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2022.06.27 | スタッフブログ

日本の森を守る仕事〜宮城県の林業・林業種苗の現場をめぐる二日間〜

笹尾 実和子
笹尾 実和子 広報

6月は環境月間。6月5日の「環境の日」を中心とする1ヶ月間は、環境保全の重要性を認識し、行動のきっかけをつくることを目的に全国各地で様々な取り組みが行われています。国連では日本からの提案で6月5日を「世界環境デー」と定めたそうです。(みなさん、知ってましたか?)今回はそんな環境月間にぴったりのお誘いが友人からあり、林業・林業種苗に興味・関心のある6名で宮城県南部の林業・林業種苗の視察研修会に参加してきました!

最初のプログラムは尚絅大学で実施されている里山プロジェクトに参加し、現地ボランティアの方たちと一緒にキャンパス周辺の山で枝を拾い、機械に入れてチップ状に粉砕。車いすの方も森に入れるようにするためのチップロードをみんなで作ります。曲がった枝を入れると機械が止まってしまうので、枝をきれいに整える必要があります。そこで枝を集める人、整える人、機械に入れる人、チップを拾って運ぶ人、などたくさんの人の助けが必要です。さらに枯れ枝の枝払いも体験もさせてもらいました。

大学敷地内にある尚絅の森を歩く参加者

枝はまっすぐになるようにナイフで整えます

枝を入れてチップに 整えた枝を樹木粉砕チッパーに入れます。大きな音に少しびっくりしますが、子どもも一緒に作業ができました。

ウッドチップの出来上がり。これを道に敷き詰めて、チップロードをつくりました。

ひと作業を終えて午後は植林の現場見学へ。現場を案内してくれたのは、坂元植林の林業部長 大沼好則さんです。坂元植林は林業から住宅完成後のアフターメンテナンス、家守りまですべての過程を自社で行い、木の家づくりを一貫体制で取り組んでいる全国でも少ない工務店です。
健全な森づくりのためには、ちゃんと苗木が育つように下層部に生える雑草を除去(下刈り)したり、木を間引くための伐採(間伐)を定期的に行う必要があります。「下刈りをしないと、ツルが樹木を締め付けて、苦しいよーという声が聞こえてきます」「間伐しないと樹木にストレスがかかります。ぼくたちも人がいっぱいいるところはストレスがかかるでしょう?」「樹木は植えられた場所で運命が決まってしまうんです。人間みたいには歩けないから」と話す大沼さん。声なき樹木に寄り添って、人と同じように大切向き合っているんだなぁと感じました。

20年生林の様子。光がとどく明るい育林現場だ(要確認)

坂本植林が管理する13年生林、20年生林、65年生林、85年生林、それぞれの成長過程を見せていただきました。ここの森は2メートルごとに間隔をあけて、森に光が入るように定期的に整備・間伐をしています。作業道路をつくって、機械が入れるようにすることも大切です。参加者みんなが帰り道「この木は20年ぐらいかな」と判断できるようになっていて、少しだけ森林に対する理解が深まったように思いました。

65年生林。幹も太く、どっしりと地に足がついたたくましい姿。(要確認)

さらに今度は場所を移動して自然が残る七ヶ宿の森へ。NPO法人水守の郷・七ヶ宿事務局長の海藤節生さんに案内してもらいました。「水守の郷」と呼ばれる七ヶ宿には県内一の大きさを誇る「七ヶ宿ダム」があります。宮城県の約80%の人たちが七ヶ宿ダムの水を飲料水として利用している重要な水がめです。この七ヶ宿ダムの近くにあるのが広葉樹植林地「コープの森」です。ここは1ヶ月前に植林したばかりなのですが、風や小鳥が運んだ種で発芽した苗(実生)と植林した苗との見分けができない状態でした。海藤さんは今後、どのように管理していくのか少し心配だと話します。

七ヶ宿の森の現場を詳しく案内してくれた海藤節生さん

「七ヶ宿ダム」近くにあるコープの森。ダムを守るためにも適切な森林管理が求められる。

その他にも七ヶ宿町内にある別の伐採跡地にも案内してもらいました。伐採したままの状態と次の作業も考えて整備された跡地、プロの目で見ればその差は歴然です。「伐採や植林するためには国が補助金を出します。例えばドローンで苗を運ぶ、なんてかっこいいことをしているように見えるけど、植える時だけ、です。伐採、植林、そして継続的な管理が森を育てるためにはとても重要です。植えた後のことまで考えてほしい」と、海藤さんは現状の問題点を指摘します。山から運び出す運搬費用が高いので、間伐・下刈り後はそのまま放置されてしまうことも多いのだとか。切った草木が自然に還るまでには10年かかります。森を育てるためには10年、20年、100年と長い年月が必要です。計画的に森を育てていかないと、間伐した樹木(ゴミ)や下刈りした雑草が流れ、土砂流出や豪雨災害に繋がる可能性があります。私自身、これまで何度か植林は体験していましたが、植林した苗がその後どうなっているのか知る機会はほとんどありませんでした。1回植えただけではただの自己満足に終わってしまうのだと、深く反省しました。

立派に育った樹木たち。ここまで成長するのには、長い年月が必要です。

あまり注目されていませんが、2024年から森林環境税が国民一人ひとりから1000円徴収されることになります。森を育てるためには、時間もお金も必要です。今回の研修に参加して、現場にはお金も人手も足りていないことがよくわかりました。
みなさんは、林業に対してどんなイメージがありますか? 日本の森林率は約66%と非常に高く、自然豊かなイメージのあるカナダでも森林率は約38%。比べるとそのすごさがよくわかります。(森林林業白書より)この数字をみれば、日本での森林整備の重要性を感じるはずです。しかし、現在林業を行う人は、一番盛んだった60年前の52万人の7分の1に減っています。さらに林業従事者の高齢化、若年層の林業離れから後継者問題があります。災害防止、地球温暖化防止のためにもこの森林環境税が有効に使われることを期待したいです。林業の歴史を簡単におさらいしたい方はこちら

最後のフィールドワークの場所は海藤さんが管理する森で間伐体験&夕食を食べながら林業に関するディスカッションタイムです。間伐体験では、チェンソーなど簡単に道具の説明を受け、いざ実践!比較的細い木を選んで、チェーンソーで切込みを入れてもらったところにのこぎりを動かしていきます。が、、、、全くすすみません。涙 大汗をかいて木に杭をトンカチで打ち込むこと数分、ようやくバギバキ!という音がして木が倒れてくれました。たった1本の細い木を切るだけでも大仕事です。

のこぎりで木を切る。写真を見返すとへっぴり腰の自分に驚く。

ようやく倒れた〜!の瞬間。隣の太い幹を切るには一体どれだけ時間がかかるんだろう・・・・

そしてお待ちかねの夕食タイム。友人のお母さんの手作りカレーを海藤さんの森でいただきました。(みんなと外で食べるごはんは美味しいー!)ディスカッションには、海藤さんに加え、今回の研修に同行いただいた宮城県林業振興班長の前山恵美さんと元宮城県林業職員の水戸辺栄三郎さんにも参加いただきました。大きな話題になったのが、民有林の問題です。林野庁をはじめ国が管理する国有林は国土の3割。『 残り7割は民有林。民有林は,都道府県や市町村が所有する「公有林(町有林・県有林)」と個人や企業が所有する「私有林」になります。』(森林・林業学習館を参考)山の整備をしたくても、持ち主がわからない場合誰も手が出せません。また維持・管理にお金がかかるので放置されたままの山が日本のあちこちにあります。木材の需要をつくることが今の林業の大きな課題です。ディスカッションでは、最近では自伐型林業が注目されていること、キャンプブームで森や山に関心を持つ人が増えたこと、などいい流れもあります。また森林整備で吸収したCO2を企業がカーボン・オフセットで購入する、というニーズもあるはずです。改めて森の価値について考える一日となりました。

海藤さん、水戸辺さん、研修参加者みんなで記念撮影

翌日は林業には欠かせない種苗業を営む(有)グリーンプランナー 太田苗園の太田清隆さんにお話をお聞きしました。植林をする時、私たちは種ではなく、苗を植えますよね?この苗を育てているのは種苗業の人たちです。太田さんは主に植林用の樹木である杉、ひのき、黒松、赤松などの苗木を宮城県蔵王町で生産されています。今回は特別にその現場にお邪魔させていただきました。

(有)グリーンプランナー 太田苗園の太田清隆さん。植物への愛情とこだわりを持った林業種苗業50年のプロ!です。

林野庁では植付作業のコスト低減や苗木生産の効率化を目指して、コンテナ苗(根鉢付き苗)の活用を推進しています。太田さんはコンテナの容器に直接種を蒔きますが、通常は畑で発芽したものからさらにいいものを選別してコンテナに移植することが多いそうです。コンテナ苗はまだ新しい技術で、普通苗(露地栽培)の方が安く、運びやすいという利点もあることから、普通苗が好まれる場合も。宮城県では普通苗からコンテナ苗に徐々に切り替わっている段階のようです。

きれいに手入れされた多種多様の苗が育つ太田苗園。あいにくの雨でしたが、緑に囲まれて、とても気持ちのいい場所でした。

太田さんは「いい苗木とはどんな苗木でしょう?」と参加者に問いかけます。
例えば、薬剤を使えば苗木はよく育ちます。でも自然界に薬剤はないので、過保護な環境で育てた苗は植えた後ダメになってしまうことも。ビニールハウスでよく育った苗を外に出したら色が変わってた、ということもあり、太田さんはなるべく自然に近い環境での生育を心がけているそうです。「いい苗の定義は人によって違うもの。でも、私の苗は見た目が悪くても山でちゃんと自力で育つ強い苗です。その分失敗することもあるけれど」と笑って話す太田さん。大量生産ではなく品質にこだわり、宮城の土地にあった植物を選び、ありのままの姿を受け入れながら苗作りをする太田さんの考え方はとても共感できるし、かっこいいと思いました。太田さんのお話を一緒にツアーに参加した澤藤祐輝さんが動画でまとめてくれました。種苗業についてさらに詳しい話を聞きたい方はぜひ動画もご覧ください。動画はこちら

大切に育てられた杉の1年生。今は花粉が少ない少花粉の杉の苗があるそうです(要確認)

今回の研修に参加して、これまで林業や日本の森の問題について、自分ごととしてちゃんと考えてなかったんだな、と思い知らされました。海藤さんが「まずは森に来てほしい。そしたら変わるから」と言っていましたが、現場に行くことで、初めて自分に何ができるだろう?と真剣に考えることができました。そして今、林業に関わっている人たちの努力で美しい日本の山が守られていることに感謝する気持ちと、それが守れなくなりつつある現実にも目を向ける機会となりました。

お話をしてくださったみなさんは「樹木(植物)の気持ちを考えたらこう感じるでしょう?」と人に例えることが多く、植物や樹木への愛情の深さを感じました。まずは植物や樹木への興味・関心を持つことが、日本の森を守る第一歩かもしれません。

今、私の家には太田さんからゆずっていただいた苗があります。自分はコロナ禍になって初めて植物を育てるようになったのですが、苗木たちはどこからやってきて、誰が育てたのか、これまで考えたことがありませんでした。東京に戻れば、どうしても森への想像力は低下します。でも、自宅に苗木たちがいることで森との接点が保たれるような感覚があります。「森に行くことと、自宅でも気軽に国産の苗木を育てることがセットになったサービスは作れないだろうか。さらにそれが山の保全に繋がるような仕組みがあればいいよね!」そんなことを帰りの車で参加者みんなと話していました。何ができるかな?何かしたい!そんな気持ちになる二日間の研修会。まずはうちに来たサンショウ、ニシキギ、ネムノキの苗を枯らさないように、参加者のみなさんと定期報告をしながら大切に育てていきたいと思います。

(写真:長沼 茂希)

笹尾 実和子
笹尾 実和子 広報

夏生まれの横浜育ち。新卒で人材派遣の会社に3年勤め、行く先を決めず退社。その後の一人インド旅で全てをリセットし、小さくも面白い会社でインターンを始めたことで仕事観が変わる。そんな中Think the Earthと出会い、ここなら小学校からの夢が叶う!と気持ちひとつで飛び込み入社。現在はひとり広報として奮闘中。話すよりも聞く方が得意。「お腹すいた〜」と「ダイエットしなきゃ!」が口癖。笑