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2019.12.17 | 岩井 光子

これからのエコは「Replace + Reuse」 古くて新しい宅配サービス「LOOP」が東京上陸

一人当たりの使い捨てプラスチックごみの量が世界第2位の日本。今月5日から7日まで、東京ビッグサイトで開かれた「エコプロ2019」でも、プラスチックごみ削減に向けた企業や団体のさまざまな取り組みが紹介されていました。来年から東京でスタート予定と地球ニュースでお伝えした米のリサイクル企業・テラサイクルの「LOOP」もそのひとつ。

リターナブル容器は専用バッグに入れて届けられる

LOOPは、テラサイクルが次のステップとして力を入れるリターナブル容器の宅配サービス。5月から先行導入中のパリ、ニューヨークに続き、2020年以降はイギリス・ロンドン、カナダのトロント、米ロサンゼルス、ドイツ、オーストラリア、そして日本でも東京でアジア初のLOOPが始まります。

今回エコプロ初出展となったテラサイクルジャパンのブースでは、イオン、P&Gジャパン、ロッテ、資生堂、キャノン、エステー、麒麟麦酒、キッコーマン、味の素、I-neなどのパートナー企業がLOOP専用に製作したリターナブル容器の見本を展示。しょう油ガラス瓶などには昭和のちゃぶ台を思い起こさせる懐かしさがありますし、プラスチック容器に見慣れてしまったガムやインクボトル、洗剤などはスタイリッシュなステンレス缶が新鮮で、自宅で使ってみたくなります。

開始時期は来年中と、具体的な日程や採用容器の詳細決定はこれからと話すメーカーが多いなか、数年先のロードマップまで示していたのは唯一小売業として参加するイオン。来年から都内の主要店舗にLOOP商品の特設コーナーを設け、利用客が来店ついでに気軽に商品を購入したり、容器を返却できる仕組みを整備中とのこと。併せてオンラインやカタログからの購入も可能にし、2021年からは本州・四国の約400の店舗への導入拡大も目指していくそうです。


キャノンのインクボトルには海の生物がデザインされていた。容器の大きさやデザインについてはまだ決定ではなく、試行錯誤中とのこと

6日の特設ステージではエコプロに合わせて来日したテラサイクルCEOのトム・ザッキー氏や同アジアリージョナルマネジャーのエリック・カワバタ氏、東京都の小池百合子知事、製品評価技術基盤機構名誉顧問の安井至・東大名誉教授が登壇。会場は立ち見客もいっぱいになるほどの盛況ぶりでした。


「日本には元来容器を大切にする文化がある」と東京で始まるLOOPに期待を寄せるザッキーCEO

「LOOPのアイデアは特別目新しくはなく、(牛乳・酒など)昔ながらの宅配サービスの知恵を借りたもの」とザッキーCEO。テラサイクルがビジネスとして着目したのは、容器の所有権。容器代を売上原価から除いて当時のようなメーカー持ちとし、何度も繰り返し使ってもらうことで、使い捨てプラスチック容器と変わらない低価格を実現させます。容器の耐久性が上がるほどコストを下げられるので、「容器の機能やデザインもこれまでよりこだわることができ、消費者の満足度も上がるはず」と、ザッキーCEOは説明します。


容器代が今の30倍になったとしても100回繰り返し使うとすれば、1回分のコストは使い捨てプラ容器より安価に抑えられる

最後に登壇した製品評価技術基盤機構名誉顧問を務める安井至・東大名誉教授は、「CO2排出ゼロを目指すには、3R(Reduce、Reuse、Recycle)だけでは足りず、私はそこにもう一つの“R”、Replace(転換=容器の材質を考え直す)を加えたい。3Rのうち本命はReuseだと思うが、これとReplaceを組み合わせていくことが今後の鍵となるだろう」と話します。

使い捨てプラ製品などに対して厳しい年限も設けるEUではリサイクルと焼却回避だけでは、もはや問題解決は難しいという認識が浸透しつつあり、企業が製品の廃棄まで責任やコストを負う拡大生産者責任(EPR=Extended Producer Responsibility)を一層求める動きが強まっています。LOOPの発想は容器の所有権を企業側に戻し、Replace +Reuseを企業と消費者を巻き込みながら推進していこうとするアクションですから、日本のEPRのあり方を改めて考えるきっかけになりそうです。

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岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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