©Solmove

太陽光パネルと言えば、屋根の上や広大な敷地に設置されたパネルを思い浮かべますが、ここ数年世界各地で、道路で太陽光発電をする「ソーラー道路」の実証試験が相次いでいます。オランダの自転車専用ソーラー道路「ソーラロード（SolaRoad）」やフランスの自動車用道路「ワットウェイ（Wattway）」などで、2－3年の期間で実証試験が行われています。さらに先月、中国で世界初となるソーラーによる高速道路が、試験区間として開通。いずれのプロジェクトも、数キロ未満の短い距離での実証試験段階ですが、実用化に向けて着実に準備が進んでいます。

オランダの自転車用ソーラー道路

そんな中、「ソーラー道路で発電された電力を、そのまま走行中の電気自動車に充電できないだろうか？」という、シンプルかつ大胆なアイディアに挑戦しているベンチャー企業があります。2014年にドイツのポツダムで設立された「ソルムーブ（Solmove）」は、アーヘン工科大学などとともに、フレキシブルで簡単に道路に設置できる太陽光パネルの開発に取り組んできました。同社製品は、10センチ四方の小さな太陽光パネルから成る1.2メートル四方のモジュール（組み立てユニット）で、既存の道路の上にカーペットのように敷き詰めることができます。設置や解体がしやすく、解体後にパネルのリサイクルもしやすいのが特徴です。

ソルムーブ社の太陽光パネル。高い耐久性を持ちながら、柔らかく扱いやすいのが特徴 ©Solmove

表面は、耐久性の高いグラスファイバーでカバーされ、特殊な溝構造を採用しているため、自動車走行による衝撃や摩擦に強く、滑りにくくなっています。また、道路上の汚れは発電効率を下げる問題につながりますが、同社はグラスファイバー上のナノ粒子によって、汚れにくい仕組みになっています。また発電だけでなく、道路を温めたり、光らせたりする機能も備わっています。

©Solmove

同社パネルの年間発電量は、1平方メートルあたり約100キロワット時。「例えばドイツには、太陽光発電に適した道路が1400平方キロメートルくらいありますから、ソルムーブのパネルで、年間約1400億キロワット時の電力を生み出すことが可能です」 と同社事業開発部のボツキさん。この夏、パイロットプロジェクトとして、まずドイツのケルンに自転車用のソーラー道路が開通する予定です。また、歩道や自転車道、家庭用などで使える、よりコンパクトなパネル商品も、今年から販売予定です。

家庭のガレージに敷いたソルムーブ社パネルのイメージ ©Solmove

さらに同社が目指すのは、走行中に電気自動車が充電できるソーラー道路です。ボツキさんによると「電気自動車は、100キロ走るのに約20キロワット時が必要です。仮に年間1万5000キロ走るとして、充電できるソーラー道路をドイツ全土で実現できれば、年間約4600万台の電気自動車を走らせることができます」。ソーラー道路から車を充電するためには、ケーブルなどを介さずに充電できる「インダクティブ充電技術」と太陽光発電技術をうまく融合させる必要があります。同社は、パートナー企業とともに研究開発を進め、2020年頃までの実用化を目指しています。

ソルムーブの創設メンバー。中央が、CEOのドナルド・ミュラー・ユデックス氏 ©Solmove

電気自動車が徐々に増え、各国がその普及に力を入れる中、充電インフラを整備することが求められています。走行しながら充電できるソーラー道路が実用化されれば、ストレスフリーな電気自動車ライフが送れそうですね。これからのソルムーブ社の動きに、注目です。