2017年03月08日

「ファシリテーショングラフィック〜議論の本質を可視化する」[セミナー&サロン]

セミナー&サロン

今年度のセミサロ第2回目は、Tokyo Graphic Recorderとしての活動を軸に、ファシリテーショングラフィック(以下ファシグラ)をされている清水淳子さんをゲストにお迎えし、清水さんのお話とワークショップの2本立てで開催しました。どんなお話が聞けるのか、どんなワークショップになるのか、楽しみです!

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清水さんは現在、ヤフー株式会社でUXデザイナーとして働きながら、カンファレンスや企業の戦略会議での議論の可視化を行っています。

「議論をグラフィックで可視化すると、議論が詰まったときに、話を進めるためのヒントが見つかるようになるんですよ。記録をすることで、場の議論が活性化します。」と言いながら見せてくれたのは、清水さんが実際に議論の中でグラフィックを描いている映像。みるみるうちに、カラフルな図や文字が壁に描き出されていきます。

Androidホーム画面アプリ『Widgets』開発チームによるミーティングの様子

議論を聞きながらも、可愛らしい絵とわかりやすい図解を描いていく姿に会場からは「すごい!」という感嘆の声。果たして、私たちも清水さんと同じようなことをできるのでしょうか?



グラフィックは文字や言葉に匹敵するコミュニケーションツール

清水さんが議論を可視化する活動を始めたきっかけは、とても身近な問題を解決することでした。

「多摩美術大学のデザイン学科を卒業し、ゲームやプロダクト(工業製品)、アプリのUX(ユーザーエクスペリエンス:利用者がサービスや製品を使うことで得られる体験のこと)をデザインしてきたなかで、どの業務にも共通するものがあることに気づきました」

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共通するものとは、"会話、対話、議論"です。

「優秀な人が集まってもうまく進まない会議では、この3つがスムーズにいっていなかったんですね。それを改善するにはどうしたらいいだろう? と悩みました。こんがらがった会議中に『この方法しかない!』と思ってグラフィックで議論をまとめたら、スルスル進んだんです」

清水さんが最近出版した書籍『Graphic Recorder --議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』には、清水さんによる可愛い絵とともに、その手法がわかりやすくまとめられています。


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『Graphic Recorder --議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』
ビー・エヌ・エヌ新社
(書影をクリックで書籍のページに飛びます)

清水さんの活躍は、まちづくりの場でのブレストやシンポジウムでの登壇者の発言を可視化したり、パーティーで一つの問いに対する来場者の意見をまとめたり、と議論の場にとどまりません。

「大人が仕事の場でグラフィックを描くのは恥ずかしい感じるかもしれません。でも、地図を描いて道を説明するのも、グラフィックです。グラフィックを描くことは、スピーチなどに匹敵する立派なコミュニケーションツールです。今後、国語、英語、グラフィック言語のように、学校の科目の一つになっているかもしれませんね。」



初心者がファシグラをする時のための心得

今回のセミサロでは、参加者から多数の質問がありました。そのうちのいくつかをピックアップします。

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来場者:実際にファシグラをするときに、きちんと描ける気がしないのですが......。

清水さん:私のこれまでを振り返ってみると、段階があったように思います。最初は話についていくのが精一杯でした。それに慣れると、対話のなかから似ている単語を抜き出せるようになります。単語のグルーピングができるようになると、マトリクス化などグラフィックを構造化して描けるようになりました。初めのほうはスピードについていくのが難しいですが、慣れることで技術が進化していきます。まずは試してみてください。

来場者:議論の内容を書き間違えたり、自分の意見を書いてしまったりしたときのフォローはどうしていますか?

清水さん:そもそも対話の内容は自分の脳で情報を整理するので、どうしても主観が入ってしまいます。自分が描いたことは基本的に主観的な解釈であり、間違っている可能性もある、という前提を持ちましょう。間違いをや勘違いを防ぐためには、描いたグラフィックを常に出席者みんなの見える位置に置き、違うところは指摘してもらったり、「これで合ってますか」と聞いたりするとよいですよ。

来場者:グラフィックの内容をフィードバックするタイミングにコツはありますか?

清水さん:タイミングは全部で3つあります。その1・議論が行き詰まって10秒ぐらい沈黙がきたときに「ちょっと振り返ってみましょうか」と言ってみる。その2・会議が2/3に来た時に「今日はこの方向でよいですか?」と聞いてみる。その3・ファシリテーターの人に「進行に困ったらこっちを向いてもらえば、フィードバックします」と言うこともあります。3つ目は上級ですね。

photo1-1.jpg(提供:清水淳子)

来場者:グラフィックとして形に残ったことに納得のいかない人がいたときに、そのまま残ったこと前提で話が終わってしまうことに抵抗を覚えるとおもうのですが、何か対策されていますか?

清水さん:グラフィックには、人々の理解を促す良いパワーがあると同時に、暴力になりうる可能性も潜んでると、私は常に気をつけています。というのも、もし仮に本人の発言を大げさに解釈してしまったものがグラフィックとして残った時に、描いたことが本人の発言よりも影響力を持つこともありえます。しかも当の本人は気が付いても指摘しにくいということもあると思います。なので最近は参加者に3色のシールを配って、いいねとおもうところ、よくわからないところ、などの役割をつけて、ペタペタ貼ってもらっています。そうすると、参加者の本音が見えるようになって、議論がさらに発展することがあるんです。結構おすすめな方法ですよ!

C-3-2.jpg(提供:清水淳子)



日常的な問題の解決策をみんなで考えよう!

清水さんの公演の後は、20分ほどのワークショップを行います。

清水さんによる人物の描き方のレクチャーを受け、円卓型のコミュニケーションボード「えんたくん」に、それぞれの日常の悩みを書き込んでいきます。

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使うのは、3色のペン。以下のように使い分けます。

1、どんな場所でどんな課題がるのか考えよう(黒いペン)
2、それはなぜ起きているのか、原因を考えよう(赤いペン)
3、どういう風に議論を可視化すれば、それが解決するのか考えよう(青いペン)

「会議が連絡の場になっている」「議題内容をだれも話そうとしない」「問題点を伝えようとしない」「話す人が固定している」「どこで何が決定したのかわからない」という、皆さんの悩みが書き込まれていきます。すでに人物の描き方をマスターしている方は、内容にそった絵を描いています。


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描いたものをみんなでぐるぐるまわして、他のひとのアイディアにアンダーラインを引いたり、似ている意見があったら線で繋いだりして、解決点をさぐります。

和気あいあいとした雰囲気のなか、7グループ中2グループが、それぞれの解決までたどり着けました。話し合った後は、皆さん、スッキリした様子で「今日出てきた解決方法を、早速ためしてみます!」という嬉しい声も。

皆さんおつかれさまでした!

グラフィックレコードの研究 / Tokyo Graphic Recorder 清水 淳子 日本デザイン学会 第62回研究発表大会 2015/06/14 

写真提供:萩原楽太郎


(まつもと)

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