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人身取引はビッグデータの活用で食い止められるか? 米ポラリスとIT会社の奮闘 

2015.08.20 平澤 直子

Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Imagens Evangélicas

「人身取引」「人身売買」。日本や他の先進国で暮らしていると、その言葉を耳にする機会はほとんどないのではないでしょうか。どこかアジアの国の裏道で起きている怖い出来事程度に思っている人がほとんどなのではないかと思います。

しかし実際には、先進国であるアメリカでも、西ヨーロッパでも、そして日本でも、人身取引は横行しています。人身取引は「現代の奴隷制」とも言われ、「人の自由を奪い、暴力や脅しを使って人を強制的に働かせ、利益を搾取する犯罪行為」全般を指します。「買春」「工場や農場での強制労働」「臓器売買」など、多岐に及ぶ人身取引の被害者は現在ほぼ2100万人(国際労働機関<ILO>より)。2010年から2012年の間に少なくとも153カ国の出身者が124カ国で人身取引の被害に遭っています(国連薬物犯罪事務所「世界人身取引報告書2014」より)。

被害者を救済しようと、世界には多数の支援団体が存在しますが、それぞれが集めた情報が共有されず、国際犯罪である人身取引の取り締まりが効率的に行われていないという現実がありました。これを受け、2013年、米グーグルと3つの支援団体「The Polaris Project」「La Strada International」「Liberty Asia」が提携し、「Global Human Trafficking Hotline Network」を始動しました。これは、個々の団体に助けを求める電話をかけてきた被害者からの情報をデータとして集積し、世界規模で人身取引を追跡しようというものです。

支援団体の1つでアメリカの国立人身取引リソースセンターを運営する非営利団体「The Polaris Project(以下、ポラリス)」はこれに先駆け、2006年からSalesforce.comのサポートを得て、電話追跡システムやデータ集積システムを作ってきました。そこに、Palantirのデータ分析とビジュアル化システムが投入され、グーグルのサーチエンジン技術、Twilioのショートメール技術と合わせた結果、今、アメリカ全体のリアルタイム人身取引マップを構築することができています。

これらのITのおかげでポラリスは2007年から2015年3月末までで9万6513件のヘルプコール(またはメールやホームページ経由の問い合わせ)を受け、1万9991件の人身取引を暴いてきました。さらに、大量に蓄積されたデータの分析から、人身取引のパターンも見えてきたと、ポラリスのCEO、ブラッドリー・マイルズ氏は言います。

「ビッグデータの活用で人身取引は食い止められるか?」。その答えは、ポラリスの8年間の成果を見れば、自明のことでしょう。世界中にデータ活用の重要性が広まることを願ってやみません。

※国連薬物犯罪事務所では、人身取引の被害者のための任意信託基金を用意しています。寄付のしかたについてはこちら



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