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ゴミが楽器に パラグアイのリサイクルオーケストラが来日

2013.11.25 平澤 直子

ゴミから作った楽器を手にするオーケストラメンバー

南アメリカに位置するパラグアイ共和国、その首都アスンシオンの郊外に位置するカテウラという町は、毎日1500トンものゴミが捨てられる、パラグアイ最大のゴミ埋立地で、人々は文字通り、ゴミの上で生活しています。そんな町で結成された、ゴミから作った楽器を演奏する「リサイクル・オーケストラ・オブ・カテウラ」が来日、11月29日には東京・品川教会で、12月1日には大阪・大阪国際交流センターでコンサートを行います(※1)。

The world send us garbage. We send back music.

音楽を通して貧困を削減し、社会変革を起こす指揮者のLuis Szaránさん(※2)が始めた「大地の音(Sonidos de la Tierra )プロジェクト」を同地で行い、音楽学校を開こうと決めたのは、環境工学を勉強し、カテウラのリサイクルプログラムに従事していたFavio Chávezさん。貧しさのために40%以上もの子どもが学校を卒業できないカテウラで、子どもたちがドラッグやアルコールに走ることがないよう代わりに何か打ち込めるものを作れないかー、ただそれだけの理由でした。もちろん、ゴミで楽器を作ることなど考えもしなかったのですが、いざ始めてみると、希望者が殺到して楽器が足りず、ゴミで作ることになったのです。

Nicolas Gomez(Cola) Luthier & Garbage picker.jpg

自作の楽器を手にするゴミ拾い人兼ゴミ楽器職人Nicolás Gómezさん


楽器作りで活躍したのは、ゴミ拾いを生業(なりわい)とするNicolás Gómezさん。水道管や鍵でフルートを、アルミ缶とフォークでバイオリンを、コインや瓶のふたでサックスを作り出します。Luis Szaránさんは「人はどんなに悲惨な状況でも、イニシアチブをとり、クリエイティブでいさえすれば、ゴミすら誰かの人生を変えるほどのツールになる得ることを彼から学んだ」と言います。また、「試行錯誤を重ねて楽器を作り上げる工程から、子どもたちは、物事は一夜にしてなるものではないということを学んだ」とFavio Chávezさんは言います。

2011年からこのオーケストラでは、子どもやティーンエイジャーに楽器の弾き方だけではなく楽器作りも教え始め、生徒は200人を超えています。また、オーケストラがコンサートで海外に行く機会も出てきており、パスポートも持っていなかった彼らがアメリカやドイツへも渡航したほか、2012年には国連持続可能な開発会議(リオ+20)でも演奏をしました。

彼らの軌跡は、「クリエイティブな形で、パラグアイの子どもや女性を取り囲む問題に注目を集めることで、祖国に貢献したかった」と語るエグゼクティブ・プロデューサーのAlejandra Nashさんにより現在、映画化が進んでいます。クラウドファンディングで集めた資金や、Creative Visions Foundation(※3)からの支援で制作中のこの映画「Landfill Harmonic」は2014年公開予定で、オーケストラはそれに合わせて世界ツアーを企画しているそうです。

なお、映画の製作は現段階でのゴールにすぎず、将来的にはLandfill Harmonic 財団を作り、カテウラの衛生問題を改善したり、コミュニティに仕事を作ったり、またそのメソッドをほかの地域に適用したりしたいとのことです。現金の寄付や楽器の寄付など、この活動を支援する方法はたくさん用意されています。ご興味のある方はこちらをご参照ください。

※1 コンサートは良品計画の主催で、無印良品の会員限定の企画です(今回の募集は既に締め切っています)。
※2 指揮者。2005年にはスコール財団の社会起業家賞を受賞。
※3 メディアやアートを使ってポジティブな変化を起こそうとする人を支援するNPO。



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このニュースの地域

パラグアイ (南北アメリカ

平澤 直子