NTT DATAThink Daily

  • 地球リポート
  • 地球ニュース
  • 緊急支援
  • 告知板
  • Think Dailyとは

地球ニュース

RSSrss

Energy

原発撤退のはずのドイツがブラジル原発を支援?

2011.10.14 河内 秀子

Angra 3:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by minplanpac

9月18日、ドイツの総合電機大手「シーメンス」の社長、ペーター・レッシャー氏が独誌シュピーゲルのインタビューに答え、「私たちにとって、この章はもう終わりを告げた」と原子力発電事業からの撤退を表明したニュースは国内外で話題となりました。

1953年、公式にはまだドイツ国内で原子力開発研究が禁止されていたにもかかわらず、「核エネルギー」の開発グループを設立。1961年にはドイツ初の原子力発電所を南ドイツ、バイエルン州に建設して以来、ドイツ国内全ての原子力発電所を建設。この分野では50年以上の歴史を持つシーメンスですが、2022年までに原発を全面停止すると政府が表明したドイツでは、もう将来性はないと考えたよう。レッシャーは、政府を支援し、2020年までに全電力消費の35%をエコ電力でまかなえるようにしたいと発言しています。

一方、9月末、ドイツではメルケル首相率いる連立与党が2015年に稼働を予定している原子力発電所、ブラジルのアングラ3号機の建設について、13億ユーロ(1380億円)の輸出信用保証期間を延長していたことがわかり、大きな批判を受けています。

実は、このアングラの原子力発電所計画にはシーメンスが深くかかわっていました。1975年に計画が始まったアングラ2号機はシーメンス社のモデル。同じくシーメンスが設計しているアングラ3号機の建設計画は、80年代に資金不足でストップしたにもかかわらず、シーメンスと世界最大手のフランス原子力企業「アレヴァ」の後押しを受けて2007年に計画が再開されていました。そもそもリオデジャネイロから150キロほど離れたこの立地自体、大西洋に面し、大雨の際には地滑りの危険性があると指摘され、部品自体も80年代から港の倉庫に保管されたままということでその状態にも不安がささやかれていました。8月、この保証契約は期限切れとなったのですが、それをドイツ政府が半年延長していたというのです。

しかし、計画を進めていたシーメンス自体が脱原発を公表している今、続ける意味はいったいあるのでしょうか?

ドイツにとっては、アレヴァ社が国内で提供している5000人の雇用が大事なのかもしれません。でも、自国では脱原発を表明しておきながら、海外で危険性のある新しいプロジェクトを援助しているのでは...。緑の党など野党からの批判だけでなく、議会前でデモが行われるなど国民からの反発も大きく、これからの連立与党の発言に注目が集まっています。

IMG_2806.jpg

ドイツ国内では、原発反対のシールや旗でアピールしている人が多い (c) kawachi hideko


関連するURL/媒体

Bookmark and Share

Thinkテーマ別に読む

Energy

このニュースの地域

ドイツ (ヨーロッパ/ロシア

河内 秀子