百年の愚行(ONE HUNDRED YEARS OF IDIOCY)

佐藤正弘
(京都大学経済研究所 准教授/地球サミット2012 Japan代表)

写真に写し出された愚行は、人間の無知や傲慢のみならず、我々の知性と情熱が顕現したものでもある。地球温暖化の背後には熱機関の歴史があり、核爆弾の背後には原子力工学の歴史がある。 では、愚行を繰り返さないために、知性や情熱自体を否定すべきなのか。おそらくそうではない。問題はそれが何に向けられてきたかである。
これまで人類は、地球システムの制約に抗い、征服することに知性や情熱を注いできた。炭素循環を越えて化石エネルギーを用いる行為が気候変動を生み出し、水循環に抗って河川を組み敷く行為が生態系を破壊した。
いま我々が知性と情熱を向けるべきは、むしろ人間システムの側を地球システムに順応させることである。地球がもたらす恵みと脅威をありのままに受け入れ、分かち合う経済社会システムを、新たな政治や文化を、創り出さねばならない。人類の知性と情熱がそのためにいかんなく発揮されたとき、写真に顕現するのは、深く美しい森、命あふれる海や川、そして子どもたちの希望に満ちた目のはずである。