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Food

ホームレスにシェフ転身のチャンスを、栄養と食を地域へ

2014.03.31 アマサワエンジィ

Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Martin Criminale

米ワシントン州シアトルのダウンタウンの一角に店を構えるFareStartは、雰囲気の良いアメリカ料理のレストラン。今では地元有数の人気店ですが、実は運営しているのはレストランと同名の非営利団体です。料理人から食事を運ぶホールスタッフまで、全ての職種を同団体で職業訓練を受けた元ホームレスの人やボランティアが切り盛りしています。

生活が立ち行かなくなってしまった人たちに人生を一転させるチャンスを与えたいと、大人向けの調理師養成プログラム、Adult Culinary ProgramをFareStartが始めたのは1992年のこと。元は数人の地元シェフらがホームレスや社会的弱者へ栄養バランスの整った食事を供給していた団体でしたが、食事だけではなく職業訓練を提供することによって、人生の転機を与えることが出来るのではないかと考えました。

最低限の給付金や住居と共に、無償で提供されるこの職業訓練は16週間に渡り、調理の基礎から就職の世話、さらには人生を豊かにするためのスキル向上などが盛り込まれ、人生の新たなスタートに向けた準備をきめ細やかにサポートしています。講義や実習で使用される食材のほとんどは寄贈でまかなわれ、調理された料理は経営するレストランで提供するほか、地域のホームレスシェルターや低所得世帯向けの保育所、学校などへ配られます。

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Guest Chef Night に行われる卒業式の様子。無事にプログラムを修了した学生には卒業記念として調理道具一式が送られる
Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Caffe Vita

FareStartは2003年には16歳から24歳の若者を対象にしたYouth Barista Training & Education Programも始め、様々な問題を抱える若者に職業訓練の機会を提供したり、地域とのつながりを持たせるきっかけを作るなどの活動を行っています。

2012年に調理師養成プログラムを卒業した182人の就職状況を見ると、卒業後90日以内に飲食やサービス業へ就職が内定した学生の割合は87%、さらに就職90日後の定着率は81%に上ります。また、若者対象プログラムの卒業生の98%が就職、または学校に戻るという道を選びました。

人が人生において直面する困難や試練には、人ひとりの力ではどうにもならない場合があるなか、地域と一緒に解決に取り組むFareStartは一言では言い表せないほどのチャンスを人々に与え続けています。FareStartは通常はランチのみの営業ですが、毎週木曜日は有名シェフをゲストに招いてコースディナーを提供する、Guest Chef Nightを開催しています。また、予約制で訓練施設の見学も行っています。シアトルを訪れた際にはぜひ訪ねてみてください。

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友人の結婚披露宴がFareStartで行われた際に撮った訓練施設での一枚。様々な器具を触らせてくれた。ボランティアで見学ガイドの方が「先週面接に来た方は、有名大学を卒業し修士課程を修了していた。今の時代、いつ、誰が路頭に迷うか分かりません」と言っていたのが印象深い  



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シアトル、アメリカ (南北アメリカ

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