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誕生石に新しい宝石が追加へ エシカルを意識したジュエリーを贈り物に
2021年12月、誕生石に10の宝石が新たに加えられたのをご存じですか。日本の誕生石は1958年に全国宝石卸商協同組合によって制定されました。今回の改訂には、新型コロナのパンデミックで痛手を受けたジュエリー業界を活性化させる狙いがあるようですが、それらの宝石がどのようなルートを辿って店先に並ぶのか気になるところです。
きらびやかに輝くジュエリーは、女性にとって(もちろん男性も)憧れのもの。わたしも魅了されたひとりですが、ある映画を観てジュエリーを買うことに罪悪感を覚えるようになりました。それは2006年に公開された『ブラッド・ダイヤモンド』。1990年代、内戦の続くアフリカのシエラレオネで、反政府組織が資金源となるダイヤモンドの採掘に人々を強制労働させ、不法取引していた問題に切りこんだ映画です。このレオナルド・ディカプリオ主演の世界的ヒット作は、血塗られた宝石で着飾って幸せな気分に浸れるのか、という疑問をわたしたちに突きつけました。
シエラレオネの内戦は2002年に終結し、紛争ダイヤモンドの取引根絶に向けて国際的に規制(「キンバリー・プロセス証明制度」など)が強化されましたが、いまだ労働者の搾取は後を絶ちません。またシエラレオネに限らず、世界各地の宝石・貴金属の採掘現場では児童労働や水銀汚染などの問題も起こっています。
シエラレオネの採掘場。高い収益を得られるはずのダイヤモンド採掘がシエラレオネの主要産業でありながら、この国も国民も世界で最も貧しいまま
だ。その利益は採掘業者を通じて仲介人、買い手に搾取されている。
とはいっても、ジュエリーは誕生日や結婚など人生の大切なシーンに欠かせないアイテム。〝クリーンな〟ジュエリーを手に入れるにはどうすればいいでしょうか。
たとえば国際非営利組織「責任あるジュエリー協議会」(Responsible Jewellery Council:RJC)の認証制度があります。RJC認証はジュエリー業界を対象に、取引の透明性や人権・環境・社会への配慮を評価するもので、日本ではエシカル・ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」が2014年に初めてRJC認証を取得しています。
創業者の白木夏子さんは、イギリス留学中に訪れた南インドの宝石鉱山で児童労働の悲惨な現状に衝撃を受け、会社勤務を経たのち、エシカルな方法でジュエリーを作りたいと2009年にHASUNAを起業。トレーサビリティ(素材の調達から生産、流通、消費までを追跡できる仕組み)を確保して素材を仕入れるのが困難なジュエリー業界で、ペルーやパキスタンの鉱山などに自ら出かけ、取引先を開拓していきました。現在、数カ国の宝石鉱山労働者や職人と一緒にジュエリー作りをしています。
HASUNAのホームページにはジュエリーの素材の産地や特徴、制作について詳しく説明されていて、安心して商品を選ぶことができます。鉱山から研磨、制作にいたるまで多くの人の手を通じて作り上げられたジュエリーの美しい輝きは、身に着ける人だけでなく、携わった作り手をも幸せにしてくれる。この機会に、誕生石のプレゼントにもエシカルを意識してみませんか。
神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。