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「小水力発電のある暮らし」が地域エネルギーを変える

2012.11.28 菊地 将史

photo by Kikuchi Masashi

目の前でクルクル回っている見慣れないモノ。その横で、星座をかたどったライトが黒いボードの上で光っています。実はこれ、仙台高等専門学校の山田洋准教授が開発している新しいタイプの小水力発電です。実用化に当たってはシステムキッチン内蔵型と既存の蛇口に取り付け型を考えているそうです。これを使うと家庭の蛇口でニッケル水素電池「エネループ」を充電することができます。

通常、小水力発電はどんなに小さなマイクロ発電やピコ発電でもすべて、河川や農業用水路の水を利用して発電しています。しかし、河川や農業用水路を使用する際には様々な権利問題が生まれます。近くの河川を利用しようと思っても手続きが複雑で許可がおりず、なかなか実験を始められないというケースもよくあります。そこで、発想を根本から変え、「権利問題が生まれない場所はどこか、と考えてみると、家庭の中だと気が付いた」と山田准教授。「水は、浄水場から家庭まで送るのに大量のエネルギーを使います。でもそれは、家庭の蛇口から流れる時、すべて捨てられているのです。この小水力発電は、その捨てられているエネルギーを発電に使っています」

権利問題の解決策として最も有効なのは、多くの市民が「小水力発電っていいよね」と思うようになること。その点、家庭内小水力発電は私たちに「小水力発電のある暮らし」を実感させてくれます。こうして小水力発電に対する市民の目が変われば、水利権などの権利問題も一層緩和されていくのかもしれません。

宮城県南部では原発事故の影響で農地や森林が汚染されてしまいました。薪ストーブの灰からは放射性物質が検出されます。そこで地元の人たちが小水力発電をぜひとも地域で実現させたいと願い、山田准教授の研究室にも相談に訪れました。山田准教授は「私にできることはぜひお手伝いしたい」と話しています。今回開発した機材を少し応用して大きくするだけで河川や農業用水路で使える発電機は作れるそうです。

家庭内小水力発電の取り組みはまだまだ小さなものですが、これまで捨てていた「水を送るエネルギー」を再利用していることで、これから注目を浴びる発電方法となりそうです。将来の地域エネルギーシフトを進めていく上でも大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。



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菊地 将史