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2017.10.18 | スタッフブログ

Think the Earth Night2017 開催レポート

松本 麻美
松本 麻美 スタッフ

SDGs(持続可能な開発目標: Sustainable Development Goals)について語り合う、Think the Earth Nightを、9月22日(金)に開催しました!

SDGsとは、経済や教育、環境などの課題を解決し、持続可能な社会を目指すために2015年9月の国連サミットで採択されました。17のゴールと、それを達成するための169のターゲットが設定され、「誰一人取り残さない」が理念として強く打ち出されています。

国連広報センター:持続可能な開発目標(SDGs)について

会の幕開けに、弊団体の理事長・水野誠一から挨拶をさせていただき、世界がサステナブルでありつづけるよう祈念して、乾杯をしました。

乾杯の後は、全員で順番に30秒ずつ自己紹介を行いました。

Think the Earthが進める「SDGs for School」

前半はトーク、後半は交流会の2本立て。前半のトークではまず、Think the Earth 理事の上田壮一から、今まさに進めているプロジェクト「SDGs for School」について説明します。

SDGs for Schoolは、2017年8月21日より、クラウドファンディングをスタートさせています。Think the Earthではこれまでに、『1秒の世界』や『いきものがたり』『グリーンパワーブック』など、子どもから大人まで読んでもらえる書籍を制作してきました。

これまで手がけてきた書籍やプログラムを通して学校と地域が繋がり、教育の場が広がりました。今回のプロジェクトでは、希望する学校にSDGsについての書籍を届けたり、フィールドワークの機会を設けたりしたいと思っています。

「自治体や企業にも学びの場を広げ、日本社会全体でサステナブルな社会をつくるための基本姿勢を、これまで以上に強めたい、と考えています」

SDGsは世界中の共通認識。日本での動向は?

次は、Think the Earthのコミュニケーションアドバイザーも務めてくださる川廷昌弘(かわてい・まさひろ)さん(株式会社博報堂/一般社団法人CEPAジャパン)が、SDGsの最新の動きについて話してくださいました。

SDGsの登場により、これまで違う文脈でサステナブルを目指していた各国のゴールが統一されましたが、その一方で、国連の公用語して日本語がなく、日本国内でのSDGs普及に言語の壁があることに危機感を覚えたと言います。

そこで、川廷さんは、所属する博報堂にて、SDGs各項目の日本語訳をはじめました。日本国内でSDGsの理解を深め、共通認識とするためのプロジェクトです。

また、日本での事例を4つ紹介してくださいました。
・「プノンペンの奇跡」と言われる北九州市上下水道局の取り組み
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/suidou/s00400009.html
・母子健康手帳の世界への波及
https://www.jica.go.jp/topics/feature/2016/161118.html
・味の素の栄養補助サプリメント、離乳食に加える「KOKO plus」
https://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/ghana/
・フードロスを飼料に変える日本フードエコロジーセンター
http://www.japan-fec.co.jp/

SDGsは内閣府の環境未来都市をはじめ、慶應義塾大学では蟹江憲史先生の取り組み、NGOでのSDGsガイドブック作成、メディアでは朝日新聞や「SDGs.TV」など、動きが広がってきているそうです。

子ども達が自発的に考える授業、SDGs解決に向かう教育とは?

話者3人目は山藤旅聞(さんとう・りょぶん)先生です。

山藤先生は現在、東京都立武蔵高等学校で教鞭を取っていらっしゃいます。担当分野は生物で、SDGsをテーマにした授業も実施されています。

先生の授業の特徴は、教科書にあることを伝えていくのではなく、生徒それぞれが自分で考えること。私も以前授業を見学しましたが、先生はテーマと疑問を投げかけるだけで、生徒が答えを自分で考えて見つけていく様子に、驚きました。生徒も生き生きとしていたのがとても印象的でした。

先生の今の活動に繋がる体験は、8年前にJICAの仕事でブータンに行った時のこと。訪れた学校の子どもたちはとても勉強熱心で、滞在先の家庭では、お客さんが来ていても、2時間も3時間も毎日机に向かっていたそうです。

子どもたちが使っている教科書は母国語ではない英語で書かれていましたが、それを毎日写経のように書き写して丸暗記。そのうちに書かれていることも理解できるようになり、知識の習得と同時に英語もペラペラに喋れるようになっているそうです。それは、ブータンの後に訪れたインドネシア、マレーシアの子どもたちも一緒でした。

その子たち全員が「海外の大学に行って、自分の国の幸せの為に何かしたい」と夢を語るのを聞いて、山籐先生は、日本での教育を、子どもたちが自発的に勉強できるようにしなければ、と思ったそうです。

そこで考えたのが、与えられた課題についてグループ単位でそれぞれ考える、教えない授業でした。自分たちで疑問をつくり、考える授業をすることで、何のために勉強するのか、なんのために生きるのか、を語れる子どもたちを増やしています。

社会と多く接点をもつ学校を育て、社会で一生懸命生きている人を沢山見せる。教員だけでない大人たちとの出会いのなかで、SDGs解決に向かう起業家、イノベーションを起こせる子どもたちが中高生から生まれるようになってほしい、と語ってくださいました。

それぞれのSDGs、日本のこれからのSDGs

後半の交流会では、参加者同士で自己紹介し合います。

今回の参加者は、いずれも、持続可能な社会に向けて活動をしている方々。それぞれが、どのような活動をしているのか、SDGsのどの項目に関わっているのか、情報交換をしました。

交流していくなかで、自然とSDGsが話題の中心になります。「どのように普及したらよいのか」「身の回りで知っている人はどれくらいいのか」などを話ましたが、なかでも印象的だったのが「SDGsのなかで特に実現の難しい項目はあるか?」「企業が取り入れやすい項目はどれか?」でした。

17の項目のうち、貧困や飢餓、環境などに対する取り組みは、企業も取り入れやすいのでは? という意見がありました。

けれども、持続可能なソリューション・ネットワーク(SDSN)が2017年7月に発表した資料によると、ジェンダー平等(ゴール5)、つくる責任つかう責任(ゴール12)、気候変動対策(ゴール13)、陸の豊かさ(ゴール15)、パートナーシップ(ゴール17)に関しては対策がまだまだ足りない様子です。

SDSN: SDG Index and Dashboards Report 2017

2030年の「誰一人取り残さない」持続可能な社会の発展に向けて、それぞれの思いを持ちつつ、会は幕を閉じました。

Think the Earthでも、SDGsの普及に向けて精力的な活動を続けて行きたいと考えています。

みんなもできることからやってみよう!

松本 麻美
松本 麻美(まつもと あさみ) スタッフ

子どものころに楽器を習うも、石川県の美術大学へ進学し彫刻を勉強。卒業後の1年を、ロンドンへの語学留学、派遣社員としての勤務などをして過ごす。編集未経験で勤務した編集プロダクションでは、移住専門雑誌や書籍などの編集、ライティングを2年間担当。そろそろやりたいと思ってきたことをしたい、と退社したところにThink the Earthと出会う。関心は映画、音楽、美術、谷戸など。新しいことを知るたびにワクワクします!