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2024.10.10 | 岩井 光子

世界で2番目に人口の少ない島国が考えた海を守る方法とは?

ニウエの海 (c) Richard Sidey/Galaxiid

ニウエという太平洋の小さな島国を知っていますか? 人口はバチカン市国に続いて世界で2番目に少なく、約1700人。ニュージーランド北東に位置する美しいサンゴ礁の国です。今年7月に東京で開かれた太平洋・島サミットでは、ニウエのダントン・タンゲランギ首相が初来日。記者会見では気候変動問題や海の酸性化問題など地球規模の課題に世界が共に向き合っていく必要性を強調していました。

ニウエはニュージーランドの属領だったが1974年に自治権を獲得して以降、内政は独立。外交や防衛はニュージーランドにゆだねる自由連合関係を結んでいる Rockpools and cliff at Niue photo by Pia Andrews CC BY 2.0
ニウエの西海岸は生物多様性豊かな地域でザトウクジラの繁殖地、オグロメジロザメ最大の生息地として知られる   (c) Richard Sidey/Galaxiid

ニウエの国土は260平方キロメートル。陸地面積に対して領海はなんと1200倍もあります。小さな国が広大な海の恵みを持続可能な形で管理し、開発するためにニウエは知恵を絞ってきました。環境保護のルール順守を徹底しながら観光業を推進しているのもその一つ。観光は地域経済の活性化にもつながりますし、経済と環境保護のバランスをとることができる産業であると、ニウエの人たちは考えているのです。

観光客は、自分たちに必要な分だけ魚介を採取してきた現地の伝統的な暮らしを妨げないエリアで、海洋資源保護のガイドラインに沿ってマリンスポーツを楽しむ photo by vuorikari CC BY-SA 2.0

NGOトフィア・ニウエは2015年、政府と官民パートナーシップによるNiue and Ocean Wide(NOW)プロジェクトを開始。科学的調査や地域コミュニティとの協議が進み、海を守るための法的整備も前進しました。政府は2017年、領海と排他的経済水域(EEZ)の40%に当たる12万7000平方キロメートルを海洋保護区に指定し、2022年には同地域を「ニウエ・ヌクトゥルエア海洋公園」にするとタンゲランギ首相が発表したのです。小さな島国が100%自国の海洋空間を守り、次世代につないでいくと大胆に宣言したことは、世界の島しょ国を驚かせました。

海を守るためには、財源を安定させる必要もあります。NOWは、国際NGOコンサベーション・インターナショナルとのタッグで、OCCs(海洋保護活動、Ocean Conservation Commitments)の斬新な資金調達方法を発案しました。それがNOW トラストです。ニウエの海域1平方キロメートルを20年間保護できる費用を見積もり、148ドル(約2万2000円)を1ユニットに設定。これを12万7000ユニット用意しました。海洋保護区が12万7000平方キロですから、ちょうどその全域分に相当します。集まった資金は海の保全活動や沿岸管理計画、ブルー・エコノミーの発展などにも活用されるそうです。

ニウエも他の太平洋島しょ国と同様、プラスチックごみの漂着に頭を悩ませている。政府はNOWトラストで、国民全員分のユニットを購入 Plastic bottle on the beach photo by The Reef-World Foundation CC BY-NC-ND 2.0

NOWトラストでは個人、企業、財団、開発パートナーまで誰もがスポンサーになれます。小口で長期に渡るスポンサーシップは画期的であると、このほどアメリカのメディア企業が選ぶ世界を変えるアイデア賞も受賞しました。ニウエのタンゲランギ首相は国民1人につき1口、計1700のOCCを支援。さらに、コンサベーション・インターナショナルや、海洋保護区の拡大を目指す世界的な共同体、ブルー・ネイチャー・アライアンスなどもスポンサーになることを約束しています。

途上国の支援プロジェクトは二国間で期間限定で実施されるケースが多く、終了すると資金が途切れることが課題になっていましたが、ニウエの仕組みは20年と長期に渡るスポンサーシップであり、当事国が主導権を持てる仕組みであることから、新たな支援の形としても注目されています。環境活動家でなくても、海を愛する誰もがスポンサーになれるところがこのプロジェクトの魅力です。支援に興味のある方はこちらから。

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岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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