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2017.10.03 | 宮原 桃子

子どもたちにすすめたい絵本 ~Vol.2:世界の貧困と環境~

絵本や本は、子どもの成長とともにあります。子育ての中で、子どもにせがまれて同じ絵本をひたすら何回も読んだり、夜に子どもと一緒に眠りそうになりながら、読み聞かせたりした経験がある方も多いでしょう。地球のこと、世界のこと、自分たちの暮らしのこと…社会にまつわるさまざまなことを考えるきっかけは、小さな子ども向けの絵本の中にもたくさんあります。説明的な情報やデータではなく、おはなしの世界を通してさまざまな視点や気づきを持てるのも、絵本の醍醐味です。

Vol.1「平和と多様性」に引き続き、今回は「世界の貧困と環境」をテーマにご紹介します。

【テーマ3:世界の貧困と経済格差】

『そのこ』 詩 谷川俊太郎/絵 塚本やすし (晶文社)

チョコレートの原料であるカカオは、アフリカや中南米などの国ぐにで作られています。子どもたちが働かされているカカオ農園も、たくさんあります。この絵本では、学校へ行って遊んでゲームも買える「自分」が、カカオ農園で働く 「その子」を想う姿が、谷川俊太郎さんの詩で描かれています。世界には、貧しさの中さまざまな環境で暮らす人びとがいることを、子どもの姿を通じて気づくことができる一冊です。

『ムクリのにじいろTシャツ』 作 宮原桃子/絵 中澤あや子 (個人出版)

大きな少年ムクリは、虹色のTシャツを作る旅に出ます。Tシャツができるまでにいろいろな人に出会い、ムクリはたくさんのことを知ります。コットンと農薬のこと、布やTシャツを作る工場のこと、そこで働く子どもたちのこと。人や畑を酷使する「まっくろ工場」と、人や畑にやさしい「まっしろ工場」のどちらにTシャツを注文するのか、ムクリの選択が社会を大きく変えていきます。

貧しさから過酷な状況で働かざるをえない人びとや子どもたちを描きながら、私たちの日々の消費とのつながり、そして私たちは何を変えていけるのかを伝えています。フェアトレード(公正な貿易)について学べる絵本です。

【テーマ4:環境】

『ぞうさん、どこにいるの?』 作 バルー/訳 柳田邦男 (光村教育図書)

タイトルのとおり、絵の中にいるぞうとオウム、へびを見つけだすシンプルな絵本です。言葉はほとんどありません。読者の子どもたちは、ただ楽しくぞうたちを見つけることに目を輝かせ、一生懸命になります。しかし、なぜかページをめくるごとに、簡単に見つけられるようになっていきます。その時、子どもたちは自然に「おや? どうしてだろう?」と視点を変えて、立ち止まります。それはまるで、現実の世界で大切な森や自然が失われていたことに、私たちがハッと気づく姿に重なります。失われていくアマゾンの熱帯雨林の危機を訴えたいと、描かれたこの絵本。ポップでかわいい絵と意表を突くしかけが、見事です。

『ゆめのおはなし』 絵と文 クリス・ヴァン・オールズバーグ/訳 さいごうようこ
(徳間書店)

道端でゴミをポイ捨てしたり、つい面倒でゴミの分別もやらなかったりする少年ウォルター。ある夜ウォルターは、夢の中でベッドごと未来の世界へ飛んでいきます。便利で豊かだと信じていた未来。しかし、空飛ぶベッドからウォルターが見たものは、ゴミに埋もれた家、切り倒される大木、魚がほとんど釣れない海、汚れた空気…。夢から現実に戻ったウォルターは、どうしたでしょうか? 未来は変えられるのでしょうか?

幻想的な絵とストーリーに引き込まれながら、汚れていく地球の姿にドキリとする現実感。しかし最後は、私たちに前向きなメッセージを伝えてくれる絵本です。

『いっしょに きしゃに のせてって!』 作 ジョン・バーニンガム/訳 長田弘
(瑞雲舎)

汽車が大好きな男の子が、夢の中で機関士に。その汽車には、ぞうやあざらし、タンチョウヅル、トラなどさまざまな動物が、次々と乗り込んできます。人間たちのせいで暮らしていけなくなったからです。夢の汽車は、動物たちを乗せてどこへ行くのでしょうか? 夢と現実が錯綜したおはなしの中で、私たち人間の身勝手な行動が、生態系にどんな影響を与えているのかを考えさせられます。

『山に木を植えました』 作 スギヤマカナヨ/監修 畠山重篤 (講談社)

「山に木を植えました。木は、えだをのばし、葉をしげらせ、やがて、実をつけます」というところから始まる物語。木の実や落ち葉、腐葉土がさまざまな命を育み、森の土にしみこんだ栄養たっぷりの雨水が、川や田んぼ、そして海の命を育む。そして、私たち人間はこうしたつながりによって生かされている。そんな循環を、ワクワクするような絵や面白いページ構成で伝えています。

この絵本は、宮城県で牡蠣やホタテの養殖を営みながら、NPO法人「海は森の恋人」を立ち上げて植林や環境教育活動を行う畠山重篤さんが監修しています。「森は海の恋人」という言葉のとおり、自然環境とその中で生きる人間の暮らしは、大きな循環とつながりの中で成り立ち、その一つでも汚染されたり破壊されたりすれば、 すべてに跳ね返ります。この絵本の最後は、「そしてまた、山に木を植えました」で締めくくられています。良い循環を取り戻せるかは、私たち人間の行動にかかっている。そんなことを、ふんわりやさしい言葉と楽しい絵で伝えてくれる絵本です。

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Vol.1・Vol.2で紹介してきた絵本の多くは、テーマは違っても、共通点があります。主人公たちが、目の前の状況に対して、自分にできることを考えたり、行動したりしていることです。私たち一人ひとりが、自分には社会を変える力があると信じて、「地球市民」として行動すること。これは、 これからの地球の未来にとって、一番大切なことではないでしょうか。

最後に、そんな「地球市民」としての視点に気づかせてくれる、小さくてかわいい絵本を紹介します。

『ここがぼくのいるところ』 作 ジョアン・フィッツジェラルド/訳 石津ちひろ
(ほるぷ出版)

「ちきゅうのうえに、くにがある。くにのなかに、としがある」という言葉で始まるこの絵本は、地球とぼくがいる場所とのつながりを、ズームインしたりズームアウトしたりしながら、シンプルに紹介しています。

自分の暮らしから世界を考えることができ、同時に世界で起きていることを見て、そこから自分の暮らしを考えられる視点。私たち、そして子どもたちが、そんな視点を持って一緒に進んでいけたらいいですね。

宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールにおける生産管理に従事。現在は、企業のサステナビリティ推進を支援する「 エコネットワークス」に、コンテンツプロジェクトマネージャーとして参画。ライフワークとして、フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」を制作したほか、親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)の運営に携わる。社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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