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Energy

オランダ発「風力発電×アート」から考える
再生可能エネルギーと電力自由化

2016.03.24 宮原 桃子

©Roosegaarde

オランダと言えば、「風車」は国を代表するアイコン。国土の4分の1が海面より低いオランダでは、歴史的に風車で水をくみ上げ、それを運河に流して土地を干拓してきました。風車は、オランダのこうした歴史と世界に誇る治水・灌漑(かんがい)技術を象徴しています。そして現代では、風車はグリーンエネルギーを生み出す新たな役割も担っています。

そんなオランダ出身の気鋭のデザイナーであるダーン・ローズガールデ氏が、世界遺産にもなっている18世紀の風車網からインスピレーションを得て、オランダのイノベーションの象徴である風車を題材に、グリーンエネルギーの美しさを表現しようと立ち上げたのが「ヴィントリヒト(風の光)」プロジェクト。特殊なソフトウェアと追跡技術によって、時速280キロで回る現代の風車のブレードを捉え、それを緑色の光のラインでつなぐものです。今月オランダのゼーラント州でデモンストレーションが行われました。


WINDLICHT by Roosegaarde [OFFICIAL MOVIE] from Studio Roosegaarde on Vimeo.

ローズガールデ氏は、環境・アート・テクノロジーを融合したデザインで世界的に注目されており、これまでに太陽光で充電して夜に発電する道路「スマート・ハイウェイ」や、北京市の公園でスモッグを吸い寄せて空気を清浄するスモッグ・フリー・プロジェクトなど、ユニークなプロジェクトを展開してきました。同氏は、今回のプロジェクトにあたり、次のような文章を寄せています。「グリーンエネルギーを誰もが求めているが、自分の家の裏庭には(風車を)求めない。18世紀の美しい風車で有名な国だというのに、奇妙な話だ。どうすれば、グリーンエネルギーの価値にふさわしい魅力を、改めて伝えることができるだろう?」

オランダは、天然ガス産出国として資源に恵まれてきた経緯などもあり、再生可能エネルギーが全体に占める割合は5.6%に留まっています(出所:Statistics Netherlands)。しかし海抜の低いオランダにとって、地球温暖化による海水面の上昇は国の存亡にかかわる問題でもあり、再生可能エネルギーの拡充は喫緊(きっきん)の課題です。2000年代から特に風力発電に力を入れ始め、2004年に電力が完全自由化されてから、再生可能エネルギーを選択する人びとが増えている一方、風車建設にあたっては、景観を損なうといった意見や洋上風力発電に対する政府財政負担などについて賛否両論の声が上がるという現実もあります。社会全体でどのようにサステナブルなエネルギーを支えていくのか、このプロジェクトはそんな問いを人びとに投げかけているように思えます。

4月から日本でも電力小売りが自由化し、私たち一人ひとりが電力会社を選べる時代が始まります。特に3.11以降、原子力や再生可能エネルギーについて多くの議論がなされるなか、これからは私たち一人ひとりがどのようなエネルギーを選んでいくのかが、未来を変える重要な鍵になります。このオランダのプロジェクトは、転換期にある日本の私たちにとって、エネルギーのことを考えるひとつのきっかけになるのではないでしょうか。



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このニュースの地域

オランダ (ヨーロッパ/ロシア

宮原 桃子