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世界に広がる自宅隔離に楽しみを イタリア三つ星シェフが料理動画をインスタ配信
新型コロナウイルスの感染者が3月に入ってから爆発的に増加し、19日までに死者数が中国を超えて世界最多となってしまったイタリア。感染者のおよそ8割が集中する北イタリアでは3月8日にロンバルディア州始め14県で「ロックダウン」と呼ばれる都市封鎖が実施され、その後、住民の移動制限は全土に拡大しています。
実は、先月北イタリアのモデナにある三つ星レストラン「オステリア・フランチェスカーナ」のオーナーシェフ、マッシモ・ボットゥーラさんを取材する機会があり、その後の急速なコロナ感染拡大で彼や彼のお店も大変な状況なのではないかと、とても気になっていました。
彼のインスタをのぞくと、3月9日の投稿でお店のスタッフたち全員と撮った写真がアップされていて、「みんな無事です!」という報告があり、安堵しました。
イタリア北部は医療崩壊も懸念される非常事態。そんな状況下で彼が15日からinstagramで家庭料理教室を配信し始めたことを知り、驚きました。動画チャンネル「Kitchen Quarantine」(キッチンで自宅隔離しよう)は、娘のAlexaさんが家のキッチンで楽しそうに料理する父親を見ていて、「この様子をライブ配信したら、みんなが楽しめるのでは?」と開設を思いついたそう。
これまでに紹介したメニューは、野菜たっぷりのタイカレー、温野菜のサラダ、ブロード(野菜だし)でゆでたトルテリーニのクリームソースがけなど。フードロスと貧困問題を同時に解決する食堂「レフェットリオ」を始めたシェフとあって、冷蔵庫に余った食材を活かしたおいしい一品を提案しています。料理中には、妻のラーラさんや息子のチャーリーさんもキッチン周辺にいて、時折映像に映り込みます。イタリア人として初の「世界のベストレストラン50」の頂点にも立ったセレブシェフも、家で見せる表情は非常にリラックスしていて、家族との楽しいやりとりも見どころの一つです。
番組は毎晩20万から50万の視聴者がいて、大反響。ボットゥーラさんはレシピをより多くの人が理解できるよう配慮し、番組では主に英語で話しています(話がのってくるとイタリア語中心になっていますが…笑)。視聴者からの質問に気さくに答えるQ&Aのコーナーも、こんな事態でもなければなかなか実現しない企画でしょう。
ライブ配信はいつも “Wash your hands! Stay safe!”と感染予防を呼びかけるメッセージから始まります。北部に住む1600万人を超える住民が行動制限を受け、自炊生活を余儀なくされているイタリアこそ今大変な状況のはずですが、ボットゥーラさんのどんな状況にもユーモアを持って立ち向かおうとするポジティブな姿勢からは、むしろ私たちが元気をもらえるほどです。ライブ配信はイタリア時間の毎晩20時(日本時間早朝4時)から。「これは料理ショーじゃない。困難な時を世界中の人と共有するための方法なんだ」とボットゥーラさんが説明するように、私たちは自宅にいながら世界とつながることはできるのです。
地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!