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音楽と女子教育への弾圧乗り越え
アフガン初の女性オーケストラがダボスで演奏

2017.02.16 平澤 直子

Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by World Economic Forum

先月17日から20日にかけてスイスのダボスで行われた世界経済フォーラムの年次総会、通称ダボス会議で、アフガニスタン初の女性のみで構成されたオーケストラ「Zohra」が演奏をし、会場は一風変わった音楽に包まれました。Zohraは2014年、アフガニスタン唯一の音楽学校である国立音楽学院の生徒が自身の発案で結成したオーケストラで、バイオリンやピアノといった西洋楽器のほかに、ラバブ などの伝統楽器も含む、非常に珍しい楽団です。 



とはいえ、世界会議で民族楽器の演奏が行われるのは、それほど珍しいことではないのでは、と考える人も多いでしょう。しかしZohraの団員である13歳から20歳の若い女性たちにとって、このコンサートを成功させること、それ以前に、毎日音楽を奏でることは、命がけのことなのです。

1996年から2001年の間、アフガニスタンを支配していたタリバンは、音楽を含む娯楽と女子の教育の両方を禁止していました。政権が倒れたあとも自爆テロや襲撃の絶えない不安定なアフガニスタンでは、タリバンの規律は根強く残っており、音楽と女子教育というダブルのタブーを破ろうとする彼女たちへの風当たりは想像を絶するものがあります。

アフガニスタン初の女性指揮者となった団員のZarifa Adibaさん(18)とNegina Khapolwakさん(19)はそれぞれ、その恐怖を語りました。「祖母は私を音楽学校にやるなら親子の縁を切ると父に言った」「おじは私を見つけたら殺す、と言った。一族の恥だと」「帰国するのが怖い」。音楽を悪とするタリバン支配下で暮らしてきた親世代、祖父母世代の考えを変えるのはとても難しいと二人は言います。「どうしたら一族の皆に音楽は愛と平和なのだと伝えられるのでしょう?」「変わるには、一世代分の時間が必要です」

Zarifaさん
Copyright by World Economic Forum / Sandra Blaser

実際、Zohraが属する音楽学校の校長で、ダボス会議に彼女らを率いてきたAhmad Sarmastさん(57)は2014年、コンサート会場で自爆テロに遭い、重症を負いました。犯人は若干17歳だったそうです。また昨年夏には学校が襲撃され、クラスメートが亡くなりました。それでも、「生きていかなくてはならない」とZarifaさんは言います。

ダボス会議での演奏の後、彼女たちはヨーロッパツアーを行っています。どうか、ツアーに参加した人やこの動画を見たたくさんの人たちが、彼女たちの演奏の裏にある命がけの努力と恐怖を知り、彼女たちに手を差し伸べてくれますように。そう願ってやみません。



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アフガニスタン (アジア/オセアニア

平澤 直子