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Biodiversity

かわいい動物は救われる? 人間が選ぶ保護種は見た目が優先

2012.05.16 アマサワエンジィ

Beluga Whale:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Dan O'Leary  

コカ・コーラ社は昨年10月、ホッキョクグマの保護のため、世界自然保護基金(WWF)に300万ドル(約2億4000万円)を寄付する計画を発表しました。同社からの200万ドルの寄付に加え、ホッキョクグマをデザインした真っ白なコーラ缶のキャンペーンを張り、消費者に1口1ドルの寄付を呼びかけて最大100万ドルを上乗せするという話でした。

しかし、もし、このキャンペーンの対象動物がヒキガエルだったらどうでしょう?

現代の野生動植物保護活動は、人間から見て「美しい」種が優先的に保護され、動植物の見た目によって生態系を変化させている―このような研究結果が科学誌Biodiversity、2012年版に発表されました。

執筆したカナダ農務・農産食品省の分類学者、アーニー・スモール氏は数年前に絶滅危惧種についての学会に参加した際、美しい大型のほ乳類は保護対象に選定されやすいのに対し、は虫類や両生類は選定されにくく、植物は推薦さえされにくいことに気付きました。研究を進めるうちにたどり着いた答えは、人間の目から見て美しい種、また経済的に有益な種が優先的に保護されている現状でした。

スモール氏によると、クジラやパンダ、ホッキョクグマやゾウなど、人気のある動物たちには寄付金が集まりやすく、保護予算も巨額であるのに対し、姿形が一般的に不人気のカエルやヘビなどは虫類や植物は、絶滅の危機にひんしているのにもかかわらず、保護予算のまったくつかない種が多くあるとのこと。ほかにも、利用価値がある(食糧、薬、衣服の材料など)、人間に類似した特徴がある(広い額、表現力に富んだ目など)、地上で生活する(親子の生活が見えると更によい)、色鮮やか(しかしウロコやヌルヌルした外皮は好ましくない)、臭くない、などにあてはまる種は、人間が保護対象に選ぶ傾向があると指摘しました。

商業上重要な生き物で保護が積極的に行われているのは、サケやクロマグロ、ミツバチなど。カナダ南東部のセントローレンス湾のシロイルカ保護にも多額の予算が組まれていますが、実はセントローレンス湾に生息するシロイルカは世界全生息数の1%にも満たないそう。カナダの絶滅危惧種リストに指定する植物種の報告書を執筆している環境コンサルタントのダン・ブルントン氏は、イルカの愛らしさを武器にエコツーリズムを推進できるため、カナダ政府は少数のシロイルカに多額の予算を投じているとし、「政治的理由で北極に生息するシロイルカは、捕っても食べても法律上問題はない。本当にばかげている」と持論を述べています。

一方、WWFカナダのシニアディレクターを務めるスティーブン・プライス氏は、大型動物に焦点を合わせることが、一度に最も効率よく多くの種を保護する方法だと主張。大型動物は広い縄張りを必要とするからだそうで、「例えばクジラ、マグロ、トラのような大型捕食動物を保護するために広大な生息地を確保することができれば、そこにすむすべての動植物も保護できる」と、説明しました。

世界には小さすぎて私たちの目に留まらない生物や夜行性の動物もたくさんいることを考えると、限られた人間の物の見方を基準とした保護の選択は、自然界に必ずしもフェアであるとは言えないようです。



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