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2017.10.25 | 宮原 桃子

ドイツ発「庭シェア!」 ほったらかしの庭と家庭菜園をやりたい人をオンラインでつなぐ

創設者のレオニー・クルマンさん(左)とヴェロニカ・ ヴェントさん(右)。 レオニーさんは野生生物の管理について学び、 ガーデニングに精通。ヴェロニカさんは、森林生態学を学んだ後、 企業勤務を経て現在に至る  ©Gartenpaten

ドイツの環境都市フライブルクに住むレオニーとヴェロニカは、バルコニーもない小さなアパートに一緒に住んでいた学生時代、家庭菜園をしようと場所を探していました。しかし、市民農園は人気が高く、簡単に場所は見つかりません。一方で、地域には、家主が庭の手入れをする時間や体力がなく、ほったらかしになっている庭がたくさんあります。そこで2人はクラウドファンディングで資金を調達し、自分の庭をシェアしたい人と、家庭菜園をしたいけれど庭がない人をつなぐオンラインプラットフォーム「ガルテンパーテン(Gartenpaten)」を、2016年に立ち上げたのです。

借り手・貸し手を探している庭が、地域ごとにひと目でわかるオンラインマップ

このオンラインプラットフォームでは、「庭を探しています」「庭をシェアします」という告知を、マップ上で可視化し、地域ごとに検索することができます。関心のある告知については、個人情報を登録した上で、プラットフォーム経由で相手に連絡を取ることができます。ちょっと告知を、覗(のぞ)いてみましょう。

「こんにちは、我が家の家庭菜園をシェアしたい方を探しています! 庭はシェアするのに十分な広さがあり、花や果物、ベリーなどがあり、私は(夫と犬と一緒に)野菜やハーブを植えています」

「我が家の庭には、菜園や芝生のスペース、クルミの木々があります。庭はとても気に入っていますが、健康上の理由で庭仕事が難しくなったので、どなたか耕したり、収穫したりしたい方にシェアしたいです。畑仕事や水やりの道具はあります」

告知には庭の写真や状態、 シェアや利用の方法について情報が掲載されている

 

告知の多くは、広すぎて手入れしきれなかったり、忙しくて時間がなかったり、高齢や病気などで手入れができなくなったりするケースですが、その他にも長期の不在時に庭の手入れをしてもらう代わりに、好きに使ってよい、菜園や庭の仕事を手伝ってくれる代わりに、卵や野菜をあげるというようなオファーもあります。

「我が家の美しい庭は、約600平方メートルの広さで、山々が見える場所にあります。庭には、リンゴやさくらんぼ、あんずなどの果樹があり、イチゴやキイチゴなどを採ることもできます。それに、太陽の光いっぱいの草原で、のんびりできますよ! 私が休暇などで不在の時に、芝刈りや水やりをやってくださる方を募集します」

一方、大きな庭を持つのが難しい都会の人びとは、シェアしてくれる庭を求めています。例えばベルリンやウィーンからは、こんな告知が。多くは家庭菜園のために庭を求め、その他にも子どもの遊び場やハチを育てるためといったようなケースもあるようです。

「3歳の娘がいる家族で、シェアしてくださる庭を探しています。家の小さなベランダで野菜を植えていますが、子どもが遊んだり、耕したりできる庭があれば嬉しいです」

「以前は、田舎で広い家庭菜園を持っていました。街へ引っ越してからは庭がなく、無農薬で果物や野菜を育てたいので、庭の一部をシェアしてくれる方を探しています!」

©scrubhiker(USCdyer)

ガルテンパーテンには、現在2100人が登録しており、これまで200件以上のシェアが成立しています。お互いに費用は発生しませんが、利用の方法や頻度、庭をシェアするにあたって分担したい仕事や手伝いなど、詳細はお互いにきちんと話し合って取り決めてもらいます。これまで利用者間でのトラブルは発生していませんが、面識のない人が自宅の庭を利用することに不安を感じる人もいるかもしれません。ガルテンパーテンでは、シェアを開始するにあたってのガイドラインや契約書のひな型などを公開し、トラブル防止やリスク管理にも取り組んでいます。また、ユーザーが生態学的に多様性のある庭づくりができるよう、ガイドやアドバイスも掲載しています。 今のところドイツ語のみで展開されていることもあり、ドイツ、オーストリア、スイスが中心ですが、今後他の言語で近隣諸国への展開も計画しているそうです。

創設者の一人ヴェロニカはこう語ります。
「庭をシェアすることで、たくさんのポジティブな効果が生まれます。例えば、シェアする側とされる側の親が庭仕事をしている間、お互いの子どもたちが一緒に遊ぶようになったり、高齢者と若者が交流するきっかけとなったり、コミュニティガーデンが難民をメンバーとして募集する案件もあったりと、世代や属性を越えたさまざまな交流が生まれています。また、庭を有効に活用して、多様な生態系を育てていくことで、より良い自然環境が生まれ、自分たちで野菜や果物を育てる人が増えることで、地産地消の文化も広まります」

ガルテンパーテンの庭をシェアする試みは、単に物理的な場所をシェアするものではありません。さまざまな人びとが資源や知恵、スキルをシェアし、ご近所のつながりを深めながら、ともにより良い暮らしやコミュニティ、 自然環境をつくることにつながっています。ぜひ世界中に広まってほしいですね。


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宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールにおける生産管理に従事。現在は、企業のサステナビリティ推進を支援する「 エコネットワークス」に、コンテンツプロジェクトマネージャーとして参画。ライフワークとして、フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」を制作したほか、親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)の運営に携わる。社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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