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「地元の専門家」を森林監視に巻き込んで伐採を減らそう

2013.11.05 山田 由美

annual rings:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by lioman123

熱帯雨林の近くで暮らす現地の人たちに、その森林が持つ炭素の貯蔵量を算定してもらったところ、専門家が衛星画像などを解析して行うようなハイテクなシステムを使うのと変わりない正確さであったという研究結果が9月、学術誌「環境と社会」に掲載されました。

森林解析の専門家などは炭素貯蔵量を算出する際、地球観測衛星の画像や空中写真を見てパターン別に樹種を分類し、樹種別に蓄積する炭素量を計算してまとめるのですが、現地の人たちが使ったのは棒とロープなどの簡単な道具。その森林の代表的な樹種を含む調査個所(調査プロット)を設定し、プロット内の樹木の林齢と本数を紙に記録します。それを表に入力し、このプロットの炭素蓄積量を算出。この調査個所が森林の特徴を表している環境だとすれば、領域全体、ひいては森林全体の炭素貯蔵量がわかるのです。世界アグロフォレストリーセンターがとりまとめた今回の研究によると、東南アジアの4カ国で9つのタイプの森林を対象に専門家の算出結果と比較検討したところ、現地の人の精度は変わらず正確で、IPCCの最高基準を満たすレベルであったそう。

報告書の共同著者で、デンマークをベースに活動するNGO「開発とエコロジーのためのノルディック基金」のフィン・ダニエルセン氏は、この結果を示すだけでなく、彼らこそ森林監視にかかわるべきだと主張しています。

現在、人間活動による温室効果ガス排出は15-20%と言われています。炭素を有機物として幹や枝などに蓄える森の木々を伐採すれば、その分二酸化炭素が大気に排出され、温暖化につながります。国連は広域伐採をしないよう途上国に促していますが、実際はこの天然資源で生計を立てている貧しい人の数は10億人以上ともいわれています。同氏はハイテク技術を駆使できたところで、結局は「現地の人たちを巻き込まないことには、あらゆる要因を総合して問題解決を図ることは困難だ」といいます。

そこで、この結果を現実的な取り組みに移行させようと同氏がアプローチしているのが、森林減少・劣化による温室効果ガス排出の削減に取り組む国連のREDDプログラム。途上国の伐採を減らすことが目的ですが、その方策として、能力の高い現地の人たちに賃金を支払って森林監視をお願いし、持続的に森林を保全させていこうというものです。今、政府機関や民間の業者がやっているのと同じレベルで現地の人も仕事ができるのですから、あとは森林監視の枠組みを変えれば一歩状況が改善できそうです。難しいことですが、だからこそNGOなどのコーディネートが力を発揮する場面かもしれません。



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山田 由美