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2025.03.31 | 岩井 光子

使用済みのコンタクトレンズがマイクロプラスチック汚染を引き起こす?

身の回りの生活用品には、プラスチック製であることを普段あまり意識しないものがあります。例えば、コンタクトレンズがそうではないでしょうか? 

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ハードコンタクトレンズは、酸素をたくさん通す特長のあるプラスチック、ソフトコンタクトレンズは水を含む性質のプラスチックが使われています。どちらもデリケートな目の安全に配慮して複数の素材を組み合わせて作る、特殊なプラスチックです。

2018年、アメリカのアリゾナ州立大学の研究チームが驚くべき研究結果を公表しました。同大バイオデザイン環境衛生工学センター所長のロルフ・ハルデンさんと、博士課程の研究員、チャーリー・ロルスキーさんが400人のコンタクト利用者を対象にアンケートをとったところ、15〜20%が使用後のレンズをごみ箱ではなく、トイレやシンクの排水溝に流したことがあると答えたのです。

相当数のレンズが下水に流れ込んでいるとみた二人が、下水処理場まで追跡調査を行ったところ、データを裏づけるレンズが発見されました。レンズは細かな破片にはなっていたものの、完全には分解されておらず、海に流れ出してマイクロプラスチックとなる危険性が高いことも明らかになりました。

アリゾナ州立大はコンタクトレンズに関連する全米のプラ廃棄物総量は、年間歯ブラシ4億個分に相当すると公表   Adobe Stock

全米のコンタクトユーザーは推定4500万人。装着されるレンズは130億個以上になります。小さなレンズといえども、年に数十億個が下水に流されているとすれば、その影響はあなどれません。

実は、この傾向はアメリカに限らず、日本でも同程度みられました。一般社団法人・日本コンタクトレンズ協会が2019年度に実施した消費者実態調査によると、全体の20.6%が「いつもゴミ箱以外に捨てている」と答えました。最も多かった年代は15~19歳の26.6%で、ゴミ箱以外の捨て場所は、自宅のシンクや洗面所、お風呂、トイレ、屋外の排水溝などでした。

ケースはアルミのふたと容器とでは素材が違うので、わけて捨てることを意識してみよう  Adobe Stock

生分解性のコンタクトレンズはまだ開発されていませんし、破片が残るとなると、海に流れ込むマイクロプラスチックを抑えるためにも、ユーザーは適切な捨て方をする必要があります。

捨て方は自治体ごとに異なり、燃えるごみで回収するところと、不燃ごみとして回収しているところにわかれますので、まずは自治体の分別ルールを再確認してみましょう。また、レンズが入っているケース(ブリスターケースと呼ぶ)も、リサイクルしやすいポリプロピレンというプラスチックで、ふたはアルミと素材が違うので、一緒に捨てず、素材別に捨てることを意識してみてください。未使用コンタクトを捨てる際も同様です。

アリゾナ州立大の調査では、適切な捨て方をパッケージに表記しているメーカーが一社しかなかったと、販売側の啓蒙不足も指摘していますが、最近はサイトで適切な捨て方を解説したり、使用済レンズやプラ容器を回収し、アップサイクルしていることをPRする企業も増えてきています。リサイクルしにくいものの回収に力を入れるグローバル企業「テラサイクル」は、アキュビューなど大手メーカーと組み、ドラッグストアでコンタクトレンズと容器、両方を回収するリサイクルプログラムを各国で実施し、回収の仕組み作りに力を入れてきました。

コンタクトレンズの素材はプラスチック。まずはそこに気づくと、ポイ捨てはできないと意識が変わるのではないでしょうか。

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岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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