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2017.11.27 | ささ とも

投資を引き揚げる「ダイベストメント」という選択 エシカルなお金の使い方

11月11~12日、「しあわせの経済 世界フォーラム2017」が開催されました。「経済」というと、なんだか難しい話が飛び交うイメージが浮かぶかもしれませんが、そんな心配はありません。というのも、このフォーラムの狙いは、「人間界にとっても自然界にとっても、より幸せな世界をつくろう」というシンプルなものだからです。会場では、学生、社会人、高齢者など、あらゆる世代の人たちが、「やさしい」経済の話に聞き入っていました。

12日の朝の全体会(写真提供:350.ORG Japan)

筆者は2日目の分科会のいくつかに参加してきました。「伝統文化」「スピリチュアリティ」「ローカリゼーション」「食料・農業」など、さまざまなテーマが並ぶ中で、一番興味があったのが「エシカル金融」です。

参加した分科会は「ローカル×エシカル×地球にやさしい金融」というテーマで行われました。司会は国際環境NGO、350.ORG Japan代表の古野真さん、登壇者はエシカル協会代表の末吉里花さんと英国ブリストル市の元市長のジョージ・ファーガソンさん、城南信用金庫顧問の吉原毅さん、鎌倉投信の新井和宏さん。いろいろな話がでましたが、ここでは、「地域経済を活性化させるお金の循環」と「銀行に預けたお金の行方」について取り上げたいと思います。

右から、古野さん、末吉さん、ファーガソンさん、吉原さん、新井さん

地域経済を活性化させるお金の循環

ブリストル市は、ジョージ・ファーガソンさんが市長だったときに、欧州で最も環境の改善に取り組む都市として2015年の「欧州グリーン首都賞」を授賞しました。交通やエネルギーの分野に投資し、温室効果ガスの削減や自転車利用の促進などで大きな成果を上げています。ほかに注目すべき取り組みが、地域通貨「ブリストル・ポンド」の導入です。ブリストル・ポンドは2012年に導入され、今では二つの銀行を含む800以上の企業や組織が加盟しているといいます。ファーガソンさんは、地域通貨とはそれだけで地元経済を活性化させるものではなく、一つのきっかけだと位置づけています。つまり、市民がお金の使い方を意識するようになるということです。地域通貨が財布に入っていたら、大型スーパーマーケットではなくて地元の商店で買い物したり、外食チェーンではなくて地元のレストランを利用したりして、地域内でお金の循環が生まれます。ちなみに市長の給料は地域通貨で支払われていました。


元ブリストル市長のファーガソンさん。自動車を手放して、自転車を愛用しているそうです(写真提供:350.ORG Japan)

また、ファーガソンさんは、エネルギー問題についても語ってくれました。ブリストル市では、地元の銀行が地元の再生可能エネルギー事業に投資しています。一方、近隣の市で立ち上がった原子力発電所の建設プロジェクトでは、フランスの企業が原発を建設し、中国の銀行が融資し、英国政府がリターンを保証しているそうです。もし、地元政府にどのエネルギー電源を使うかを決定する力があったら、地元地域が安全なシステムを手に入れられるというわけです。

銀行に預けたお金の行方

ブリストル市の地元の銀行は市民から預かったお金を再生可能エネルギーの普及に役立てています。末吉さんは、「銀行が私たちの預金をどのように利用しているのかについて関心を持っているか?」という疑問を投げかけました。

銀行は顧客から預かったお金をさまざまな企業に投融資しています。350.ORG Japanが日本の銀行を調査したところ、エシカルに配慮して投融資を行う銀行を見つけるのに苦労したといいます。そしてエネルギー分野では、地球温暖化を加速させている化石燃料関連企業や安全な暮らしを危険にさらす原発関連企業への投融資が確認されなかった金融機関は45社ありました。


エシカル協会代表の末吉さん。エシカル金融についてわかりやすい言葉で伝えてくれました(写真提供:350.ORG Japan)

投融資の業務以外にも、銀行がどのようなエシカルな活動をしているかも知りたいものです。2011年の福島第一原発事故を受けて、当時同信用金庫の理事長だった吉原さんは、真っ先に原発を止めるべきだと訴えました。しかし、利権がからみ、いずれの業界でも賛同者はほとんどいなかったそうです。


脱原発、再生可能エネルギー推進の大切さを熱心に語る城南信用金庫顧問の吉原毅さん(写真提供:350.ORG Japan)

新井さんは金融機関の立場から、金融機関は業務に透明性をもたせるべきだと話しました。どこに投資しているかを見える化し、顧客が十分な情報を得た上で金融機関を選択できるようにする、というものです。


「自分のお金が社会に役立つ、意義のあるものでなければならない」と訴える鎌倉投信の新井和宏さん(写真提供:350.ORG Japan)

エシカル消費の活動では、十分な情報を得て、私たちは商品を選択することができます。エシカル金融で私たちができることは、エシカルの時代の流れに逆行している銀行に預金しない、あるいは預金を引き揚げることです。これが、化石燃料・原発関連企業からの投融資の引き揚げ(「投資<investment>」の反対を意味する「ダイベストメント(divestment)と呼ばれる活動)につながり、ひいては気候変動対策を推し進める一助となります。

国際環境NGO、350.ORGの日本支部350Japanでは、「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンを展開中。一人でもできる身近な環境活動として「ダイベストメント」を提案しています。これは化石燃料や原発にお金を流す銀行から預金を引き揚げ(ダイベスト)、「地球にやさしい銀行」へと口座を乗り換えることです。エシカルな銀行業務を求める消費者を増やし、大手銀行に地球環境に配慮した行動を求めています。「パリ協定」が採択されてから2周年記念の12月12日までに、100人と5団体によるダイベストメントを目指し、複数の場所でイベントを開催しています。

どこにお金を使うか、どこにお金を預けるか。エシカルな選択をするためには、「もっと情報が必要で、そのためには一人ひとりがもっと声を上げなくてはならない」という末吉さんの言葉が印象に残りました。


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ささ とも
ささ とも(ささ とも) 地球リポーター

神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。

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