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Climate Change

無人偵察機がハリケーンの発達メカニズム解明へ

2014.09.23 山田 由美

ハリケーンの偵察をするグローバルホーク:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by NASA Goddard Space Flight Center

アメリカ海洋大気局(NOAA)は航空宇宙局(NASA)と共同で、無人偵察機グローバルホークによるハリケーンの調査計画を本格始動しました。日本で台風と呼ばれる現象はアメリカ近海ではハリケーンと呼ばれますが、どちらも甚大な気象災害をもたらすという点では人類が仕組みを解明し対策をとらなければならない事象です。

今年は日本で宇宙航空研究開発機構(JAXA)が全球降水観測計画(GPM)衛星の打ち上げを成功させ雨の構造を解析するなど、気象衛星が観測に力を発揮していますが、内部の気圧や風速の計測はさすがに不可能。そこで今までアメリカは直接ハリケーンに有人飛行で飛び込んで観測をしてきました。これはハリケーンハンターといって重要なデータを取得できるものの非常に危険な命がけの観測。ハリケーンの中は激しい上昇流や下降流があり墜落した事例もありました。そのため、無人飛行による観測は人的被害を防ぐことができる画期的な方法なのです。

NOAAは9月15日、今年初めて大西洋海域に発生したハリケーン「エドワード」に突入テスト飛行をした無人機「コヨーテ」の無事帰還を発表しました。コヨーテは有人機では安全に飛行できない高度1キロという低高度飛行をして気温、気圧、風速などの観測データを約1日かけて収集。コヨーテがゾンデという小型観測機にパラシュートを着けてハリケーンの目の中などに放し、嵐の中のデータを地上で受信するのです。このデータは温かい海水の熱をエネルギーとして発達するハリケーンの形成過程や発達の仕組みを理解する際、大きな威力を発揮します。また近年注目されているサハラ砂漠上空の高温乾燥帯がハリケーンの形成や勢力の急速強化に及ぼす影響についても解明が進むと期待されています。

NOAAは大西洋などの海域で発生するハリケーンの予測改善にグローバルホークの観測が実際に使えるか、今後3年間で評価をする予定。計画では2015年秋のハリケーンシーズンより、大西洋沖での実験を開始。有人飛行では高度約14キロまでだった観測も、約18キロまで到達することができるようになり、風速、気温、湿度などの連続収集が可能になります(ハリケーンの雲の厚さは時には約16キロにも達する)。

アメリカは人口増加や都市化による社会の変化で天災による被害が深刻化していることから、政府のみならず誰もが気候を意識して予防の行動をし、最終的には人命や財産を守れる国家を目指す方針を出しています。ちなみに今回の取り組みは2012年にアメリカに上陸したハリケーン・サンディの甚大な被害を受けて政府が予算化し、始まりました。

甚大な被害を起こす「ハリケーンの急激な発達」の手掛かりをより早く見つけたり、深刻な天候でも観測が続けられる体制を確立することで、予測精度の向上が見込まれ、これがひいては減災につながるのです。

グローバルホークは、攻撃能力は持たない偵察機で、福島第一原子力発電所事故の際には上空から被害状況を把握する活動にも使われました。サイエンスフライトと呼ばれるこの探索の様子は随時情報公開され、純粋に科学の探求に使われます。



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山田 由美