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2017.09.05 | ささ とも

沖縄のサンゴが危ない! 海水温上昇で大規模白化が続く


Ⓒささとも

沖縄の海と言えば、青い空の下にきらめく碧(あお)い海、どこまでも連なる色とりどりのサンゴ礁。この美しい自然に異変が起きています。昨年の夏に、大規模なサンゴの白化現象が起きた八重山諸島の周辺海域では今年になっても回復が見られず、過去最大の被害となる恐れが出てきました。

昨年の夏にサンゴ礁がどれほどの被害を受けたのか。環境省が昨年10~11月に行ったサンゴ白化現象の調査によると、石垣島と西表島の間にある国内最大のサンゴ礁「石西礁湖(せきせいしょうこ)」と西表島周辺海域では生きたサンゴの9割が白化し、平均で5割が死滅していることが確認されました。これは、1998年の大規模白化現象を上回る被害だといいます。今年6~7月に補足調査を実施したところ、石西礁湖では生きたサンゴの面積の割合が1年前と比べて30%から13%に減少していました。西表島西部周辺の海域では大幅な面積の減少は見られなかったものの、4割が白化現象にあることがわかりました。つまり昨年に白化したサンゴが冬季に回復していないということになります。


白化したサンゴ Creative Commons,Some Rights Reserved, Photo by Nicolas Ory

サンゴの白化状態が続くとサンゴの死につながります。では、サンゴの白化はどうして起きるのでしょうか。サンゴは、イソギンチャクと同じ腔腸(こうちょう)動物の仲間で、褐虫藻(かっちゅうそう)と呼ばれる植物プランクトンと共生しています。褐虫藻が二酸化炭素を吸収して光合成を行い、酸素と栄養分をサンゴが吸収し、放出した二酸化炭素を今度は褐虫藻に供給しているのです。高水温が続くと、褐虫藻はサンゴから抜け出てしまいます。鮮やかな色をしている褐虫藻がいなくなることでサンゴが白く見えるというわけです。この海域では2016年の6月から8月にかけて海水温が30度を超す日が観測されました。環境省は、深刻な白化現象が起こった原因は高水温である、と分析しています。

今年8月、筆者は実際に海中の様子を見てきました。訪れたのは西表島西部にある崎山湾。まず、驚いたのは海水温です。真夏の海でウェットスーツを着ていても、30分以上水中にいると体が冷えてくるものですが、今回はまったく感じませんでした。それもそのはず、海水温は20メートルの深さでも29度もあったのです。サンゴが白化すると言われる水温でした。1996年と2013年に同じポイントを潜った時の記録を見ると、いずれも海水温は28度だったので、ここは比較的水温が高い海域なのかもしれません。しかし、昨年は特別でした。台風が9月まで接近しなかったため、海水が撹拌(かくはん)されず、夏に高水温が続いたのです。今年も海水温を下げるような大型台風がまだ接近していません。世界のサンゴ白化の危険度を知らせている米国海洋大気庁(NOAA)の「Coral Reef Watch」では8月末の時点で、琉球諸島南部でサンゴが白化するリスクが2番目に高い「レベル1」となっています。

地元のダイビングガイドの話によると、周辺の潮の流れが緩やかなダイビングポイントではほとんどのサンゴ礁が白化していて、さらに悪いことに白化したサンゴに藻がついて回復できない箇所が多く見られるそうです。今回潜ったポイントは潮の流れが速いため、元気なサンゴ礁が残っていて、カラフルな熱帯魚と一緒に目を楽しませてくれました。けれど、ところどころで表面が焦げ茶色の藻で覆われたサンゴが見られました。こうした箇所では魚の種類も数もかなり少なくなっていました。


ⒸK.Sasaki 元気なサンゴには魚の種類も数も多い

サンゴを保護するために、このようなモニタリング調査のほか、サンゴの植え付けなどの活動が行われています。直接活動に参加できなくても、商品を購入して代金の一部が活動に役立てられる取り組みもあります。サンゴ礁は海の生態系を維持するためになくてはならない存在。海に囲まれた島国で海からの恩恵を享受している私たちの手で海の環境を守っていきたいものです。

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ささ とも
ささ とも(ささ とも) 地球リポーター

神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。

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