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ドイツで活躍中の日本人助産師がみる「理想のお産環境」

2011.11.18 宮原 桃子

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デュッセルドルフ市の病院で助産師として働く髙野さん


ドイツ・デュッセルドルフ市の病院、マリエン・ホスピタルの産科に勤める24歳の日本人助産師・髙野彩織さん。新潟県長岡市出身の髙野さんは、高校時代に1年間ドイツに留学。ホストマザーが勤務する産婦人科を訪れた経験から、女性の体のしくみの面白さにひかれ、助産師になる決心をしたそうです。日本で高校卒業後、ふたたび渡独。ドイツ赤十字の研修制度を終えた後、助産師学校に3年通い、2010年4月から正式に助産師として働き始めました。

ドイツで助産師修業を始めたころは、言葉の壁や経験不足から泣いてばかりいたという髙野さんですが、今では流暢なドイツ語でドイツ人妊産婦からの信頼も厚く、また市内に住む多くの日本人妊産婦たちにとって心強い存在です。

そんな髙野さんが見るドイツのお産とは。日本では、妊娠直後に分娩予約をしなければ、出産する場所が確保できないのが現状ですが、ドイツでは出産の約1-2カ月前に予約するのが普通で、予約なしの飛び込み出産も問題なし。日本と違って産科医や助産師が不足しておらず、通常、妊婦健診は婦人科医院、出産する場所は病院・助産院などと別々で行われるため、出産の受け入れ態勢に余裕があるのです。

また、母子手帳の違いもあると考えられます。日本の母子手帳は、元々はドイツの「母親」手帳をヒントに、独自に開発されたと言われます。日本の母子手帳は、産前から子どもの成長記録まですべてが1冊にまとめられているため、産前については簡単な妊娠経過しか記載されません。一方ドイツでは、産前は母親手帳、産後は子ども手帳と別々であるため、母親手帳には各種検査結果データや妊娠経過などがより詳しく記載されています。それゆえ、仮に飛び込みの出産であっても、母親手帳を見ればスムーズに対応できるそうです。

また、金銭的な支援も充実しており、妊娠・出産のみならず、助産師による産後の自宅訪問健診(産後8週間、最大36回まで)や産前・産後体操のような関連コースまで、保険でカバーされるのが一般的。自宅での産後健診によって、産後安静にすべき母親が病院へ頻繁に出向く必要もなく、新生児にまつわる不安も解消されます。

助産師が学び働く環境も整っており、助産師学校は無料。実習中は給料ももらえ、勤務時には適切な残業管理がされ、休暇も十分に取れるということです。それゆえ、今回の髙野さんも日本ではなくドイツで助産師になることを選んだと言います。ほかにも、天然・有機素材のケア用品や食品の充実や、電車内で妊婦や赤ちゃん連れに席を譲るのが当然とされる社会の風潮など、お産を支える環境が整っています。

日本のお産が誇るべきものもたくさんありますが、お産を支える社会の体制については、ドイツからまだ学べることがありそうです。髙野さんは、今後もドイツで助産師を続ける予定とのことですが、いつか日本でもドイツで得た見識を広めてくれるといいですね。

ちなみに、来年度は10年ぶりに母子手帳が改正される予定で、11月4日に厚生労働省が「母子健康手帳に関する検討会報告書」を発表したばかり。博報堂生活総合研究所も「日本の母子手帳を変えよう」というプロジェクトを発足させています。今後、母子手帳のあり方や病院の体制、金銭的な助成の拡充など、より子どもを産み・育てやすい社会になっていくことが期待されます。



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このニュースの地域

デュッセルドルフ、ドイツ (ヨーロッパ/ロシア

宮原 桃子