでかなり話題になったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。説明してくれたのはCEOのダイアナ・ヴェルデ・ニエトさんです。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_clownfish01.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_clownfish01.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>世界中で話題になったこのバッグは、ただかっこいいから、という理由だけで作られたわけではありません。レジ袋の使用削減という環境保全の観点に加え、<strong>人々が健康であり幸福で満たされている状態（well being）を実現することも狙いのひとつ</strong>です。このバッグをつくるにあたっては、ライフサイクル、つまり原材料調達から流通までの、マーケティングコミュニケーションを含む一連の流れの中で環境負荷を下げることが考慮されています。回収したペットボトル６本分を原材料として使用、製造工程でも通常より少ない縫製を追求、印刷はSOY INK、サプライチェーンも短くしました。そのために、リサイクルボトルを扱う適正な企業から、適正な縫製工場、無駄を省いた流通まで、すべてにおいて最善の道のりを提案し、実現しました。バッグは不要になったらTESCOに送り返すこともでき、また他の生地へと生まれ変わらせることもできます。社会的な面についても、マリクレール誌とのコラボレーションにより、このバッグの全利益が乳ガン基金へ募金される仕組みになっています。ユーザーはバッグを買うことで自然にチャリティーにも協力できるのです。<strong>人々が、実際にチャリティーに参加し、「何かいいことをしている」と感じることも well beingのひとつと考えている</strong>からです。実用面でも、丈夫さを保ちつつも軽量化し、汚れても洗うことができる、など使いやすさにもこだわったつくりになっています。また価格も 3.50ポンドという安さで、経済的な面でも優れています。つまり、360度、全ての観点に配慮して作られた製品なのです。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_clownfish02.png" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_clownfish02.png" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>
	
<p>「このように、<strong>Clownfishは、社会的な意味、環境的な意味、経済的な意味のすべてを追求しています。このうちのどれかひとつでも欠けてしまったら、サステナビリティの実現は不可能になるからです。</strong>ただ寄付をする、それだけではサステナブルとはいえないのです」とダイアナさんは言います。</p>

<p>Clownfishのロンドンオフィスでは環境テクノロジー、環境デザイン、マーケティングコミュニケーションなどをバックグラウンドにした30名ほどのメンバーが働いていて、現在はニューヨーク、上海など世界中にネットワークを広げています。</p>

<p>前述のショッピングバックの事例のように、<strong>Clownfishは、サステナブルなコミュニケーション・コンサルタントとして、あらゆる側面からクライアントに提案しています。</strong>そしてこのショッピングバッグのプロジェクトでは、TESCOとマリクレール誌、Cath Kidston、工場や社会・人々を繋ぐことに成功しました。そのほかにも、ユニリーバ､ナイキ、コカ・コーラなどのクライアントに対し、サステナビリティを生み出すエキスパートとして関わっています。</p>

<p><strong>人々（People）、地球（Planet）、利益（Profit）の３つのＰがClownfishのキーワード。</strong>消費者ニーズの汲み取り、ブランド価値や企業評価の向上から、従業員の労働意欲向上、ボトムラインの改善、経費削減に至るまで・・・<strong>ストラテジーからコミュニケーションのあらゆる段階において、サステナビリテイ実現のための価値を提案しています。</strong></p>


<hr />
<p class="section-title">
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    <strong>CURB（カーブ）</strong>
</p>


<p><a href="http://www.mindthecurb.com/" target="_blank">www.mindthecurb.com</a></p>

<p>CURBについて、創設者のアンソニー・ガンジュウさんに話を聞きました。<strong>CURB は自然のマテリアル（太陽光、砂、土、水・・・）を利用して、少ない環境負荷で効果的な広告を作り出す｢ナチュラルメディア・カンパニー｣。クライアントに、そして環境にダメージを与えることなく、世の中にインパクトを与える優れた「ナチュラルな」マーケティングを提供することを標榜しています。</strong><br />
設立されたのは2008年9月。まだ1年も経っていませんが、完成度の高さは世界的にも有名で、韓国や日本の雑誌にも掲載されたことがあるそうです。また彼らの活動は、BBCでも取り上げられました。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_curb01.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_curb01.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>CURBの作品には、いくつかの種類があります。<br />
上記のCURBホームページに掲載されている作品たちは、必見です。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=13" target="_blank">Clean Advertising</a><br />
壁や歩道にステンシルの型を当てて部分的に汚れを取り除き、元々の色と汚れた現在の色との際立った対比でデザインを浮かび上がらせます。洗浄には雨水を貯めた水を使用。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=14" target="_blank">Logrow（芝）</a><br />
芝生を利用してブランドロゴを制作。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=9" target="_blank">Sand Sculpture（砂）</a><br />
砂を利用し制作したバッキンガム宮殿は、中の人が今にも動き出しそうな精密さで、見に来たエリザベス女王も喜んでおられたそうです。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=24" target="_blank">Snow Tagging（雪）</a><br />
雪に型を押し付けてマーキングするというシンプルな、しかし斬新な手法。今年2月の大雪のときに実施したエクストリームスポーツ専門放送局のための作品では、広告費に換算して5000万円以上のパブリシティ効果がありました。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=7" target="_blank">Solar Art（太陽光）</a><br />
アーティストが虫眼鏡ひとつで木製の板に焼き付けていきます。信じられないほど緻密なビジュアルが出来上がります。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=17" target="_blank">H2 Show（水）</a><br />
コンピュータ制御により、上から降ってくる水の量をコントロールし、それによって文字や模様を描きます。</p>

<p><a href="http://www.mindthecurb.com/our-gallery-images.asp?ID=19" target="_blank">Crop Ad</a><br />
広い畑に、ミステリーサークルのようにマークを制作。直径は120mに及ぶものまで（巨大なキティちゃんなど）あり、｢次は人工衛星からじゃないと見えないものにも挑戦したい｣（アンソニーさん）。</p>

<p>すべての作品は、一流のアーティストたちとチームを組み制作しています。しかしなぜ、彼らは、自然のマテリアルにこだわっているのでしょうか。アンソニーさんは<strong>グリーンマーケティングや、環境コミュニケーションを考える際に、そのメッセージを伝えるメディアそのものも自然であるべき</strong>と、シンプルに考えたと言います。作品に使用したマテリアルは、植物などであればそのまま残すこともできますし、雪や水を使った作品は自然に戻ります。また、自然素材を用いてつくられていることで、人々に強いインパクトを与え、例えば写真を撮って友達にメールを送ったり、口コミでもその話題は広がります。また、そのクオリティの高さから、出版物になったりしたときにも、より大きなインパクトを残します。こうした手法は、環境にとっても、クライアントにとってもよい方法であると彼らは考えています。</p>


<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>BASH（バッシュ）</strong>
</p>

<p><a href="http://www.bashcreations.com/" target="_blank">www.bashcreations.com</a></p>

<p>BASHのあるショーリッジという地区は、ロンドンの中でも若いアーティストや美術館、クリエイティブブティックなどが集まった場所。<strong>BASHは英国のエンターテインメント産業にエコロジカルな方向性を紹介している、クリエイティブ・エージェンシー＆イベント・プロダクションで、倫理的なクリエイティビティとエコ・エンターテインメントを標榜しています。</strong><br />
取材の行われたBASHのあるビルの屋上は"roof project"として庭園になっていました。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_bash01.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_bash01.jpg" width="500" height="176" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>BASH のメンバーは、仕事の合間にここへきて、緑に触れたりのんびりビールを飲んだりします。ちょっとしたパーティーや、時にはライブまで行われるそうです。そんなリラックスしたムードの中、クリエイティブ・ディレクターのダニエル・シルバーさんと、オペレーション・ディレクターのエリカ・プロブストさんが BASHについて話してくれました。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_bash02.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_bash02.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>BASH は３年前に、ジョゼフ・オリバーさんによって設立されました。ジョゼフさんは「ロンドン・リーダーズ」プログラムのリーダーの１人に選出されており、カルチャー、政治、政府のリーダーと協働し、メディアにも働きかけ、ロンドンにサステナビリティを導入しています。またBASHはカルチュアル・セクター（図書館、博物館、文書館）とともに活動を行っている英国で最初の団体です。<strong>BASHのクライアント・参加者・メンバーはアーティスト、ファッションデザイナー、ミュージシャン、学生などであると同時に、企業やNGO、政府機関などとも一緒に働きます。アーティストと環境に関する両方の知見をもち、双方をクロスオーバーに結んでいます。</strong></p>

<p>それから、BASHのもうひとつの特徴は、<strong>ロンドンにおけるサステナビリティ・ネットワークを構築していることです。サステナビリティを考える環境づくり、またサステナビリティの実現のために、アーティストや企業を繋いでいるのです。</strong></p>

<p>BASHでは、特に16歳〜30代前半の若い人々に向けて、サステナブルな文化を浸透させるようなイベントやキャンペーンを企画しています。</p>

<p>BASHは下記の3つの分野で、あるいは3つを組み合わせて効果的なプロジェクトを提案・実施しています。</p>


<ol>
<li><strong>イベント</strong><br />
親しみやすいカジュアルな内容のイベントから、堅めのものまで。また小規模なものから、国際的な企業カンファレンスまで。内容・規模ともに幅広く、環境に配慮した形でイベントを実施しています。</li>
<li><strong>マーケティング</strong><br />
プロダクトデザインから新聞やテレビといったトラディショナルなメディアを使った広告まで、サステナブルで環境配慮型のソリューションをクライアントに提供しています。</li>
<li><strong>コンサルティング</strong><br />
サステナブルなコンサルティング企業として、クライアントに対し、グリーンなコミュニケーションや、どのように環境問題に取り組んでいけばよいかをコンサルティングしています。</li>
</ol>


<p>他には、オフィスの入っているビルの運営も行っています。1階がクラブ（その名もBlack Lotus Karate Club）になっていて、オーガニックフード＆ドリンクを楽しめる・・・そんな素敵な場所もプロデュースしています。</p>

<p>彼らが行っている様々なプロジェクトのうち、一例を紹介してもらいました。<br />
「現在バービカン・センターで行っているエキシビション"Radical Nature"の管理・運営にも携わっています（バービカン・センターとは、シティ・オブ・ロンドンにある、ヨーロッパ最大の複合文化施設です）。<br />
まず、エキシビションの告知キャンペーンのために50人のダンサー、パントマイマーに若手アーティストがデザインした木の衣装を着てもらいました。50人のパフォーマーたちそれぞれが木となり、時々立ち止まって森となったり、フォーメーションを変えながら歩いていきます。世界最大の金融街であるシティで朝 8時半から行ったので、通勤途中の人々がたくさん目にすることとなりました。それからセントポール、ピカデリーサーカスなどといった、人々の目に多く触れるルートや時間帯を計算し、歩いてもらいました。この様子は写真やビデオでリアルタイムに次々とWebにアップされ、Web上のディスカッションシステムで、ロンドンの木や自然に関するディベートが巻き起こり、大きな話題になりました。エキシビションが終了する午後6時頃には、バービカンの著名なキュレーターなどが、環境に関する話やこのプロジェクトの説明を行いました。<br />
これは、エキシビションの宣伝のために行ったものですが、同時に、人々が環境問題を考えるきっかけにもなりました。</p>

<p>単に、環境に配慮した手法で広告を行うとか、エコプロダクツを使用する、というだけではなく、<strong>人々が環境に関して直接考えられるように、問題を提起できるように</strong>考えています。そのためのひとつの方法として、社会の盛り上がりをつくるために、SNS（ソーシャル・ネットワーク・システム）なども活用しています」</p>

<p>最後に。BASHの"roof project"には実はもうひとつミッションがありました。2012年ロンドンオリンピックのメディアセンターの緑の屋根建設のために、堆肥（PAS100）と資材との相互作用、植物への影響などを科学的に調査しているのだそうです。</p>


<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_bash03.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_bash03.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>おまけ</strong>
</p>

<p>世界のソーシャルコミュニケーション最前線＠カンヌ国際広告祭     <a href="http://www.canneslions.com/" target="_blank">http://www.canneslions.com/</a></p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_canneslions.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_canneslions.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>

<p>今年も6/21〜27の1週間、第56回カンヌ国際広告祭が開催されました。今年も目立っていたソーシャル・環境系のキャンペーンをいくつかリポートします。</p>

<p>●TRILLION DOLLAR CAMPAIGN（ジンバブエ）<br />
<a href="http://work.canneslions.com/outdoor/" target="_blank">http://work.canneslions.com/outdoor/</a><br />
<a href="http://work.canneslions.com/titanium/?award=2" target="_blank">http://work.canneslions.com/titanium/?award=2</a><br />
<a href="http://work.canneslions.com/media/?award=2" target="_blank">http://work.canneslions.com/media/?award=2</a></p>

<p>1兆ドル、という名前に驚いてよくみると、なんとポスターが何百枚、何千枚ものお札でできていた！という衝撃的なキャンペーン。キャンペーンのスポンサーはTHE ZIMBABWEANという新聞社。ムガベ大統領政権が選挙を不正に操作したり、野党を解体したり、貧困や災害、経済の崩壊の原因となっているということをリポートし続け、そのため国外に追放されたこの新聞社が発行している新聞は、ムガベ政権により55％もの贅沢品税をかけられています（あたかも言論の自由は高価、というように）。この新聞をジンバブエの人々の手に取り戻すには資金援助が必要であり、そのためにはジンバブエの外で認知を高め売上を伸ばさなければ、ということでこのキャンペーンが実施されました。<br />
キャンペーン開始数時間でプレスの取材を受け、2日後にはTV、ラジオで全国に紹介され、インターネットで世界に広がり、New York Times site、Yahoo News、the Huffington Postなど何百ものウェブサイトやブログで紹介されました。<br />
インフレの世界記録の症状である1兆ジンバブエドルの札束こそ、ジンバブエ崩壊のシンボル。一塊のパンも、ましてや広告など買えない１兆ドル・・・逆にその1兆ドルを広告媒体にしたらどうだろう。というのがこのキャンペーンです。<br />
クリエイティブ・ディレクターに会場で少しだけ話が聞けました。「逮捕される、とか思わなかったんですか？」「もちろん危険は覚悟していました。すべてのキャンペーンはゲリラ的に、4日間でやりきったんです。そうしたら、世論が味方についてくれました。だから彼ら（政権）は手が出せなかったんです」</p>

<p>●SELLING HOPE（ポルトガル）<br />
<a href="http://work.canneslions.com/promo/?award=2" target="_blank">http://work.canneslions.com/promo/?award=2</a><br />
<a href="http://work.canneslions.com/pr/?award=27" target="_blank">http://work.canneslions.com/pr/?award=27</a></p>

<p>2008年のクリスマスシーズンに行われた赤十字のキャンペーンは、それまでの寄付のやり方を変えました。リスボンのいちばんにぎやかなショッピングモールに誕生したそのショップでは、商品に触ることもできなければ、見ることも、着たり、聞いたりすることもできません。ただ、感じることができます。その商品とは、HOPE（希望）。他の店と同じようにハンガー、窓、試着室、販売員、バッグなどが置いてあるのですが、ただひとつの違いは、人々は手ぶらで店を出て行くこと。物を買う代わりに寄付をし、心の中はいっぱいにして。<br />
世界がかつてないほど強くHOPEを必要としていた時期に、このキャンペーンは奇跡的なタイミングで実施されました。初日の売上はモールのトップ10に入るほど。ボランティアを希望する人、初めて募金をする人、そして赤十字のパートナーになる企業も増えました。</p>

<p>●YUBARI（日本）<br />
<a href="http://work.canneslions.com/promo/" target="_blank">http://work.canneslions.com/promo/</a><br />
<a href="http://work.canneslions.com/pr/?award=27" target="_blank">http://work.canneslions.com/pr/?award=27</a></p>

<p>夕張市の町おこしキャンペーン。ニュースなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。多額の負債を抱え、2007年に財政破綻した夕張市。しかし夕張には、離婚率が日本一低いという事実がありました。そこで「金はないけど、愛はある」というコンセプトで「夕張夫妻」（いうまでもありませんが負債と夫妻がかかっています）というキャラクターが生まれ、キャンペーンが始まりました。キャラクターのモチーフは夕張メロンです。夕張市役所内には「夫婦円満課」が発足、ここを訪れた夫婦には「夫婦円満証」が発行されます。また、キャラクターソングが発売されたり、キャラクターを使ったグッズやお土産も多数販売されたり、キャラクターが雑誌に連載されたり・・・。100の新聞、100のオンラインメディア、30のTV番組、53100のブログで紹介されました。そして夕張市を訪れる人の数も毎年10％増加しています。しかしなにより重要なのは、夕張の人々が自分たちの街に再び誇りを取り戻したことなのです。</p>

<p>●KHEDE KASRA（レバノン）<br />
<a href="http://work.canneslions.com/pr/?award=27" target="_blank">http://work.canneslions.com/pr/?award=27</a></p>

<p>レバノン社会における女性の社会的役割の不平等に社会の目を向けさせるために、このキャンペーンは企画されました。アラビア語は発音するアクセントによって男性向けの言葉になったり女性向けの言葉になったりします。女性向けの言葉になるアクセントを「KASRA」アクセントといいます。<br />
このキャンペーンは、「レバノン社会では普段の会話の中で（男性女性を問わず）いかに男性に向けのアクセントで話すようになっているか」をデモンストレーションする、というもの。単語にKASRAマーク（赤いライン状の印）を付け、そのアクセントで話すと意味が変わる、ということを、ポスターやビルボードなどでデモンストレーションしました。あわせてYouTubeやFacebook、eメールなどデジタルメディアでも展開。2009年3月8日の世界女性の日には、いくつかのTV番組でパーソナリティーがKASRAのバッジをつけました。「ほんのわずかなアクションで世の中は変えられる」「あなたの印をつけましょう」というこのキャンペーンは新聞や雑誌で大きな話題となり、女性に不利なレバノンの裁判システム（離婚訴訟の際9歳以上の子どもの親権を失う、DVがはびこっている、など）についての議論に火をつけました。</p>

<p>●LET IT RING...（ベルギー）<br />
<a href="http://work.canneslions.com/promo/?award=2" target="_blank">http://work.canneslions.com/promo/?award=2</a><br />
<a href="http://work.canneslions.com/direct/?award=2" target="_blank">http://work.canneslions.com/direct/?award=2</a></p>

<p>ベルギーでは携帯電話で話しながらの運転による事故が増え続けています。その危険性を訴えるには、バーチャルで体験してもらうのがいちばん効果的、というキャンペーンです。その仕組みはこうです。まず、キャンペーンサイトから、体験させたい友人のメールアドレスと携帯電話の番号を入力します。すると、友人にあなたの名前でメールが届きます。友人がメールを開き、そこにあるURLからインターネット上にある一見何の変哲もない、車を運転している目線でつくられた映像を再生。すると、途中で友人の携帯電話がなります。何も知らない友人が携帯電話に出ると......映像の中で、友人は事故を起こしてしまうのです（電話に出ないと事故は起きません）。かなりショッキングな映像です。「電話は鳴らせておきなさい」というのが、このキャンペーンのメッセージです。</p>

<p>他にもたくさんのソーシャルな、優れたコミュニケーションがありました。（例年同様、アムネスティ、グリーンピース、ユニセフなどが多数受賞していました。）会場のホワイエや隣のホールでは、ソーシャルなグラフィック広告だけのエキシビションが開催されていて、また、会場前のビルボードには、今年12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15に向けたIAA国際広告協会の世界共同キャンペーン「Hopenhagen」のポスターが掲出されている......時代の風は確実に、広告業界の進む方向をも変えようとしていると実感しました。</p>

<p><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="047_canneslions02.jpg" src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/047_canneslions02.jpg" width="500" height="352" class="mt-image-none" style="" /></span></p>


<br /><br /><br />



<p><strong>籠島康治　略歴</strong><br />
1968年新潟生まれ。筑波大学大学院教育研究科卒業。広告会社とNGO 2025PROJECTでコピーライター、クリエーティブディレクターとして活動中。共著に「たりないピース｣「Love,Peace & Green たりないピース２」「エコトバ」「大丈夫だよ｣。</p>

<p><strong>岡崎陽子　略歴</strong><br />
1980年広島生まれ。フィンランド、ハワイ留学の後、上智大学法学部法律学科卒業。広告会社とNGO 2025PROJECTでコピーライター、プランナーとして活動中。共著に「大丈夫だよ」。</p>

<p><strong>2025PROJECT 概要</strong><br />
2025PROJECTは、 2025年に持続可能な社会になっていることを目指して活動しているNGOです。世界と未来を変えていくためのコンテンツを、継続的にプロデュースしていきます。今年のカンヌ国際広告祭では「Tigers Save Tigers!」キャンペーンがPR部門に入賞しました。
http://www.2025.jp/</p>

<br />
<div style="text-align: right;">
<small>
取材　籠島康治、岡崎陽子（2025PROJECT）<br />
撮影　籠島康治、近藤和泉（2025PROJECT）<br />
<br />
取材協力<br />
井上邦彦　KUNIHIKOINOUE（ロボット）<br />
Wakyo Production / Wakyo Green<br />
Mick Nakamura (WAKYO Production)<br />
Moto Yoshida (WAKYO Production) 
</small></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>笑顔で持続可能な社会を作るツール＝トランジション・タウン</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2009/05/rpt-46.html" />
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    <published>2009-05-19T08:00:14Z</published>
    <updated>2010-01-29T07:47:22Z</updated>

    <summary>     目次へ移動     トランジション・タウンとは？ エコビレッジという言...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    
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        <![CDATA[
<p class="section-title">
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    <strong>トランジション・タウンとは？</strong>
</p>


<p>エコビレッジという言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。地域での自給自足を実現するために新しいコミュニティを作り上げるコミューン型から、できるだけ環境負荷の少ないエコ住宅を中心とした街づくり、あるいはコレクティブハウスまで多種多彩ですが、何もないところに新たなコミュニティを作り上げるという点では共通しています。理想通りのコミュニティを作れる可能性がある反面、家から農地、共同体の仕組みをゼロから作って行かなくてはなりません。そのためには、膨大なエネルギーと時間を必要とします。</p>

<p>トランジション・タウンとは、ひとことでいえば、既存の町や市といった地域をエコビレッジ化していく運動です。<strong>トランジションという言葉は、「過渡期」「移行」「移り変わり」という意味です。</strong>何から何に「移行」するのか？　それは、<strong>「安くて大量の化石燃料に依存しきった脆弱な社会」から「地域をベースにした、しなやかで強い社会」への移行</strong>を意味します。とはいえ、特別な社会組織や特殊なイデオロギーが念頭にあるわけではありません。「移行」する「先」にある社会の姿は、地域によって違いがあるのは当然で、その姿は<strong>「行動しながら考えればいい」。それがトランジション運動の考え方です。</strong>エコビレッジ運動が、あるべき姿に突き進む目的志向だとすれば、<strong>トランジション運動はプロセスに重きを置いたプロセス志向</strong>という言い方ができるかもしれません。</p>

<p>もちろん、目指すのは低炭素社会です。そのためには、何が必要なのか？　もうすでに私たちは多くの答え、技術を持っています。有機農法、パーマカルチャー、自然農法を使った農作物の地産地消、バイオマスエネルギー、太陽光発電、風力発電などによるエネルギーの自給、コミュニティ・トランスポート、カーシェアリング、レンタサイクルなどによる交通の簡素化、身体に優しく環境負荷の少ないエコ建築、新鮮な野菜の比重を増やした食生活、農業を始めとして手や身体を動かすことの重要性などなど、低炭素社会を語るボキャブラリーは、わたしたちはすでに多すぎるほど手にしているのです。<strong>それをうまく組み合わせて使うには、あとはコミュニティの同意、コミュニティの成員同士の協働だけが足りなかっただけなのです。トランジション運動には、こうしたこれまでの個別の運動をつないでいく触媒としての役割も含んでいるのです。</strong></p>



<hr />
<p class="section-title">
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    <strong>トットネス　トランジションの始まり</strong>
</p>


<p>トランジション運動が始まったのは、2005年秋。イギリス南部デボン州の小さな町トットネス。人口8000人の町でスタートしたこの運動は、3年半ほどの間にイギリス全土はもちろん、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなどさまざまな地域に飛び火し、<strong>現在では170もの町が公式なトランジションを宣言し、1000を超える町がその準備段階にあると言われています。</strong>なぜ、このように短い期間に、これほど数多くの町の住人がトランジション運動に巻き込まれたのでしょうか？　</p>

<p>最初のトランジション・タウンであるトットネスは、3年の間に大きな成果をもたらしていますが、それとて目に見える形で町が様変わりしたというわけではありません。<strong>つまり、実例が魅力的だから後続が相次いだ、というのとは違うようなのです。</strong>では、なぜこれほど多くの賛同者が現れ、これほど多くの町がトランジション化しつつあるのでしょう？<strong>その理由の一つに「プロセスが楽しい」というのがあるような気がします。</strong>その町の事情に寄り添いながら、独自のリソースをうまく活かす方法が、プロセスとして明記されているのです。それが12のステップなのですが、その前にトランジション運動の特徴を見てみましょう。</p>

<blockquote>
<p>
<strong><ul>
<li>ピークオイルと気候変動という「双子の問題」に同時に対処し得る根本的かつ包括的な解決策の提示をめざす</li>
<li>地域レベルに焦点を当てる</li>
<li>地域住民の創造力、適応力および団結力を引き出す</li>
<li>その地域にすでに存在する資源を最大限活用し、それらを有機的につなげる</li>
<li>頭(Head)・こころ(Heart)・身体(Hands)の「3H」のバランスをとる</li>
<li>よりよい未来を描き、その実現は十分可能であると信じ、楽しみながら取り組む</li>
</ul></strong>
（トランジション・ジャパンHPより）
</p>
</blockquote>


<p>すべてが重要なのですが、<strong>この中でトランジション運動の最も大きな魅力といえば、最後の「よりよい未来を描き、その実現は十分可能であると信じ、楽しみながら取り組む」でしょう。</strong>社会をいい方向に変えていこう！　という気持ちはあっても、それを実現するために歯を食いしばってバーンアウト（燃え尽き症候群）を引き起こしがちです。そうではなく、みんなと力をあわせて楽しみながら取り組む。そして、「あり得るかもしれない未来への怖れ」から行動を起こすのではなく、「こうありたいと願う未来に向けて」行動する。これがトランジション運動のいいところ、あくまでも肯定的な部分です。</p>

<p>そして、<strong>次に重要なのが「頭(Head)・こころ(Heart)・身体(Hands)の「3H」のバランスをとる」という点。頭でっかちではなく、身体も動かす、生活に必要なスキルも身につける、そして心の問題を置き去りにしない。</strong>実際に、トランジション運動にはコアメンバーが燃え尽き症候群に陥らないためのメンタル面の手当も用意されています。</p>


<p class="caption" style="text-align: center; margin:0 auto; width:250px;"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_01.jpg" alt="" width="250" />トランジション運動の「いいだしっぺ」であるロブ・ホプキンス。飛行機を使わない、を信条にしており、先日行われたエコビレッジ国際会議にもビデオでの参加になりました</p>



<p class="section-title">
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    <strong>トランジション12のステップ</strong>
</p>

<blockquote>
<p>12のステップ<br />
第1ステップ：コア・グループを結成しよう<br />
第2ステップ：みんなで問題を考えよう<br />
第3ステップ：関連団体と連携しよう<br />
第4ステップ：大々的にお披露目をしよう<br />
第5ステップ：ワーキング・グループを形成しよう<br />
第6ステップ：創造的なミーティングを開こう<br />
第7ステップ：目に見える実例をつくろう<br />
第8ステップ：基本的な技能の再習得を促進しよう<br />
第9ステップ：行政機関との協働関係を築こう<br />
第10ステップ：お年寄りから学ぼう<br />
第11ステップ：流れに任せよう<br />
第12ステップ：エネルギー消費削減行動計画をつくろう<br /></p>
</blockquote>

<p>ステップ1から5までが準備段階。ステップ6から10までが、成長段階。そしてステップ11が全体の心構え、ステップ12が当面の最終目標ということになるでしょう。これらのすべてのステップに関してロブ・ホプキンスがひとりで考えたというわけではないでしょうが、彼の考えが色濃く反映していると見た方がいいでしょう。ここで想い出されるのは、彼がパーマカルチャーの講師であり、自然建築の専門家であるという事実です。一つひとつの要素が多様な機能を持ち、それぞれが他の要素に支えられている。多様性を重視し、自然のパターンを最大限に活用するといった原則が、社会運動に適用されているように思われます。</p>

<p>もちろん、この12ステップを順番にこなしていかなければならない、というわけではありません。あくまでも目安であって、やりやすいように進めればいいのです（現在では、この12ステップそのものも捨てようという動きになっているようです。しかし、トランジション運動の特徴が理解しやすいと思い、あえて掲載しました）。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_02.gif" alt="2006年12月のトットネスのイベントの数々を紹介するチラシ" />2006年12月のトットネスのイベントの数々を紹介するチラシ。目玉は、トランジションのお披露目。その他にも講座やセミナーが目白押しです</p>

<hr />
<p class="section-title">
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    <strong>ピークオイル</strong>
</p>

<p><strong>トランジション運動では、気候変動とピークオイルを双子の問題として、重視します。</strong>ピークオイルとは、現在発見されている油田の産出量がピークにさしかかる時、という意味です。それならばまだ半分くらいあるのでは？　と思われるかもしれませんが、油田の産出量がピークを迎えた後は、採掘にも手間がかかり、産出する原油のクオリティも悪くなります。つまり、現在のように水よりも安い原油が手に入りづらくなる、ということです。</p>

<p>いうまでもありませんが20世紀の文明は、石油を大量に消費することにより成り立っていたといえますが、それは石油が安価であったからこそ、です。ピークオイルを扱った映画『エンド・オブ・サバービア　郊外生活の終焉』は、そうした機微をよく捉えています。アメリカではガソリンに税金がかからないため、1リットルあたり50円程度でガソリンが手に入ります。だからこそ、燃費の悪いアメリカ車が販売されてきたわけですし、その車に乗って職場から100km以上離れた自宅との往復が可能だったわけです。それが、もし倍の100円になったら、あるいは200円になったら・・・。</p>

<p>もちろん、通勤だけではありません。農産物や加工食料品、あるいは木材、鉄といった資材の輸送にもガソリンは不可欠です。石油の価格が跳ね上がれば、流通が大きな傷手を受けるのは、一時期の石油の高騰を見れば誰しも納得できるでしょう。さらに、石油はあらゆるものに「化ける」のです。食料、衣料、ペットボトル、プラスチック、電気。パソコンから、ゲーム機、DVDを始めとするソフトウェアのパッケージ、スーパーの食品トレイまで。原料、製造、輸送のいずれか、あるいはそのすべてが石油に依存しています。石油由来のものや、石油由来のものに依存していないものはほとんどありません。</p>

<p>その価格が現状の倍、あるいはその倍になったと考えると、突然私たちの生活は危機にさらされることになります。足下が揺らぐような出来事です。<strong>トランジション運動は、石油への依存を少しでも減らしていき、ピークオイルを迎えてもびくともしない社会を地域レベルで築いていこうという運動なのです。</strong>そして、それは気候変動の影響を可能な限り小さくしていこうという流れと重なることはいうまでもありません。トランジション運動により、地域の低炭素社会化が進み、食と農、エネルギーなどの地域での自給自足が軌道に乗れば、排出されるCO2が減少するのは明らかでしょう。</p>


<hr />
<p class="section-title">
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    <strong>トランジション藤野</strong>
</p>


<p class="caption" style="text-align: center; margin:0 auto; width:410px;"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_03.jpg" alt="藤野" />森と湖の町、藤野には、豊かな自然を求めて多くの芸術家が移住しています</p>



<p>日本では藤野が公式のトランジション・タウンとして活動しており、葉山、小金井、相模湖、鎌倉、逗子、高尾などが、準備段階にあります。トランジション藤野を立ち上げた榎本英剛さんにお話しを伺いました。榎本さんは日本におけるトランジション運動の「いいだしっぺ」です。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_04.jpg" alt="" />トランジション・ジャパンの代表として、エコビレッジ国際会議でトランジション運動の紹介をする榎本さん</p>


<p>「トランジション・タウンのことを聞いたのは、私がスコットランドのフィンドホーンというエコビレッジに暮らしていた2007年11月のことです。ロンドンで開かれたあるカンファレンス（Be The Change Conference）でスピーカーの１人として招待されていたロブ・ホプキンスの話に釘付けになりました。ピークオイルのこともその時に初めて聞きまして、その深刻さにショックを受けたのと同時に、その解決法としてトランジションというやり方があることも知りました。</p>

<p><strong>まず、地域をベースにしている点、市民の力を活用するという点にひかれました。</strong>市民ひとりひとりの力を引き出せれば、人類文明がぶつかっているシステム的な問題に対処できるかもしれないと考えたわけです。<strong>それから、問題を直視することは必要だと思うのですが、その結果訪れるかもしれない暗黒の未来という「恐怖」を行動に結びつけるのではなく、自分なりの明るいビジョンを持って行動できるという点。</strong>石油のない未来は、もしかするといまより豊かな未来になるかもしれない。<strong>ピークオイルを怖れるのではなく、きっかけとして捉え、「そちらの方が豊かなんだから、そっちに向かっていこうよ」という発想ですね。</strong></p>

<p>もうひとつ、私たちに入りやすかったのは、ロブ・ホプキンスがパーマカルチャーと自然建築の講師をしていたという経歴です。トランジション運動も、パーマカルチャーを土台にしている部分があります。<strong>キーワードはつながりですね。目に見えていないが、確かに存在するもののつながりを使うという発想。それを街づくりに活かそうとしている</strong>ように理解できたわけです。多様性に満ちた人々や、町のさまざまな資源を繋げていく触媒のような役割を果たす。そんなイメージですね」。</p>

<p>神奈川県藤野町は人口約1万人。2007年に相模原市に編入されましたが、地域自治区が2011年3月まで設置されることになっています。森と湖と芸術の町と呼ばれ、芸術家が数多く移り住んでいます。また、パーマカルチャーセンタージャパンがあり、日本におけるパーマカルチャーのお膝元ともいえる町です。さらに、シュタイナー学校も3年ほど前から開校しています。オルタナティブな文化を背景にした人々が数多く移り住んでいる地域といえます。</p>

<p>「藤野のトランジション運動は、引っ越して10年以下の3人の新住民がコアになって始めました。それから、地元に古くから住んでいる人、地域の活動をしている団体や個人を個別に訪問して、理解してもらい、後ろ盾になってもらうための活動を開始しました。元町役場の幹部の方に、関係者を集めてもらって、プレゼンをしたこともありました。古くから住んでいる人たちに、新住民がトランジションという横文字を持ち出していくわけです。拒絶反応を示されるのではないかと、びくびくしていたのですが、虚心坦懐に話を聞いてもらい、逆に地域をこうしていきたい、とみなさんが語りはじめてくれたのです。この時は、うれしかった。『ここにきてよかった』と思いましたね」（榎本英剛さん）。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_00.jpg" alt="" />トランジション相模湖と合同で行われている心と魂のワークグループのひとこま。トランジション運動では、低炭素社会を実現するための目に見える活動だけでなく、「内なるトランジション」、つまり、生きる意味や価値観の変容も大きなテーマのひとつとして重視しています。トランジション藤野には、他に再生可能エネルギーあるいは保存食などのワークグループがあり、それらをまとめる企画・運営ミーティングは、啓蟄、清明といった二十四節気の変わり目に行われています。自然の移ろいを敏感に感じながら暮らすことを重視する藤野の人たちの心意気を感じます</p>
	



<hr />
<p class="section-title">
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    <strong>トランジション葉山</strong>
</p>

<p>葉山も芸術家が数多く移り住んでいる地域として知られています。さらに、葉山の環境を好み、移り住んできた新住民も多く、環境に関しては先進的な地域といえます。そんな葉山で持ち上がったのが、遊歩道の建設計画です。トランジション葉山の吉田俊郎さんも、その遊歩道建設反対を訴えたグループのひとりです。</p>

	

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_06.jpg" alt="" />トランジション葉山の吉田俊郎さん。違和感を感じながらも勤めていた会社を2008年に退社。納得のいく「暮らし方」を葉山で切り開こうとしている 	</p>


<p>「町長選が終わり、葉山をエコビレッジにできたらいいなと考えていた矢先でした。3月に榎本さんに誘われてフィンドホーンに行き、そこでロブ・ホプキンスの講演を聴いて、トランジション・タウンのことを知ったのです。これは葉山でやるしかないな、と思いました。葉山には、海の幸、山の幸もあるし、里山も残っている。芸術家たちも30年以上前から移住している。地元を愛している人、環境を愛している人も多い。5月に葉山に帰ってきてからすぐに活動を開始し、トランジションの説明会を3回ほど行いました。葉山、逗子、鎌倉などから、いろんな人が来てくれました。その他、環境イベントへの参加や、稲刈り、収穫祭、川の清掃など他の団体との連携も深めつつあるところです。また、地産地消のための直売所も作りました。まだ、農産物を細々と扱っているだけなのですが、いずれは地元の漁師さんが穫った魚などの海産物も扱えるようになればいいな、と思っています」（吉田俊郎さん）。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_07.jpg" alt="" />トランジション葉山のイベント「聞いておきたい昔の葉山」のもよう。先輩たちから昔の葉山では何を食べていたかなど、暮らしぶりを聞く会。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_08.jpg" alt="" />葉山の名物漁師「シローさん」が普段の陽気さとは裏腹の切実な声で「築地では漁獲量の少ない葉山の魚はまともに相手にしてもらえない。葉山の魚は葉山の人たちに食べて欲しい。その方が売る側もうれしいしね」と訴えていました。こんな夢を実現していく力がトランジション運動にはあるのではないでしょうか</p>

	

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_09.jpg" alt="" />トランジション葉山のイベント、『ぶんぶん通信Vol.1』の上映会でのひとこま。祝島の原発反対運動からのエネルギーの問題をみんなで考えていくイベントです。鎌仲ひとみ監督（左）とトランジション葉山の吉田俊郎さん</p>

	

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_10.jpg" alt="" />ワールドカフェスタイルのミーティング。トランジション・タウンでは、この他にオープン・スペース・テクノロジーなど、ビジネスの現場でも使われている手法をうまく取り入れ、創造的なミーティングを開き「集団の英知」を引き出すことに重点を置いています</p>

	

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_11.jpg" alt="" />手作りの食事やコーヒーなどで、ミーティングはより楽しいものになります</p>

	

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_12.jpg" alt="" />トランジション葉山が地元の人たちと協力して作った農産物の直売所</p>

	

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_13.jpg" alt="" />トランジション葉山チーム畑にて。パーマカルチャーを援用した自然農法でさまざまな作物を育てています</p>



<hr />
<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>多様性を活かす大きなうねり</strong>
</p>

<p>ここまでの文章で、トランジション運動が、多くの人々を瞬時にして引きつける理由の一端でも理解いただけたら幸いです。<strong>これまでの社会運動、環境運動が同じ志、同じ目的意識を共有することから始まることが多いのに対し、トランジション運動では、共有すべきなのはピークオイルに関する認識とそれを乗り切るための低炭素社会の実現だけです。それ以外は、どんなイデオロギー、どんな思想を持っていても協働できるのです。</strong></p>

<p>もうひとつの大きな特徴が、地域からの運動であること。食やエネルギーをどうするか、といった問題は国レベルの政策に関わることでした。しかし、その発想そのものが過度の中央集権を生んでいたのも事実です。食べ物やエネルギーを遠くに運べば運ぶほど石油をたくさん消費するのです。食もエネルギーも地産地消ができれば、それが理想です。そうした仕組みを政府や自治体にさきがけて実例を作ってしまう。教育や福祉についても同様。さらにはビジネスのあり方までローカル化していく。すべては、一人ひとりの市民の自発性、創造性にゆだねられているのです。</p>

<p><strong>「労働力」「消費者」などという、大きな流れから押しつけられた役割を脱ぎ捨て、一市民として考え、地域の人々とともに行動する。個人の知恵ではなく、集団的英知を結集することによって、大きな問題を解決していく。</strong>トランジション運動を始めたのはロブ・ホプキンスという個人ですが、彼は仕組みを作り上げただけで、それを実行するのは地域に住む市民一人ひとりなのです。まずは、気の合う地域の人々と「いま住んでいる地域をどうしていきたいのか」といったことを話し合うだけでも十分です。<strong>あなたの町でもトランジション・タウンの活動を始めてみませんか？</strong></p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/046_14.jpg" alt="" />始まったばかりのトランジション・タウン高尾のミーティング風景。同じ土地に住む人たちで、その地域の未来を語れるのは、大きな喜びにつながります。</p>


<br /><br />

<p>トランジション・タウンに関する情報は、</p>

<ul>
<li>トランジション・ジャパンのホームページ<br />
<a href="http://www.transition-japan.net/" target="_blank">http://www.transition-japan.net/</a></li>
<li>Transition Towns WIKI<br />
<a href="http://transitiontowns.org/" target="_blank">http://transitiontowns.org/</a></li>
<li>トランジション藤野のブログ<br />
<a href="http://blog.canpan.info/team-80/" target="_blank">http://blog.canpan.info/team-80/</a></li>
<li>トランジション葉山のブログ<br />
<a href="http://tthayama.blog10.fc2.com/" target="_blank">http://tthayama.blog10.fc2.com/</a></li>
<li>「ジモティーで行こう。」トランジション・ジャパンのメンバーによるブログ
<br /><a href="http://ttown.exblog.jp/" target="_blank">http://ttown.exblog.jp/</a></li>
</ul>

<br /><br />

<p><strong>加藤久人　略歴</strong><br />
1957年東京生まれ。立教大学文学部フランス文学科卒業。株式会社バショウ・ハウス主宰。環境、エネルギー、気候変動、リサイクル、ローカリゼーションなどに関する執筆活動を続けている。NPO法人懐かしい未来理事。著書に『<a href="http://www.thinktheearth.net/jp/ecoyomi/">えこよみ ecoyomi3</a>』など。</p>

<br /><br />

<div style="text-align: right;"><small>
取材・執筆・写真：加藤久人<br />
編集：佐々木拓史<br />
</small></div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>「僕のルール」が届くまで 〜ワクチン支援のラスト・ワン・マイル</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/2009/03/rpt-45.html" />
    <id>tag:www.thinktheearth.net,2009:/jp/thinkdaily-renewal/report//7.1000</id>

    <published>2009-03-31T13:43:11Z</published>
    <updated>2010-01-29T07:47:41Z</updated>

    <summary>     目次へ移動     仕組み 初めて耳にする企業の技術が、先端の宇宙開発...</summary>
    <author>
        <name>staff</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/">
        <![CDATA[<p class="section-title">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>仕組み</strong>
</p>

<p>初めて耳にする企業の技術が、先端の宇宙開発を支えていたり、スポーツで突然頭角を現した国を、実は日本人の監督が指導していたり。人知れず、価値ある何かを動かしている人や仕組みがあります。<br />
今回の舞台もそれとちょっと似ているかもしれません。</p>

<p>ミャンマーは中国、インド、タイさらにラオス、バングラデシュと国境を接するASEAN、東南アジア諸国のひとつ。『ビルマの竪琴』、敬虔な仏教国、軍事政権、多民族国家、世界の最貧国、といった修飾語とともに語られることが多いなか、ある世代以上の方に共通するのが、この国がもつ「懐かしさ」。かつての日本が発展する過程で失った何かが、この国には残っているようです。</p>



<p class="caption" style="margin:0 auto; text-align:center; width:410px;"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_yangon.jpg" width="410" alt="" />ヤンゴン市街地。金色に輝くのは、ミャンマー最大のシュエダゴン寺院の仏塔<br /> ©HIROSHI ITO</p>

<p class="section-title-middle" id="One01">
    <a href="#wrapper">目次へ移動</a>
    <strong>最終目標はこの国が自立できるようになること<br />
〜ユニセフの日本人プロジェクトマネージャー</strong>
</p>

<p>世界の最貧国と形容される<strong>ミャンマーは、一人当たりのGNPが220ドル、約2万円</strong>といわれています。加えて政治的な理由で、欧米からの国際支援も届きにくい。一人当たりの国際支援金が、たとえばルワンダの6,000円に対して、ミャンマーは300円というのが現状です。</p>

<p>そのミャンマーで、国の発展に欠かせない子どもの予防接種事業は、現地政府、国連ユニセフ、そして支援金を提供する寄付団体らが連携する形で行われています。今回のポリオNIDにおける主要な登場人物は3者。途上国におけるワクチン供与の豊富なノウハウをもとに、プログラムの計画・実施を技術指導、助言するユニセフ、プロジェクトの主体であり、大都市から小さな村々にいたるまで、実際に人員を確保し、接種を運営するミャンマー政府・行政、そして、「僕のルール」のような個人支援者からの寄付をもとにワクチンの購入資金を提供する認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを日本委員会（JCV）。この3者が連携することで、NIDは実現しています。</p>

<p>ユニセフ・ミャンマー事務所の医師、國井修さんは、若い頃、ソマリアで医療活動をしていた際に、多くの感染症の患者を看たそうです。<strong>その現場では、患者さんを治療しても、また他の感染症にかかり、それを治療してもまた別の感染症にかかり、結局亡くなってしまう子どもや女性がたくさんいる。そもそもこれらは予防可能な病気なのに･･･</strong>と、とても無力感を感じたといいます。予防医療の大切さを痛感して、臨床医から公衆衛生専門家にキャリア転換をされた國井さんに、ミャンマーで5歳以下の子ども全員にポリオの予防接種を行う、全国一斉予防接種（NID）の全体像について話を聞きました。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_001.jpg" alt="" />ユニセフ・ミャンマー事務所の國井修さん。NID視察地にて（写真中央）©HIROSHI ITO</p>


<p>「予防接種事業は、大きく2つのプログラムで構成されています。毎月1歳未満の子どもを対象に継続的に行われている定期予防接種（ポリオ、麻疹、DPT三種混合、BCG、B型肝炎の5種類）と、それで十分にカバーできない予防接種のみをリスクの高い地域で、または、全国レベルで、一斉に行う追加予防接種です。ポリオはミャンマーで2000年から6年間発生がなかったのですが、2006年に<span class="highlight">ワクチン由来株*1</span>、2007年には<span class="highlight">野生株*2</span>のポリオが流行してしまい、2006年には地域を限定して、2007年からは全国一斉のNIDを年に1度実施することに決めました。全国の子ども約740万人を対象に、95%の接種率達成を目指して実施しています」</p>

<p class="cond"><span class="highlight">※1</span>　ワクチン由来株：投与されたワクチンが変異して毒性を持ちウィルスとなること<br /> 
<span class="highlight">※1</span>　野生株：自然界に生存していたウィルス</p> 

<p><strong>ポリオをはじめ、はしかやBCGなど予防接種に必要なワクチンには、熱や光に弱いという特徴</strong>があります。そのため、種類によって、凍らせたり、（凍らせずに）冷やしたりと、管理のためには適正な設備や人材教育が必要です。それが不十分であると効果を失ったワクチンを子どもたちに届けてしまう危険性もあります。予防接種を効果的に機能させるためには、ワクチンを届ける仕組みを作ることが必須です。その仕組みは、途切れずにつながる鎖を模して、<strong>コールドチェーン（冷たい鎖）</strong>とよばれています。</p>

<p>ここミャンマーのコールドチェーンはどのような道のりをたどるのでしょうか。<br />
まず、JCVに日本全国の支援者から寄付金が集まります。JCVは、WHOやユニセフの現地事務所とミャンマー政府が作成した予防接種計画に基づく要請を受けて支援を決定。必要資金をユニセフへと支払います。そのお金をもとに、ユニセフのデンマーク・コペンハーゲンにある物資調達センターがワクチンの調達にかかります。実際に、世界中のワクチン製造会社がその都度入札を行っているため、品質が保証されたワクチンをできる限り低コストで購入でき、さらに、指定された納期に指定された場所へ確実に配送される仕組みになっています。<br />
ワクチンの種類や時と場合によって若干事情が異なるものの、このように世界各地の工場で手配されたワクチンが、空路ミャンマーへと集結します。</p>

<p>「海外から届く全てのワクチンは、いったん、ヤンゴン市内の中央コールドルーム（保冷庫）に集められます。この施設はユニセフやJICAの支援で作られました。ワクチンはここを起点に全国19か所の保管施設を中継し、325のタウンシップとよばれる街区の中央病院へと運ばれていきます。冷蔵庫や冷凍庫を機能させるための自家発電施設があるのはここまで。そこから先の地域保健センター（RHC）や、さらに先の僻地保健センター（SHC）では、設備が不十分ななか、いかにワクチンを適正な温度に保つかが大きな課題です。助産師さんたちのなかには、自腹で氷を買い、ワクチンを冷やして届けている人も少なくありません」</p>

<p><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_coldchain.gif" alt="ミャンマーのコールドチェーン" style="display:block; margin:0 auto; width:410px;" /></p>

<p>國井さんによれば、課題はあるものの、ミャンマーでの予防接種事業は順調に進んでいるといいます。</p>

<p>「当初こそわれわれが準備・計画から実施・評価に到るまで技術的・資金的援助を繰り返し実施してきましたが、今では、中央から地方、現場にいたるまで NIDの重要性が周知され、技術的には独自に実施できる体制になっています。ただし、私たちの究極の目的は、ポリオのNIDに限らず、すべての予防接種事業において、技術・資金の両面で政府が独自に進められるようにすることです。<strong>援助の最終目的は、援助なしでその国が自立できるようになること</strong>です」</p>

<p>今回のNIDの後、重点エリアのみで地域一斉に予防接種を実施する縮小版のサブNIDが数年間繰り返される予定です。そこで95%の接種率が確保されれば、近い将来ミャンマーではポリオフリー（根絶）を宣言できるとのこと。ユニセフは、すでにそのプランを描いているようです。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_002-003.jpg" alt="" />（左）ポリオウイルスは感染し発病すると、手足の麻痺など重い後遺症を引き起こす。各地で見かけた啓発ポスター©HIROSHI ITO（右）國井さんとともにプロジェクトに携わるユニセフのミャンマー人スタッフの一人、優秀な若手医師のチョー・ミン・アウンさん。「ミャンマー中の人を一人でも多く助けたい」©HIROSHI ITO</p>


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<p class="section-title">
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    <strong>役割</strong>
</p>


<p>ワクチンを安全に届けるための仕組み、コールドチェーンに沿って、実際にそこで働く人たちを追いかけました。</p>


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    <strong>ミャンマー全土のワクチンを管理
〜保健省スタッフ</strong>
</p>

<p>海外からミャンマーへと送られたワクチンはすべて、いったんヤンゴンにある中央コールドルームへと届けられます。施設を管理するのは、保健省のチョー・カン・カンさんです。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_004.jpg" alt="ヤンゴン市内の中央コールドルーム" />ヤンゴン市内の中央コールドルーム</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_005.jpg" alt="" />中央コールドルームの管理者、保健省のチョー・カン・カンさん（写真右）と上司のタン・テン・ウィンさん</p>

<p>「ここは古い倉庫を改築したもので、これまでのコールドルームが老朽化しキャパシティーも不足していたため、2年前に建設されました。実際に稼働を開始したのは、昨年のサイクロン被災後です。人が自由に歩きまわれるサイズの"ウォーク・イン・コールドルーム"が7つ。<strong>常時40万人分のワクチン</strong>が保管されていて、それぞれ、<strong>種類によって冷凍・冷蔵など、決められた温度で管理</strong>されています」とチョー・カン・カンさん。</p>

<p>ヤンゴン中心部から車で10分足らず。近代化した衛生的なコールドルームですが、まだ課題も残っているようです。</p>

<p>「電圧事情が不安定なミャンマーでは停電も少なくありません。そのため、ここでは自家発電設備を備えて、24時間体制で温度管理を行っています。ここから各地にワクチンを発送するのですが、輸送用の車両も十分とはいえない状況です。けれど、ミャンマー全土のワクチンを一手にあずかる役割として、10名のスタッフが連携して厳正に温度管理を行い、ワクチンを無駄にしないよう取り組んでいます」</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_006-007.jpg" alt="" />（左）ウォーク・イン・コールドルーム（右）日本では9本の針でおなじみ（？）のBCGは、結核予防のためのワクチン ©HIROSHI ITO</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_008-011.jpg" alt="" />（上段左）このひと瓶に、20人分のポリオワクチンが（上段右）運搬のためのアイスパックや保冷剤も保管されている © TAKASHI MORIOKA（下段左）サイクロンの際にも活躍した発電機（下段右）ワクチンはこのボックスに入れられ、陸路・空路で各地に運ばれていく</p>

<p>彼らにとって<strong>ミッションは明快そのもの。</strong><br />
上司にあたる保健省の予防接種プログラムの統括マネージャー、タン・テン・ウィンさんに国としての目標を聞いたところ、明確な答が返ってきました。</p>

<p>「<strong>ポリオ根絶、肺炎の削減、はしかの予防がわが国の3大目標</strong>です。そのため常に新しいワクチン情報を研究し、導入しています。JCVをはじめとする支援団体との交渉や関係作りも大切な仕事です」</p>

<p>粛々と。ワクチンは、コールドチェーンの緻密なシステムに沿って、ここから陸路、ときには空路で、全国21か所の地域保管施設へ、そこからさらに325か所のタウンシップへと配送されていきます。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_012.jpg" alt="" />施設内の菩提樹</p>



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<p class="section-title" id="Two02">
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    <strong>サイクロンを乗りこえNIDを見守る<br />
〜地域医療の女性リーダー</strong>
</p>

<p>人口約5,000万人、面積が日本の1.8倍のミャンマーには325のタウンシップという行政区分があります。各タウンシップに設置された総合病院の病院長であり、地域の医療責任者が、タウンシップ・メディカル・オフィサー、通称TMOとよばれる人たちです。</p>

<p>話を聞いたのは、<strong>2008年5月に発生したサイクロンで大きな被害を受けたイラワジ管区</strong>のボーガレーというタウンシップにて。ここのTMOは、女性医師のラー・ラー・ジーさん。1997年以降全てのNIDに携わっており、当地には、サイクロン発生の少し前に赴任したそうです。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_013.jpg" alt="" />タウンシップ・ボーガレーのTMO、ラー・ラー・ジーさん（右）。「昨日はボートで3か所視察してきました」。片腕の看護婦長とともに</p>

<p>「この街は人口約32万人。サイクロンでは3万4千人もの命が奪われました。今回、ポリオワクチン接種の対象となる全ての5歳未満の子どもたちは、人口の約1割にあたる3万1千人です。NIDは2日にわたって行いますが、初日の昨日は域内531箇所の会場で接種を実施し、99％達成することができました。 2日目の今日は、家が遠いなどの理由から接種会場まで来ることができない遠隔地の子どもたちが対象です。リストを元に、一軒ずつボートで出向いて接種を行います」</p>

<p><strong>イラワジ管区は、イラワジ川の河口にあたる地域で、大小の支流が静脈のように縦横に走る広いデルタ地帯です。移動手段として活躍するのはボート。</strong>けれど、南の海に近い地域では高波も多く、場所によっては1日で行けないところもあり、ひとつひとつの集落に足を運ぶのは容易ではありません。そんななか、看護婦長らスタッフとともに、ボートで視察にやってきた女性TMOの姿に、おどろく住民は少なくないといいます。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_014.jpg" alt="" />移動手段にボートが欠かせない。雨季には水かさが増し景色が変わる</p>

<p><strong>サイクロン被害の際には区域内の7、8割の建物が全半壊してしまい、ワクチンが水浸しになるなどコールドチェーンも大きな打撃を受けたそうです。一時、定期予防接種もできないほどの状況でしたが、被害の2ヵ月後から復旧</strong>しました。被災直後からのユニセフのきめ細かい援助もさることながら、TMOの経験と高い意識の力を感じずにはいられません。</p>

<p>「<strong>この病院ではソーラーを含む自家発電機を備えているので、ワクチンの温度管理は万全</strong>です。また、周辺に漁業人口が多く、氷が入手しやすいため、村や集落へも比較的安全にワクチンを運べます。実際にポリオやはしかにかかる人が目に見えて減ってきているので、<strong>親たちの間で予防接種に対する認知があがってきている</strong>ことも実感します」</p>




<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_016-019.jpg" alt="" />（上段左）ユニセフの援助で設置されたソーラー発電。日本円で60万円（上段右）病院内の冷蔵庫。ここから接種会場へワクチンが届けられる ©HIROSHI ITO（下段左）冷やしている間にラベルがはがれたりしないよう、ワクチンを個別にビニールで包装している ©TAKASHI MORIOKA（下段右）管区内の接種会場にて、運搬ボックスの中のワクチンは、しっかり氷で保冷されていた</p>

<p>325のタウンシップは場所や地域により事情が異なります。<strong>北部の国境付近ではヒマラヤ山麓の険しい山が続く広範な地域を限られた人員でカバーせねばならなかったり、また、ある地域では域内に言語の異なる少数民族を抱えて、予防接種の効果をなかなか伝えきれなかったり</strong>とまだまだ困難は多いようです。ただ、ここ、ボーガレーで、ラー・ラー・ジーさんはサイクロン被害を乗りこえてNIDを成功させました。彼女の経験と自信は、次は別の地域へときっと活かされていくでしょう。</p>



<hr />
<p class="section-title" id="Two03">
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    <strong>NIDのラスト・ワン・マイル<br />
〜ボランティアとともに地域医療をあずかる助産師</strong>
</p>

<p><strong>タウンシップの先は、いよいよ子どもたちが待つNIDの接種会場です。地域保健センター（RHC）や、さらに下のレベルにあるサブRHCなどがその会場</strong>となります。コールドチェーンの旅もまもなく終わり。いわゆる支援の「ラスト・ワン・マイル」です。</p>

<p>同じイラワジデルタのピアポンというタウンシップにある、川沿いの村、チョンキンジーのサブRHCを訪ねました。ここは<strong>多くのRHCやサブRHCと同様に、助産師さんが責任者を務めています。</strong>今日はNIDの初日。会場前には対象となる5歳以下の子どもとその母親たち、取り囲むように、村中の人が集まりごった返しています。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_020-021.jpg" alt="" />予防接種会場に集まる人々 © TAKASHI MORIOKA</p>


<p>このサブRHCをきりもりする助産師のタン・タン・メイさんにNID実施のようすについてうかがいました。</p>

<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_022.jpg" alt="" />視察団の質問にこたえる助産師タン・タン・メイさん © TAKASHI MORIOKA</p>

<p>「この村には307家族、1470人、5歳以下の子どもが187人、1歳以下の子どもが42人暮らしています。昨日ピアポンの中央病院から（ここよりひとつ上のレベルである）チョンダー村のRHCに届いたワクチンを、今朝一番にとりに行きました。ここからだと歩いて30分くらいです。<strong>ワクチンを運ぶケースの中には氷も一緒に入っているので、NID期間中の24時間から48時間は安全に保つことができます</strong>」</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_023.jpg" alt="" />この地域で移動手段にボートは欠かせない。タン･タン･メイさんも地域訪問の際は、ボートか、ご主人の運転するバイクで移動されているそうです</p>

<p>「<strong>まず入り口でリストを見ながら、子どもとお母さんのさん名、年齢をチェック</strong>します。今回、ポリオと同時にビタミンAを投与しますが、その年齢識別のための札を渡します。<strong>次にポリオワクチンを順番に、一人一人の口に2滴ずつ投与していきます。</strong>続いて、ビタミンAを投与します。そのあと、いったん外で15分ほど休憩してもらいます。投与済みの目印になるよう、終了した子どもたちには爪に黒のマジックでしるしをつけます」</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_024-027.jpg" alt="" />（左）なかには、お父さんに連れられた子も ©HIROSHI ITO（右上段）ポリオワクチンは甘い味がする。痛くないけど、泣き出してしまった子 ©HIROSHI ITO（右中段）接種が終わった子どもの爪に、識別のためしるしをつける ©HIROSHI ITO（右下段）数十名規模にのぼる地元のボランティアが協力 ©TAKASHI MORIOKA</p>

<p>狭い会場のなかには受付、ポリオコーナー、ビタミンコーナーと区分けされ、子どもは指定の順番通りめぐっていきます。人でごったがえしているものの、大きな混乱はないようです。普段は助産師さんが一人で切り盛りしている施設ですが、<strong>NIDの当日には心強い助っ人がバックアップ。そろいのユニフォームをまとった母子愛育協会などの女性たち、消防団の男性たちをはじめとするボランティアたち</strong>です。</p>

<p>この村だけではなく、どの村に行っても、<strong>NIDは、村をあげて実施</strong>されていました。ワクチン支援のラスト・ワン・マイルで印象に残ったのは、子どもとお母さん・お父さんたちの笑顔とともに、助産師さんを筆頭に会場を切り盛りする多くのボランティアたち、子どもの成長を見守る村人たちなど、会場を取り囲むさまざまな人たちの存在でした。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_028.jpg" alt="" />会場に集まったたくさんの村人たち
©TAKASHI MORIOKA</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_029.jpg" alt="" />接種会場のようすを見つめる少年少女 ©HIROSHI ITO</p>


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<p class="section-title" id="Two04">
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    <strong>「定年まで、がんばりたい」<br />
〜助産師さんインタビュー</strong>
</p>

<p>NIDのラスト・ワン・マイルをあずかる助産師さんたちは多忙です。<strong>日本の助産師の役割に加え、看護師、保健師、ときには医師の役割もこなします。</strong>待遇面も決して恵まれているとはいえないなかで、それでもがんばる彼女たちはどんな想いで働いているのだろう。その存在をもう少し身近に感じたくて、 NID前日、ヤンゴンから車で１時間ほど離れたトンテイ・タウンシップにあるゾティ村のRHCを訪ねた折、センターを切り盛りする助産師さんに話を聞きました。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_030-031.jpg" alt="" />（左）助産師になって今年で15年目　（右）彼女が担当するRHC。サイクロンで建物が全壊したが、イタリアのNGOの支援で再建された。ボランティアスタッフとともに</p>

<p>普段の仕事内容は？<br />
「<strong>午前中は、ここでクリニックを開き、風邪や病気などを治療しています。午後は地域の巡回医療</strong>が主な仕事です。仕事をはじめて15年になります。1週間のうち平日はここに泊まり、土日は実家に帰っています」</p>

<p>仕事は好き？　大変なことはありますか？<br />
「仕事は楽しいです。私はここから車で30分ほど離れた隣村の出身なのですが、ここのみんなには自分の村のようによくしてもらっています。<strong>この村には医師がいないので、出産で難しいことがあると大変ですが、無事に赤ちゃんが生まれたときはとてもうれしいです</strong>」</p>

<p>これからの目標は？<br />
「この村はとても静かでみんな良い人たちなので、60歳の定年になるまで勤めあげたいと思っています。それが私の目標です」</p>

<p>シンプルでバランスのとれた回答が印象的でした。役割は多くとも、とりまく事情が、日本よりもずっとシンプルなのかもしれない。そうして、小さなことにも左右されがちな日本の働く現場を思い浮かべていたら、なぜか、「本質」という言葉が頭に浮かんできました。</p>



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    <strong>想い</strong>
</p>

<p>正しい仕組みと、粛々と役割を果たす人。持続可能に機能していくために欠かせないのが、潤滑油となる人々の想いではないでしょうか。</p>

<p class="section-title" id="Three01">
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    <strong>「僕のルール」を届ける<br />
〜NPO職員</strong>
</p>

<p>日本とミャンマーの間に立って、双方の人々と直接言葉を交わし、コールドチェーンをつなぐNPOの人は、どんなことを考えているのでしょうか。今回のNIDで、ポリオワクチンの8割におよぶ支援をした認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会（JCV）」の事務局次長である江崎礼子さんが大切にしていることは。</p>


<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_032.jpg" alt="" />サイクロン被災地の接種会場を訪れた江崎礼子さん（左から4人目）</p>

<p>「ミャンマーで10年以上支援をしてきて、JCVという名前は、ミャンマーの医療関係者にもずいぶんと知られるようになりました。けれど、JCVという<strong>団体自体が寄付をしているのではなく、子どもからお年寄りまで日本中のふつうの人たちがミャンマーの人々のために寄付をしてくださっている</strong>という事実を、伝えるようにしています」</p>

<p>日本で集まったお金は、ミャンマーの村々で、子どもたちの健康な成長に欠かせないワクチンに変わっていました。国際社会の知見をもとに練り上げられたシステムがあり、明快な役割を果たすたくさんの人たちがいました。また、地域の協力体制も機能しているようでした。しかし、お金を寄付した誰もが現地に行けるわけではありません。確かにお金が生きたことを、どうすればイメージできるのでしょうか。</p>

<p>「もちろん支援の実績の数値などのデータは必要だと思いますが、一番はリアリティだと思っています。これまでたくさんのJCVボランティアの方がミャンマーでのワクチン支援視察に参加されました。その後の進路に影響を受けたという人も少なくありません。そういう方たちが、それぞれの経験を会話やブログなどさまざまな場面で周囲にひろげていくことで、ミャンマーのようすを共有する。すそ野を広げることが大事だなと思っています」</p>

<p><strong>国を越えた協力体制のもと、一国の国家規模で運営されるシステムで、粛々と役割を果たす人々。</strong><br />
そこで感じたのは、<strong>仕事への責任感や、誇り、国の将来に対する使命感、さらに役割を託す人への尊敬と信頼の想い。</strong>というと、大げさでしょうか。<br />
私たちが寄付をする理由。何かを変える力になりたいと願い、寄付をする理由。言葉にすることをためらいがちなその想いと、通じる何かがあるように感じました。<br />
そして子どもたちのために、お金をリレーし、ワクチンを届ける人たちの姿がありました。笑顔の母子と、村人たち、心強いボランティアの人たちの姿がありました。<br />
いつか、<strong>携わるみんなの、そういった形のないものが大きな力につながっていく日がくるかもしれない。</strong>そうあってほしいと思います。</p>



<p class="caption"><img src="http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily-renewal/report/045_033.jpg" alt="" />接種会場を後にする視察団へ、笑顔で手を振る人々 ©TAKASHI MORIOKA</p>

<p><strong>私たちがお金を使う瞬間、それは私たちが世界を動かしている瞬間でもあります。</strong></p>

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<div style="text-align: right;"><small>
取材・執筆・写真：鳥谷美幸（Think the Earthプロジェクト）<br />
写真・伊藤洋、森岡孝志（XINADA）<br />
協力・認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会（JCV）<br />
<a href="http://www.jcv-jp.org/" target="_blank">http://www.jcv-jp.org/</a><br />
財団法人日本ユニセフ協会<br />
<a href="http://www.unicef.or.jp" target="_blank">http://www.unicef.or.jp</a></small></div>]]>
        
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