thinkFace
thinkEye

考える、それは力になる

contents

2019.04.16 | スタッフブログ

「食品ロス」からブランド豚を生み出す? 食べ物が無駄なく循環する未来を目指して

佐藤由佳
佐藤由佳 スタッフ

初めまして。Think the Earthスタッフの佐藤です。

今回私たちは、2018年5月に出版した『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』の姉妹版として、『SDGsアクションブック かながわ』を制作しました。その中で出会った、株式会社日本フードエコロジーセンター(以下、J.FEC)の取り組みをご紹介します!

J.FECが行っている事業は「食品ロス」を再利用した豚の飼料(エコフィード)づくりや、ブランド豚開発。これらを通して、食の循環を実現しています。

 

そもそも食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食べ物のことです。スーパーやコンビニなどで販売されている食品は、賞味期限が近づいたり、売れ残ってしまうと、多くが廃棄されてしまいます。農林水産省によると、その量はなんと年間646万トン(平成27年度推計)。

そんなもったいない食品を活用した「たべもの」の循環システムを構築する同社は、2018年に第2回ジャパンSDGsアワードにて本部長(総理大臣)賞を受賞。SDGs(持続可能な開発目標)達成のための優れた取り組みとして表彰されています。(※)

私たちは工場見学をさせていただきながら、代表取締役の髙橋巧一さんにどのような事業を行なっているのか、消費者である私たちはこの課題に対して何ができるのか、伺ってきました。

※SDGs12のターゲットには「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減」と定められています。

▼詳しくはこちら

Think the Earth | SDGs for School | 12.つくる責任つかう責任

製造ロスや売れ残りを回収し、リキッド発酵飼料に

 

相模原市内にある同社の工場には、近隣の食品工場から出る製造ロスや、スーパー・コンビニなどで発生した売れ残りが運ばれてきます。

野菜やご飯など、さまざまな食品が大きなコンテナ・機械に入っていく様子を目にすることができました。こんなに大量の食品が日々廃棄されているとは、驚きです…。

写真提供:J.FEC

集まった食品は選別が行われ、独自の技術で殺菌・発酵処理をして、液体状の飼料になります。こうしてできたエコフィード(食品残さなどを利用して製造された飼料のこと)は契約養豚農家に販売されます。

通常、食品は廃棄物として4〜5万円/t くらいで焼却処理をされますが、同社では2〜2.5万円/t で飼料化が可能。そのため養豚農家へ安く販売できるのがポイントです。

 

エコフィードで育った豚は、「優とん」「旨香豚」をはじめとしたブランド豚肉としてスーパー等で販売されています。同社のエコフィードは乳酸発酵飼料であるため、オレイン酸の含有率が高く、 コレステロール値が低く抑えられています。人間にも地球にも優しいヘルシーな豚肉なんです。

優とんや旨香豚をはじめ、エコフィードで育った畜産物の認証制度として農林水産省の「エコフィード認証制度」があります。まだまだ普及はしていませんが、エコフィード利用畜産物の購入を通して、食品リサイクルの意識を高めたいです(高橋さん)

エコフィードを食べる豚の様子(写真提供:J.FEC)

 

地域特性に合わせて、食品の循環を考える

食の「巡り」を実現するJ.FECのビジネスモデルは、国内外から多くの注目を集めており、海外からの視察もやってきます。しかし、どこでもこのモデルが成り立つかというとそうではなく、これは“首都圏バージョン”なのだと高橋さんは言います。

首都圏の場合は、廃棄物として焼却処理をするコストが高いため、多くの事業者がJ.FECに食品廃棄物の回収(買い取り)を依頼するようになり、このモデルが成り立ちます。

しかし廃棄物の処理費用が安い地域では、このモデルは成り立たないだろうと、高橋さんは考えているのだそうです。

“今後、私たちはさまざまな地域で食の「巡り」を実現したいと考えていますが、地域に合ったやり方を考えることが重要です。

地域や食品廃棄物の内容によっては、堆肥にして穀物を作るのがいいかもしないし、バイオマスエネルギー化の仕組みの導入も考えられます(高橋さん)”

JICAを通じた海外からの視察の様子(写真提供:J.FEC)

 

消費者である私たちには、何ができる?

ここまでお読みくださった方は「J.FECがすごいのはわかったけど、じゃあ私って何ができるの?」と考えている方もいるかもしれません。私たち消費者は、食品ロスや食の「巡り」を考えるにあたって、何ができるのでしょうか。最後に高橋さんに聞いてみました。

“昔は八百屋のおじさんと「この野菜が旬だよ」とか「今日はこれが2割引きだよ」なんて会話をしながら買い物をしていたわけですよね。そうすることで食品ロスを少なくしていた面があると思います。

 

今は、消費者と小売の健全なコミュニケーションが失われてしまっている。たとえばスーパーには「トマトが不揃いな形だったから気に入らない」と投書が消費者から届いて、「じゃあもっと規格の揃ったものを仕入れよう」と、スーパーは見栄えの良さや効率を重視するようになります。

 

見栄えの良さを追い求めすぎることが、食品ロスが発生している一つの要因。しかし多くの消費者が本当に求めていることって見栄えの良さではないと思います。

 

消費者自身がもっと声を上げ、小売とコミュニケーションをすることで、動かしていくことができるのではないでしょうか(高橋さん)”

 

消費者ができること、それは日々の生活の中にある。効率や見栄えの良さではなく、少し不揃いでも30円引きだったり、安全性や美味しさを求めていきたいなと思いました。

 

高橋さん、ありがとうございました!

佐藤由佳
佐藤由佳 スタッフ

東邦大学にて環境政策を学ぶ。「環境問題×コミュニケーション…?」と、もやもや考えていたところThink the Earthを知る。新卒ではクリエイティブ系企業に入社し、Web制作やオウンドメディアの運用担当を経験。その後フリーライターに。現在は『UNLEASH』,デザインビジネスマガジン『designing』,ポートフォリオサービスforiio『制作ノート』,『70seeds』等で執筆中。最近始めた趣味は、同姓同名集め。