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Biodiversity

五大湖へ迫る外来種、アジア原産鯉の脅威

2015.05.13 山田 由美

School of Jumping Silver Carp:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Asian Carp Regional Coordinating Committee

日本でもブラックバスなどの外来種が地元の固有種を駆逐してしまう事態が起きていますが、アメリカからカナダへと広がる鯉の激増も深刻です。

問題となっているのはアジア産の鯉。1970年代にアメリカ南部の養殖池に持ち込まれました。鯉には植物プランクトンをたくさん食べる習性があることから業者が浄化のために役立てようとしたのです。ところが洪水により池から川に逃げ出してしまったのを機に鯉は川で大繁殖。体が大きいことから天敵も少なく繁殖力が高いため急激に数を増やし、生息地はアメリカ最大の河川ミシシッピ川を北へと広がりました。ミシシッピ川はイリノイ川経由で五大湖につながるため、ついに五大湖の生態系が脅威にさらされ始めたのです。

元来生息してきた魚類が駆逐されるだけでなく、影響はそれらをえさとするカモ・ガン・その他の水鳥にも及びます。鯉を食べる習慣のないアメリカ国内では食用としても捕獲されず数は増え続け、国や州は共同で対策に乗り出していました。中でも大規模な対策は米陸軍工兵隊がミシガン湖に流れ込むミシシッピ川の水路に電流を通して鯉の進入を阻止する巨大電気バリア。建設費に約40億円。さらに大きな電力が必要なため年間コストは約2億円とこの外来種への対応に掛かる費用は莫大です。しかし2012年には五大湖の一つエリー湖で初めてグラスコープ(日本名でソウギョという中国原産の淡水魚。問題の鯉の一種)が発見されたことが報告されました。分析の結果、推定1歳にはなっていると分かり、もう鯉は棲みついている事実が確認されたのです。

Electric Barriers Parasitic Installation:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by AU.S. Army Corps of Engineers Chicago District

アメリカ地質調査所は五大湖で鯉が繁殖する可能性について、2002年から2011年までの衛星画像情報で解析を行いました。好物の水面に浮かぶ藻の繁茂状態や水温などからどれくらい成長できるかどうか予測したのです。その結果は残念ながら「エリー湖でも十分なえさがあるので繁殖するだろう」というもの。過去10年エリー湖のは倍増しているという背景があるのです。

今までにも五大湖には1800年代以降、少なくとも25種類の外来種が侵入しています。1980年代には外国船に紛れてアメリカに侵入したゼブラ貝が異常増殖し、発電所などの取水口をふさいで運転停止を招いたことが知られています。経済損失も多大なものでした。廃油や有害化学物質、生活排水流入による環境汚染に続き、外来種の襲撃に遭う五大湖。かつて食料となる魚を得る大きな漁場や美しい観光地であった湖はまたもや姿を変えようとしています。



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アメリカ (南北アメリカ

山田 由美