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赤と青の線だけで地球温暖化を可視化 「クライメート・ストライプ」が世界を動かす
伝え方の工夫によって、それまでピンとこなかった話が「ああ、そうか! なるほど!」とわかることがあります。科学コミュニケーションとは、専門家でない、一般の人たちに科学の面白さや意義をわかりやすく伝え、その課題が社会にもたらす影響などを一緒に考えながら科学への関心や理解を深める活動のことです。研究と社会の橋渡しとなる科学コミュニケーションの重要性は年々高まっています。
イギリス・レディング大学の気候科学者であるエド・ホーキンス教授が2018年に開発した「クライメート・ストライプ」は、その一例かもしれません。赤と青のグラデーションが美しいストライプは、一見デザインやアートのようにも見えますが、実は1850年から現在までの年間平均気温を色に置き換えたもの。青の縦縞は平均気温が低い年、赤の縦縞は高い年で、右端の現在に近づくほど急激に平均気温が上昇していることがわかります。
赤と青の濃淡で1850年から2025年の平均気温を基準期間(1961〜2010年)と比べた偏差を示すクライメート・ストライプ(世界全体版)。同僚が気象データをカラフルなストライプで表現した毛布を編んでいたことから着想を得たとホーキンス教授気候変動はデータや計算に基づく科学者たちの予測から、人間活動由来の温室効果ガス排出量と気温上昇の相関性を理解し、問題に向き合う必要がありますが、研究者がまとめたグラフやデータをそのまま見て、腑に落ちるリテラシーのある人は限られてしまいます。その点、クライメート・ストライプは科学的に根拠のある資料でありながら、メモリや数値は一切入れず、赤と青のグラデーションのみでビジュアル化。専門的なことはわからなくともそのメッセージを直感的に理解することができるのです。
イギリスのフェアトレードブランドTAMMAMは、クライメート・ストライプをさまざまなスタイルに落とし込み、話題を集めた
クライメート・ストライプは気候変動啓発のコミュニケーションツールとして広まり、さまざまな業界でカスタマイズされています。イギリスではロンドンファッションウイークのショーやサッカーチーム、レディングFCのユニフォーム、ライブイベントのディスプレイ、バスや車のラッピングデザインなどに幅広く採用されました。
世界的にも世界気象機関(WMO)など国連の専門機関や気象学・気候科学の研究者がクライメート・ストライプをアピール。気象予報士がクライメート・ストライプ柄のネクタイをつけて番組に出演したり、日本でもNHKの地方局で気象予報士が紹介した事例があります。ビジネス誌「エコノミスト」やブラジルの新聞を始め、メディアにも多く取り上げられ、社会的なインパクトを与えたデータビジュアルは、ニューヨークのMOMAでも展示されました。
レディング大のサイトより。左に国や地域を入力すると、身近な地域のストライプが作成できる。写真は東京のクライメート・ストライプホーキンス教授はクライメート・ストライプのサイトを2019年に開設し、調べてみたい国と地域を入力すれば、誰でもストライプを作成できるようにしました。開設1週間で約180カ国からアクセスが集まり、ダウンロード数は100万件を超えたそうです。簡単に作成できるので、ぜひアクセスして身近な地域のストライプをつくってみてください。
作成したストライプを#ShowYourStripesのハッシュダグをつけてSNSで拡散するなどして、気候変動啓発を促す国際キャンペーン「ショウ・ユア・ストライプス・デー」は夏至の6月21日近辺に行われていますが、ホーキンス教授はその日に限らず、「経済や健康、政治と同じように、気候変動の話題を毎日の会話に取り入れるきっかけにしてほしい」と言います。
シンプルに温暖化が伝わり、さまざまな分野の人たちの創造力をもかき立てるクライメート・ストライプ。ホーキンス教授は2025年5月、アメリカ気象学会の学術誌に発表した記事の中で、地表の気温だけでなく、深海から成層圏まで範囲を広げてビジュアル化した拡張版クライメート・ストライプや、今後数十年の温室効果ガスの排出シナリオを反映した「警告ストライプ」などを紹介。同じ手法が、生物多様性の喪失や海洋酸性化などを伝える際にも応用できると呼びかけています。
地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!









